始まり
しばらく毎日8時19時に二話投稿を頑張っていくつもりです。ブクマ、評価ぜひよろしくお願いします。
「セルン、ご飯!」
目が覚めると、最初に聞こえてきたのは母さんの声。
「ん、んん……」
勝手に瞼が落ちてくる目をこすりながら簡素な木製のべッドから起き上がると、足を下ろし床に置いてある橙色のスリッパをはく。
さっきの母さんの声にはーいと返事をしながら部屋のドアを開けて目の前にある階段を降りる。
二階建ての我が家では、一人息子の俺が二階を占拠する形となっている。
ちなみに二人暮らしで、父さんはどこなんだと聞いたことはあるが、交通事故で亡くなった、というように伝えられている。
「この階段早く手すりつかねぇかなぁ」
毎日のようにそんな文句を言いながらリビングにつくと、母さんに軽く会釈しながら、
「おはよう、母さん」
と、そっけなく伝えておくことにした。
「あ、おはよう! もうご飯できてるよー」
母さんは俺の顔を見ると笑いながらテーブルの方に視線を向け、俺に座れと無言の合図を送ってくる。
「いただきます」
俺は促されたとおりにテーブルに座ると、前に置いてある朝ごはんを食べ始める。
「今日もおいしいな」
俺がボソッとつぶやくと、
「うれしい、ありがとね」
と、どこからかやってきた母さんにいきなり話しかけられる。
「うおっ、ビックリするからやめろよ……」
そう言いながら後ろを振り向くと、母さんは満面の笑みを浮かべながら耳元で囁いてきた。
「ボソッと言ってくれた言葉のほうが信用もできるしうれしいよ」
この後、耳に残る母さんの息と声に震えながら朝ごはんを食べ終わると、食器を台所に持って行って水につけたあと、
「ごちそうさまでした」
と伝えて、自分の部屋に戻っていく。
この後は、学校にいって、帰ってきてご飯を食べてお風呂に入って……という生活。
《いつも通り。全てが。》
《——これまでも、これからも。》
そう思っていたし、変えようとする意思もなかった。
《今日までは。》