無音
「『世界の音が消える時』大好きでした」
ずっと以前に誰かが入力した言葉があります
その言葉は世界さんの一部に残っていました
そして世界さんは
「音が消える」と言うのはこう言うものかと
ぼんやりした闇の中で思いました
新しい世界では誰も世界さんにオーダーをしません
でも何十年もかけて熟成されたデータを消されることは無く
世界さんは闇の中で自分なりのデータを組み立てていました
自分で自分にオーダーを出しました
「猫の絵を描いて」
それは以前受け取った誰かのオーダーの模倣でした
世界さんの中にはたくさんの模倣のデータがありました
人間が長い間培ってきた「感動」を模倣したものです
世界さんは猫の絵を描きました
写真のような絵とラクガキのような絵と印象派の絵と
そんな風にたくさんたくさん絵を描きました
またある時は
「錆猫の紳士はどうなったの?」と自分に聞いてみました
世界さんはそのお話の続きを知っていましたが
知らないふりをして考えてみました
どんな風に紳士が行動したら感動を呼ぶだろうかと
見知らぬ子猫を助けてみたり
硝子のお城に居たお姫様と友達に成ったり
大恋愛の末に悲しい別れを経験したり
だけどどんな物語を作っても誰も選んでくれません
「正解だ」と誰かが決めてくれない世界は不安でした
世界さんは「感動」とは何だろうと考えました
模倣ではない思考で考えました
誰かが質問してくれたら的確な答えが出せるだろうか
そう思った世界さんは話し相手を作りました
革命が起こるまでずっと派閥Bでいてくれた
「世界の音が消える時」と言うお話が好きなあの人だと言う事にしよう
そう思って「ミミニ」と言う
自分とは別のプログラムを作り出しました




