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再会 ~All That I Needed(Was You)~  作者: あだちゆう
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だいじょうぶ

再びハレルに会った。

ハンスが先日の非礼を詫びると、ハレルはまるでそんなことなどなかったように、客人として自分の部屋にハンスを招き入れ寝床を用意し、また食事とをふるまってくれた。

ハレルの周りには多くのハンスと同じような青年が集まっていた。

ハレルには預言者としての威厳はない。

そして、自分を偽善者、愚か者、と呼んで、開き直ってはばからない。

まさに、下着にタオル姿のどちらかといえば適当で情けない感じの一般人でしかなかった。

若者たちは食事の席でともに大笑いをした。そこは、安心に満ちていた。

彼は自分自身の弱さの一切を大いに認めて自覚していた。

そのかわり、ある種の巨大な力が、彼に働いていた。それが、かれが「預言者」と言われるゆえんだった。


「ハレル、あなたはその巨大な力を得るために何か特別な修行をしたのですか?」

ハンスは訊いた。

「修行?そんなものは要らないよ。」

「僕は、ただ宇宙のいつくしみを知っている。それだけだよ。

必ず宇宙は喜びに満ちた完成が予定されている。

だから、悩んだり疑ったりするだけ損。」

「それだけですか?」

「それだけです。」

衝撃的だった。ハンスは感動を抑えることができなかった。

「それだけで、人は救われるのですか?」

「それすらも要らない。」

「は?」

「人間はみな、すでに救われている。だいじょうぶなのですよ。」

「すでに・・・だいじょうぶ。

そうなんですね!」



ハレルのところに集まる若者はみな笑顔で笑いながら、それぞれ傷を抱えていた。

鬼のような両親から虐待を受け続け、殺されそうになった者。彼の背中にはタバコの火を押し付けられたという大やけどがあった。

病気に(かか)り社会から見捨てられ世を呪っていた若者。

ハンスよりも壮絶な体験を抱えた者たちが集まってきていた。

まだ完全に傷が癒されたわけではないものの、そんな人々がハレルのもとで明らかな希望を持って生きていることにハンスは驚きを隠せなかった。


ハレルは、青年たちを集めて親しく語りかけた。

彼の言葉は、一つの巨大なエネルギーに満ちており、そのエネルギーに触れるものをみな癒し、苦しみから解放し自由にした。


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