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プロローグ【アカリフォリア学園の一日】 その6

 ――キーンコーンカーンコーン。

「――ふう、今日も無事終わりましたっと」(美希)

「…………」

「だ、大丈夫? 穣くん」

「なんとかな。ただ、まだ腹にカレーが残ってる……」

「まあ、そりゃあそうだろうね」

「豊はすげぇよ、あれ全部食べてケロっとしてるんだからな」

「はは、お前も俺みたいな体型になれば、食えるようになるさ」

「そんなもんかね……」

「じゃあ、俺は部活があるから。また来週会おうぜ」

「じゃあね~」

「じゃあな」

「――さて、この後あたしたちは街に繰り出してティータイムをと思ってるんだけど。みのるんは今の様子じゃあきつそうね」

「ああ。まだ何も胃袋には入れられない。二人で行ってきてくれ」

「分かったわ。お大事にね」

「ああ」

「じゃあね、穣くん。また来週」

 ――じゃあ、俺も寮に帰るとしますか。今日で来週の宿題を全部終わらせてしまおう。

 そう思って立ち上がったときだった。

 ――ピーンポーンパーンポーン。

「猪原穣くん、猪原穣くん、校長先生がお呼びです。至急校長室まで来てください。繰り返します、猪原穣くん――」

「…………」

 また、ですか? 最近やけに頻度が上がってないか? そんなに忙しいんだろうか? まあ、校長って仕事柄、忙しくない日はないとは思うが。

 ……無視して帰る、わけにはいかないよな。

「はぁ~、行くか」

 俺は校長室へと足を運んだ。


 …………。


 ――これが、さっき言った「お使い」である。一見校長先生に呼び出される、と聞くと、悪いことをして注意を受ける、といったイメージを持ってる人が多いと思うが、俺の場合はそうではない。

 校長先生の代わりに、簡単な仕事を引き受けてほしいというのが大半である。去年はそこまで呼び出されることはなかったんだが、2年生になってその頻度は日に日に増えてきている。ユリア先輩とは、これがきっかけで知り合うことになったんだ。確か、先輩の学年の保護者に配るプリントを置いてきてくれと言われ、持っていった際に対応してくれたのが先輩で、そこからちょっとずつ仲良くなって……という感じだった。正直それぞれの担任の先生に任せればよかったんじゃないかと後で思ったが、先輩と仲良くなれたのは悪い思い出じゃないから良しとした。

まあ、それはさておき。

何故俺が校長先生に名指しで呼び出されるのか……察しの良い人はもう分かっているかもしれないな。そう、こういうことである――。

「失礼します」

「おう、来たか。我が息子、穣よ」

 もう言わなくても、だろうが。俺が校長の息子だから、頼みやすいってだけの理由だ。

「なあ、父さん。頼むから場内アナウンスで俺のこと呼ぶのやめてくれないか? 結構恥ずかしいんだよ」

「いいじゃないか。注目を浴びれるじゃないか」

「いやいや、浴びたくないんだよ。しかも校長からの呼び出しって……知らない人は何回注意受けてるんだって思うだろ?」

「心配ないだろう。私たちくらいしか猪原って苗字はいなかったはずだ。すぐに家族だって分かるだろう」

「そんな楽観的な考えでいいんだろうか……」

「それに、私は校長だからな。校長は生徒を守る仕事故、しっかりでーんと校長室で構えておく必要がある」

「……それって仕事いっぱいあって俺のこと探すの面倒だからアナウンスしようってことじゃねぇの?」

「ギク……そんなことないぞ」

「隠しきれてないって……」

「まあそう言わずに頼む。あんまりこうしてお前と話す時間もないからな。こうでもしないとそういう場が用意できないっていうのもあるんだ」

「他の先生は許してくれてるのか? 他の学園が見たらびっくりするだろ」

「心配ない。教頭先生と教務の先生にはちゃーんと許可をもらってる」

「優しい先生たちでよかったな」

「校長の力である」

「おごるなよ」

「はい、分かりました。――で、今日お願いしたいことなんだが」

「ああ、何処に持っていけばいいんだ?」

「うん。この資料を生徒会に持っていってくれ。以前行った学園アンケートのプリントだ。これを期日までにまとめておいてくれるように言ってくれ」

「うわ……よりによって生徒会かよ」

「ん? 生徒会は苦手なのか?」

「生徒会が苦手ってわけじゃないが、そこにいる人物が、な……」

「そんな子が生徒会にいたか?」

「父さんはそう思わないかもしれないな」

「そうか。まあ置いてくるだけだから、大丈夫だろう」

「簡単に言ってくれるぜ」

「実際お願いするだけだからすごく簡単だ」

「たまにはほのかにでも頼んでみろよ。喜んで行くと思うが」

「あいつにはまだ荷が重い。性格的に呼び出しとかも得意じゃないだろう」

「校長の呼び出しはみんな不得意だと思うんだが?」

「それは言わないお約束。というわけで、頼んだぞ? 渡し終えたらそのまま帰ってくれていい」

「分かった。――失礼しました」

「うん、よろしく」


 ――さて、生徒会か。あいつがいないってことは、ないだろうな。

 長居するわけじゃないから大丈夫だとは思うが、少々緊張してしまう。俺の足取りはやや重くなった。


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