第3話 「ダンジョン の ボス」
今、大きな扉の前にいる。
あれからスケルトンやスカルドッグ以外にも、同じように骨でできた鳥のような魔物、スカルバードというのと何回か出会い、これも撃破。
まさか、剣で叩くより骨を投げて当てた方が早いとは思わなかった…。
あれどうやって飛んでたんだろうね?
スカルドッグの声といいスカルバードの飛行といいどうやってるのか気になってしょうがないな。
骨が動く時点でファンタジーで納得できるけど。
あ、スケルトンの骨は飛び道具として何回か活用しました。
意外と良い仕事してたなー。骨。
っていうかここは骨ばっかだな。関節丸出しだから攻撃が狙いやすくて楽だったけど。
スケルトンと同じように頭蓋骨を離した後にコアを壊せば倒せたし。
ゾンビ系じゃなくて本当に良かったと思う。
悪臭とか腐肉とかはこの洞窟っていう密閉空間の中では正直キツイしね。
あ、飲み水も無事見つかりました。
天井近くから水が垂れている場所があった。ここは山の洞窟の中なのかね? 山の土や木でろ過された地下水のようなキレイな水が流れ出ていた。匂いとか味も特に問題なかったし。
あと、食料の方も腹が膨れるほどじゃないけどキノコがあった。見た目はエリンギっぽいキノコで味はほとんどなかったけど、鑑定したら食用って出たのは本当に良かった。
さて、RPGだといかにもボス部屋って感じの扉。
扉の両脇に灯籠みたいな柱があって、その頂点にいかにもな黒っぽい紫の珠が乗っかっている。
ここの魔物が骨ばっかだったから、ボスも骨かな。骸骨ばっかで嫌になるわー。
ゲームみたいに都合よくボス部屋の前にセーブポイントなり、HPMPなどのステータス回復の水とかないですかね。
そんな都合の良いものはないか。
扉を押し開いて中に入る。
部屋全体が薄らと光っている。ヒカリゴケみたいなのもないのに。
よく見ると、部屋全体を薄っすらとした魔方陣のようなものが照らしている。
広さは学校の体育館ぐらいある。学校……懐かしい響きだ。
学校に通っていた……いや、卒業して大学まで進んでいる……はず。記憶がまだぼんやりしてるな。
でも今の年齢を見ると大学生まで生きていないってことになるんだけど…。
うーん、一度死んでるならどれぐらいの年齢で死んだのかぐらいは思い出したいな。
と言っても、偶然のきっかけ待ちかなー。
部屋の中央へ歩いて行くと、魔法陣が部屋の中心へと凝縮され、中心と思われる場所に山のように積み重なった真っ黒に染まった骨が出現した。
それがカタカタと鳴りだし、一つの形を作っていく。
予想していたよりも遥かに大規模に組み合あわされていく骨を見て、あまりの巨大さに呆然としてしまった。
おいおい、こいつはでかいな。
黒い骨が組み合わさってできたのは、肋骨の中に大きい石というか最早岩サイズのコアが光っている骨でできた巨人。
いや、骨自体が防具のようなものを構成して鎧や肩当、手甲など作り上げている。
そして、身長は8mほど。その右腕には4m程の大剣が握られている。
『鑑定』で見てみると、
■ブラック・スカル・レギオン
種 族:アンデット・???
年 齢:??歳
性 別:?
レベル:30
クラス:???
流石にボスは鑑定できる情報が少ないな。
こんなのが入るにはここは少し狭い。
というか今までの骨たちがLv1なのにボスがLv30ってゲームならクリアさせる気ないだろ。
「ォォオオオオオオォォ!!!」
天に向かって咆哮をあげ、こちらへと一直線に突っ込んでくる。
骨だけになって声帯なんてなさそうなのに、どっから音が出てるんだ?
考え事をしながら全力で横に避ける。そして、入り口の壁に爆音を響かせながら激突した。
壁にブラック・スカル・レギオンが突っ込んだため、壊れた壁の破片や瓦礫などが石つぶてのように飛んできた。
「うおっ!?」
顔の横をいくつもの破片が飛んでいく。正面に飛んできたものは剣で弾き、潜り避けていく。
危ねー!!周りを壊しながら突っ込んでくるとかゲームにあるけど、現実だと物凄く危ないな!
壊れた破片で間接攻撃とか想像以上に面倒臭い。
ゲームの勇者、英雄、ハンターはこんなのを相手にしてたかと思うと尊敬するね!
壁にめり込んでいるからか動きが止まっていたのを確認して足に剣をフルスイングで叩きつける。
パキィイン!!
は? え?
スケルトンとかならミシッとかバキッという音がしてたのに、まるで金属同士がぶつかった音がして剣が折れた!
この骨、どんだけ硬いの?スケルトン達とは比べものにならねー!
いやー流石ボス。って吞気に考えてる場合か。
「ァァアアア!憎イ!憎イ!憎イィ!!憎イィィイイ!!」
「喋ったー!!」
驚いてつい声出しちゃったよ!
え?骨が喋るんだよ?炎の番人といい、骨といいどうやって音出してるか本当に気になるわ。
ファンタジーってすごいよな。
そんなことに感動していたら黒骨巨人は壁から抜け出して大剣を薙ぎ払うように振るってきた。
それを大きく下がって避ける。
風を切る音、どころかその爆音ごと巻き込む風を撒き散らしながら大剣が前方を通っていく。
その辺に撒き散らされていた瓦礫や石片が大剣の通った風圧で巻き上げられる。
30cmもあるような瓦礫が風圧で浮かび上がり殺傷力のある飛び道具へと変わる。
「ぐっ!!」
その破片の数が多くて全て避けることはできず、腕や足にいくつか当たってしまった。
痛ってぇ。ただ攻撃を避けるだけでは足りず、その攻撃についてくる第二波も考えないといけないのか。
黒骨が金属以上の硬さがあるなら鉄柱を振り回されてると同じかそれ以上。
まともに食らったら死ぬかも。やっば、今頃冷や汗出てきた。
Lv1とLv30っていう差があるだけでも絶望的なのに、僕以上の体格、力、武器のリーチ。
まともにやりあえば地力の差で間違いなくすぐに殺される。
スケルトンたちとは違って死ぬ気で集中して、構えや足運びなどの技術を上げていかないとすぐに詰むな。
ただでさえレベルがLv1から上がらないのなら、尚のことそれ以外の部分で補うしかない。
「憎ィィイイイイ!!!!」
骨巨人の感情に任せたかのような頭上まで振り上げる一撃。
力任せな動きだ。圧倒的な力があれば黒骨巨人にとってはそれで十分事足りるんだろう。
振り上げからくる攻撃は薙ぎ払いか振り下ろし。一発でも貰えば死ぬ。
なら、攻撃を予測して全力で前に出る。そして、骨巨人の足元へと滑り込む。
その瞬間、僕のすぐ後ろで剣が通り過ぎる。
あっぶねぇ!!
効かないと分かっていても痛みとストレスを糧にして、足首に跳び蹴りを入れる。
「憎い憎いうっさいわぁああ!!!」
ガコォォオオン!!
「………………………………あれ?」
「ガァアアァアアアアアア!!!!!!!!!」
正直ダメージにならなくても良い。動きが少しでも止まればいっかなー!ぐらいの軽い気持ちだったのに。
足首の関節が外れ、ガラガラと崩れ落ち始めた。
金属並みの硬度を持つ骨が頭上に降り注ぐ。
いや、ボーっとしてる場合じゃない!!
この場に止まったままでいると間違いなく骨の下敷きになって死ぬわ!
急いでその場から離れると、フッと影が差した。
咄嗟に見上げると頭上に大きな骨が落ちてきていた。
大きさ的に少し小さい鉄骨ぐらいだろうか。
直撃すれば、重症では済まない。
「おぉおおおおお!!!」
なりふり構わず横っ飛びする。砂埃が舞い、視界を埋め尽くす。
ゴロゴロと転がりながら起き上がると、煙が晴れたそこにはブラック・スカル・レギオンが上半身だけになってもがいていた。
骨だし流石にしぶといな。あれでもまだ動けるのかよ。
今なら肋骨の中に入ればコアを殴れる。それで終わらせる!
「グゥ!オノレ、オノレ!オノレェェ!!!」
手に持った大剣をメチャクチャに振り回す。
手当たり次第に振り回すから、剣が地面に当たって土煙が広がる。それが、逆に良い隠れ蓑になりそうだ。
素早く終わらせるために攻撃がこない背中側へと回り込む。今なら向きもそうそう変えられないだろう。
あとちょっとで背骨から潜り込める、というところで頭蓋骨がグルッと後ろを向いた。
「…っ!」
怖っ!!
あーもう!ホラーめいたことばっかしないでほしい。心臓に悪いわ!
ちょっとびびって足が止まっちゃったよ。
と、その隙を狙って、残った上半身ごとこちらに倒れこんできた。
このままだと頭蓋骨に押し潰される。
無理矢理に横へと方向を変え、それでも避けるには足りない。
一か八かで体を捻りながら逸らすように殴りつけると、頭蓋骨が軽い地響きを立てて転がっていき壁に衝突する。
【レベルアップしました。Lv2になりました】
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【レベルアップしました。Lv17になりました】
【レベルアップしました。Lv18になりました】
【レベルアップしました。Lv19になりました】
【呪いの効果でLv1になりました。】
「………………………………………あ、コア壊さなきゃ」
目の前に転がっている核を蹴りつける。
岩のような大きさの核はそれだけで砕け散った。
「アアァアァァアアアアア!!!!」
頭蓋骨から断末魔が響き、真っ黒い炎が浮かび上がって燃えていく。
後に残った骨は黒い炎に色を持っていかれたかのように白色へと変化し、サラサラと色鮮やかな光の砂へと変わり消えていった。
【『怨恨のダンジョン』をクリアしました】
【『怨恨のダンジョン』をクリアしたことにより『怨恨のダンジョン』の所有者が『境浦 見貫』から『永遠 祝一』へと変更されました】
【所有者が『永遠 祝一』に変更されたため、呪いの効果により『怨恨のダンジョン』はLv30からLv1になりました】
【クラスが『ノービス』から『ダンジョンテイマー』にクラスチェンジしました】
ちゃんと倒せたのかな?と思ったのも束の間、強制的に意識が落とされてく。
あぁ、疑問だらけだな……。