表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気付いたらラスボスになっておりましたので、ストーリーを壊します  作者: かませ犬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/3

0.ラスボスと主人公

 この世界がゲームの世界、それもR18指定のつくアダルティなゲームの世界だと知人から明かされた場合、皆さまならどのような反応をいたしますか?


 一般的な感性をお持ちのお方なら何を言っているんだこの人はと間に受けずに話を流すか、知人の心配をするでしょう。


 ゲームやアニメの見識の深い人であれば、もしかすると知人の言葉を信じるかも知れません。そういうのもあるよね、と。


 私は前者でした。私宛に書かれた手紙にそのような旨の内容が書かれていましたが、最初読んだ時は何を言ってるんだと頭の方を心配しましたね。


 ですが、今は違います。手紙を読み進めていく事で……本来なら知人である彼女には知りえない情報が多く記されていました。私ですら記憶が曖昧になって幼い私の情報まで。


 私が信じないだろうと最初から想定していと知人が、これを見たら納得するだろうとあらかじめ準備していた証拠なのでしょうね。流石の私も知人の話を信じざるを得ませんでしたね。


 ですが、この世界がゲームの世界であると明かされると不思議と納得する自分がいました。


 信じられますか?


 今から200年ほど前に世界各地の都市部の地中から、天高く聳え立つ巨大な塔が生えてきたと。


 ゲームやアニメといった創作の世界にしか存在しなかったダンジョンや、魔物と呼ばれる未知の生物がこの世に姿を表すなど当時の人間は考えもしなかったでしょう。


 信じられますか?


 今から1週間前であれば、世界の男女比は50対50のほぼ同数でした。それがある日を境に1対20と男性が極端に少なくなりました。


 1週間前までは痴漢によって被害に合うのは女性で、逮捕されるのは男性だった。それが気付けば男性が痴漢される側に回り、国によって手厚く保護されています。


 1週間前までは当たり前だった常識が今の世界では通用しない。そんな異常事態に誰一人違和感を感じず、それが当たり前のように生活している。


 1週間前までは男性だった人物が女性へと性転換しても、初めから女性として生まれてきたみたいな顔で会話をしてくるのですよ?頭が可笑しくなりませんか?


 私だけが異常に満ちた世界で正常として生きている。いや、私だけが世界の変革に取り残されたのだとすれば、異常なのは私であり世界にとって異物なのもまた私。


 変わり果てた世界に疑問を抱きながら生きてきた私にとって、知人が明かした世界の秘密は種明かしのようなものでした。


 ゲームの世界だと思うと、突如として世界中に出現したダンジョンの存在もある日を境に性別や男女比が変わった事態も納得がいく。


 ゲームを最初からスタートとした際の日時と、世界が変わった日時が一致していたのもまた大きいでしょうね。


 ───この世界はゲームの世界です。


 私にこの事実を突きつけた知人は、生前このゲームをこよなく愛し、何百周とプレイしたとか。


 不慮の事故で亡くなり、ゲームの攻略キャラクターに憑依……いえ、成り代わった知人は生前では果たせなかった推しとの交流を求めていました。


 ですが、ゲームと違う行動を取る私に違和感を感じ、自分と同じ境遇ではないかと手紙を書いたそうです。


 察しの良い人なら既に分かっているかも知れませんね。知人のいう推しとは、私の事であり……私もまたゲームに登場するキャラクターだったのです。


 それも、ラスボス。


 残念ながら私は知人とは境遇が違うので、ゲームの事などさっぱりでしたが、知人のお陰で私は自身の未来を知る事が出来ました。


 ゲームのようにストーリーが進めば、その先に待っているのは世界の敵となって主人公に殺されるという未来。


 私はそのような未来はごめんです。知人もまた、推しの最期を認められないらしく私に協力してくれるそうですよ。


 さて、何故私が今このような話をしているか?


 その理由は実に単純。


 私が今から主人公と初会遇するからですね。知人曰く、ゲームにおけるラスボスとの出会いイベントです。


 日常操作のチュートリアルや様々なヒロインとの出会いイベントを挟んだ後、このゲームの売りともなっているダンジョン探索へと向かった主人公がチンピラに絡まれているところを、ラスボスである私に助けてもらうというイベントです。


 この時点ですと、ラスボスのお披露目と主人公との顔合わせの意味が強いですね。間違ってもこのイベントで殺し合いをする事はありませんが、私からすればゲームの死因との出会いな訳です。複雑ですね。


 ラスボスとして自身の死因を把握したなら、あらかじめ主人公を排除するべきでは?と思う方もいるかも知れません。


 ですが、話はそう簡単なものではないんですよね。私はラスボスという立ち位置にいるキャラクターなのですが、ゲームの終盤までは主人公の味方キャラとして描かれています。


 そういう立ち位置とかではなく、ある程度話を進めるとガッツリめに仲間に加わります。普通に主人公と一緒に共闘します。仲間キャラ扱いですね。


 というのも、主人公の敵として終始扱われているのは私ではなく、世界最大の宗教組織『アビス教』なのです。それは私にとっても打倒すべき敵。


 つまり共通の敵を持つ関係という訳ですね。強大な敵であるアビス教を打倒する為に主人公はラスボスを利用し、私もまた主人公の力を利用する。そんな打算だらけの関係。


 かと思いきや。私は他のヒロイン同様に攻略する事が可能であり、その時の好感度によって終盤の敵対イベントに変化があります。


 イベントを全て発生させ、ラスボスの好感度がMAXの状態で終盤のイベントを迎えると、主人公とラスボスの二人は共に葛藤しながら、殺し合いを行う。


 ゲーム的にはラスボスである私を主人公が倒してエンディングとなるのですが、その時の会話が最高にエモくて素敵なんだ、と知人はやたら興奮しておりました。


 彼女も生前は男性だった筈なんですけどね。なんでエロゲーの世界で男性を攻略して、男同士の絡みを見て楽しんでいるのでしょうか? 深く触れると私が引きずり込まれそうなので、一旦忘れるとしましょう。


 ちなみに私の性別は男性であり、ゲームにおいても性別は変わりません。ですが、他のヒロイン同様にエッチなイベントもあります。はい。この世界がアダルティなゲームだと忘れていましたね。


 一応、全年齢対応版も出ているそうなのですが、この世界の設定がR18の方か全年齢版なのか知人も分からないそうです。どうでもいいですね、はい。


 私にとって重要なのはこの世界がゲームの世界である事。そしてこの先に起きる未来の出来事(イベント)


 ゲームのような最期を迎えたくありませんので、未来を知った特権として私はゲームのストーリーを壊そうと思います。


 ゲームの設定と違う私という存在、そして攻略キャラクターに憑依した知人という二つの異物が混ざり込んでいるので既に原作からはズレてはいるでしょうがね。


 その確信を今、目の前で起きているイベントから得る事が出来ました。知人から聞いた話では主人公に絡んでいるのはチンピラの二人。


 ですが、私の視線の先で主人公に絡んでいるのはチンピラではなく高名な冒険者パーティー。記憶が確かなら彼女たちはAランクの冒険者パーティー『クレイジーモンキー』の皆さま。


 話が違うと思わず心中でこぼしてしまいました。とはいえ、主人公を見捨てるような真似はしません。私の悲願達成には主人公の存在が必要不可欠なようですから。


「おや、どうしましたか?」


 声をかけると主人公と、彼に絡んでいた冒険者パーティーの皆さまがいっせいに振り返ります。


 ───美少年ですね。


 主人公を一目見て、場違いな感想が浮かんでしまいましたね。というのも、知人から話に聞いていましたが実際に会うのは初めてでしたし、顔も知らなかったので。それに変なところで知識もありましたから。


 エロゲーの主人公と言われると、プレイヤーが没入感に浸れるように、あえて顔を描かれないものが多いです。


 普通のゲームであれば主人公キャラは美形であっても問題ありませんが、エロゲーの場合ですと多くのプレイヤーは自分がゲームの主人公になったと、そういうイメージで遊びます。


 そうするとエロゲーの醍醐味である、性行為に没入できますからね。これは私の持論でしかありませんが、エロを感じるのは女性個人に対してよりも、シチュエーションの方が大きいと思っています。


 女性が可愛かったり綺麗である事に越した事はありませんが、それよりも行為を行うに至るシチュエーションに男は興奮を覚えるものです。


  高校で同級生と、ビーチで水着のヒロインと、あるいは異世界でエルフと……なんて現実では出来ないシチュエーションに夢を見ます。


 とあるアダルトサイトでは純愛物よりNTRや浮気ものの作品の方が人気でしたからね。これもまたシチュエーションで抜いていると言えるでしょう。男の性欲とはそういうものだと私は思っておりますよ。


 話を戻しますね。主人公のキャラクターを変に不細工であったり美形にすると、主人公に自分を重ね合わせる事が出来ないのでエロゲーの醍醐味である性行為で抜けない方もいます。


 なので、ゲームの主人公である彼が美少年であった事に衝撃を覚えましたね。私からすればこの世界はゲームではなく、現実ではあるので主人公の容姿は美形の方がいいですね。隣に立たれても恥ずかしくないので。


 それはさておき、主人公と冒険者パーティーのやり取りに割って入るように声をかけると、分かりやすく身構えます。


「おっと、そんなに身構えなくても大丈夫ですよ。私は正義の味方という訳ではないですし、第三者としての立ち位置で話を聞きにきただけですので」


 声をかけた理由を述べたつもりですが、主人公に絡んでいた冒険者パーティーからは、より強い警戒を感じます。絡まれている方の主人公は呆気にとられている様子。


 それはそうでしょうね。


 この世界の男女比は1対20。男性を保護する方針を決めた政府によって、国からお金が支給されるのでわざわざ冒険者にならなくとも男性は生活出来ます。危険が伴う冒険者になるのは女性だけですね。


 現在地はダンジョンの前広場というのもあって、冒険者の皆さまで溢れかえっております。価値観が逆転したこの世界では、男性が絡まれているのであれば女性が助けに入る確率が高い。


 主人公もまた、女性が助けにくると考えていたのでしょうね。だから、男性である私が助けに来て驚いた。そんなところでしょう。


「だから、私に話してくれませんか。ね?皆さん?」


 念を押すように笑顔で言葉を告げると、主人公の胸ぐらを掴んでいた女性が手を離して、嫌悪感丸出しの表情でこちらを睨んできます。


「わたしたちの邪魔をする気か、クソオス野郎」


 舌打ちと共に飛んできた言葉に、少しだけ驚きました。


 世界の価値観が変わる前であれば、女性がこのような視線を向けるのは珍しくはなかった。ですが、男性の存在が希少となった今の世界で男性に対して嫌悪感むき出しというのは珍しいですね。


「結果的には邪魔をした形にはなりますね。ですが、私は話を聞きたかっただけですよ。皆さんの事情を知りませんので、まずは何があったかを聞いて、可能ならばこの場を治めたかっただけです」

「あ?クソオス野郎風情がっ───」


 額に青筋を浮かべて、怒りのままに突っかかってきそうだった女性をお仲間の女性たちが取り押さえます。口も塞いで地面に抑え込む形で制圧された女性はジタバタともがいていますね。


 そんな女性を尻目に私の元へ近寄ってくる女性が一人。おそらくこのパーティーのリーダー的立ち位置の女性でしょう。


「私達の仲間がすまない」


 開口一番のセリフが謝罪で、その後直ぐに頭を下げた事に主人公と押さえつけられている女性が驚いておいでです。


「彼とうちの猿野がぶつかってしまってね。見ての通り、男嫌いなんだ。それで少し揉めてしまった」

「なるほど……彼女にも事情があるという事ですね」

「あぁ。私が上手く止める事が出来れば良かったんだが……」


 首をフルフルと横に振ります。後悔しているような言動ですが、私が見てた限りではそのような素振りは見せていませんでした。


 むしろ、好きなようにしろといった感じで、放置していた。


 騒ぎが大きくなって注目が集まった事。そして私が仲介に入った事でようやく事の大きさに気付いた。そんなところですね。


 お仲間ほど男性を嫌っている訳ではないですが、男性を下には見ている。私を見る視線からもそれは伝わります。少しだけ不快だったので意地悪をする事にしました。


 リーダーである彼女に近寄り、驚いている女性の耳元で囁きます。


「47階層で、私の仲間がお待ちしております。ご贔屓にお願いしますね。猿渡さん」


 私自身ど忘れしていたのもありますが、声を聞いてようやく思い出しました。パーティーのリーダーである彼女の名は猿渡(さるわたり)さんでしたね。


 私は顔を隠して応対していたので気づいていない様子ですが、彼女は一度私のお客としてお店に来店しておいでです。そして後暗い事に手を染めておいでで。


「えっ……」


 目を見開いて驚く猿渡さんに笑顔を見せてから、元の位置に戻ります。よくよく観察すると、体が震えていますね。良かった、どうやらバカではなかったようだ。


 しっかりと私が言った言葉の意味を理解できている。先ほど私が伝えた言葉は、一定のランクに達した冒険者なら出来る隠語です。


「君は、商会の人間……?」

「なにか?」

「いや、なんでもない!」


 もう一度笑顔を見せるとと態度が一変しました。ヘコヘコと私の機嫌を伺うように頭を下げなら、分かりやすくごまをする有様。見ていて気持ちいいものではありません。


 それに謝る相手は私ではないでしょう? 私が主人公に視線を向けると私の言いたい事を理解したのか、慌てて主人公に近寄って頭を下げます。


「仲間に代わってリーダーである私が謝るよ。怖い思いをさせたね。申し訳ない」

「あ……いぇ」


 急に態度が変わって謝られたらびっくりしますよね。戸惑っている主人公を気にする事もなく、チラチラと私の方を見ながら謝罪の言葉だけを述べています。気持ちはまるで籠っていません。言わされている立場ですしね。


「彼が許すのであれば、私は構いませんよ」

「…………」


 猿渡さんからの視線が主人公へと向けられます。ですが、それは許しを乞うためのものではありません。目線が訴えていますね。『許すと言え』と。


 あまりに強い視線に主人公が唇を噛み締めたのが見えました。お辛いですよね。彼の気持ちもよく分かりますよ。


 許さないと、猿渡さんに言うことも可能ですが、後で何をされるかが分かりません。逆ギレして襲ってくる可能性もある。


 この場は穏便に済んでも、根に持った彼女たちが人気のない場所でやり返しにくるかも知れない。不安要素は上げだしたらキリがありません。


 主人公が強ければ、どうとでもなるでしょうが……今はまだゲームの原作が始まった直後。まだ駆け出しですらない冒険者見習いです。


 ひっくり返っても勝てる相手ではない。何しろ相手は原作と違って高ランクのパーティーですからね。主人公が折れるしかありません。


「許します。こちらこそぶつかってすみませんでした」

「そうか、許してくれてありがとう!それと私の仲間がすまなかった!」


 主人公と猿渡さんがお互いに謝り、頭を下げています。


 大人ですね。もちろん主人公がですよ。猿渡さんの方は隠しているつもりでしょうが、苛立ちが態度に出てますからね。私にこんな事をさせるなと言いたいくらいでしょう。


「無事に治まったようですね」

「はい!いやぁ……商会の方の手を煩わせて申し訳ありません。以後はないようにします!それでは!」


 空気を読まずに、安堵したと大袈裟に伝えると猿渡さんがこちら側に振り返ります。処世術がそれなりに上手いのか不満は顔に出ていませんね。その後、深々と頭を下げて謝罪をすると、猿渡さんはパーティーの皆さんを引き連れてこの場を離れていかれました。


 残されたのは私と、去っていく猿渡さんを睨みつける主人公の二人。その苛立ちは覚えておきなさい。それが貴方の強くなる原動力になります。


 男性であるにも関わらず、冒険者になる事を選んだのなら甘えは許されない。特別扱いもされない。弱ければ舐められるし、男性であるが故に酷い目に合うことあるでしょう。


 そうなりたくないのであれば、強くなりなさい。誰よりも強く。貴方は主人公です。そのポテンシャルがある。


「あっ……すみません。この度は助けて頂いてありがとうございます」


 猿渡さん達の姿が見えなくなると思い出したように私の方へと向き直り、お礼の言葉を述べました。


 声は中性的な声ですね。声質の高めの男性とも、低めの女性とも取れます。


「いえ、私は大した事はしていませんよ。猿渡さんが理解ある御方だっただけで……」

「そうですか……」


 言いたいことも、思う事もあるでしょう。それでもグッと堪えておいでです。忍耐強い者は冒険者に向いていますよ。


 これから冒険者としてダンジョンに潜るようになれば主人公を待っているのはモンスターとの戦いと、魔道具ガチャの日々です。心が強くなければ持ちません。


「オレは本日、冒険者になったばかりの()()() (あい)って言います。改めて、ありがとうございました!」


 主人公───()()() (あい)君がお礼と共に頭を下げました。


 これがゲームにおける主人公とラスボスの初会遇イベントになるのでしょうが、知人から聞いた話と違いますね。


 彼のデフォルトネームは『櫻葉(さくらば) 春斗(はると)』だった筈。ゲームですので当然名前は変える事は可能ですが、それにしたってあまりに名前が……。


 その時、私の脳裏にある単語が浮かび上がってまいりました。

















 ───『RTA』。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ