ハカラシへ
次の街に行くために、ハレルと別れ、サトルと共に旅立った。
サトルの故郷の街、「ハカラシ」に行くのだ。
ハカラシは東の国の大陸の北にある。
富の法則、「人はみなすでに救われている」「皆が神である」という真理をしったハンスたちは喜びに満ちていた。
もはや、自分の人生のすべては思い通りになるという確信めいたものが内にあった。
ふと、ポケットに手をやる。
あるはずのものが・・・ない。
そう、財布がないのだ。
いったいどこにいったのだろう。
カバンを探す。
ホウキの隙間もくまなく探すのだが見つからない。
警察に届けても、「見つかる確率は低いよ。見つからない間は水でも飲んで暮らすしかないですね。」
と冷たく言い放たれた。
サトルがなけなしの金を貸してくれた。
「ありがとう、君がいなければ、僕はこの異郷の地で死んでいたかもしれない。」
ハンスはそのことに対して、深く深く感謝した。
しかし、ハンスの心は緊張と不安に満ちており、これからどうしようもないという気持ちでいっぱいになっていた。
マスターの教え、富の法則に対して疑いさえ抱いた。
疑ってはならないと思いながらも、彼は疑わずにはいられなかった。
なぜこんな事態が生じるのだろうか。
「宇宙は、なぜこんな仕打ちを私にするのか・・・。」
精神は物質から自由であるはずでなかったのか?精神の力があらゆる物質を形にするはずではなかったか?
お金・・・ただそれがないだけで、これほどまでに精神が不安定になるとは。
しかし、ハンスはあの教えにとどまろうと決心して、「これも宇宙から与えられた摂理なのだ」と流れに任せることにした。
すると、精霊がやってきて彼に一つのインスピレーションを与えた。
「このことからはなぜかいいことしか起こらない。」と。
ああ、本当か?本当なのか?
ハンスの心は、信じる側と、すべてを投げ捨ててしまいたい側で二つに引き裂かれようとしていた。
・・・本当だったのだろうか?
マスターの教え、ハレルの教え、これまでに読んだ、アウレリウス王や勇者レンに働いた力は選ばれたものにのみ特別に働き、自分だけには働かないのだろうか。
運を使い果たしたのではないだろうか!
そう思った。
思えば、今まで、自分の夢なんて何一つ叶わなかった。
何度も、夢想しては、その気持ちになっただけで、手に届きそうになった夢は手からすり落ちて彼はさらなるどん底に落とされることの繰り返しだった。
・・・そう、たとえば、あの子のこととか。
あの子・・・あの子・・・あの子とは誰だ・・・。
大切な誰か。忘れちゃいけない誰かだ。
ずっと、探しているような気がする。心の奥の奥で。君のことを。
街の裏通りで、空き缶を蹴っ飛ばした。
願いを叶えるために、金貨をも賽銭箱に投げ込んでみたりもした。
月や星に対しても願い事をかけてみたりしたさ。
だけど、すべての祈りは空に掻き消えた。




