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プロローグ【アカリフォリア学園の一日】

ゲームでいうところの共通ルートのような感じで、しばらく物語が続きます。実に3年ぶりくらいの投稿なので、頑張っていきたいと思います。

 ――ピピピピ。

「う、うーん……」

 もう朝か。もう少しこの布団の温もりを感じながらまどろんでいたいんだが……そうも言っていられない。学園を遅刻することはできないからな。

「ふあ~あ……」

 大きな欠伸を一度、トイレに行って顔を洗って……。

「それにしても、今日の夢はなかなかリアルだったな」

 俺はブレザーに袖を通し、カードキーを手に取り、一旦自室を後にした。

 ……………………。

 …………。

 ……。


 既に朝食会場はたくさんの人で賑わっていた。相変わらず豪華なラインナップのメニューがずらっと並んでいる。これが朝食だって言うんだから本当にすごいなと思う。

 さて、今日は何を食べようかな……と、その前に。

「まずは、我が母親にご挨拶を」

 俺はここで朝からせっせと汗水流しているであろうお方のところに向かう。きっとあのエリアにいるはずだ。

「お、いたいた。――おはよう、母さん」

「ん? ああ、穣、起きたのね、おはよう」

「今日も朝からごくろうさん」

「いつもありがと。そういう気配り、母さん大好きよ」

「いやいや……今日もすごい人だな」

「ホントよね~、もう慣れちゃったけど、朝からこの賑わいは尋常じゃないわよね。正にここは朝食会場という名の戦場……」

「満たされた胃袋を手に入れるために、人々はフォークとナイフを持ち、戦場に赴く……」

「勝つのは誰だ!? ブレックファーストファイト! きんじつはつば――あ、フレンチトーストですね、今ご用意致しますので少々お待ち下さい」

「さ、さすがの切り替えの早さ」

「そりゃあ仕事ですもの。穣との茶番も大事だけど、お客様の注文の方がもっと大事ですから?」

「まあ、それはな」

「はは、相変わらず奥さんと穣くんは仲がよろしいんですな」(お客さん)

「ふふ、おかげさまで。でも、この関係もいつまで続くか……不安で仕方なくて、うう……」

「下手な芝居はするもんじゃないぞ、母さん」

「あ、ばれてる?」

「演技がガバガバだ。落第レベル」

「うっわ、厳しい点数たたきつけるじゃない? いいわ、今度お母さんの演技力魅せ付けてやるから」

「はっは、その様子ならしばらくその心配はしなくても大丈夫じゃあないですか?」

「そうだといいですね。――はい、フレンチトーストお待たせしました。メープルシロップはいかがいたしましょう?」

「いや、このままで大丈夫。では、今日もご馳走になるよ」

「はい、いつもありがとうございます~」

「…………さて、俺も朝食を食べよう。――すみません、僕もフレンチトーストいただけますか?」

「はい、畏まりました。枚数はいかがいたしましょう?」

「じゃあ2枚でお願いします」

「はい、何で急に敬語になったか分かりませんが、畏まりました~」

 こういう唐突な流れにも動じずに身を任せることができるから、俺の母さんはなかなかノリの良い人なんだと思う。

「――それで、今は穣だけなの? もう1人の我が子は何処?」

「もう1人の我が子はまだ眠りこけてるんじゃないのか? 寝坊の才能が普通の人より秀でているので」

「やっぱり? そうよね、穣しか挨拶に来てないって時点で若干そんな気はしていたんだけど……はあ~、今日もなのね」

「これで何日目だ?」

「あたしの数え間違いじゃなければ、今日で5日目ね。今週月曜日からずーっとだから?」

「このまま行けば、1週間も夢じゃないな」

「達成できるわよあの子ならきっと……いやいや、達成しちゃあ駄目なのよ、とんでもない怠惰な記録だから」

「ははっ」

「そんな有名なネズミさんみたいな笑い方しないでよ~。……というわけで、今日もよろしくね」

「ああ、分かったよ」

「はい、できあがり。今日も頑張るのよ」

「ああ、母さんも頑張ってな」

「ええ、ありがとう」

 ……………………。

 …………。

 ……。


 俺は近くの2人がけの席に腰を下ろして朝食に舌鼓。たくさんの人がいるが、席もその分たくさん用意されているので座れないという心配はない。

「うん、美味しいな、このフレンチトースト」

 ――軽く説明をすると、ここは俺たちの通う学園の食事会場。朝、昼、夜で会場が別で一般客もお金を払えば利用することのできるシステムとなっている。味とコストパフォーマンスの良さから大衆からも結構な人気を博しており、連日このような賑わいとなっている。そしてこの一流ホテルのような外装も人気の一つだろう。時々俺たち学生がいるのが場違いじゃないかって思えてくる。でも、これは日にちが解決してくれた。入学したばかりの頃はオロオロしっぱなしだったが、今は、「俺もセレブの端くれなんで」みたいなちょっと嬉しい心持ちで食事をすることができる。

 そんな素敵な食事会場で、先に登場した俺の母さんは働いている。詳しくは知らないが、かなり責任者に近い立場で業務を全うしているらしい。

「すごいよな~。俺もあんな風になれるのかな~」

 ……決してマザコンではありません。俺は同年代のストッキングの似合う女の子が好きです。


 ……………………。

 …………。

 ……。

 一通りの料理を食べ終え、ミルクを飲んでいるのだが――。

「一向に来る気配がないな」

 待っているのは、さっき言っていた母さんのもう1人の我が子。俺の妹にあたる子だ。

「2度寝を決めてかかったか?」

 可能性は大いにあるな。何せ俺の妹だからな。確かに2度寝は最高に気持ちがいいけども、平日にそれを決めてかかる勇気は俺にはない。しかし、妹にはそれをやってのける力がある。いや、力というか誘惑に負けてるだけっていうのが正しいか。

 いずれにしても、これ以上待ってたら俺まで遅刻しかねない。人並みも大分落ち着いてきて、徐々に登校、出勤し始める人が増えている。

「仕方ねぇな……」

 起こしに行くか……と思っていた時。

「――あ、おにいちゃーん!」

「あ、来た」

 俺に気付き、手をブンブン振っている女の子が姿を現した。そしてその子はこちらに向かってとっとこ走ってくる。

「お~はよっ!」

「お~はよっ! ……って可愛く言ってる場合ではないぞ。遅いわ!」

 とりあえず5日連続の寝坊を決めた妹にチョップをお見舞いしておく。母さんのやるせない気持ちも込めて。

「あうっ! いったいな~寝起きに物理攻撃はキツイよ~」

「じゃあ特殊攻撃ならいいのか? お兄ちゃんはそっちも自信がありますことよ?」

「ああ~いや、そういうことじゃないってば。だって~、これにはちゃんと理由があるもん」

「睡魔というモンスターが私の起きようとする心を覆い隠してしまった……っていう理由は2日前に聞いたぞ?」

「え? ああ、違うよ、それじゃないから。えーっと――」

「瞼というモンスターが私が必死で開けようとしている目を覆い隠してしまっ……っていう理由も3日前に聞いたからな?」

「え、ああ、そうだっけ? ……というかお兄ちゃん、私の寝坊の理由全部覚えてるの?」

「毎日のように理由並べ立てられたら覚えたくもなるわな。最近じゃあ一般人じゃ理解しがたいレベルの理由を言ってくるし。そろそろネタも切れてくるはずだ。理由もなく寝坊したんだとすれば、俺は妹だろうと容赦なく会心の一撃をお見舞いするだろう」

「既にさっき頭にいただいたような記憶があるのですが」

「ああ、それはきっと夢だ。まだ寝ぼけてるんじゃないかなー」

「びっくりするくらい棒読みだね……」

「で? 早く理由を言わんかい。何で寝坊したんだよ」

「ああ、そうだった。えーっと……うーんと…………」

「……まさか、貴様ぁ!」

「ああ、違うって。えーっと……そ、そうだ! 昨日の夜、怪人ネクロマンサーに――」

「ふんっ!」

 俺は次の言葉を待つことなく、脳天にチョップを振り下ろした。

「にゃあ! いったーい!」

「こんの、バカチンが! 何だそのファンタジーな理由は!? そんなもん俺が会ってみたいわ!」

「だって、有り得なくないじゃない!? 今の世界の様子だったら、怪人だってその辺にちらほらと」

「仮にいたとしても、お前を寝坊させるためなんていうちゃっちい工作なんてしないわ! 寝言は寝て言え!」

「え? じゃあ寝ながら言えば信じてくれるの?」

「そういう意味じゃないわ~! もう一発くれてやろうか~!」

「いやぁ~、ご、ごめんなさい~。許して~」

「全く……次は本当に怒るからな? こんな茶番もなしにいきなり説教タイムだ。そして尖った言葉をお前に投げつけ、俺は颯爽と学園に行く」

「う……、そ、それはいや……」

「なら、気持ちを改めて起きれるように努力しろ。急いで朝食食べて学園行くぞ」

「はーい」

「フレンチトーストはとってきておいたから、残りをとってこい」

「うん、ありがとう」

 ――これが我が妹、猪原ほのかである。


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