表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来からの贈り物  作者: ガエイ
1/6

第一章

―未来/1―


 歩道の無い道を歩いていた。

 何故、車道側に彼女を歩かせてしまったのだろうか。

 気が抜けてしまっていたのかもしれない。

 次の瞬間、隣を歩く彼女の姿は無かった。

 黒い自動車が猛スピードで走り去る姿が見える。

 車道には腰が曲がっては行けない方向に折れた彼女が倒れていた。

 頭からだろうか、ゆっくりとアスファルトの地面を伝って血液が流れてくる……。

 後悔は物事が起こってしまった後にしか出来ない。

 ゆっくりと時計を見つめ、今の時間と日付を確認した。


―1―


 寒く雪が降りそうな空。澄んだ空気を吸い、吐き出すと温かく白い息が広がった。

 十代後半くらいであろうか、その少女は広い公園のベンチに座り、暗い闇夜を照らす明るい月を眺めていた。

 まるで部屋着のような薄いシャツとズボンは所々汚れており、美しかったであろう漆黒の長髪も傷んでいた。

「……これで凍死できるかなぁ……」

 少女は呟く。

 吐く息は白く、暖かさがあった。

「こんばんは。なにしてるの?」

 気がつくと、すぐ近くに二十代の青年が立っていた。

 爽やかな短髪で、今まで走っていたのか息が荒く、白い息が乱れていた。

「こんばんは、初めまして。私、凍死をしようとしているんです」

 少女はまるで当然かというように、素直に答えた。

「それはまた難儀な話だね。隣いいかな?」

「どうぞ」

 青年は少女の隣にドスンと腰掛けた。

「何でまた凍死なんてしようと思ったの?」

「私、未来がわかるんです」

「未来が?」

「そう、どうやってかは知らないんだけど、いつの間にか知ってるの。今知ってるのは凍死する未来、だからそれに従おうと思ってるの」

 少女は空を見上げながら語る。

 青年は少し苦い顔をした。

「その未来はどうやったら叶うんだい?」

「わからない……」

 少女はスッとベンチから立ち上がり、虚ろな目で立ち尽くしている。

「今日は凍死はしない日だったのかい?」

「そうみたい、また凍死する日がきたら死ぬわ……」

 少女はフラフラと歩きだす。

「どこか行く宛はあるの?」

「ないわ……。私はどこから来て、どこに行くのかしら……」

 そう言いながら、少女は遅い足取りで一歩ずつ歩いていく。

 青年はベンチから立ち上がり、少女の真正面で行く手を塞いだ。

「じゃあさ、俺の家に来ないか? 部屋も空いてるんだ」

「あなたの家に?」

「凍死しようとしている人を、それも帰る宛も無いような人を見捨てるわけにもいかないだろ。何か悪いことなんてするつもりもないし、単なる好意だよ」

「そう……、あなたは良い人なのね……。不思議と安心感があるし、お邪魔することにするわ……」

 少女はフラフラと歩いて青年の横に立つ。

「私、名前は……多分ミライだったと思うわ」

「ミライ……さんね……。俺はイマイ、忘れないでくれよ」

「えぇ、覚えたわ、イマイさんね……」

 イマイは自らが羽織っていたジャケットをミライに着せ、二人でイマイの自宅へ向かった。


―過去/1―


 歩道の無い道を歩いていた。

 必ず自らが車道側を歩き、彼女は道路側には立たせなかった。

 危ない運転をする車は沢山いる。それが意図的なのかどうかはわからない。

 だが、彼女が道を歩けるのであれば、それはどうでも良かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ