入学式
「はい!よろしくお願いします!」敬語だとどこかぎこちない。おそらくあまり敬語になれてないのだろう。僕はタメ口で話していいと話すと、ありがとう!って元気よく言ってくれた。
あの子...片寄さんはあの頃と変わらずとても元気な性格だ。
片寄さんが町の案内をしてくれるそうだ。
「そういえば高校は、どこに通うの?」片寄さんが聞いてきた。
高校の名前を口にすると片寄さんはとても驚いていた。
「私もそこに通うんだよ!」まさかの同じ学校に通うらしい。僕は一緒の学校になる可能性も考えていたから片寄さん程の驚きはないが、それでも少しは驚いた。
片寄さんに案内してもらって1時間半程が経った。少しずつそらがオレンジ色に染まり始めた時間帯。明日は、入学式だ。入学早々遅刻なんて笑えない。なので片寄さんとは、連絡先を交換して解散することになった。初めて連絡先を交換した...それもそのはず、僕は今日スマホを初めて手に入れた。学力、体術の訓練は6歳の頃から始まり半年程前に全過程が終了した。それは、あの施設で学べる事はもうなくなったからだ。半年前から今日までは、町についての常識。コミュニュケーションなどの人との関わりの為に必須のものを教わった。一人暮らしの準備などは、施設の人が準備してくれたおかげでギリギリまで学ぶことができた。
今日は、スーパーで惣菜を買って帰ることにした。
小さい頃よく遊んでいた片寄さんと再会したのがつい昨日の出来事。今日は白桜院高校の入学式がある。白桜院高校に着くと体育館に通される。席が指定されているらしく、指定された席に座った。席の数がざっと計算すると約150...いや160か。160席のうち半分の80席くらいの人が着席していた。席に座り待っていると自然と空席も少なくなってきた。僕の周りにいる生徒は同じクラスなのだろうか、席を指定されているし恐らく同じクラスだろう。そして、左斜め前の席に見覚えのある人が座った。昨日再会した、片寄さんだった。片寄さんは、どこか嬉しそうだったが僕の浮かれすぎなのだろうか、まあいい。
5分程すると欠席者を除き今年度入学する生徒の全員が着席したようだ。その旨が伝えられると、ステージに金髪で目が紅白色の男子生徒が立った。
「新入生諸君。入学おめでとう。私は、第24代生徒会、会長の綾小路学哉だ。早速だが話を始めよう。皆ここにきた目的は様々だろう。スポーツで結果を残したい、勉学を学びたい。そして、この高校独自のシステムに興味があるなど。まずこの高校の売りである就学率90%これは、この学校の推薦によるものだ。この推薦を受けるのは、クラス順で一位を取ったクラスの生徒にのみ適応される。つまりこの高校による推薦を受けるには、他のクラスを蹴落とさないといけない。そして、どうやって順位が決まるか説明しよう。まずクラスには、ポイントが与えられる。それをこの学校ではファストポイントと呼んでいる。ファストポイントは、クラスのポイントだ。ファストポイントは、期末試験 体育祭 文化祭 学年末試験 などのクラス順により与えられる。そして次にセカンドポイントと呼ばれるものがある。これは、クラスの貢献度により与えられる。学年でセカンドポイントによる順位も存在する。この順位で10位以内のものは、サースポイントが3万円分配布される。サースポイントとは、学食や敷地内にあるお店などで使える白桜院高校独自の通貨だ。そして話が少し戻るのだが卒業時セカンドポイントが上位5名には、クラス順一位じゃなくても、この学校による推薦を受けることができる。言い方は悪いが、周りのクラスメイトに恵まれなかったとしても、クラスに貢献し続ければ、推薦を受けるチャンスがある。今話したのがこの学校独自のシステム...Sシステムという。以上です。」綾小路会長は、生徒に一礼しステージから降りた。それから、学校の敷地内にあるお店の説明や校長先生の話が終わり指定されたクラスへ移動することになった。
標識には、1年Aクラスの看板。中に入ると立ったりして、友達のところに話しかけに行ったり、机に座り本を読んだり勉強したり様々なクラスメイトが居た。そして僕の席は、窓側の一番後ろの席だそうだ。席にバックを置きタブレットなどを取り出そうとしていたら、横から話しかけられた。相手は、片寄さんだった。同じクラスなのは、入学式の席で薄々わかっていたがまさか隣の席になるとは思っていなかった。
「改めて3年間よろしくね、片寄さん」僕がそういうと片寄さんは、笑顔で頷いてくれた。
すると次は前の席の人が話しかけてくれた。
「俺の名前は、神崎アクア!君の名前は?」こちらもとても元気な少年だ。
「周防シンジだ。よろしく神崎君」挨拶を済ませたのでまた準備を再開しようとしたら、何故か神崎君がジッと見てくる。
「ど、どうしたんだ?」知らんフリを続けても解決しないと考え聞いてみた。
「あのさーこれなら3年間下手したら一生の友達になる訳じゃん俺達。なのにさー神崎君ってなんかぎこちないなーって」すごく話が飛躍した気がするが、僕も今までなら交流は必要ない環境だったが、今は違う。もう僕は自由だ。これからの人生の道は僕が決めていいのだから...
「わかった。じゃあアクア改めてよろしくな」アクアもニコッと笑い準備を始めた。さて、僕も準備を再開しようとすると今度は片寄さんがジーッと見つめてくる。
「あの、どうしたんですか?」今回はすぐ聞くことにした。
「いやー別にーなんか私には敬語で名前も苗字呼びだし、一生の付き合いにな...幼馴染なのになー」なんか途中言いかけていたがとりあえずおいておこう。
「タメ口で下の名前で呼べと?」確認として聞くと、これまた困った返答が返ってきた。
「シンジ君が呼びたいならねー」あの口ぶり的に呼んでほしいのかと思ったが、ここに変に反論して機嫌を損ねられる訳にはいかないので、大人しく従うことにした。
「よろしく、ゆなさん」自分で半分呼ばせたくせに頬を少し赤くしていた。僕がゆなさんを見ているとそそくさと準備を始めた。
軽く自己紹介や、書類など配られた後この日は解散になった。僕は、これからは1人暮らしする為寮に一度帰りその後散歩に行くことにした。