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さて、しっかりやるか。(28日目)

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


 俺は今、ナイフの柄が壊れてしまったものを修復しに、モルのダンジョンに来ていた。


 取ってきた木の棒をここの水に漬けて柄の形に変形させる。ついでに回復粉の補充も同時に行った。


 いや、ね?結構チートだし、あまりこれを使わないようにってしようと思ってたんだけど、使う頻度が増えてきていて、万が一の時にふんだんに使えるように多めに作っておいた。ちゃんとモルにも聞いてみたが、モルが寝てる間の出来事を話すことを前提に許してもらった。


 まあ、話さなくても許可してくれそうだったが。


 そして、当のモルは俺の脳内イメージによると、セクの首を締めていた。


 理由は言わずもがな。セクが先日、モルを乙女だと発言したことについて、俺が話し始めたところ、あの、かき氷を食べた時になる頭がピキーンという感覚に陥った。なお、俺はかき氷を食べてそうなったことはなかった気がする。


 一応必要そうな分は集められたので、家に戻る。


 家に戻って荷物を俺の部屋に置くと、ディガに話しかけられた。


「ソータ、この前から気になってたんだが、あの腕にたまに着けているあの腕輪を見せてほしいんだ。」


 突然そう言われ、一瞬なんのことか分からなかったが、『水従の腕輪』のことだとすぐに理解した。


「えと......何でそれを見たいの?」


 見たいという理由が気になり、思わずきいてしまっていた。まぁでも、俺の物ではあるし、訊く必要はあるんだけど。


「いや、少し見たことのある形というかデザインだったからだ。」


 見たことある?


 とりあえず、部屋から『水従の腕輪』を持ってきてディガに渡す。


 しばらくの間、腕輪の内側や外側を回しながら眺めていたが、驚いたように目を見開いてから俺にそれを返した。


「なんか分かったことある?」


 まさか、本当に見たことあるものだろうか。


「いや、見たことなかった。ただ、昔に見たことのあるものに似てただけだった。」


 そっか。見たことあるだけねえ。どうしてもさっきの様子を見ていると、そうは見えなかったけどな......何か知ってるっていう様子だったし。


「ソータ、今度時間があるときにでも俺の部屋に来てくれ。少し相談したいことがある。」


 どういう相談だろうか。見当もつかないが、とりあえず頷いておいた。


 今日も別に暇だということを伝えると、ディガは首を横に振った。


「いや、今日はロサとレサがやらかしたときに手伝ってやってくれ。俺は直接は手伝うことができねえが。」


 オケ。


「って待て、ロサとレサは今日何するつもりなんだ?」


 聞いていないんだが。というか何かするとして、なぜディガが知っている?


「一週間俺を置き去りにしておいて気が付かないわけないだろ。疑うのは仕方ないかもしれんが、俺は別に帝国側の人間じゃねえぞ?」


「えと......なんかごめん。」


「いや謝んな。別に気にしてねえから。それはそうと、ソータも知らねえことか......まあ、あいつらは何かしら厄介ごとを引っ張ってくるから、備えておけ。」


 それだけ言って去っていった。


 ロサとレサがやること......?何かあったか?何もなかった気がするが......


 一応本人たちに訊いておくか。


 俺はレサの部屋に向かい、ドアをノックする。


 中から入っていいという旨の言葉が聞こえたので、部屋に入る。


 レサは机に向かって何かをしていたようだった。


「で?何しに来たんだ?」


 レサは机に向かったまま、振り向きもせずに要件を求めた。


「ちょっと聞きたいことがあるんだけど......今日の夜、何かするの?」


 レサは机から目を離し、俺の方を向く。ものすごく怪訝そうな目をしている。


「いつ知った?というか、どうやって知った?」


 まあそうなるよね。


「ちょっとそんな感じのことを聞いたんだよ。」


「......そういや、お前は動物たちと会話できるんだったな。」


 うかつだったと、反省している様子のレサ。ディガから聞いたが、あまり言わない方がいいかもしれない。


「ま、ちょっと足りないものを買い出しに行くぐらいだ。別になんでもねえよ。」


 夜に買い出し?でも、レサって結構怪しげな材料使うこともあるし、夜の人目に付かないところで買うものもあるのかもな。


「わかった。ちょっと気になって、それだけ訊きにきた。邪魔してごめんな。」


 じゃあとっとと部屋を出てくれ。そう言われ、俺は部屋を出る。


 何かが引っかかっている気がする。それが気になるが、多分聞こうとしてもキレられるだけなので、今はその引っかかりは保留しておこう。


 さてと。今日は天気もいいし、みんなを洗ってやるか。動物用のシャンプーとかはないから、水だけになるけども。特に子供組のホコリ汚れが結構ありそう。よく外で遊んでるし。


 動物たちを呼びに向かおうとしたが、後ろから視界を塞がれた。


「私はだ~れだ?」


 こういうことをするのは一人しかいない。というか、普通に声で分かる。というのは建前で、この小さい手から誰かはわかる。あえて間違えてあげるか。


「ロサだろ?さすがに分かるぞ。」


 しかし、ロサは不正解だという。


「ざんね~ん。正解は......」


 俺の目元から手を離し、俺の前に回り込む。そこには、ルーナを抱きかかえたロサがいた。


「正解はルーナでした~!」


 ルーナが元気な声で笑顔いっぱいに答え合わせをする。


 昨日から、ルーナはほとんどレサとロサのどちらかと一緒にいる。


「ふっふ~ソータもまだまだだねっ。」


 得意げな笑顔で話しかけるその姿は、本当に無邪気な子どもみたいだという印象を受けた。


 昨日ああ言われたが、ロサはいつも通りにしている。


 しかし、料理をしているとロサが手伝おうか?と来てくれたり、先ほどのようにスキンシップをしてきたりする。さすがに朝起きたらロサが隣にいてビックリしたが。


「さすがにそれはズルいだろ。ルーナってわかんなかったって。」


 俺が少しすねた風に言うと、アハハッとルーナが笑った。


「それで......ソータは今から何しようとしてたの?」


 どこかに向かうと分かったのか、ロサが尋ねてきた。


「今日は天気もいいし、動物たちを洗ってあげようかなって思って。」


「じゃあ僕も手伝うよっ。やったことないことだし、何かアイディアにつながるかもしれないからね。」


「ルーナも一緒にやる~。」


 二人が手伝ってくれるようだ。ルーナは結構動物の撫で方が上手いようで、そのおかげか、リーズやファイガ、ビーンなどはすぐにルーナになついていた。というか、あの三匹は誰にでもすぐになついてそうだけど。


 俺はまずライアとファイガとリーズを連れていく。動物たちのまとめ役からやるのは結構やりやすくはある。それと、リーズは毛が全然乾かないから。ファイガは早めにやっとかないと、怖がったら暴れて洗えないかもしれない。


 一応、天気がいいから洗うと伝えると、ライアは嫌そうな顔をしながらも、渋々頷いた。たしかに猫は水が苦手だわ。


 毛と毛の間のほこりを取るのは健康面を考えても大事だしな。


 んじゃまあ、早く洗ってあげようか。


 川の少し下流の方まで行き、持ってきておいたたらいで水をすくって、ライアにゆっくりかける。


 最初は表面のみにしかかからなかったが、ある程度かけたところで毛の下に水が染み込み始めた。


 体に直接水が触れたことで冷たかったのか、ライアは少し体を震わせた。


「一応、ゆっくりかけてあげてね。いきなり一気にかけると、反射的に暴れることもあるから。」


 二人にこういう風にしてねとお手本を見せたことで、二人はコクリと頷き、それぞれ渡したたらいに水を汲んでロサはリーズを、ルーナはファイガを洗い始めた。


 たまに、ロサがルーナが水をくむのを手伝ったりしている。見ているだけでほっこりするなぁ。


「蒼汰蒼汰蒼汰ぁ!!毛が......毛が全部持っていかれる!!」


 ライアの悲鳴にライアの方を見ると、ライアの毛の表面でちょっとした渦巻きができていた。


 しかもその渦巻きに毛が巻き込まれているらしく、洗濯機で洗われているようだった。


「やばい!ごめんライア。意識してなくて......」


 二人の方を見てて、意識せずこうしてしまっていたようだ。


「まあ、毛は無事だったし、汚れは取れたから......まあ許してやろう。」


 あ、まあ、許してもらえたのなら......いいか。気をつけてやろ。


『ソータ、まさか無意識的に使えるようになるとは......一体妾が寝ている間に何があった?』


 結構ギリギリまで使ったからかな。熟練度みたいなのが上がったじゃない?知らんけど。


『適当じゃな。水への扱いに慣れすぎると、無意識に使うことがある......か。暴走させなければよいが......』


 まあまあ、洗うってことでちょうどよかったんだから。


『危惧しているだけじゃ。万が一お主が暴走させた場合、止める手段が格段に限られる。その場合の対策を考えておくことも視野に入れておくのじゃ。』


 まあ、絶対に暴走しないなんてことはないしな。


 とりあえずライアを洗い終えたので、ある程度残った細かい汚れを水とともに流してあげて、ライアは洗い終わった。結局、体がきれいになると、気分がよくなるようで、さっぱりしたとでも言いたげに、ニコニコだった。


 ロサとルーナも洗い終えたようで、ボリュームが格段に減ったリーズと、体に付いている水気を体を震わせて払うファイガがいた。


 さて、残りのみんなも洗ってあげるか。次は......シルグ、ガルジェ、ビーンだな。その次、バッシーとゴッシー、最後にアドル、ラク、ラドはだな。


 何となくアドルたちは嫌がりそうなイメージだからだ。というか、見た目はネコ科だし、嫌がるだろうな。




 帝国は悪だ。そんな考えが生まれたのは、昔から......私たちの母親が亡くなってからのことだ。もはや必然のことだった。


 元々、私はこんな口調じゃなかった。ロサにも同じことを言える。


 親を殺され、妹まで奪われたことで、私たちは奴らに従うしかなかった。


 いつかルーナを取り戻す。そう決意し、それまでの自分の考えの甘さを捨てるため、心を入れ替えるために口調を変えた。


 もちろん、ロサは当時驚いていた。そんな私に習ってか、ロサも今までの喋り方を改め、本心がなるべく見えないような言動を取っていたらしい。私からすりゃあ、分かりやすいことこのうえなかったが、他からは分かりにくかったのだろうか。


 私たちは帝国に協力という建前の脅しをされて、仕方なく王国に潜り込んだ。


 ロサから話を聞くと、私が本気で帝国の奴らに従っていると思っていたらしい。


 そんなわけあるはずがない。王国を滅ぼす手伝いをして?ルーナを救い出して?それから帝国を潰す?


 そんなことする必要がない。手っ取り早く帝国を潰すための研究のおかげで、ルーナを救い出せれば、奴らの記憶操作をできる段階にまでなった。記憶を操作するだけでは生ぬるいと思うだろう。


 当たり前だ。それだけでは生ぬるい。生まれてから今まで、ずっと拷問され続けてきた記憶を植え付ける。


 思わず人生をあきらめたくなるレベルまで苦しい記憶を植え付ける。


 そのあとは何もできないようにつるし上げて帝国民の信用を無くす。今日の夜決行だ。もちろん、ロサにも手伝ってもらうが、基本的には私が動く。


 闇夜にまぎれて行えばできる。何も難しいことじゃない。後片付け?そんなもんは知らん。あとは連中がどうするかだけだ。


 奴らには私たちを敵に回すとどうなるかをタップリ痛感させてやる。あいつらの血を飲む必要があるなんて、不愉快極まりないことでしかないが。


 ......それにしても、なんか疑われちまったな~。間違いなく私とロサが帝国に行くことを話しているのを聞いた記憶は消したんだが......仕方ない。これ以上迷惑かけねえように私とロサだけでやる。


 ソータが聞いてたなら、間違いなく『俺も手伝う』とか言うのだろうが、これは私とロサの個人的な問題だ。あいつを巻き込むわけにもいかねえ。


 まあ、せめてルーナを預けておくぐらいか。ソータとアリサに任せておけばルーナはとりあえず大丈夫だろ。


 夜までに準備を整えておくか。あとでロサにも必要のないものがないかを聞いておかねぇとな。



 いかがでしたでしょうか?今回は5章の始まりということで、あえてほのぼのした始まり方にしてみました。それにしても、レサはまた蒼汰の記憶を操作したようですが......微妙な操作だったようなので、問題はなさそうですね。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!


 それでは、また次回お会いしましょう。


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