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第2話 「呪われて いました」

 痛い。

 背中に感じるゴツゴツという感触がする。

 痛い、なんだこれは。匂いもなんというか湿っぽくてカビ臭いし。

 薄らと目を開けると、そこは薄ぼんやりと周りが見えるだけの暗闇と苔むした岩肌が目立つ洞窟だった。

 なんでこんな所にいるんだっけ。夢で誰かと会話してたような……。

 体を起こして考えてみる。

 ああ、そうだった。案内人っていう人(炎?)に死んだって言われたんだっけ。

 というか体も知識もそのままなら転生じゃなくて転移かな。まぁ死んだって言われてるから転生で間違いないんだろうけど。

 それにしても洞窟かー。

 いきなりどこかの町の中や森、海に放り出されても困るし良かったのかな?

 町の中だと身ぐるみ剥いでその辺に転がされたり、殺されたりするかもしれないし。

 森の中だったら、獣とかに襲われて食いつくされて骨になってるとかありえたかもしれないし。

 ファンタジーなら食肉植物とかに捕らわれていて栄養にされそうになっているとかありえそうだ。

 海のど真ん中だったら鮫とかシャチに喰われるどころか、意識が覚める前に海に沈んでいたかもしれない。

 森の中でも意識がないときに獣にでも襲われたら堪らないから丁度良いのかな?

 うん。自分で想像しておいてなんだけど、結構酷い状況ばっか浮かぶな。

 それに比べれば洞窟の中で何事もなく目覚めることができるのは良かったね。本当に。

 考え事をしていたら、段々と暗闇に目が慣れてきた。

 今居る場所が洞窟の行き止まりだな。後ろは壁しかないし。進むしか選択肢がない。

 一応、曲がり角から明かりみたいなのが見えるから進んだほうが良さそうだ。

 そういえば、ゲームみたいな世界って言ってたな。ステータスがどうのとか、レベルがどうとか。

 『鑑定』したら良いんだっけ?

 どうやる……


■名前:永遠とわ 祝一しゅういち

種 族:人間

年 齢:16歳

性 別:♂

レベル:Lv1

クラス:ノービス

状 態:ふつう


●ステータス:--ィ

H P:72

M P:8

STG:8

VIT:7

INT:5

MEN:11

AGI:6

DEX:6

LUC:8


●スキル:『鑑定Lv1』『異世界言語翻訳』


 ……んだろう。って弱っ!!

 思い浮かべたら頭の中に出てきたけど、それよりもステータスの低さに驚いたよ!!

 RPGみたいに999が最高値だとするとこれは酷い……。いや、9999が最高の可能性もあるのか。

 それと『異世界言語理解』ってどっちの意味だ?

 こっちの世界に送られたことで、こっちの言語からすると元居た世界の言語を異世界とするのか、元いた世界からしてこっちの世界が異世界だからそう出ているのか。

 これは結構重要なことではなかろうか。村か町にでも行って確認しないとなー。

 さて、これからなんだけど………考えてもしょうがない。

 このままここに居ても、水とか食料がないから行動するしかないな。

 それに探検とかってゲームみたいで好きだったりする。実際には子供の頃しかやったことないけど。

 思い出せる範囲だと、学生のときに近道とか細い道を通ったりして、近所の脳内マップを増やしたっけ。

 木の棒とかでも良いから武器とかないかな。ないなー。そこら辺に小さい石があるぐらいか。これしかないのかー。

 武器なし…か。仕方ないなー。

 よし、これ以上は考えても仕方ないし、出たとこ勝負で行こう!

 次に、って送っておいてすぐに死ぬような状況なら案内人なんて必要ないしなー。

 奧にある曲がり角から薄らと光が漏れてるし。


「おおっ!!」


 角を曲がると辺り一面に生えている苔が光って辺りを照らしていた。

 これはヒカリゴケというやつか。でもあれって僅かな光を反射しているのであって照明に使えるような物じゃなかったはず。

 ここにあるのは電球並みに明るい。これなら洞窟内でも大丈夫だ。さすがファンタジー。

 ちょっと楽しくなってきたかも。

 少し歩いていると、ヒカリゴケもどきが最初の方より減ってきているなーと思っていたら、カシャン……カシャンと乾いた音が響いてきた。

 軽い物を擦ったり打ち鳴らしたりする音、とでも表現したら良いのかな。足を止めて耳を澄ますと音が近く、大きくなってくる。

 ぬうっと闇から現れ、ぼんやりとした光に浮かび上がる対照的な白い頭蓋骨。

 カタカタと骨を鳴らしながら手に握られた剣で襲いかかってきた!


 怖っ!!


 突然の出来事になりふり構わず全力で逃げた。

 ひぃいいい!!!

 何あれ!?何あれ!!?

 怖いよっ!!

 いきなりだったから走って逃げたけど、このまま戻っても行き止まり。後ろには問答無用で襲いかかってくるスケルトン。

 ホラーハウスも裸足で逃げ出す怖さだな!ご丁寧にヒカリゴケが足下から照らしているから怖さ五割増しだよっ!!

 くっそー!こっちは武器一つないってのに!!

 どうすりゃいいんだよ。

 ……やるしかないか。

 ここに来るまでに唯一あった角を曲がり、すぐにUターン。そして、曲がってきたスケルトン目掛けて跳び蹴りを放つ。

 これは綺麗に入ったな!

 頭蓋骨がサッカーボールよろしく綺麗に飛んでいったし。心なしかぽーんという効果音が聞こえそうだ。


【レベルアップしました。Lv2になりました】


 おっ!レベルが上が……


【呪いの効果でLv1になりました。】


 ……ったー……は?

 呪い?さっき鑑定で見たときには無かったはず……

 と思ったらステータスの横が徐々に浮かび上がってきた。


状 態:ふつう

●ステータス:--ィ


 という表記だったのに、


状 態:『永級』の呪い(Lv1)

●ステータス:【呪い:Lv1(永久)】


 と、変化した。

 ってこれか!

 永久って、今のを思うにずっとLv1なんじゃあ……いやいや、ずっとだなんて…。まさか、そんな……ねぇ?

 ゲームとかだと呪いを消すアイテムがあったり、教会とか聖職者系の職業による浄化とかのシステムがあるはず。

 ……大丈夫だよね?

 と、考え事をしていたら、ガシッと足を掴まれた。

 ゆっくりと顔を動かして見るとさっき蹴り飛ばしたスケルトンが僕の足首を掴んでいた。


「ぎゃぁああああ!!!!!」


 ええぇぇえ!?倒したんじゃなかったの!!?

 レベルアップって出たなら倒したはずだよね!?

 ええいっ!もう一度葬ってくれる!!


「唸れ僕の右足!!」


 スケルトンの頭部を蹴り上げ、洞窟内の至る箇所へとぶつかりながら暗闇の奧へと消えていった。


【レベルアップしました。Lv2になりました】

【呪いの効果でLv1になりました。】


 うん。呪いは夢じゃなかった。今は置いておこう。

 スケルトンの方はさすがにこれで大丈夫のはず。

 とりあえず、スケルトンの持っていた剣があったはず。武器があれば少しはマシになる。……なるよね?

 

〔■鉄の剣:Lv1〕


 おおっ!これだこれ!

 そうだ、鑑定!!

 鑑定でスケルトンを見れば良いじゃないか!!


■スケルトン

種 族:アンデット

年 齢:3歳

性 別:♂

レベル:Lv1

クラス:スケルトン


 って、このスケルトン、年齢と性別があるのか!……いや、そこはどうでもいいわ。

 問題はそこじゃない。鑑定で見てる間も徐々に0だったHPが回復していってる!なんで!?

 そして、どこからかカラコロと乾いた音が大きくなってくる。

 主に蹴り飛ばした方から。

 嫌な予感がする。


「まさか…」


 その予感を体現するかのように頭蓋骨が転がってきた。

 しかも、心なしか足元の骨も動いてる気がする。いや、もはや気のせいじゃない。

 HPが満タンになると共にカチン、と骨がハマる音が鳴る。


「チョイヤー!」


 再び蹴り飛ばす。


【レベルアップしました。Lv2になりました】

【呪いの効果でLv1になりました。】


 蹴り飛ばす。


【レベルアップしました。Lv2になりました】

【呪いの効果でLv1になりました。】


 蹴り飛ば(以下略


【レベルアップし(以下略

【呪いの効果で(以下略……


「……はぁ…はぁ……はぁ……」


 あれから蹴る→復活→蹴る→……というループを数え切れないほど繰り返し、ようやく倒すことに成功した。

 途中からアナウンスが鳴りっぱなしでうるさかったけど。

 骨を相手に刃物は相性が悪かったから、最終的に剣で叩くという方法で解決した。

 料理とかだと、包丁を使う場合、切るのは刃の方が良いけど、砕いたり潰したりするなら背や側面を使っていうのを見たことがある。

 僕は包丁をそうやって使ったことはほとんどないけど。


「これ、剣の意味がなかったな…」


 粉々に砕けた骨と別に胸骨に隠れていた小さい石があり、それを砕いたら復活しなくなった。

 この石がスケルトンの核のような物だったらしい。


〔■スケルトンのコア:Lv1〕

〔■骨:Lv1〕


 で、砕いた骨がサラサラと消えた後にアイテムが残った。


 骨って……。

 人の骨なんて使えるのかね?

 犬とか狼にあげるとか?

 まぁいいや。人生何があるか分からないから持っていこう。

 コアはビー玉サイズの八面体。綺麗な黒紫色のクリスタルだ。

 これも持っていこう。こういう戦利品はあった方が便利だよね、ゲームでは。

 しっかし、はぁ……レベル上がらないとかキツいわー。

 いや、落ち込んでてもしょうがないか。解呪できる方法を後で探せば良いんだしね。

 とりあえず先に進もう。さっきから結構時間が経っている気がするけど、目覚めた場所から少し進んだ所でスケルトンと戦ってただけだしな。

 大して進んでないし、水や食料を探さないと餓死してしまう。






 通路を歩いていると小部屋に出た。部屋の広さは10mの立方体。


「……グルルルッ」


 なんか犬っぽい唸り声が……。

 今度はスケルトンとは別に犬型の骨がいる。しかも2体。

 おかしいな。骨なのにどこから声を出してるんだろう。………すごい気になる。

 2体同時に来られたら面倒だな。

 よし、さっき拾ったスケルトンの骨を投げて、気を引きつつ飛び道具として使ってみよう。

 駄目元で。


「とうっ!」


 すると、なんということでしょう。

 こちらに向かってきていた骨犬がUターンしていくではありませんか。

 ……頭空っぽだな。あ、骨だからか。

 おっと、鑑定を忘れてた。

 えっと……


■スカルドッグ

種 族:アンデット

年 齢:1歳

性 別:♂

レベル:Lv1

クラス:スケルトン・ドッグ


■スカルドッグ

種 族:アンデット

年 齢:7歳

性 別:♀

レベル:Lv1

クラス:スケルトン・ドッグ


 スカルドッグ……まんま犬だ。

 しっかし、骨が骨を追っかけるってどうなの?共食いじゃなかろうか。それとも、犬としての狩猟本能が上回ってるのかな。

 ということは、骨の中でも食物連鎖があるっていうことかな?

 まぁいいか。倒し方はスケルトンと変わらないだろうし。

 投げた骨とじゃれている後ろから二匹の頭を蹴り飛ばす。


【レベルアップしました。Lv2になりました】

【レベルアップしました。Lv3になりました】

【呪いの効果でLv1になりました。】


 おぉ!

 二匹同時に倒したからか、一気に2レベル上がったな! 呪いでLv1に戻されたから意味ないけど。

 っと、忘れる前に核を壊さないと。

 剣の腹を叩きつける。


〔■スカルドッグのコア:Lv1〕

〔■骨:Lv1〕×2


 はぁ、なんか気が抜けたな。スケルトンもスカルドッグも怖い顔の割にはすぐ片がつくし。

 骨は今のところ全て落とすけど、コアは必ず取れるわけじゃないのか。

 まだ2回目の戦闘だし、アイテムのドロップとかはあんまり考えないでおこう。

 これでまだ2回か…体感的にはもっと戦ってる感じがする。………復活してるしな。

 さて、この部屋に入ってきた入り口から中を見た場合、真正面に進む道と右に進む道がある。

 んー、とりあえず左右どっちかの壁沿いに歩けば、いつかは奥なり出口なり見つかるはず。

 あとはどっちに行くかだけど…左伝いに直進の道を行こうかな。

 武器を振るなら利き手を防がないほうにしないとねー。




 

こんなテンションで進めていけたら良いんですけど…。

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