合縁奇縁
高校生というのは通う学校でランクが目に見えてわかるものだ。
あの制服は頭いい、この制服は落ちこぼれ、自分の学力やが可視化され本人の意志や志望動機など一切考慮されることなく他人に勝手に評価されるのだ。
小学校の頃に人気者だったリーダー格がモブに成り下がったり、小学校ではモブだった奴が中学では部活の成績などで目立つ存在となる場合がある。
しかし、高校は違う、学力で行ける場所が限られ、中学でデビューしたところで頭が悪ければそれなりだ。
俺はというと、小学校のクラスメイトに「誰?」と存在の記憶はされず、中学は親の都合で海外に行ってしまい日本の友人など皆無だ。
しかし、俺は日本の高校に行くと決めて勉強漬けの日々を送った甲斐もあり、最難関の高校に合格することができた。
そんな俺も成長につれて、身長も伸び、178cmとそこそこの高さを得ることができた。
まだ高校生1年生なりたてだ、成長の見込みはまだある、このままいけば180cm台も夢ではない。
自分の顔には自信があるかと言えば自信はある、肉食系ワイルド顔ではないが、女子は俺の顔が好きになるだろう・・・と・・・お・・思う事は自由だ!
女子の評価は俺には計れない、しかし、男という生き物はなぜこんなにも自信過剰なのだろうか、今でも俺には秘めた力があるとか思っている、現実には手から大砲が出るわけでもないのに。
俺がこの最難関の学校に行く理由は、頭がよければクラスメイトの名前くらい覚えるだろ、という過去の若干のトラウマや、制服で見下されたくないという思いもあるが一番は、『彼女が欲しい』これに尽きる。
愚かな俺は新しい恋さえすれば初恋を忘れられると思っていた。
***
合格した高校から事前に知らされている事としては、入学式は教室で放送を聞くだけらしい、始まりにしては地味だが理にかなっている、意味不明な校長の話を聞くあの時間は無駄以外の何物でもない。
まあ、仮にも学校の長だから年1で話くらい聞いてやってもいいが、来賓だの意味不明な伝統行事は消え去って頂ければありがたいことこの上ない。
ストライプのネクタイにブラックに近いグレーのブレザー、周囲の視線が俺を見ていると錯覚する。
やはり脳みそのランクが高いと制服もそれなりに締まると感じてしまう。
これは脳が勝手に処理をする、頭がいい学校の制服、そうでない制服、もちろん成績優秀=制服のセンスというわけではない、”制服が可愛いから”なんて理由で志望校を選択する人もいるだろう、俺個人が独断と偏見で思う事は勝手だ、全ての本音において、口外しない事がマナーである。
校門もシンプルに新入生の経路の看板のみ、知的な人間達は事前に知っているだろ?と言わんばかりに歓迎ムードはない。
合格発表の時と同じボードにクラス分けされた名前が羅列している、それを見て教室へ行けということか。
体育館に集まらないで初日から授業が始まるのだから無駄な時間を使わずに勉学に励めということか。
校門までは周囲が俺を見ていると錯覚していたが、校門をくぐるとまた別の緊張感が張り詰めている。
俺を見ているわけではないのに、間違った動きをすれば目立つ、手と足が同じに動いてしまいそうになるくらい脳が混乱する。
落ち着け、ここで目立ったら高校生活最悪だ。
クラスメイトに名前を覚えられないどころか、変な奴の札付きで名前を覚えられる可能性が出てきてしまうぞ。
『 1-C 』
なんとか、クラスまでたどり着く。
学校からまあまあ近いし、グループはちらほら見受けられる。
窓際一番後ろという特等席を得た俺は、クラス全体を見まわした、そう、見まわすだけだ。
俺も誰か話しかけて友達まで行かなくても、顔見知りになるくらいにはならないと。
と思ったけど、話しかけることもできずに下校する俺。
学校の門までの道は部活の勧誘していて歩く前から勧誘のチラシまみれだ。
その中から取りやすかった1枚を手に取ってみる。
”来たれランナー、未来のスターは君だ”
陸上部のチラシの様だ、俺は自分の有限の時間を部活動に費やす気はない、社会に出て役に立つのは学力とそれなりの体力。
全力で部活に取り組んでも楽しくない方の人間だ、文化部なら将来にも役立つかもしれない。
運動ができないわけではないが、何をそんなに追い込みたいのかは理解できない。
まあ、でも運動している人間が嫌いなわけではない。
なにげなく、思いふけったまま校庭を見ると陸上部が練習していた。
この時期でも半袖短パンかあ・・・あの人、足綺麗だな・・・。
胸は・・・これから発育ですかね。なんて分析していると、俺が見ていた女の子がちらっとこちらを見た、
俺は、純白の突風が吹き荒れ違う世界に一瞬だけ行った感覚になった。
しかし、心拍が激しく波打ち落ち着く様子がない・・・動機息切れ俺はこんなところで死ぬのか!?
すぐに我に返って、もう一度女の子を見ようとした。
「ちょっと、何こっち見てんのよ」
「ひぃっ」
え、俺は違う人に指摘されるほど見てたの?
いやいやでも、あの人が言ってないわけだし、
誰かが誰かを見ていたのかなと、他人事だと判断して冷静さを取り戻す。
初日からトラブルはごめんだ。
「あんたよ、あんた、私を見ておいて無視してんじゃないわよ」
自分に向けられているが気がしたけど、俺は校庭を見ていたのであって、決してこの暴言を吐く気の強そうな女は見ていない。
が、一応周りを見渡すと、どうも対象すべき人物が俺しかいない・・・。
「えっと・・・俺?」
「そうよ何ふざけてるのよ、あなた以外ないでしょこのスケベ」
「は?」
「何よ、私を見ておいてしらばっくれるつもりなの?」
「いや、見てないよ、俺はあっちを見てて・・」
「陸上部に入ろうかなって考えてただけだよ、紛らわしかったかな、ごめん」
いや、全然陸上部になんか入りたくないけどね、でもここはそう言わないと逃げられない。
「あっそ、まあそうゆう事にしておいてあげるわ、次はないと思いなさい。」
そういうと気の強そうな女の子は立ち去った。
随分と自意識超絶過剰な人だな、あれくらい自分に自信があればそうなるのか・・・。
学校に長居するとろくなことがない、俺は帰る事にした。
2年ぶりくらいに書きたくなりました。
またよろしくお願いします。