再会
「そういうことだったのか・・・」
またしても宇宙の仕組んだ偶然。
教会にはあの子がいた。
ふたりは顔を見合わせて大笑いした。
「前にお会いしたことありますよね。」
「ああ、ついさっき前にね。」
「この財布・・・あなたが、何日も前にここを出るときに落としたのを私見てしまいましたの。
すれ違いね。あなたが出ていってすぐに、私はここに入ってきた。
それで・・・警察に変に届けるよりも、ここで私が預かっておいたほうがあなたがまたここに来た時や周りを歩いていた時に渡せるから、と思っていつも持ち歩いていたのよ。
あなたは警察がお嫌いでしょう、というか外国人だからこの国の人はあなたを人間として見ていないし・・・。」
「なんて子だ・・・ありがとう!ありがとう!ありがとう!
・・・よかった、西の国に戻る前にここに戻ってきて。
財布を無くしたまま西の国に戻るところだったよ。」
「・・・実は、あなたはもう忘れているかもしれないけれど、私はあなたと数回会ったことがあるよ。
・・・子供の時、そして、数年前、十代の時、そして、さっき(笑)」
「・・・うん。はっきりとはおぼえていないけれど、はっきりとおぼえている。」
「あはは。言ってることが相変わらず矛盾してる。」
二人は誰もいない庭の木の木陰にゆっくりと歩いて行った。
「・・・会いたかった。
お久しぶりだね。
よく、あなたのことを考えてた。
いまどうしてるのかな。どこにいるのかなって。
また会えたらなって。」
天にも昇るような気持だった。
そばにあの子がいる。
そばにあの子がいる。
何を話していいかわからない。
「僕もだよ。」
「元気そうで何よりね。」
当たり障りの会話。
だけど、そんな当たり前のことが、ただそれだけでどんな宝石よりも輝いたものに思われたのだ。
*
彼女は・・・相変わらず、詩人だった。芸術家だった。
ハンスの音楽や詩を彼女の前で披露するには赤面するほど・・・彼女の描く絵も、発する詩も美しく、全身の細胞に響いてきたのだ。
・・・本当の美しさとはまさに一つの実在する力を持っていて、触れる人をその世界に取り込んでしまうものなのだ。
そして・・・これは芸術家の宿命ともいえるべきものだが、彼女は他人との社交には疎い、興味がない・・・。
あれだけ長年ぶりの再会だったにせよ、彼女はハンスのことよりも自分のワークのことが気になるようだった。
彼女はしれーっとしていて、ますます自分のうちの素敵な世界に入り込んでいるようだった。
男はその女が発する光の届かない距離に対して、その距離が程よい具合であればあるほど、その心をくすぐられるものだ。
「僕は・・・彼女の世界に入っていくことができるのだろうか・・・そして、その資格があるのだろうか。
いや・・・彼女にとって、僕はなんなのだ、なんなのだ、なんなのだ・・・。」




