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叫び
月が輝く夜。
また、夢に見る。
少女と少女の家族の乗った「絨毯」(じゅうたん)をずっと後ろから見ていた。
たくさんの家財や荷物とともに少女はまわりを泣きそうな顔で見まわす。
僕は少女の前に行くことができない。・・・しかしなぜだ?
絨毯はペガサスに引かれてゆっくりと、動き始め、空中に小さくなっていった。
僕は、物陰から飛び出し、彼女に何かを叫ぶ。
少女の顔が変わる。安堵と切なさと、そして叫び。
周りの人びとはまるで忌まわしいものでも見つけたように、醜いものでも見るように、こちらを軽蔑のまなざしで見る。
少女の家族は、皆一様に無表情で顔を下に向けたままだ。少女の母は何か申し訳なさそうな顔でこちらを一瞥した。
そういえば、少女は何か叫び続けていた。
僕は人びとにおさえつけられる。
彼女の名前を呼んだ。
なぜか頬に冷たい雫が零れる。
僕は地面に押し倒され身動きが取れなくなる。
それ以上叫ぶことを許されなかった。
嘔吐した僕を見て、人びとはやっと押さえつける手を緩める。そして、迷惑そうな白い目の数々を投げかける。