あの時、僕は。
10分クオリティです。
三年前のある日。家に黒服の男が来て、言った。
「姫を渡してもらおう」
何のことだかわからなかった。
僕は今まで普通に生まれて、普通に生きて、普通に暮らしていくはずだった。
姫なんて仰々しい呼び方の人、うちの家族にはいない。
「どうした。さっさとつれて来い」
何のことだか分からないと言った。
殴られて、床に這い蹲った。
「嘘をつくな! ここに姫がいると知っているのだ! だせ!」
本当に何も知らなかった。
ただ、とても怖かった。
知らない内に、涙が滲んでいた。
「お兄ちゃん?」
二階から妹の声が聞こえた。
ああ、来ちゃダメだ。
今は来たらダメだ。
そう思っているのに、声が出なかった。
「お兄ちゃん! 大丈夫?!」
僕を見つけた妹が駆け寄ってくる。
「姫! 探しましたぞ!」
黒服の男が叫んだ。
妹は、姫なんて名前じゃない。
「黙れ! 下等な人間風情が!」
また殴られた。
頬が痛む。
口の中が鉄臭い。
今にも泣き出しそうだった。
「やだ! お兄ちゃん、助けて!」
妹が僕を呼んだ。
助けなくちゃ。
足に力を入れて、立った。
叫んで、男に殴りかかった。
殴り返されて、思い切り吹っ飛んだ。
それでも、縋り付いて男を止めようとした。
何度も殴られた。
意識が朦朧とする。
妹の泣き顔が、妙にはっきりと見えた。
「コイツ! 離せ!」
思い切り蹴られて、階段に頭を打ち付けた。
ぬるりとした感触がした。
触ってみると、掌が真っ赤に染まっていた。
僕の意識はそこで途切れた。
妹は、今も見つかっていない。
なんてわけわからん文章だ……。