死から生へ
その時、魔王が忍び寄ってきた。
「残念だったな。やっと貴様にとって大切なものが手に入ったと思いきや、
もはや、この世界はやっと今私の手中に入ってしまったところだ。はっはっは。この世は私のものだ。
始るよ・・・戦争が。楽しみだなあ。
もう、止まることはない。
善人がその悪の本性をむき出しにして正義を振りかざして、互いに憎しみ合い、血を流しあい、殺しあう姿は見ていて痛快だよ。」
巨大などす黒い雲が、全地を多い、太陽は見えなくなった。
「おやおや、何を驚いているのだ。この雲が晴れるとき、本当の地獄が始まるのだよ。
おっと、これは私が起こしたことではないよ。
私の身体はあまりにも大きすぎるので、地上に出ることはできない。
そこで・・・ちょこっと人間たちの心に誘惑をかけて惑わせてしまえば・・・彼らは理性を失い簡単に争いに突っ走ることができる、というわけさ。」
ハンスは、信じることにかけた。
「こんな実態のないものに負け、屈するのか?
私にはいのちがある。そう、いのちが。
お前を覆いつくすほどの無限の生命と私はつながっている。
私はそれは呼び起こすことができる。」
ハンスは全身の細胞という細胞が震えるような声で叫んだ。
その声は宇宙と呼応した。
そのとき、天がまるでカーテンが裂けるように開いて、全地をつんざくような雷のような光が、大河のようにハンスの身に臨んだ。
ボロボロになっていたハンスは光り輝き、黄金の衣装に身を包んでいるかのようにすら思われた。
魔王は驚愕を隠せない様子で漏らした。
「信じられん・・・信じられん・・・なぜ、かつて・・・死にかけていた男が・・・もうすぐで私の手中に完全にはめてしまえることができたこの者から無限の力が溢れかえるというようなことがあるのか。」
「魔王よ、闇の中に棲むお前には決してわかることはないだろうが・・・これが、愛の力だ。
愛するときに人は強くなれる。愛するときに人間は死から生に移る。そして、愛のうちに人は生き、愛のうちに人は無限の力を発することができるようになる。
愛は死なない。」
魔王は消え去った。




