夜
さあ、この日のうちに次の街に行かねばなるまい。
サトルに会うまでには、いくつかの街を回る必要があった。
さらば、クラカーマ。
ハンスはホウキにまたがり、夜空に飛び上がる。
「東の国」の大きな都「エドキオ」のネオンライトが一つの芸術作品のように地上を映し出す。
いまから、あの光の中の一つに降りていくのだ。
確かに、そこにはまばゆいばかりの大都会があった。
しかし同時に、科学によって作られた光は、影も生み出す。道端にはごみが溢れ、路上で人が寝て、何人かの大人たちは酔っぱらって大声で叫んでいる。
夜の暗闇とそれを照らすエドキオのネオンライトの中、数時間前までの平安な気持ちは揺らぎ始めた。
まるで、日が照っていた砂漠から、太陽が去り夕闇になり凍り付く寒さが襲ってくるように。
この寒さから逃れる暖かい場所を探していた。
本当は、太陽が沈み、去るのではない。
ほかならぬ大地が、地球が、私たちがそれに乗って動いているにすぎないのだ。
我々の心と世界もそうなのだろうか。
宇宙に真理が存在しないのではなく、我々がそこから自由意志かもしくは何らかの抗いがたい力によって引き離されているのか、そしてそれすらもひとつの真理のうちにある定めなのだろうか。
光があるなら闇もあって、その両者は互いに必要なものなのか。