あの子
ハンスは、再び勇者と賢者を探し始めた。
外ではなく、自らのうちに。
「・・・いったん、西の国の故郷に戻ろう。財布も無くした。会うべき人々にも会えたし、もうやるべきことはすべてやった。」
天の采配は奇妙なものだ。
いとも簡単にあっけなく会えた相手がいるかと思いきや、どう頑張ったって、タイミングがずれて会えない相手がいるものである。
逆もしかりだ。
何年も探し続けていた相手と、思いがけないタイミングで出会うこともある。
ハンスは、リュックにありとありったけの食料を積んでいた。
財布をなくし、日々の食事や移動にも困っていたためである。
もう一度、ハンスは警察署に行った。
それでも、財布は見つからないという。
外に出て、同じように財布を無くし道をさまよっている旅人がいた。
彼は、テントを張りながら、移動していた。
「この出会いも必ずや何かの縁だね」
と二人は顔を見合わせて笑った。
そして、二人の話が合った時、お互いに天がそれを引き寄せたということを確信したのであった。
「私も勇者を待望している。そして、その勇者は、いいかい?私たち自身だ。」
このことだけでも大きな収穫だった。
満足したハンスは西の国に帰ることにした。
西の国に帰るにはいったんエドキオに戻らなければならない。
ハンスは、来た道を重い荷物を抱えながら、足が棒になるのを感じながら歩いた。
「・・・財布はあきらめるしかないか。なあに、また稼げばなんとか・・・なるはずだから。」
大都会エドキオにたどり着いた。
「あの・・・これ、あなたのじゃありませんか?」
まるで稲妻が走ったようだった。
財布を届けてくれたその女の子は・・・!ああ!
彼女はたしかに、夢の中であったあの少女だ!
出会いはいつも予期しないところで起こる。
「あ・・・ありがとう。ずっとずっと探してたんだ。」
ハンスは財布を受け取る。そのときに、ハンスの手とその女の子の手が触れた。
手と手が触れた・・・それだけで、それだけで、ハンスの全身には何をしても満たされなかったようなもののが満たされた。
ハンスは思わず叫んでいた。嬉しさで。
一瞬ハンスは理性を保ちながら、こう叫んだ。
「やったやったやった!やったーーーーーーーーー!財布が見つかった!!ひゃっほーーう。ありがとうありがとうありがとう!!」
あまりにも飛び跳ねて喜ぶハンスの姿を見て、少女も笑い始めた。
「あははっ。まるで、あなたって子どもみたいですね。よかったよかった。うふふ。」
本当は、探し求め続けてきたその少女と再会できたことが嬉しくてたまらなかったのだ。
ハンスと彼女の視線がふと合った。
そして、二人はそれをそらすことをしなかった。何かを思い出すように互いの顔を見つめあう。
ふと数秒の間が永遠にも思われた。
「あの・・・一度、お会いしたこと・・・ありませんよね。」
「あ、ああ。」
だめだ、うまく言葉が出てこない。
「・・・あ、では私はこれで・・・。」
彼女は、後ろを振り向くと走り去っていった。
亜麻色の髪の毛のあの女性。
白いワンピースに身を包んで、バッグをもった姿が小さくなっていく。
それをハンスは、呆然として見つめていることしかできなかった。
「・・・なぜ、彼女が私の財布を?そして、なぜ、落とし主が自分だとわかったのだろうか・・・。」
別れてからその謎をやっと問えるようになった。
「宇宙の力は、やはり不思議な働きを僕にしてくれるものだなあ・・・。」
なんていう様々なことを考えながら、ハンスは西の国に帰る前に、ハレルのいる教会に再び立ち寄ることにした。




