知らないことはたくさんある
「人と会話するだけで気持ちが全ぶりするってどうなの?」
「え?」
「いや、ある人の事で考え込んで落ち込んでた時にさ、その当人と会話して自分の印象が悪くないんじゃないかと気が付いた時に気持ちがすぐに変わるっておかしくないかな」
「嫌われてると思った相手から嫌われてなかったからよかったって事?」
「まあ、そんなとこだ」
「よかったじゃん」
最近はよく会話するようになった帝は俺の相談相手にもなっていた。
「お前はそうゆうのはないの?」
「俺?俺はあまり人と会話しないから・・・」
「まあ、人とのかかわり方は人それぞれだしな、俺はお前が話してくれてよかったよ」
なぜそこで赤くなる。
帝は変わったやつだが、思ったよりも暗くはなく付き合いやすい。
最初の頃は会話も少なかったが、最近は普通に会話できるまでの中になったと俺は自負している。
俺は高校では普通にコミュニケーションが取れる人間の位置づけとなっている、得に話題がなくても学年トップという肩書はかなりの威力があるようだ。
見下されることは大神にはあれど、他の生徒がすることはそうそうない。
帝はゲームもするし勉強はそこそこの普通の高校生だ、この学校で学力がそこそこあるというのは優秀な方に入る。
その点においても彼はマイナスにはならない友人だ。
休日にゲームをする約束はしたがまだ実現はしていない。
ボードゲームも好きらしく、人と遊ぶのは基本は好きなようだ。
「お前さ、前髪を斬らないの?顔も悪くないのに隠す必要ないだろ」
「この方が落ち着くんだよ」
「あっそ」
俺は可もなく不可もない普通な顔だとしたら、彼は生まれ持った素材を持ち合わせている。
優男の部類だろう、俺の目指したゴールに君臨しているような面持ちだ。
恐らく、帝が前髪を斬ったら女子が黙っていないと思う。
もしやそれを理解したうえで前髪が長いとしたら隅に置けないやつだ。
身長もそこそこある、なんでもそこそこの男だ。
この素材を活かしたら目立つことは間違いない。
だが、彼はそれを選択していない。
それは尊重すべき事なのだろう。
俺は友人ができたことが喜ばしい、それでいいとする。
「今日の部活は行く?」
「行くよ、でも先に行ってて」
「いつもだな、何か用事あるなら手伝うけど」
「いや、大丈夫」
「そっか、じゃあ先行ってるな」
「おう」
帝は部活には一緒にはいかない、俺と一緒に行きたくないわけじゃないようだが、何か小用があるらしい。
本人が言わないので俺も無理に聞くことはしない。
無理に聞くのは人の心を殺す。大げさかもしれないが、人間の心は命よりも脆いと俺は思う。
心が動かなければ死んだもどうぜん、それは幼少期に経験済みだ。
帝にも妹がいる、一軒家に住んでいて普通の家庭だと聞いている。
実際には白鳥のような豪邸かもしれないが、それはないらしい。
日本人は謙遜するから実際に見たもの以外は信じないようにしている、まあ俺も日本人だが。
中学までは陸上部をしていたが、高校は勉強についていけなくなるのは避けたいという事で辞めたらしい。
部活も入る予定はなかったが、内申点をよくするために入部はしたいと考えていたらしい。
俺とほぼ同じ思考だ。
まあ、学力の差は仕方ない、とはいえ彼も優秀だ。
俺と仲良くしてくるのも学力トップの肩書きもあってのことだろう、最初は不愛想で警戒されていた気がするが、部活中に一緒に勉強をするときは真面目だ。
まあ、家庭科部なのに勉強しているのはつっこまないでおこう。
そうゆう自由な部活なのだ。
恐らく白鳥も考え方は同じで、なんでもできるけど集まれる場所として作った場所なのだろう、いまやファーストフード店やファミレスは学生を邪険にするからな、そんな世の中ではタダで居場所を作るならうってつけだ。
家庭科部の部員はみんな話しやすい、妙なグループもできないし、仲いい同志で固まって誰かが孤立することがない。
大神はそうゆうのはきらいだろうし、白鳥も好きそうにない。
他の部活と掛け持ちしている夏目はそうゆうのは気にしないでとにかく表裏なく明るい。
小風はもともと女子が苦手なのだろう、環境に安心している感があるから問題が起きることもなくいつもリラックスして本を読んでいるのが印象的だ。
部活も正式に決まって、3年間はこの部活も存続するのだろう。
内申書もクリアできて居心地の悪くない場所ができて俺はまあまあ現状に満足していた。
まあ、水口の件もあるが、彼女は俺のことを嫌ってはないようだからそれはそれで一旦よしとしよう。
俺は部活へと向かった。
が、俺の心をかき乱す状況が発生してしまった。
家庭科室へ向かう途中、窓の外から水口と帝が話しているのが見えた。
2人の関係性は不明だ、俺の心のざわつきは再びまとわりついた