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あ~、考えてみるか~。

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


 部屋に戻った俺は、けだるい体に任せてベッドに倒れこんだ。


『ソータくん、面白いことになったな。あれは、はたから見たら一種のプロポーズだったぞ?』


 速攻茶化すな。俺だってまだ混乱してるんだし。


『急なモテ期ってとこか?ロサちゃんは自分では疑問に思ってるらしいが、ソータのこと好きらしいぞ?』


 いや、さっきそう言われたって。返事するのはいつでもいいとは言ってたけど、あんまり待たせすぎてもダメだよなぁ。長くて1週間ってとこか。さっきも思ったけど、ロサの思いに応えられるような器じゃないし......


『ソータくんはロサちゃんのことどう思ってるんだ?』


 う~ん、正直に言うと、仲間って感じ?ここにロサたちが来てから少ししかしてないけど、計画練ったりとか、服のデザインを一緒に考えて話し合ったりしたのは楽しかったけども。


『そこに恋愛感情はないと?』


 ないっていうか、その恋愛感情が分からないっていうか。逆に訊きたいんだけど、恋愛小説を読んだときに、心の奥からくすぐったくて、むずがゆいのに心地いいものがこみあげてくることがあるけど、それはなにか関係あるのか?


『俺に訊くかぁ?まぁモルさんに訊くよりマシか。』


 ん?なんでモルに訊くのはダメなんだ?


『あ~、言わないでくれよ?この前、お前の記憶からその恋愛小説?っていうのを読んでいて、なんとも言えない感情でゴロゴロのたうち回ってたっていう、記憶があったんだよ。』


 あ~、激甘恋愛小説あるあるだな。俺も無意識にニヤニヤしてることがある。じれったいやつだと、そのあと、どんな風に結ばれるのか考えてしまうんだよな~。


 そこで、セクの声が小声になる。


『そこで、モルさんは小さく「妾もこんなこと体験してみたいの。」って言ってたし、そこら辺は初心(うぶ)なんだと俺は思っている。』


 そういうことね。えじゃあ、セクがモルより自分の方がいいっていう理由は?


『男心がわかるってのもあるが、里にいたころ、小さいころだったが、とある人に淡いものだったんだが、恋心を抱いている時があってな............もしかしたら、参考になるかもしれないぞ?』


 参考って......まあでも、一般論なんて結局当てになんないな。結局自分次第だし。それなら、経験のある人に聞くのが吉だな。


『とは言っても小さいころの話だからな?本当に少し気になるってぐらいだ。その時は、気が付いたらその子の方を見てたり、ふとした瞬間に思い浮かべてしまうって感じだな。』


 ......なるほど?ふとした瞬間って言うのは?


『なんていえばいいんだろうな......ほら、何も考えていないときとかあるだろう?そういう時に頭に浮かんでくるんだよ。』


 なるほどねぇ......え、じゃあその気になりだしたきっかけとかは?


『正確なことはあまり覚えてないが......単純に俺の好みの顔で、当時、俺よりも強かったからじゃないか?』


 え、なにドラゴンってより強い人に惹かれる感じなの?「当時は」って言ってたし。


『そういうわけじゃない。俺がそうだっただけだ。今は全然違うがな。』


 なるほどねぇ......ちょっとは参考になったかな。


『......なんだその上から目線な言い方は。』


 え?ああごめん、そんなつもりはなかった。


『まあいいか。それとは別に、参考になったとは言っても、一個人の考え方だし、そんな慌てて考えると、結局自分の心に対しても見落としがある。ドギマギしてる状態で考えるより、一度しっかり寝て、しっかり冷静になって考えてみたらどうだ?』


 確かに、結論を急ぎすぎても意味ないな。どうするかを自分の中でまとめないと、相手にとっても失礼だしな。


 何より、安易な気持ちで考える方が後が怖い。その場合、主にレサが何してくるかわかったもんじゃない。


 これは逆にあえていつもみたいに後回しにして、また余裕があるときに考えた方がよさそうだな。そもそも、そこまでロサのこと知らないじゃん。今度、色々と聞いてみるか。


 俺は少し目を瞑る。何だかんだで疲れがたまってたのかな。目を瞑るとすぐに眠たくなってきた。


『もしもし蒼汰さん、聞こえますか?』


『はい、もしもし蒼汰です。誰かは分かりますが、どちらさんでしょうか?』


『私、地球の○○町を任されています、エルスと申します。』


『はいはい、どのようなご用件で......?』


『......あの~これって、いつまで続きますか?』


 突然の困惑した様子のエルスさんの声で、この流れは一旦断ち切る。


『すみません、少しふざけました。もしもしって言ってたので、なんか電話するみたいにしてみようかな......と。』


 少しふざけたことを謝ると、少しはにかんだような声が聞こえた。


『いえいえ、恥ずかしながら私も仕事でも電話を取る機会がないので、面白かったですよ?むしろ、まだ電話を取ることのできるような、書類仕事もまともにできないという......資料もまともに作れないですし......一生見習いですよ私は......』


 だんだん語尾がしぼんで、落ち込んでいるような声に変ってしまった。たまにナーバスな面を見せてくるけど、結構悩んでるのかな。


『ま、まぁ、それはそうと、今日はどうしたんですか?』


 無理やり過ぎたが、話を変えることにした。俺にはエルスさんの仕事のことは分からないし、無理に励まそうとしても、余計に傷つけるかもしれないからな。


『そうですよ!!昨日は大丈夫でしたか?途中からなぜか映像が途切れて......傷が治ってるのは分かるんですけど、体調面に不調はないかなと。』


 声が跳ねているような、いつものトーンに戻り、俺に昨日のことを訊いてきた。


『別に大丈夫ですけど、どこら辺から知らない感じですか?』


『ええと、ソータさんが攻撃を受けて気絶したところまでですね。』


 そこからの話か......


 俺は目が覚めてから起こった出来事を話した。


 話していくうちに、あの石の話をした。すると、なぜか驚いた様子だった。


『その石って、もしかして......』


『あの石がどうかしたんですか?』


 何か心当たりがある感じなのかな。


『蒼汰さんの持っている腕輪の真ん中、グローブの内側の手首部分に石が付いているんですよ。』


 それを言われ、すぐに起き上がってカバンからグローブを片方と腕輪を取り出す。見ると、確かに、澄んだ水色の水晶のようなものが付いていた。


『これはあの石の仲間みたいなものなんですよ。違いは、制御できるか否かにあるんですよ。』


『それは......どういうことですか?』


『蒼汰さんの持っている石は、スキルの効果を石の中に残存させ、所有者の意思に応じて、形のままのスキルを吐き出すんですよ。何回も使えるのは、残存しているスキルがコピーされてるからなんです。』


 なるほど。魔法以外も登録できるのか。いや、魔法もスキルの一つだから、別に大丈夫だったわ。ちょっと待て。ってことは、装備品の効果で、腕輪は水からの影響を受けず、グローブは空間系統のスキルからの影響をほとんど受けない。って言ってたんだよ。


 宝器(トリベル)だっけ?これには、石じゃなくて、本体にその効果があると見てもいいのかもしれない。実際、石の色は同じだったし。


『だけど、あの緑色の石は、その水色の石下位互換みたいなもので、本人の意思に関わらず、スキルを勝手に取り込み、吐き出し続けるっていう、いわば暴走させる効果があるんです。これの悪いところが、この石を数キロ遠くに投げるか、破壊するしか止める方法がないんですよ。しかも、固有スキルにまで影響を及ぼす凶悪なものもあるのだとか......』


 なるほど。それがアリサが暴走した理由か。じゃあ、あの商人はそれを知ってて売ったのか?いや、ただ単に見た目は良さげな宝石だったし、見た目だけで売りつけてきたのかも。


 待て。じゃあ、何で俺が持ってるときは何ともなかったんだ?アリサが持っていたと考えても、しばらくしてからのことだった。


 とりあえずそのことをエルスさんに訊いた。


『そうですね......もしかしたら、スキルの発動が条件なのかもしれません。』


 あ~、確かに部屋の中ではアリサはスキルを使っていなかったな。いやでも......


『俺とアリサが刑務所に向かうとき、少なくとも、アリサはスキルを使っていましたよ?』


 そう、この話が本当ならば、この点では少し矛盾する。アリサから聞いた話によれば、ピンク髪の女が関係がありそうだし。情報の補填として、このことを話した。


『あ~、それはメドゥーサかもしれませんね。石の暴走と関係があるのかはわかりませんが、体が固まりかけたのは、その目を見たせいでしょう。本来は頭にたくさん蛇が乗っているのですが、今はほとんど蛇が乗っている個体はおらず、特徴的な目をしているものの、人間と変わらない姿をしているそうです。』


 なるほど。あの時の体の違和感はそのせいか。でも、メドゥーサって、目を合わせた人を石にするんだよな?石の暴走と関係があると見てもいいのかもしれないな。


『でも、メドゥーサって見た人を石にするのではなかったんですか?体が一瞬固まるだけでしたけど......』


『多分、目を見ている間、誰からも声をかけられたり触られたりしないと、完全に石になってしまうはずです。一度石になったとき、戻る方法はまだわかっていないそうです。』


 メドゥーサか......俺とアリサは大丈夫だが、他が危ないな。いつか対策を考えておかないと。


 俺があのピンク髪の女性に会った時の対処法を考えていると、エルスさんが俺にこう言ってきた。


『そういえば、蒼汰さん、さっきのってどういうことですか?』


 うんまあ、なんのことか心当たりしかないけど?一応訊くか。


『さっきのって、一体どういうことでしょうか?』


『もちろん、あの吸血鬼(ヴァンパイア)の女の子のことですよ。三回血を吸われてましたよね?というか、あの説明を聞いていましたよ?』


 うん、まあそうだろうね。でもねえ、俺自身もどうしたらいいか分かんないんだよねぇ。


『というか、知っていたのなら、ちょっと聞きたいんですけど、俺ってどうすればいいですかね?』


 一応同性の人の意見も聞いておきたい。


『どうすればいいと言われてもですね......好きじゃないのなら、断ればいいんじゃないですか?』


 結構あっさりだなぁ。でも、確かに悩んでいるより断った方が楽になるときもあるのか。


『いや、むしろ断った方がいいと思います!!』


 なんか、眼前まで迫って熱意マックスで言ってきてるような声量なんだけど。


『まあ、自分なりに考えてみますよ。いくらでも時間はあるので。』


『......まぁ蒼汰さんの問題ですし、私が口出ししても......』


『ん?今何か言いました?』


『い、いえ、別になんでもないですよ?ですが、蒼汰さん自身にとって大事な選択になるんですからね?』


 うん。まあそれはそうだろうね。俺もしっかり考えておかないとなぁ。


『あ、今日はもうマイクを切るんですけど、長期休暇まであと二週間ほどなので、待っててくださいね。アニマルセラピーって言うんですよね?早く癒されたいです。』


 あ~、確かに言ってたな。というか、あれからもう、二週間もたったのか。早いようで遅いような......いや、やっぱり早いわ。


『その時はまた言ってくださいね。俺も色々用意しとくので。料理とかしか用意できないんですけど。というより、口に合うかは分からないんですけど。』


『い、いえ、来ていいと言ってもらえるだけでうれしいですよ。よ~し、それまで私もお仕事頑張りましょう!!』


『「先輩」に注意されないようにしてくださいよ?』


『もう、からかわないでください。......それじゃ、また今度話をしに来ますね。』


『はい、また今度。』


 プツッという音とともに音声が途切れた。


 さて、俺も一旦寝るか~。結局、自分の考えをまとめきれなかったし。メドゥーサのことについても考えないといけないし。


『ソータ、今誰と話してたんだ?俺には何も聞こえなかったが......』


 ......ああそっか。セクは知らないのか。モルは俺の記憶見て知ったようだったから、知ってるものかと思ったよ。


 俺はエルスさんについて、俺が転生したことをつまみながら少し話す。


『はぁ。他の誰にも言うなよ?いくら知名度のない神様とはいえ、対話できることは異例だからな?前例がないだけとも言えるが。』


 やっぱそうか。どの道、ここに長期休暇の時に来るって言ってたし、この家にいるメンツには話す必要があるけどな。


『ま、必要以上に警戒する必要もないか。俺はモルさんが起きるまでしばらく待ってるとするか~。』


 何気にセクたちのいるところって、快適だから、一人でも時間は潰せるな。


 寝ることは脳内の整理を行ってるっていうけど、本当にそうなのかな。寝れば分かるか。昼前だけど、昼寝ってことで。がっつり寝ましょう。少し精神的に来てるし。



 いかがでしたでしょうか?今回は、エルスさん情報により、あの謎のピンク髪の女性の正体が分かりましたね。アリサの時に何かやっていましたが、石によるアリサの暴走となにか関係があるのでしょうか。


 さて、今回で、第4章が終わりまして、次から第5章に入っていきます。一応予定では、ディガについて少し掘っていこうと思っているので、ぜひ、これからも読んでいただけると幸いです。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!


 それでは、また次回お会いしましょう。


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