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決意

 まわりを見ると人、人、人! たくさんの人たちに囲まれていた。


「セルン、やっと起きたか」


 あの光の中から聞こえてきていた声が目の前から聞こえてきたので、少し身構える。目を見ると怖気づいてしまうような気がしたので顔は合わせず目は背ける。


「何の用で連れてきたんだよ。俺らの平和な生活壊して何がしたいんだよ!」


 俺がそういうと、目の前にいると思われるその声はほっほっほと微笑しながら答える。


「本当に何も聞いていないんだな、可哀そうに。お前は生まれて十八歳になったらここに来る運命だったんだよ」

「それは、どういう意味だ」

「それがお前さんの使命ってことだよ。十八歳になったらこっちの世界に出てきて魔王を討伐しなければならない。これは絶対なんだ」


 声のトーンが少し柔らかくなったので驚く。

 でも、俺はここで引くわけにはいかない。

 やっぱり目は合わせられないものの、それでも負ける意思はないということを伝えられるように大きな声で威圧する。


「使命って何のことだよ! ちゃんと説明してくれなきゃなんもわからねぇよ!」


 しかし、俺が大声で叫んで返しているのに対して、相手はとても落ち着いた様子で返してくる。


「そんなことより、お前が今すぐにやらなければならないことを説明する。魔王を倒すのは最終的な目的ではあるのだが、やつは今天空の城に立てこもっていて入ることができない。よって、自分の身を鍛えていきながら天空城に入る方法を見つけよ」


 俺の質問なんてもはや無視している。母さんのところに戻りたいといったところで、帰らせることができるのは相手であって、俺にはできないから、俺の意志が通るわけがない。

 これは確かに「依頼」ではなく、「使命」であるみたいだ。


「……くっそ」

「じゃあ頼んだぞ」


 諦めて城を出ていこうと立ち上がったときに、さっきまで喋っていた声の持ち主の顔が見えた。


「……!?」


 その声の持ち主は、さっきまでの冷酷な発言とは裏腹に、白いふわふわとしたあごひげに白いマントと赤い服、本人の顔自体は近所のおじいさんのように優しそうだった。

 赤い玉座にどっしりと構えていたその姿勢を崩し立ち上がって俺の顔をしっかりと見つめて言う。


「やっと顔を上げたか。わしはこのへイン城下町の王ウルスだ。よろしく頼む」


 俺はその圧倒的な迫力から体が勝手にお辞儀をしてしまう。

 そして、半ば逃げるような形で今いるこの確か……へイン城下町だったと思われる場所を出て行った。

 へイン城下町のつくりは簡単で、商店街のように城から一本大通りが通っているだけだったので道に迷うこともなく楽に出ることができた。



「ふぅ……ここまでくればもう何も言われないだろう……」


 へイン城下町を抜けてからずっと走っていた体を、いったん休ませる。

 というか、すごいな……。

 あっちの世界では走るのとか苦手だったのに、こっちの世界にきてから今だって息切れしてないし、走るのも全然早い。

 俺がこの世界の勇者として目覚めたという証拠なのだろうか?

 それと、城の外に出たらモンスターがいるんじゃないかと心配もしていたが、全然そんなことはなく、ただ平和なだけの草原や森などが太陽の光に照らされて、続いているだけだった。


「さーて、そろそろやるべきことでも始めるかぁ」


 ストレッチして体を伸ばしながら俺はそうつぶやく。


「でもいったい何をすればいいことやら……」


 王に何か命令されたわけでもないし、言われたのは天空城に行く方法を見つけて魔王を倒せということだけ。というか忘れていたけど俺自身の目的は魔王を討伐することじゃなくて、もう一度元の世界に戻ることだった。

 まぁでも、結局のところ返してくれるのは彼らなので、魔王を倒すのが俺の目的になってしまうわけなのだが。

 でもそれすらも、これだけのヒントでは出来ることもないし……。


「あ、あの、もしかして勇者様ですか?」


 こんなことを考えているといきなり話しかけられてびっくりする。


「う、うおっ!?」


 二、三歩のけぞる。

 もしかしたらへイン城下町から来た人なのかもしれないので少し警戒する。

立っているのは恐らく六十代前後と思われる女性である。

 顔には年齢を感じさせるようなしみがあり、杖を持っている。身長は俺の半分くらいだろうか。

 俺は、かがんで女性と頭の位置が平行になるようにして、答えた。


「え、っと、一応そうではありますけど……何の用でしょうか」


 彼女は、俺の言葉を聞いてどう思ったか、目を見開いて俺の方を見たかと思うと、俺の手を握ってぶんぶん振り回しながら喜びながら話し始めた。


「勇者様! どうか私たちをお助けください!」


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