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レゾリューション 2版  作者: 颶風 爽籟
喜べ、出逢いに出逢いだ
4/4

4話

同時期に入社した年下の女の子が職場に来なくなった。

私にしては珍しく話の合う子だったので少し残念だったが、まぁあの子なら辞めてもおかしくはない。深く考えずに過ごしていた。


「浅井さん、ちょっといい?」


上司に呼ばれ、仮眠室で食べていたパンを飲み込みながら顔を上げる。


「はい?」


上司は周囲を見回してから、私の隣に腰かけ、耳元で囁いた。


「あなたと一緒に配属された子、新島さんだけど……」


あぁ、あの子ね。名前そんな感じだったっけ。

頷いて続きを促したが、上司は妙に言い淀む。


「…………」


……え、なにこの重い空気。


数秒後、意を決したように私と目を合わせる。


「今日は早上がりにするから、様子見に行ってくれる? 心配なの。どうしても」


……え?


「住所はここに書いておいたから」


いや、そういう問題じゃない。

立ち上がろうとすると肩を掴まれて座り直される。


「頼むわ。あの子と仲がいいの、あなたぐらいしかいないから。家にいなかったら帰っていいからね」


「いや無理です、私そういう――」


「じゃあ頼んだわよ」


スッキリした顔で上司は部屋を出ていった。


……ええぇぇぇ。

いっそクビの宣告の方がマシじゃない?


仮眠室を見渡すと、その場の全員が目を逸らした。







というわけで来ました。

『後輩の家に突撃してお見舞いしてあげようの旅』 の開催です。


ヒューヒュー口笛を鳴らして気分を上げてみる。


……辞めよう。虚しくなるだけだ。


貰ったメモを見返すと、住所は間違いなくここ。

こじんまりしたマンションで、家賃も安そうだ。


202号室――2階か。


階段を上ると、ポストから郵便物がはみ出している部屋があった。


……あれだな。


嫌な予感が走る。

とりあえずインターホンを押すが反応はない。


手袋をはめ、ポストから郵便物を抜き取って部屋を覗く。

明かりはなく、埃っぽいが放置されて長いわけではなさそうだ。

郵便物の一番古い日付は一ヶ月前。


さーて、ドアは……。


ドアノブを引くと、不気味な音を立てながら――開いた。


……開くんかい。


靴のまま上がると、思ったよりはマシな状態。

家を空けてそこまで時間が経っていないのがわかる。


困ったな。

どこ行ったなんてわかるわけない。

電話帳でもあれば……いや今どきの子は使わんか。


寝室に入ると、ベッドの上に妙に豪華な手紙が置かれているのを見つけた。


「なんだこれ」


金の文字と花の装飾。招待状らしい。

場所は……街の中央通りから少し外れたあの高級店の並び。

ここの家賃からしてそんなところに行く金あったのか?


……まぁいい。様子だけでも見に行くか。








そして、来てみたわけだが……。


デケェ……。


語彙力が死んだ。

石畳の道の時点で察しはついていたが、白い大理石の壁面がドンッと視界を塞ぐ。

深紅の絨毯が敷かれた大扉。金持ち以外お断りオーラがすごい。


ドレスコードとかありそう。今の私じゃ無理じゃ?


そう思いながら入口へ向かうと、軽鎧の近衛兵に止められる。


「あ、招待状あるんですけど」


「ダメだ。出直してこい」


まぁそうよね。


「じゃあ頭痛いんで、中のトイレ貸してください」


「いいわけあるか。ダメだ」


きっぱり断られる。


「えぇー、私、はるばる田舎から来たんですよ〜???」


「ダメだ」


「あり得ないんですけど〜???」


過去に見た嫌な女を思い出しながら真似してみたが、

近衛兵は顔を顰めて「嫌な女だ……」と呟き、それでも「ダメ」の二文字。


ふむ。嫌がらせ演技で突破を狙ったが無理か。

バカの真似は二度とやらん。


一応謝って踵を返す。


さて……服を整えれば入れるのか?

どこで買う?財布の中身は?


「すみません」


悩んでいると声がした。

振り向くと、170cmほどの優しげな女性が微笑んで立っている。


「お困りのようですね」


「はぁ、まぁ……」


無意識に一歩下がり周囲を確認する。

ここは大通りだ、叫べば何とかなる。


「私に手伝わせてくれませんか?」


「結構です」


言い切って交番の方へ歩き出す。

すると女性は私の腕を掴んで慌てた。


「ま、待ってください!話を!せめて話だけ聞いて!」


「結構です」


断固拒否して進もうとするが、力が強くて動けない。


くっ……女だからって油断した。体幹がエグい。


「これ!これ見て!」


「……なんだよもう」


しつこさに根負けして振り向くと、

女性は煌びやかな刺繍の手帳を掲げていた。


なんだそれ。


興味に負けて足を止めると、彼女は嬉しそうに咳払いし、


「中をどうぞ」


と言う。

訝しみつつ開くと、軍服姿の男の写真と部隊名が記されていた。


『ギャランドゥ騎士団』

『第一団隊長 マウハ・ウァート』


騎士団。

この世界の図書館で見た警察的組織だ。しかも結構上の位。


……でも本物かわからん。


刺繍は細かくて豪華だが、私に美術眼はない。


「あ、っっやしー……」


「ここに来てまだ疑うんですか」


いや、疑う要素しかないんだが?


ジト目で見上げると、彼女――ウァートは「まったく」と首を振る。

なんかムカつく。


「お呼び止めしてすみませんが、こちらはあなたを拘束できる権利があります。ついてきてくださいますね?」


……その疑問符は“圧”の疑問符だよね。


薄く息を吐き、渋々頷く。

どれだけ怪しくても、本物だったら断った瞬間マズい。


様子見に行くだけだったはずなのに――

なんかどんどん巻き込まれてる気がするなぁ……。

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