サトルとの再会
そこに集まった青年の一人の中に、思いがけなく「彼」がいた。
再会するために、わざわざ会いに行こうと思っていたところ、思いがけなく彼が同じ場所にいたのだ。
・・・サトルその人であった。
まるで、宇宙が引き寄せたとしか思えない。
かの精霊はそのことを告げていたのだ!
「何年ぶりだろう!」「会いたかった!」
ハンスとサトルは固く握手を交わして、久闊を叙した。
やっと、サトルに再会した。
その晩、二人は酒を酌み交わし語り明かした。
「・・・そうだ。今、世界が大きく変わっている。君もそう思うだろう。」
サトルは言った。
「ああ・・・どうも、西の国と東の国で戦争が始まろうとしている。」
「あの時も言ったかもしれない。
勇者と賢者とが同時に現れると同時に、世界の危機が迫っていると・・・。
このままいくと、世界は確実に破滅を迎えるだろう。
だが、闇だけではなく光の杭のような預言者や賢者たちの存在がこの世界に輝いていることは、君もこの旅の中で感じ取っただろう。」
「ああ・・。ここに来る前に、マスターという人物に出会った。そして、今私たちのそばにいるハレル。
そういえば、アウレリウス王の『内なる知恵の書簡』も読んだ。クラカーマで勇者レンの墓にも立ち寄った。」
「君はあれをどう読んだ?
アウレリウス王にしろ、レンにしろ、彼らが出てきたのはいつも人類の危機の時だった。
そして、過去のそれと比べ物にならないような人類の危機が今訪れている。」
「そこで、僕たちは勇者や賢者を探しているわけだ。」
「・・・これは重大なことなのだが、もうこの世界に巨大な勇者や賢者は出ない。」
「何を言っている?マスターやハレルはそうではないのか?」
「まあ、待て。話をよく聞いていくれ。
この世界の外部にヒーローを求めるなということだ。
いいかい?本物のヒーローは君自身だということだ。君自身がヒーローにならず、誰かに憧れているだけでは何もできない。」
「いやいや、まさか・・・自分のような人間がヒーローなわけがない。
僕は自分のみじめさを知っているし、少し変わっているだけで普通の能力のない人間だとも知っている。
それに、自分が勇者や賢者を名乗ることは一つの傲慢さではないか?」
「本当だ。この世の全員がヒーローになれるのだ。」
「・・・マスターと出会った後の、ヤシロで知ったよ。
誰しもが真実は『神』であるということを。」
「そうだ、そうなのだ。自分自身を小さな人間だと思ってはいけない。君にはこの世界を変える力があるのだ。」
「そのことは、サトル、もちろん君自身についても言えるね。」
「ああ、我々自身が、そしてすべての人が勇者であり賢者であり、時代を救う預言者となりえるのだ。
私たちは世界を変えていける。」
「信じよう、信じよう、その言葉を。」
「ありがとう。さすがは君だ。このことをほかの誰に言っても一笑に付された。
このことを信じてくれたのは君だけだ。
いずれ、このことを特別でない誰しもが信じる日が来る。
いや、誰しもが特別なのだ。誰しもが輝いていて誰しもが神なのだ。太陽のように、月のように、星のように輝いていくことができる。」
「誰もが、輝く・・・太陽のように、月のように、星のように・・・」
「人は何のために生まれてきたのか?ただ苦しむためか?その苦しみに何らかの意味をこじつけて耐えるためか?違う・・・!」
「ああ、きっとそうだ。」
「誰だって苦しむために生まれてきたのではない。自由になるため・・・そう、自由に、もっと幸せになるために、輝くために生まれてきたのだ。なぜそんな暗闇にとどまっているんだ?
人は自由になれる。」
「信じる・・・信じるよ、君の言葉を。そして自分自身を。
変えることができる、できる、できる。
僕たちはこの世界を!」
「そうだ!本当の預言者とは、勇者や賢者とは、君と僕なのだ。そして、すべての人が・・・!」
「君は、そうか・・・この真実を伝えるために僕をわざわざ呼んだのだね!」
「そうだ!」
そう言い終えた瞬間。
その時、大空から雲が開け光が降り注いだ。
精霊たちは彼らを祝福し、彼らに触れた。
ハンスは自分自身の中から大きな大きな力が湧き上がってくることを感じた。
それは、サトルも同じことだった。
二人が新しく生まれた瞬間だった。