私は豆腐である
私は豆腐である。
それも人が想像するよりも大きな豆腐だ。
高さは2m、横幅は60cm、奥行きは50cm、縦長の冷蔵庫くらいだと思って頂けたら想像をしやすいかも知れない。
その冷蔵庫に楕円形の白いバランスボールがまるで手足のように付いているのが私だ。
私は自らの意思で考えて行動する。
今日は階段を上がろう、足の短い私は短い手をクッションにしながら、壁の角に沿ってゆっくり横になった。
何故そんな事をするのかと思う方もいるかも知れないが、簡単な話、型が崩れないようにする為である。
そしてこの状態になるのが第一段階で次は倒れた状態で這うように登っていく。
短い手足でうねうねとゆっくり上がっていく姿は端からみれば滑稽であるが、身体が欠けないように登っている私は必死だ。
何故なら私は豆腐である。
登りきった先、そこには大きな広間があるが私には次の試練がある。
それは立ち上がるという事だ。
先程と同様に手を使えば良いと他人事のように言われるが、私の短い手は倒れた状態では届かないのだ。
だから今度は階段を使う。
先程の方法で立ち上がりたい場所より少し上へ登る、この時足が立ち上がりたい場所へ着くようになるのがポイントだ。
そして意を決して手に力を込める、反動で立ち上がるこの方法は一発勝負、押す力が弱く戻っても、逆に強くて倒れても崩れてしまう、その為、細心の注意を払う緊張の瞬間である。
だがこの時は押す力が強かった、頭よりも先に身体が違和感を感じ取ったのだ。
綺麗に立ち上がるにはどうしたら良いのかと一瞬にして思考を巡らせるが、どの方法も衝撃を吸収出来そうに無い。
そして最後に頼ったのは自分の力、倒れたくないという意志だった。
この意志の強さで私は踏ん張り、転倒を免れた…というより私の身体は凄く軽かったのだ。
それはそうだ私は豆腐である。
そんな困難を乗り越えて気分良く辿り着いた広間の床に何か光る物が落ちていた。
私は屈んでそれを取ろうとした瞬間、身体が真っ二つに割れてしまったのだ。
「あっ」
この時ばかりは私が一番驚いた。
あと言い忘れていたが私は木綿である。
(了)




