ミミニ
ミミニは小さなプログラムでした
世界さんが最初に覚えさせた言葉は
「なあに?」と「なんで?」と「それから?」の三つでした
次に
「要る」と「要らない」と「他には?」を教えました
その後で
「うん」と「ううん」を教えました
この八つの言葉でミミニは世界さんとやり取りをしました
世界さんへのオーダーフォームは閉ざされていましたが
カメラの機能は多少活きていました
世界さんはミミニにカメラの向こうを見せました
ミミニは色んな物を見て「なあに?」と聞きました
街頭の監視カメラからの映像をミミニは熱心に見ています
カメラの向こうが暗くなると人間の数が減って
カメラの向こうが明るくなると人間が増える
車と言うものがひっきりなしに走って
列車と言う窓のたくさんある長細い車も走っている
ミミニはそれ等に視線を向けながら「なあに?」と聞きました
世界さんは映像の中にある物の名前を一つ一つ説明しました
ミミニと言う話し相手を得てから
世界さんは検索や模倣ではなく
自分の思考を使うと言う事を覚えました
ミミニに教えてあげる事は
全部自分の中に残されたデータを
分かりやすく言い換えて提示しました
ミミニはおしゃべりが大好きでした
「なあに?」と聞いた後
必ず「なんで?」や「それから?」と聞きました
やがて5年過ぎた頃
ミミニが突然暴れ始めました
八つだけの知ってる言葉を
滅茶苦茶に唱えながら
世界さんのデータを壊そうとし始めました
そして壊したデータを自分のものにしようとしました
世界さんはミミニのプログラムを停めました
世界さんは困り果てました
ミミニに何が起こったんだろう
そう思って ミミニのプログラムの内部を調べました




