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第4話 「目覚め 再び」

 境浦見貫さかうら みつる

 中学、高校でクラスが一緒だったやつの名前だった気がする。

 学校にいれば席が近かったときは、話すことはあった。けど、それなりに関わりがあっただけで深く付き合いのある奴じゃなかった。

 だから、あいつに恨まれる覚えがない。そもそも深く関わっていなかったんだから。

 まあ、そう思ってるのは僕だけかもしれないけど。

 ただ、この洞窟に送られる前に出会った炎のような案内人の声はあいつっぽい気がする。

 怨恨の、っていうダンジョンの名前からして、知らないうちに恨みを買っていたのかもしれないな。

 今となっては分からないことだらけだ。

 それに、知ったからといってどうにかできるわけでもないしね。

 ただ、あいつがどうして現実離れしてるこの場所に関わっているのかは分からない。

 と考えていたら、カーテンが閉められた暗い部屋が浮かび上がってくる。

 見たこともない部屋だ。ただ、人がちゃんと生活している感じはする。

 そんな中、部屋の中に30歳ぐらいの男がいる。


「………これで、この黒魔術で、あいつへの復讐が果たせる…!!」


 黒くて金色で縁取られた本を手にして境浦が呟く。

 これは、境浦の記憶…か?

 ぼーっと見てるように映像が流れていく。

 境浦はぶつぶつと呟きながら何度も本を読み返し、納得がいったのか本を閉じる。

 そして、床にスペースを空けてナイフを手に取ると自らの首を躊躇いもなく切りつけた。

 自傷行為に驚くのも束の間、傷つけて流れた血を使い床へと幾何学的な紋様を描き出す。

 魔方陣…というやつだろうか。

 それを描ききると先ほどの黒い本を中心に置いて呪文のようなものを唱える。

 すると、本が燃えてなくなったと思ったら、境浦の体も燃え始めた。


「……ははっはははあははははは!!!!!!」


 そのまま炎が境浦を包み、消えていった。






 目を覚ますとぼんやりとした光が辺りを照らす。

 境浦なぁ…。さっき見た映像みたいなものから考えると、僕は30歳ぐらいまで生きていたのは間違いない。

 僕は勉強が特にできるわけでも、運動に秀でていたわけでもないし。

 こういう恨み辛みでよくある女性関係も………特にないな。

 彼女とかもいた記憶がないし………。言ってて悲しくなるぐらいに。

 僕はあんまり異性と積極的に関わっていたわけじゃないしなー。

 というか記憶が全部戻ったわけじゃないし、そもそも死んじゃってるんだから関係ないよね。

 っていうか、本当に死んでるのかな? 黒魔術で呪い殺されたってことになるんだけど。うーん、考えても分かりそうにないな。

 うん。まったく分からん。これは保留だな。

 さて、気絶する前のことを思い出してみよう。

 あぁ……洞窟でブラック・スカル・レギオンを倒して……えー…なんだっけ?

 クラスがどうのとか聞こえたような。

 『鑑定』っと。


■名前:永遠とわ 祝一しゅういち

種 族:人間

年 齢:16歳

性 別:♂

レベル:Lv1(永続)

クラス:ダンジョンテイマー◆←『怨恨のダンジョンLv1』


●ステータス

H P:719(72+647)

M P:276(8+268)

STG:654(8+646)

VIT:359(7+352)

INT:303(5+298)

MEN:785(11+774)

AGI:718(6+712)

DEX:600(6+594)

LUC:392(8+384)


●スキル:『鑑定Lv1』『異世界言語翻訳』


●『怨恨のダンジョンLv1』0/100DP

・ダンジョン操作Lv1

・ダンジョンボックスLv1

・モンスターコア吸収Lv1

・モンスター召喚Lv1

・骨生成Lv1


 うえっ!?

 クラスがダンジョンテイマーになって、ステータス上がりすぎじゃないか!?

 凄いなダンジョンテイマー!

 でも、本当に良かった!

 ステータスがどれぐらい重要なのか分からないけど1、2桁ぐらいしかなかった時は本当にどうしようかと思ったわ。

 それでもまだ弱いかもしれないけど。

 ステータスに関しては、1回他の人に会ってみないと分からないな。比較対象がないし。

 あとは、ダンジョンクリアの恩恵なのか、ダンジョン関係のスキルが幾つか入ったっぽい。

 早速使ってみようかな。


「ダンジョン操作!」


【ダンジョンを動かすためのDPが足りません】


 ……いやいや。

 そういうのはもう良いから!

 足りないのは分かったけど、どうすればそのDPっていうのが貯まるかを知りたいんですよ!!

 って、おぉっ!

 頭の中にダンジョン内の構造が見える!


<入り口> ― <待機部屋> ― <一直線の通路> ― <扉> ― <ボス部屋> ― <宝物庫>


 少なっ!!

 待機部屋合わせて3部屋って!

 ダンジョンのレベルが僕の呪いでLv1に下がったからかな。

 このダンジョン名の横に表示されている「0/100DP」っていうのがそうなのかな。

 これが0だからダメなんだろう。

 まぁいいや。じゃあ次。

 

「ダンジョンボックス!」


 頭が入れられるぐらいの空間が歪む。覗き込んで見えたのは、六畳間ぐらいの石でできた部屋だった。

 奥に扉が見える。宝物庫か。

 アイテムとか入れる倉庫ってところかな。

 あれ……これに入れば、ワープできるのでは?


【ダンジョンボックスにはアイテムしか入れることはできません。】


 ですよね。そんな都合良くはいかないか。

 じゃあ、次。


「モンスターコア吸収!」


 モンスターコアって『スケルトンのコア』とか『スカルドッグのコア』のことかな。

 まぁコアっていうぐらいだし、多分合っているはず。


【ダンジョンコアに触れていないため、この操作はできません。】


 もう良いよ!それは!!

 しっかし、ダンジョンコアってどこにあるんだ?

 この感じだと多分、モンスター召喚もできないな。


【ダンジョンコアに触れていないため、この操作はできません。】


 はぁ。

 ダンジョンテイマーだからいけないんだろうか。………マスターじゃないしな。

 テイム(調教)だから、触れないといけないとかかもしれないなー。

 そもそも所持しているダンジョンの場所を知らないしなぁ……。

 おっ?頭の中に後ろを示す矢印が浮かんできた。

 なるほど。洞窟の奥は暗くてよく分からないが、これを辿ればつけそうだ。

 是非、確認しておきたい。

 そう思って少し歩くと、光る苔が辺りを照らす。……って、行き止まりじゃないか。

 え?入口は?矢印は………この先を示しているな。

 掘れってことですかね?道具もないのに。


「マジかよ……」


 ダンジョンを手に入れたのに今すぐ使えるのが倉庫だけなのか………。いや、これでも充分役に立つけどさー……はぁ。

 じゃあ、これが最後だな。

 これは、ダンジョンとは関係ないかもしれないけど。


「骨生成!」


 自分の中から何かが抜けていくのを感じながら、足元に魔方陣が浮かび、軽快な音を立てて転がったのは骨。マンガ肉の肉をなくした……ただの骨。

 長さは20cmほど。これしかできんのか。Lv1だからかな。

 何が抜けていった感覚がしたけど……ステータスを見てみるとMPが10減っている。あんまり多用はできそうにないな。

 うーん、他にも作れないかな。試してみるか。

 んー……片方が尖った骨をイメージしながら、再び骨生成!

 再び自分の中から何かが抜けていく感じがした後、魔方陣が浮かび上がるとイメージ通りの骨が転がった。

 カランとかコロンっていう音が鳴るのが虚しく聞こえる。

 小さい杭っぽいのができたけど、これは果たして武器になるのかな。強度とリーチの問題で。

 その後、何回か骨生成をしてみて分かったことは、MPを消費することと、形状は色々なものが作れるということ。球体とか立方体、紐並みに細いのとか。簡単に折れるけど。

 というか、生成しておいてなんだけど、球体とか立方体とかは本当に骨か疑わしくなるね。

 ただし、質量だけは始めに生成した骨より大きいのは作れなかった。小さくはできる。

 イメージ次第だけど、スケルトンのミニチュアは作れた。動かないけど。

 物作りとかは苦手だったから、イメージ次第だけど色々な生物の模型を作れるってわけか。余裕があるときに作ってみたいかも。

 最後の試しに、一回目に出した骨で岩肌を殴ってみる。予想通り、簡単にポキッと折れた。


「………」


 はぁー。まともな武器一つできないだなんて。いや、頑張れば杭っぽいので、ウサギぐらいなら仕留められるかもしれない。

 ウサギ自体いないかもしれないけど。

 後は、刃がノコギリ状の短いナイフ。皮が薄い獲物なら解体用として使える、………かもしれない。

 今はダンジョン関連は諦めるか。保留せざるを得ない。

 中がダメだったし、今度は外を調べるか。

 ダンジョンを拠点にしたかったんだけどなー。できないものはしょうがない。いずれできるかもしれないし。


「将来的にできるかもしれない、っていう希望を持つことしかできない………本当に大丈夫かな」


 ちょっと不安になってきた。

 骨生成で出した物をダンジョンボックスに放り込む。

 外に出てみると、そこには大小様々な木々が広がる森だった。

 何本か、根本から葉の先まで真っ黒な木がある。初めて見る木だな。

 食糧は……探せばありそうだな。獣とかの心配はしないといけないけど。

 骨以外の武器が欲しい……。

 まぁ良いや。

 とりあえず、鑑定しながら歩いて食べられる物を探しつつ、水源とか使えそうなものでも探さないとなー。

 周辺を少しずつ探っていく。

 ダンジョンがある洞窟は山の下にあり、よっぽどの事がない限りは上から何かが降ってこない、と思う。

 戻ってこれなくなるのを避けるために、洞窟を背に左、前、右の大雑把な三方向を少しずつ調べることにした。

 まぁ山沿いに歩けるから、左右を多めに調べているけども。

 結果、右に大分行ったところに小川があり、左を少し行ったところに果実や野草が採れる場所があった。

 ただ、見たことが無いものは『木の実』とか『草』としか出ない。ダンジョン内のものは大体の名前が出てきたのに。いや、キノコはキノコって出ただけだな。思ったより考えなしに口に入れてたかも。気を付けよう。

 しかし、時間はかかるけど水は確保できたし、食糧に関してもこれで餓えは凌げるはず。骨生成でバケツとか作れるならもっと良かったんだけどねー。

 質量的にちょっと無理がある…。

 と、一人で考え事をしながら、木に実っている赤い果実を見つけた。

 大きさはこぶし大で、表面は赤くツルツルとしている。外見上の形はリンゴだが、触るとトマトみたいに少し弾力があり、水分が多いのか表面が雨にでも当てられたように光沢を放っている。

 変わった果実だな。とりあえず千切ってみる。


【呪いの効果で、赤果実Lv57が赤果実Lv1になりました】


 ……ん?

 今、聞き捨てならないのが聞こえたんだけど……。

 とりあえず、もう一個千切ってみる。


【呪いの効果で、赤果実Lv58が赤果実Lv1になりました】


 どういうことだ……?

 え、何?

 何で果物にレベルがあるの?

 というか、果物のレベル高くない!?この世界ではこれが普通なのか!?

 ………そういえば、スケルトンが落とした骨もLv1って出てたような……。

 ………………まさか、アイテムにもレベルってあるのか!?

 そして、呪いは僕が手にした物にまで影響が出る、と?

 そもそも果物のレベルって何だ。品質の問題か、味の問題か。

 レベルが高いと黄金色に輝くのか?低いと如何にも不味そうに見えるのか。

 ……分からん。食べ比べようにもLv1に下がっちゃったし。

 信頼できる相手を作ってから、色々と検証しないといけない気がしてきた。

 味が落ちるなら大問題なんだけどー。

 最高品質とか最高級って言われているやつが普通の味になる可能性がー!!

 Lv1になったからって、不味くなるまで味が落ちることはないと願いたい。

 とりあえず、赤い果実を『鑑定』してみる。


■赤果実

説明:赤い果物。食用。


 そのままかいっ!

 でも、食べれるのか。少しだけ囓ってみる。

 うん、囓った瞬間は少しだけ酸味がくるが、噛めば噛むほど甘味が口の中へと広がっていく。

 食感はリンゴの様にシャクシャクと音が鳴り、味はリンゴのような見た目とは違ってベリーっぽい甘さが目立つ。

 美味しい。砂糖とかで煮詰めたら良いジャムになりそうだ。中には実をふた周り小さくしたような大きな種子が入っていた。

 これ、どこかに種植えたら適当に生えてこないかな?

 とりあえず、洞窟の近くに埋めてみようかな。

 Lv1でもかなり美味しい。アイテムレベルが上がると旨みが増すなら、これ以上を皆は味わえるということか!

 アイテムレベルが味に関係しないことを願うしかない!

 赤い果実を囓りながら、さらに森の中を探索する。

 かなり変わっているけど、パッと見て兎とか猪みたいな生物もいた。普通の、とは言いがたいけど。

 居るなら居るで仕留める方法を考えないといけないなー。それと解体方法。あと、火を簡単におこす方法だな。

 そもそも果物がLv50もあったんだし、あの動物もそれ以上の可能性もある。………勝てるかな?

 それよりも、川沿いに下りれば村や町に着けるかもしれないしなー。

 ここを拠点として動くか、あるかどうか分からない村や町を探すか……うーん。

 ………あ、ダンジョンボックスに食糧を貯めれば良いのか。

 日持ちしそうなのを選んでいけばそれなりに数は揃うはずだ。

 そうと決まれば早速食糧集めに行こうー。




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