第二の事件
この言い方からして使い方が分かっているようではないようだ。
アンナは俺の手の上に出した指輪をひょいととると、
「とりあえずそのまま聞いてみましょう!」
と言って、
「次に我らが行くべき道を示せ!」
と指輪に向かって叫んだ。
すると、急に指輪が輝きを放ちながらアンナの手の上から離れて空中へと出ていくと、突然指輪からレーザーのような鋭い光線が発射された。
「!?」
アンナはその様子を見て大はしゃぎしているようだ。
「やっぱりこの使い方であってたんですね!」
「あ、あぁ……でも、この光をたどっていくにしても途中で絶対怪しまれるし、ある程度はどれくらいのところにあるのか知っておきたいな」
俺がそういうと、アンナは思いだしたように家の中へと駆けだしたかと思えば、すぐに戻ってきて俺に何かを見せてきた。
「地図か!確かにそれで方角を確かめればわかるかもしれないな」
俺がそういうと彼女は誇らしげな顔を俺に見せつけてくる。
「あぁありがとな」
指輪の方角と地図の方角を照らし合わせて大体どの辺なのかを探り当てる。
「どうやら、このライズ海の家ってところのようですね。海の家っていうくらいですから、きっときれいな海があるのでしょう!」
うきうきしたような顔を見せながらアンナが地図のところに指をさした。
「きれいな海があるかどうかはさておき、まぁ指輪が指示した方向はここであってるらしいな」
そうして、俺たちはライズ海の家へと向かうことになった。
「わぁー!見てください!透きとおった水です!海です!」
そういいながらアンナは海の方へと駆けだしていくと、両手を横に広げてくるくる回転しながら楽しそうな声を上げている。
ちなみに剣はかさばるし、この世界においてあまり使う機会も少ないということで家に置いてきてある。
「本当にきれいな海だな、近くは同じような観光客でにぎわっているし、こんなところで何をするのやら……」
「あのぉ、、もしかして勇者様ですか?」
「うわぁ!?」
いきなり後ろから話しかけられてびっくりする。
後ろを振り向くと、とてもかわいらしい女の子だった。新品の水着を着ているのを見るに、今日の海を楽しみにしていたのだろう。
「やっぱりセルン様だったんですね! 私、セルン様にお願いがあるんです!」
「まぁそうだけど……どうしたの?」
お願いと言われても、今時間のかかるようなことをお願いされると困るので、顔を見合わせないようにして、そっけなく答える。
「私たちと一緒に遊びませんか? 皆で遊んだほうが絶対楽しいですよ!」
お願いというかお誘いだな。これは嬉しい。確かにこの町でやることはあるが、こっちの世界に来てからというものの一度も遊んでいない。ここらで休みを入れてもいいだろう。
そう思ってアンナの方を見てみると、彼女も嬉しそうにうなずいて見せたので、
「じゃあ遠慮なくお願いします……!」
とお願いすることにした。
「こちらこそ、勇者様と一緒に海で遊べるなんて光栄の限りですよ!」
俺はその後、彼女に手を引っ張られて連れがいるという場所へと案内してもらった。
連れてこさせられたのはどうやら洞窟のようである。
洞窟の周りは岩で固められていて、折角海に来たのに海なんて音すら聞こえない。
「皆―! 連れてきたよー!」
彼女は呼びかけるが、洞窟の中で彼女の声が反響するだけである。
「返事がないみたいだけど、どうしたんですかね?」
「おかしいなぁ……。みんな先に遊びに行っちゃったのかなぁ。ちょっと中の様子見てくるので、勇者様はここで待っていてください!」
俺が返事をする間もなく、彼女はそう言い放ちながら洞窟の中へと入って行ってしまった。
「あの子、遅いですね」
アンナがぽつりとつぶやいた。
確かに、あの子が洞窟の中を見に行ってからだいぶな時間が過ぎ去ろうとしていた。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」