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CAFE MELTING

作者: 壊拿

現代の世界で、ある高名な科学者が「異空間の研究」についての発表を行い、大成功をおさめた。その科学者曰く、「異空間は必ず存在するが、願って行けるような場所では無い。何故ならその異空間とは『楽園』であるからだ」、と言う事らしい。

異空間の世界は、一つの大きな大陸を島や大陸が覆っている形となっている。中央に存在する大陸をそのまま「中央大陸」と名付けるならば、その周囲には4つの大陸や諸島が存在しているのである。それぞれが季節をそのまま切り取ったような気候を有し、それぞれに魅力ある世界が広がっている。


中央大陸の東に位置する「春」の大陸、ここではあらゆる生物が暖かな気候の中で過ごしているためか、この島に住む住人達は楽天家やのんびりな人達が多い。植物の成長が異様に早く、花を咲かせていたり生命活動が活発だったりしている。犯罪発生率が0%。そもそも住人達が疑う事を知らない人たちである。

中央大陸の西に位置する「秋」の大陸、ここは「春」に比べると気候は少し冷える程度ではあるが、それなりに過ごしやすい。紅葉が綺麗で、この大陸では植物が枯れて色づくのが異様に早い。住んでいる住人達は冷静で、老夫婦が多いことが特徴としてあげられる。ただ、時間の流れが穏やかに感じる人は多いようだ。

そして、中央の両極――南北に位置するのは「夏」の諸島、「冬」の島である。

「夏」の諸島は年中30度を記録し、情熱的な人たちが多く住んでいる。祭りや喧嘩、情熱的な恋を楽しむ人たちが多く、バカンスには最適な諸島。浮気発生率が驚愕の95%。起こりすぎて裁判沙汰になる事が多いが、結局は喧嘩両成敗の様な判決が下る事が多い。この諸島へ赴く時は、男女問わずナンパにご注意あれ。

最後に、この物語の舞台となる「冬」の島。

この島では年中雪や雨が降り注ぎ、太陽を見る日が殆ど無いという、他の島とは異なる気候を有する大きな島である。雪山に囲まれ、人々は山中や山脈の谷で生活する事が多い。大方が雪に閉ざされている世界ではあるが、若い人が住んでいる割合はこの島が最も多い。住人達は編み物や裁縫といった趣味に没頭したり、観光資源である温泉に浸かってのんびり身体を温める人たちも多い。



この「冬」の島にある3つの山脈、その内最も短いとされている山脈。その、最も低い山とされる「シェズ山」の谷底。小さな集落が雪に埋もれている中で、その「カフェ」の存在は控えめながらも光を放っていた。

暖炉の灯は店内を照らしており、年中寒いこの島でも部屋はとても暖かい。店自体を集落全員で手伝いながら作ったためか、とても素朴で、木材特有の温もりが印象深い。店内には小さな雑貨から日常的に使うマフラーや手袋等の毛糸で作成されたものが並んでいる。気に入った物があれば試着や買取が可能で、店長に言えば快く了解してくれる。模様も様々で、素朴な店内の華やかさを演出するのに一役買っている。

この店の店員は、店長含めて二人。

店長は黒い髪を短く切った、赤い瞳が特徴的な女性。物静かで、特に女性には人気がある。常連では無くても、静かながらも温かい気遣いに感激してまた来るといった客は多い。どんな人でも打ち解けてしまう、とても優しい店長である。

もう一人は、左側を短く刈り上げているという特徴的な髪形を持ち、腰に仮面をぶら下げている。犬の獣人で、人間の耳の辺りに犬の耳が存在し、臀部にはきちんと尻尾が存在している。良く触られるが、耳と尻尾は獣人にとって性感帯の為、触ると真っ赤になって距離を取る事が多い。自分を拾ってくれた店長にはとても感謝していて、仕事も直ぐに覚えたという。


「姉さん、ベリー地方の良い苺が送られてきたぜ。…あ、これ先週の御客じゃないか?」

「ん?ああ、ベリー地方の苺は絶品だからな…。本当だ、先日来てくれたお客様だな。『犬さんの淹れてくれたカプチーノが美味しかったです!』…だって」

「本当か?じゃあ、もっと美味しいカプチーノを淹れるように頑張らないとな」

「仕込みは昨日終えてあるし…うん、そろそろ開店するか。ラヴィン、暖炉は点けたか?」

「一時間前に付けたよ、姉さん」


2人は揃って、水色のワイシャツにお洒落な水色の帽子を被って、それぞれにエプロンを付けている。これを制服にしているのは、開店以降変わっていない。

そしてそこへ、現れた本日最初の客。扉に「OPEN!」と記された札を掲げて、店長――レギスが微笑んだ。


「いらっしゃいませ、ようこそ。『CAFE MELTING』、ただいま開店しました。どうぞ、お好きな席へお座り下さい。店内、温まっておりますよ」




(おわり)

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