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試してみるか......

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


 アドルたちまでの全員を洗い終えた俺、ロサ、ルーナは濡れた体を拭こうとしていた。


 しかし、ルーナが川で少し遊びたいと言った。たしかに、今日水を浴びたら気持ちいいだろうな。


「じゃあ、俺は先に戻っておくから、体を冷やしすぎないように気をつけてね。」


 さすがに二人が遊んでいるのに混ざるのは、俺の中に気まずさが生まれてくるから、先に戻ると二人に伝えて、家に戻ることにした。


 と思ったのだが、ロサに引き留められた。ご丁寧に裾を引っ張って。


「ソータも汗かいただろうし、一緒に流していきなよ~。女の子二人と楽しく水遊びするんだよ?ご褒美でしょ?」


 いやいや、さすがにハードルが高いって。今までに女子との関わりはほとんどなかったぞ?いきなりそんな水遊びイベントが来ても......


「俺がいるとリラックスできないだろうし、二人で遊びな。」


 高いハードルは避けるしかない。低いハードルから頑張りたいものだ。こういうものは。まぁ、どういうのがハードル低いのかは知らんけど。


「え~、ソータ照れてる~?」


 俺の横腹をつついて茶化すように言うロサ。俺が適当に頷いて戻ろうとすると、おもむろにロサが服を脱ぎ始めた。


「え、ちょっと、俺が行ってから脱いでくれよ。」


 慌てて目を逸らすが、逸らせば逸らすほど、ロサが視界に入ってこようと体の位置を変えてくる。


「いいじゃん別に。今から水浴びるんだし。服脱がないと濡れちゃうじゃん。」


「いや、そういうことじゃなくてな......」


 下着姿でも俺には少々刺激が強い。むしろ裸より強そうまである。


 結局、俺は逃げるように家に戻った。


「いつでも来ていいからね~!!」


 と、捨て台詞ならぬ置き台詞を、俺に聞こえるようにロサが言った。


 ヘタレだとかなんとか言うだろうか。知らん。チキンハートはふとした時に主張してくるんだよ。性根も心持ちもチキンであることもあるんですよ。


 少し離れたところからキャッキャッとルーナとロサがはしゃぐ声が聞こえる。


 見たいか見たくないかで言ったら見たいとは思うが、無言不実行の俺はやらない。口にさえ出さなければ無言......考えてすらいないのと同じだ。


『ものすごい早口で己の煩悩を振り払おうとしておるな。』


 うるせえ!どうせ俺は煩悩まみれだよ!!


『いや、むしろ年頃なのに、煩悩が少なすぎると思うが......』


 セク、お前もか。お前まで裏切りやがったな。


『何も裏切っていないと思うのだが?』


 モルと一緒に俺をいじる側にまわってるだろ。昨日から特に。


『昨日から......とな?昨日、何が起こったんじゃ?ロサの態度が変わったことと何か関係あるのか?』


 あ、えーと、なんて言えばいいのか......


『端的に言うと、ソータが朝に泊まっていた宿の看板嬢から頬にキスされて、家に戻ってくると、ロサから実質プロポーズのようなものを受けた。そういう感じだ。』


『いや、どういう感じじゃ!?なぜにそのようなことが!?』


 えっと、セクの言う通りのことが起こった。細かいところは、まあ省略ってことで。


『じゃから、その詳細を知りたいのじゃ!!』


 多分、これに関しては俺の記憶を見た方が早いと思う。俺もまだ整理しきれてない状況だけど。気持ちがまだどっちつかないというか、そもそも恋愛感情とは何なのかってことすら分かってないところ。


『それは......こう話したり一緒にいるだけでうれしくなるものではないのか?ロサの行動が変わったのも、好きだからこそ、相手の気を引いて自分の心を満足させて、相手の心を惹くこともできる。それが好手か悪手かどちらに傾くのかは分からぬが、少なくとも意識させることはできるじゃろうな。』


『お~、恋愛経験皆無のモルさんがそれっぽいこと言ってるな。』


『うるさいわ。お主も経験ないであろう。お互い様じゃっ!!』


『そんな顔を赤くして言われても......別に俺は経験なくても恥ずかしいとかは思いませんよ?』


『セク、そんな笑顔で言われても説得力ないが、それはどういうことじゃ?』


『いやいや、さっき言ったのが本心ですって。』


 珍しくセクがモルをからかっている。後で仕返しとかなければいいけど......


 いやでも、モルの言うことは一理あるかもな。昨日の夜からロサが何かしら手伝おうとしてきたり、スキンシップして来たりしてるし。気を引きたいとかなら正にその通りだな。


 俺も少し意識してきちゃってるところもあるし。一概に否定はできないな。


『そうよな!?嘘ではないじゃろ!?』


 なぜかモルが慌てて俺が考えてたことに食いついてきた。おそらく、セクのいじりに何も言い返せずに、どうすればいいかあわあわしていたのだろう。そんな様子が目に浮かぶ。


 そして、俺の共感を得たことで、自分は間違えたことは言ってないと主張しているのだろう。セクにいじられたのなら尚更。


『ほら、間違いではなかったじゃろ?』


『別に否定した覚えはないんですけど......』


『ぐっ......たしかにそうじゃな......』


『まあでも、モルさんの珍しい姿を見れてよかったですよ。』


『こんの......調子に乗りおってからに......』


『まあまあ、いつもの仕返しってことで理解をしておいてほしいですよ。』


 楽しそうにニコニコ笑っているセクの姿が容易に想像できる。いつもはモルに実力行使されているから尚更だ。


 なんだかモルを暖かく見守るみたいな雰囲気になってしまった。


『そうじゃ、ソータよ。お主、試したいことがあったのではないか?』


 その空気感に耐えられなくなったのか、ものすごい話を逸らされた。


 どうしようもなくなった時に話を逸らそうとするのは、結構誰でも似てるなと思った。


 まあでも、試してみたいことがあったのは事実なので、実験場に向かうことにした。明らかに倉庫って言った方がしっくりくるのだが。


 そこで何をしようとしているのかというと、あの黄色い鉱石についてだ。あの時はシルグからの説明が簡単なものしかなかったけど、当時はあれしか調べられなかったという。今は多少レベルが上がって鉱石の説明の量が増えているらしい。


 でもまあせっかくなら、と。知らない部分をあえて自分で調べてみたいのだ。


 一応暴発とかしないように空間魔法で抑えながら調べることになるんだけど、空間魔法の制御とかにもちょうどいい練習になるから、試してみるのはいいかもね。


 あと、前に作ろうとしてミスった電気を作ってみよう。これの作り方を覚えておいて、制御できるようになれば、結構できることの幅が一気に広がるんだよな。


 俺が実験場に向かうと、そこにはなぜかディガがいた。紙に何かを描いていた。集中している様子で、俺が来たことに気が付いていないようだ。


「ディガ、それって今何してるの?」


 俺が話しかけると、ディガは驚いたのか、ビクッと肩を跳ねあがらせて俺の方を振り向いた。


「......なんだ、ソータか。いきなり話しかけてくるな。驚いたから。」


 手のひらで胸を押さえて言う仕草に、俺はごめんと謝った。


「ここに用事があってきたんだけど......もしかして邪魔した?」


「いや、邪魔なんてことはない。俺のことは気にせずにやりたいことをやってくれ。」


「ありがとう。ディガも俺のことは気にしなくていいからな。」


「ああ、わかった。」


 お互い、何をしているのか、わざわざ聞かないということにした。『気にしなくていい』は裏を返せば、気になるんだったら、見てみろみたいな意味だからな。


 俺は危なくないようにディガから少し距離を置いた位置で行うことにした。


 椅子を持ってきてそれに座り、手のひらで小さい雲を作る。


 そこからも前回と同様、摩擦を起こせばいいんだが......前回はなんか摩擦が起こりすぎて暴発だよな?あれは確かに暴発していた。


 今思えば、相手にとって文字通りの青天の霹靂だったんだろうな。


『あれをどうにかして制御できれば、お主の目的は達成されるのじゃな?』


 一応なのか、俺がやろうとしていることの確認をしてきた。


 そうなんだよね。制御できなかった時が怖いから、今はまだ何もしていないけど。


『お主、スキルの使い方の基本を忘れたのか?いつもお主は何をしている?』


 え、いつもこんな感じにしたいなって言うイメージしてるよ?でも、制御するっていうイメージが抽象的過ぎてどうすればいいか分かんないんだよね~。


『そこでつまづいておるのか。ふむ。どうすればうまくいくかの。抑え込むのではなく、形を柔軟に変えてみるのはどうじゃ?例えば、それの一部に穴をあけて前方に放出してみるとかな。』


 確かに。内部からの力で抑えきれないなら、抑えきれなくなる前に放出するなら、暴発しないで済むか。


 そうだよ。それ以外にも小分けにして、内からの、力を分散させるという点でもこれはいいかもな。

 でも、やっぱそうなると、一つ一つの制御がしにくくなるかもしれないから、一点に絞った方がいいな。


 俺はこの手元の空間内で摩擦を起こして電気を発生させる。だんだん制御がしにくくなってきた。


 そこで、アラガン鉱石に向けて、この手元の空間に穴を空けた。


 電気が放電され、電気の筋が見えるようになった。アラガン鉱石に当たった電気はバチバチと音をたて、火花を散らせており、あれに触れたら......と考えると少し恐ろしくなった。


 たまに俺の方にも電気が飛んできそうで怖い。これをやるときは、静電気とかにも気をつけよ。


 だけど、まだ制御できているかと聞かれたら、そういうわけでもない。まだ前方にしか放出できず、使いやすいように手のひらから電気を放てるみたいな、便利なことはできない。目標が高いかもしれないけど、個人的に制御っていうのは、うまく使いこなせるようになるって感じだから、もう少しいい方法がないか試してみよっと。


『周りに被害がないようにするには......大きい空間を作って、その中でやってみたらどうだ?』


 確かに。それがあるわ。昨日みたいにアリサを止めるために作った空間みたいなね。時間が経つのも遅くなるし、むしろそっちの方がいいな。


 俺はあの時の空間を作り、その中に入る。入る直前、視界の端にディガが驚いたような表情をしていたのが見えたが、まあ仕方ない。


 中に入ったら気兼ねなく実験できるしな。一応俺の体の周りに空間魔法でバリアを張っておくか。


 よし、それじゃあやっていこう。まず、さっきのように雲を発生させて雷を発生させる。


 次はこれを手のひらに薄くコーティングするようにまとわせる。


 はたから見れば、手に電気がまとわりついているように見えるだろう。手のひら側にいくつか穴を空ける。すると、前方の四方八方に向かって放電された。


 それを指先だけにやってみると、先ほど同様、前方にのみ放電できた。


 なるほど。じゃあこれをグローブに設定しておけばうまく使えそうだな。今度設定しとくか。


 じゃあ、次は使い方を考えるか。あ、あの黄色の鉱石忘れた。一旦戻ってみるか。


 一度戻ると、ディガが俺に話しかけてきた。


「な、なあソータ、今どこにいたんだ?突然消えたように見えたが......」


 少し動揺している様子からも、相当驚いたのだろう。


「ええと、まあ簡単に言うと、スキルのおかげかな。ちょっと試してみたいことがあって、万が一被害が出ることがないようにちょっと特別な空間に行ってるんだよ。」


「えっ、お前それ大丈夫か?変なことになってないか?」


 ディガに心配された。まあ見てみないと、というか、まだ空間魔法のことを話してないから、ディガにとっては完全に未知なんだよな。


「まあ、心配するような危ないことはしてないから大丈夫だよ。心配してくれてありがとうね。」


「危なくないならいいが......くれぐれも鉱石類の扱いには気をつけろよ?骨も拾えないような場所で死ぬなよ?」


 いやいや、そんな大げさな......なんていうフラグは立てない。


「そんな不吉なこと言うなよ......俺が怖くなるじゃん。」


 でもまあ、それだけ心配してくれてるってことか。でも、そういわれると少し怖くなり、つい眉を下げてしまう。


「冗談だ。気にするな。いつでも行き来できるようだし、最悪の事態は起こらないだろ。」


 まあね。俺が作った空間だし、回復粉もあるから、そういうことは起こらないか。


 一応ディガにお礼を言ってから黄色い鉱石を持って、さっきの空間に戻った。


 ......よし、それじゃあ始めるか。


 いかがでしたでしょうか?今回は、蒼汰が前に試そうとしてミスした、電気の扱いに挑戦していましたね。元々、電気系統の魔法は、組み合わせて使って欲しいという個人的な願望があったので、これから蒼汰に使わせようと思っています。果たして、実戦で上手く使えるのでしょうか?


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!


 それでは、また次回お会いしましょう。


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