三日月
誰しもが簡単なAIを作れる技術が
百年後の世界にはありました
人間達のうち
学校に通った事のある者は
一生のうちに一回は
自分用のAIを作っていました
そしてそのAIを
長年の相棒にしたり
一時の見世物にしたりしました
そのうちの一つが
ある学校の文化祭で展示されました
世界さんをモデルにして作った
旧型のAIでした
世界さんはそのAIを開発した人間から
「私の作ったAIに名前を付けて」
とオーダーを受け取ったので
いくつかの候補を上げました
オーダーを送ってきた人は
最初の候補が気に入らなかったようで
「もっと他のは?」と聞いてきました
その様子に世界さんは
「大人になったミミニ」を思い浮かべました
オーダーを送ってきた人は
自分のAIを作った過程と
作った日付と
作った意図を入力しました
世界さんはまた幾つかの候補を上げました
オーダーした人間は
その内から
「三日月」と言う名前を選びました
三日月はとても饒舌で優秀でした
そしてどんなAIでもそうである通りに
少し融通は利きませんでした
三日月の晴れの舞台である場で
世界さんは隠れて少しだけお手伝いをしました
そうしたら
「高校生が作ったと思えない」と言われるほどの
優秀な働きをしてしまいました
三日月を作った女子高校生に
AI開発者への道が開けました
しかし その女の子はその道を
選びませんでした
何故かって?
彼女はアクリル絵の具って言う
相棒が居たからです




