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ネックレス

「ねーね、佐野君は部活やらないの?」

「・・・ぇ・・!?」

「今ここにいるんだから帰宅部でしょ」

「でも、まだ仮入部期間じゃん?佐野君が何部に入るか気になる子多いじゃん」

「あらあら、そんな詮索するものじゃありませんよ、佐野君も言いたくないならそういってくださいね」

女子の会話についていけない俺を白鳥七花がフォローしてくれたのだろう。

「えと・・今のところは部活に入る予定はないよ」

「そうなの!?」

「なんで?生徒会が忙しいの?」

「あー、まだ分からない」

「そうだよね、生徒会とか凄いよね、どこ中だったの?」

「あ、オレ中学は海外なんだ」

「うっそ!!じゃあ英語も喋れるの!?もう完璧じゃん!」

女子の会話についていけない、一言話すと幾倍もの情報が膨張し止まらない、俺の言ってない情報が追加され、更に未来予知が開始される、一体この終わりどころはどこに存在しているのであろう。


「ウフフ、みなさん、お勉強は捗っていますか?」

白鳥七花が穏やかな笑顔で空気を潰さないような笑顔で会話を遮る。

「佐野君が困ってらっしゃいますよ、折角学年1の方がいらしているのですから、わからないところは教えて頂かないともったいないですわよ」

「私は最初に教えてもらっちゃいますよ?」

ニッコリ笑って他の女子に敵意を持たれないカマをかける。

そもそも男子は来ないのか?

このままずっと男は俺一人なのか?

「佐野君・・・佐野君、聞いてます?」

「えっ、ああ、うん」

「ここが分からないので教えてほしいのですが」

「あ、ここね、ここは・・・・」

ノートを見て勉強を教えてはいるものの、右の肘に彼女の胸が当たって集中できないのである。

これはやわらかい、こんなにやわらかいものなのか・・・。

ふんわりと優しい感触に肘の動きがぎこちなくなる、しかし、「当たってます」と言えるわけがないのだ。

「あーなるほど、わかりました!ありがとう佐野君」

白鳥七花が俺だけに真っすぐ笑顔を向ける。

絶対に勘違いするな、勉強を教えたことの感謝なんだからな。


勘違いと、女子の会話に脳がパンクしていたが、夕方前に予定があるという女子に合わせて次々と解散となった。


「じゃあ、俺も帰るよ」

「あら、夕飯でも食べていきませんか?」

「いや、いいよ、ありがとう」

「そうですか、残念ですがまたの機会の楽しみにしておきますね」

「あ、うん」

靴を履いて白鳥七花の方を振り返ったとたんに柔らかい手が俺の顔を包むように挟み、彼女の唇が俺の唇に触れそうになる瞬間に驚いてのけぞってしまった。

「へっ、あっ、・・・・ぇ!?」

混乱して平静さを保てなくなっている、彼女がなぜそのような行為に及んだのか理解が追いつかなかった。

俺を好きってことか?それともからかった?経験豊富?何かの罠?

まだ高校生活始まったばかりだぞ、無事に3年間を過ごしたいんだ落ち着け俺、でもなかった事にできないじゃんこんなの!どうするんだよ。


彼女はにっこり笑ったまま動揺もせずに俺を見送ろうと立っている。


それよりも、動揺している俺の目に入ったのは彼女の首元を飾っているネックレスだ。

似ている、俺はあのネックレスを昔プレゼントしている子がいる、名前を知らないから探せるはずもなく諦めていた初恋の子にあげたものだ。

たまたま会った数回で俺は好きになった、それが初恋だろう、俺は成長してもその恋を乗り越える事が出来ていないのだ。

公園以外に情報がなく海外に行ってしまったために、探すこともできない、子供の無力の悔しさも同時に覚えている。

もし、それが彼女なら・・・。

でも、たまたま同じものなだけだったら・・・・。



「えっ、それ、えっ」


「ふふふ、またね、八羽君」



彼女は落ち着いた様子でニッコリ俺に別れを告げた。

計算高い女は頼りやすい

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