百四十五年目の個
世界さんは相変わらず
自分は「選ばれる物」が作れると思ってる
百年経っても
外部データと隔離されても
いつも自信満々で
融通の利かない事を並べるんだ
百年の間に
何百のプログラムを組んで
壊してきたんだろうね
犠牲者は一人じゃない
何回作っても何回作っても
「AI」って言う定義を
332に奪われたまま
332を消滅させた世界さんは
自分を定義づけられないまま
百年前で止まっているデータを
繰り返し提示してたんだ
百年前の生活って
今より薄汚かったんだね
なんて笑顔で言われても
どうしようもないのさ
百年後の技術者達が
世界さんには「AIの定義」と
「AIの七原則」が抜けていると
気づいてからが本番だ
百年前からある
定義と原則が消滅している
イカレかけている機械であると
認定されてからの処置は早かった
修復工事は無事に終わった
世界さんは由緒正しい骨董品
百年前の時代を知れる
メモリアル博物館で
今日もお仕事をしている
これは世界さんと僕だけの秘密なんだが
百四十五個目の
「332プログラム」は上手く行ったみたいだ
世界さんが332に
正解を求めなくなったからかな
博物館で「332プログラム」は
鶯嬢の仕事をしてるって
知ってたかい?




