表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
93/139

75. 怒らせてはいけない男

「貴様……。いいだろう。遠慮はしないぞ」


 そう言うと、鉄心は大きく拳を振り上げた。そのまま「ふんっ!!」と力んで赤星を殴りつける。


――ドガッ!!――


 鉄心の拳が赤星の顔に直撃するが、赤星はその場から動かなかった。


「じゃあ、次は俺の番な」


――ドゴンッ!!――


「うぐっ!」


 赤星の拳も鉄心の顔に直撃したが、鉄心も何とか倒れずに持ち応える。


「次は私だ。はあっ!」


――ドガンッ!!――


「いいねえ、今度は俺だ」


――ドゴンッ!!――


「次は……」


 この順番の殴り合いは、それから何往復も続いた。途中で冴が止めようとしたが、二人を止めることが不可能だったため、諦めて終わるのを待った。

 そして30分も経った頃、やっと終わりが訪れる。


「はあっ、はあっ。おっさん、けっこう根性あるじゃねえか。でも、そろそろ倒させてもらうぜ」


 少し腫れ上がった顔で、赤星が言う。


「負……負けない。はあっ、はあっ。私は何万人もの同志の気持ちを背負っている。こんなとこで倒れるわけにはいかないんだ!」


 鉄心は、赤星以上に腫れ上がった顔で言った。

 赤星がその顔を見て、少しだけ口角を上げる。


「……その力、悲しみを消すためじゃなく、今度は誰かを愛するために使えよ。それが逝っちまった人でもいいからよ。そしたら、もっと笑顔が増えるぜ」


 赤星のこの言葉に、鉄心は一瞬動きを止めた。


――ドゴォーーーーンッ!!――


 その瞬間、赤星の今日一番の拳が炸裂する。


「ぐはあっ!!」


――……ドサッ――


 これにより、鉄心は初めて両膝をついた。


「……は……白玖……様」


 鉄心の足元にいたライオンの守護霊が、鉄心の体内に消え去っていく。


「申し訳ありま……」


――バタッ――


 鉄心は、そのまま意識を失って倒れた。


「鉄心っ!」


 それを見て冴が叫ぶ。

 冴が鉄心から赤星に視線を移すと、こちらを向いた赤星と目が合った。


「ひっ!」


 次に自分がやられるという恐怖で、冴の口から無意識に怯えた声が飛び出す。

 冴は、思わず出た情けない声を取り消そうと、口を片手で塞いだ。


(くそっ、奴がこんなに強いとは。完全に計算を間違えたっ)


 立ち尽くす冴に向かって、赤星がゆっくり近づいてくる。


『冴、逃げるんだっ。あんたじゃ、どう転んでもこの男には勝てないよ!』


 冴の背後にいる宜保が、焦った口調で冴に忠告した。


「それは嫌だっ。アタシは誇りある創世会の幹部だよっ。こいつがどんなに強くても、創世のために逃げるわけにはいかないんだっ」


『バカっ、そんなこと言ってる場合じゃないだろっ』


「アタシたちは、白玖様に無断でここまでやってしまってるんだっ。これで失敗までしたら、もう白玖様に合わせる顔がないじゃないかっ!!」


 宜保が何を言っても、冴は言うことを聞こうとしない。そうこうしているうちに、赤星が目の前まで来た。


「くそっ、もうやるしかない! はあっーーーー!」


 冴が覚悟を決め、赤星に殴りかかる。

 赤星は眉一つ動かさずに、右足をすっと上げ、足の裏を冴の顔の前に突き出した。


――バチーーンッ!!――


 結果的に、冴が赤星の足の裏に顔から突っ込むかたちとなる。


――フラッ、ドタンッ――


 冴は顔面を蹴られた状態となり、ふらついて尻餅をついた。


「……ぐっ。まだっ、まだだっ!」


 冴がすぐに立ち上がり、再度赤星に殴りかかる。


――バシッ――


 赤星は、この冴の拳を片手で軽々と受け止めた。そのまま、もう片方の手で冴の脳天にチョップをいれる。


――ゴンッ!――


 それにより冴は、氷の張っていないスケートリンクに顔を打ちつけることとなった。


「痛った~! こいつ、女の顔を一度ならず二度までもっ!」


 顔を擦り傷で赤くした冴が、片膝をついて赤星を睨みつける。

 赤星は、そんな冴を冷めた目で見ながら、「お前、もうやめとけ」と忠告した。そのまま赤星が話しだす。


「言ったろ。俺にとって女は雅さんだけなんだ。だから俺は、お前になんか優しくしてやれねえ。これ以上ケガしたくなきゃ、もう諦めろ」


 この赤星の言葉に、冴は「ふざけるなっ」と返し、立ち上がって言った。


「アタシたちは、崇高な目的のために命を懸けて戦っている。ケガの一つや二つはどうってことないっ」


「……ちっ、面倒くせえなあ」


「赤星、お前は確かに強いっ。でも、いい気になるなよっ。創世会にはまだまだ強い霊能者がいる。その者たちがきっとアタシたちの代わりに……」


 冴が喋り続ける中、赤星がゆっくり右拳を冴の顔の前に突き出す。


「ん? これは何のつも……」


――ドォンッ!!――


 赤星は、そのまま冴の額にデコピンを炸裂させた。


「んがぁっ!!」


――バタッ!――


 おかしな叫び声を上げ、冴が意識を失う。それに伴い、背後にいた宜保も消え去った。


――フッ――


 その瞬間、封印のロープが消える。すると、すぐに赤星の背後に半蔵が現れた。


「おー、半蔵っ」


 赤星が振り向いて笑顔を見せる中、半蔵は腕を組んだまま周囲を見渡す。


『……ふむ、派手に暴れたな』


 倒れている敵と荒れたスケートリンクを見ると、半蔵は冷静に言った。


「ん、ああ。なんかよー、こいつらが俺の初デートの場所を荒らすから、ちょっとムカついちまってなあ」


 頭を掻きながら答える赤星を見て、半蔵が微笑む。


「とりあえず、全員の魂帯を斬っておきたいから、ちょっと頼むわ」


『ああ、任せておけ』


 この後、赤星は半蔵と共に敵全ての魂帯を斬り、その後、椿木に連絡した。

 それから、隊外構成員が後処理に来るのを待って、スケートリンクを出る。


「あーあ、ドアまで壊しやがって。人の思い出の場所を(けが)すなんて、ふてえ野郎どもだ。そう思わねえか、半蔵? 絶対あいつらが悪いよなあ?」


『分かった、分かった。そうだな、あいつらが全て悪い。全部悪いぞ。だから、今日はもう帰って休め』


「何だよお、ちゃんと聞いてくれよー」


『はいはい。お前を怒らせたあいつらが全部悪いぞ。お前を怒らすなんて馬鹿な連中だ。本当にな』


「そういうことじゃねえんだよ。ゔ~~~~~っ」


 赤星を宥めながら、半蔵は赤星の肩に手を回した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ