待ってやばい。少し混乱してきたかも。
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
家に戻ってきた俺たちは、一応もう一度忘れ物がないか確認してから家の中に入る。特にない感じだ。
すると、中から少しだけ焦げ臭いにおいがする。
においはキッチンの方からするようで、慌てて向かうと、火がかなり高いところまで上がっていた。
その前でガルジェとロサがあたふたしていた。そこで、キルス鉱石を空間魔法で抑え込み、その内部に水を流し込んで空気と遮断する。......あれ?最初からこうすりゃよかったんじゃね?
いやでも、水が蒸発しすぎて炎に触れられないか。それに、解放したときに水蒸気が熱くなりすぎて、危険になる場合もあるのか。やっぱあれでよかったのかもな。
突然日が沈下したことに驚いて、二人は同時に俺の方を見る。二人は同時に口を開き、おかえりとでも言ってくれるのかと思いきや、
「「死ぬかと思った~」」
と、胸をなでおろしているようだった。煙が少しあったせいなのかは知らないが、地味に目の端に涙が見える。
まな板を見ると、野菜炒め(肉の比率多め)でも作ろうとしていたのか、様々な野菜が切られておいてある。
「はぁ。ちゃんと気をつけてくれ。火加減難しいとはいえ、今みたいに強すぎると、家が燃えるかもしれないからね。」
軽い注意をして一旦その場を離れて、荷物をリビングの端に置く。そして、少し燃えてしまっている野菜を仕分けて捨てる。
「ソータさん、ごめんなさい。どうしても火加減が難しくて......あ、それとお帰りなさい。」
「ソータ、おかえり。この石での料理が難しくて......朝ごはんまだだから作ってくれない?」
ガルジェは炎を上げてしまったことについて言い、ロサはお腹が空いたと、俺に言う。
俺はガルジェに気にするなと、ロサにわかったと答え、手早く野菜炒めを作る。もはや肉炒めだが。味付けはホイコーロー風にした。
全員分用意し、俺とアリサは朝飯を食べたので、みんなが食べている間、荷物を部屋に置きに行く。レサは相変わらず部屋で食べたようだが、ルーナも一緒に食べたのだろうか。ロサが持っていったのは二人分だったし、あり得る話か。
食べ終わったとき、ロサにアリサと一緒に部屋に来てほしいと言われた。
そこで、アリサと一緒にロサの部屋に向かう。
中に入ると、ルーナとレサとロサがいた。ルーナは昨日見た時とは一転し、髪がサラサラで、昨日あんなやせ細ってたとは思えないほど、年相応の肉のつき方だった。
しかも、レサに抱っこされていて、レサもルーナもどちらともとてもうれしそうだ。
「ソータ、アリサ、本当にありがとう。二人がうまくやってくれたおかげで、ルーナが戻ってきてくれた。もうね、僕たちの妹はほんっとうに天使だから、可愛がってあげてほしいな。ほら、お姉ちゃんもルーナもお礼言って。」
後ろを向いて、ロサは、レサとルーナに礼を言うように促す。
「お兄ちゃん、お姉さん、ルーナを助けてくれてありがとうございます。ルーナはお姉ちゃんたちとまた会えてうれしいです。」
言葉では少ないながらも、心からうれしいのだと分かる表情と声でお礼を言って、俺とアリサに頭を下げる。
「あ~、なんていうか、ルーナを助けてくれてありがとな。これからは、ちゃんとお前らを信用して協力してやるよ。」
少し気恥ずかしいのか、レサはそっぽを向きながらいつもより小さい声で言う。
全員言葉の数は少なかったが、それだけで十分誠意は伝わってきた。もちろん、それはアリサも同様だろう。俺たちは無意識に顔がほころんだ。
俺としても、あまり言葉で言われすぎてもむずがゆいし、これぐらいがちょうどいいかな。
「言った通り、目的を達成しただけだよ。どちらかというと、その後の方が大変だったかもだけど。」
「そうね。あの帝国にいた商人は一発やってやらないと気が済まないわ。」
俺たちは静かに、あの石を売りつけてきた商人に怒りを向ける。
「そうだよ。あのあと何があったの?連絡が途切れたけど......」
「ああ、それは私も聞きたい。どんなトラブルが起きたんだ?」
二人ともルーナを助け出してからのことに興味津々のようだ。そこで、あの時起きた出来事を事細かに話す。意識の中でのことは話す必要もないため、そこは省いたが。
すると、二人は何かを決めたような、覚悟を決めたような表情となった。そして、コソコソと話し合う。ルーナは話が長かったからなのか、いつの間にかスヤスヤと寝息を立てていた。
「じゃあ帝国をつぶすか。私からしたらあそこ全て興味ないしな。」
「いやいや、お姉ちゃん、さすがにそれはやめとこうよ。あの国はトップがゴミだからそうなってるだけだから、そういうやつらをつぶそうよ。実際、あそこにいた時、全員が全員終わってたわけじゃないしね。」
「甘くなったな。ロサ。まあ私も無駄な犠牲を出すつもりはないしな。そもそも帝国全域に向けたものはさすがに無理だ。ピンポイントで打ち抜けるものだけ作っておいた。」
「さっすがお姉ちゃん。僕だってあいつらに仕返しはしたいけど、関係ないところにしたくないもん。国規模のところは国に任せようよ。」
「まあ命令前にトップをつぶせば帝国も動けないし、そのころを狙うぞ。......ちょうど明日か明後日だな。やるぞ。」
「バレないようにね。」
一部しか見ていないが、確かにあれはひどすぎた。これは止めなくていいかもな。関係のない人たちに手を出さなければだが。そして、ものすごい丸聞こえで、背を向けて話してる意味はあまりないが。
アリサは脳内で何かを話しているようで、少し視線を上に向けていた。多分、レサとロサの発言についた話しているのだろう。
それから少しすると、おもむろにレサがこちらを向いた。
「そうだ、アリサ、お前まともな武器もってないだろ。この前、鞭みたいなやつを改良したから、それならうまく使えんだろ。私の部屋に来い。」
アリサはいきなりの話に少し動揺していたが、承諾し、そのままレサは眠ったルーナを連れて自分の部屋に戻っていった。それに続き、アリサも部屋を出る。道理でモルと会った時に作ったのが部屋になかったわけだ。
この部屋には俺とロサしかいない状況となった。
俺も部屋を出ようとしたとき、スッと近づいてきたロサに、服を引っ張られて引き留められた。
「ねえねえ、ルーナを助けてほしいって言った時のこと覚えてる?」
もちろん覚えている。急にロサが泣き出して衝撃的だったのだ。俺はちゃんと頷く。そして、なぜだか異様に距離が近い。ロサからフローラルな香りが漂ってきている。
「それで、さ......僕がその......ルーナを助け出したら何でもしてあげるって言ってたけど、忘れてないよね?」
なんだか妙な雰囲気だ。ロサも少し頬が上気している。俺もおそらく顔が赤くなっていることだろう。部屋に二人きりで、こんなくっつかれた経験がないからだが。
しかし、言っていた気がするが、明確には覚えていない。その旨をロサに伝えると、いきなり金髪紅眼に姿を変え、俺に抱き着いてきた。
突然の出来事に戸惑っていると、首元にチクッと、歯を立てられた感覚がある。
そのまま3分ほどそのままにしていると、俺の首元からロサの口が離れた。少し唾液が糸を引いている。俺は少しクラッときた。結構血を持ってかれたみたいだ。
口元をペロリと舌で拭うと、ロサはこうした理由を伝える。
「言ってたっけ?吸血鬼族が血を吸う回数とその意味について。」
聞いたことがあるかどうか微妙だな。覚えてないかもしれない。
「聞いたことがあるかもしれないけど、知らないかな。」
そう伝えると、わかったと頷いた後、ロサは話してくれた。
「じゃあ一回話したとして、改めて話すね。まず、一回目の吸血。これは、相手のことを一切信用しないという姿勢だよ。これは、記憶を取って自分たちを認識させないようにするため。まあ、分かる通り一回も吸血をしないときよりも信用できないってことかな。」
あ~、それは確かにそうか。信用できなさそうなら最初から信用しなければいい。ってことか。しかも、取る記憶も選べるって言うね......
「二回目の吸血には簡単に言うと、信用・信頼の意味があるかな。自分たちが信じられると判断したから、記憶を返すって感じかな。まあ、今のところ、アリサとディガに今のところしてるんだけどね。
でも、ディガは結構前にしてるから、隠してることがあるかもってことで、僕とお姉ちゃんは警戒してるかな。」
取った記憶、読み取った記憶は当時のまま変化しないってことね。そう考えると、基本的に一人に対して一回しか吸血を行わないのが常ってことか。
「そ、それで三回目の吸血なんだけど............」
なぜだか言うのを渋っている?いや、口にするのをためらっているように聞こえる。
「え?なんか恐ろしい理由でもある?」
あまりに渋っているので、少し怖くなり思わずロサに訊いてしまう。
「ちがうよ。そんな怖い理由じゃないよ。その......三回目の吸血には親愛の意味があるの。特に吸血鬼同士なら家族で行うことしかないんだけどね。」
「えっ、じゃあそれ以外では......?」
家族同士にしかしないことを俺にしてきたってことだもんな。
「家族以外......他の種族でもそうなんだけど、これをするってことは、家族に認めたってことなの。」
そういうことか。家族の一員に認めるみたいな感じか。納得した矢先、すぐに、だけど......と、ロサの訂正が入る。
「でも、未婚の人が異性に対してした場合は微妙に違ってくる。」
待て、嫌な予感ではないが、妙な予感がする。
「じゃあ、どういう意味があるんだ?」
この予感の正体が気になり、どうしてもすぐにきいてしまった。
「元々の起源では、『あなたにすべてを捧げる』って意味があるね。」
え?かなり重くない?いやいや、起源って言ってるくらいだし、今は意味合いが違ってくるよな?え、さすがにそのままじゃないよな?
答え合わせはすぐにできた。
「だけど、そこから年月を重ねるごとに、少しずつ意味が変わっていったらしくてね、今はね、その相手に『婚約を申し込みます』って意味があるの。でもね、断る権利は男性の場合にはないんだ。というより、断らせないかな。女性の吸血鬼は執着が強いし。」
笑顔で実に楽しそうな様子で語るロサの目からは、いつの日か見た、ライアと同じ目をしていた。それすなわち、狩人の目だ。絶対に逃がさないという気迫をひしひしと感じる。
「オッケ。わかった。一旦質問させてくれ。なんで俺にそうしたんだ?」
そう、そこが一番の疑問だ。だが、それよりも突然の展開に俺自身が混乱しているため、自分自身を落ち着かせるための質問だったかもしれない。そも、まだ会って日が浅いのだ。いくらロサが俺の記憶を持っているとしても、ここまでの思考にいくだろうか。まじでいつフラグがあったんだ。一目惚れとかいう理由じゃないと分からないんだが。
「まず、さっき言った通り、なんでもしてあげるため。それにね、人間の一部の国は別だけど、ほとんどの国と違って吸血鬼族は一夫多妻でも一妻多夫でもどっちでもいいんだよ。だから、簡単に言うとキープってこと。」
え、その扱いひどくね?キープって......
「あっ、でもね、私がキープするのはソータ一人だけっ。今までもこれからもね。それだけは断言できるよ。そもそもあまり他人に興味ないし。」
えっ、あっ、そういうことね。うん。よかった。......いや、急に婚約させられたってことは良くはないと思うけど。
「ねえねえ、ソータは私のこと好き?将来私をお嫁さんにしてもいいと思ってる?」
どうやら、ロサの中では決まっているらしい。俺に自分のことをどう思ってるかを訊いてきた。
「好きかどうかを訊かれても......俺は誰かを好きになったことがないから分からないな。」
これは事実だ。誰かを好きになるという感覚が分からない。そりゃそういう気持ちを向けられたら嬉しいし、照れくさいけど、俺がその気持ちにこたえられない。応えることができるような器じゃないし。
「ま、今すぐ返事しなくていいけど。何週間先でも、何ヵ月先でも何年先でも待ってあげるよ。どうせもう、ソータは逃がさないし。何でも言ってよ。ちゃんとやってあげるからさ。」
一度俺から離れて立ち上がり、そんなことを言う。俺は辛うじて、「ああ。」としか言えなかった。色々と頭の中でグルグルしている。そのせいで目まで回っているような感覚に陥る。あ、これは血が少し足りないからか。貧血症状が出てるかもしれない。
その様子を見たロサが満足そうに笑い、耳元に顔を寄せてくる。
「僕ね、ソータの一生懸命悩むとこ、人のことを思って考えるところ好きだよ。目でわかるもん一生懸命どう答えようか迷ってるってこと。」
そうささやかれて、俺はついに思考が停止した。
「ふふっ。四回目以降の吸血の意味についてはまたその時が来たら教えるねっ。じゃ、お姉ちゃんの所に行ってくる~。いつでも返事は待ってるよ♪できれば二人きりの時がいいけどね~。」
ロサは再び俺から離れ、部屋から出ていく。
ええと......もう色々ありすぎて頭の整理しきれないよ......ただえさえ、帰ってきたばかりで力が抜けてるのに、もっと脱力した気分だ......はぁ。まあ若干貧血っぽいしな。それも原因か。
俺は少し床に寝ころび、目を瞑ってロサに言われたことを頭で反芻する。
こういうとただの最低な男だが、冗談めかして言ってるせいで、どうしても真実とは思えないんだよな。記憶なくしてすぐの時もからかってきたし。
五分ほどしてから、俺は起き上がる。さすがに自分の部屋じゃないと落ち着けねえ。
僕は部屋を出て、扉にもたれかかって小さく呟く。
「言っちゃったなぁ。どうしよう、これでソータが僕のこと嫌いだったら。」
まあ、感情読んでも嫌な色は見えなかったし、大丈夫そうかな。
実を言うと、僕自身もソータが好きなのかは分からない。でも、異性として気になってるし、さっき言ったのは嘘じゃない。
初めて会った時も正直、僕好みのお顔をしてた。あの驚いた表情......ずっと忘れないかもね。
でも、ルーナを助けるって言ってたときは、かっこよかったし、その時からちゃんと気になり始めたのかもね。しかも、ちゃんと言ったこと守ったし。
まぁ、自分でも一週間で告白って言うのは早すぎると思うけど。......いやでも、早いも遅いもないか。
それにしても、ソータにはさっきみたいにぐいぐい行くと照れちゃって可愛いところあるんだよね~♪
でもねぇ、やっぱ本能的に美味しい血を求めちゃうのかな~?二回とも寝ぼけてソータの血を吸っちゃったし。さっき初めて味わったけど、今までにないおいしさだったね。
なんて言うんだろう......美味しいところだけを濃縮しちゃうと逆にまずくなっちゃうじゃん?そうじゃなくて、濃すぎないくらいの濃厚さで、クリーミーだね。
他の種族の人たちが血をなめると、アラガン鉱石みたいな鉱石の味がするって言ってたんだけど、僕たちの種族の場合、人の心とか相性、性格によって感じる味が違うんだよね。お姉ちゃんは、僕と味覚の好みは似てるけど、ソータの血の味はちょっとだけ好きって言ってたな~。
ま、もしも断られてもその時は色んな方法で仕掛けるだけだし。僕が少し意識してるのにソータが意識してくれないのは僕としては悲しいしね~。
でもまぁ、僕もちゃんと、好きっていうことなのかよく分からない、このモヤモヤとした感覚のその意味を知れるなら、今日行動を起こした意味はあるのかもね。
僕は扉から離れてお姉ちゃんの部屋に向かう。どっちに転んでも僕にとっていいことにはなりそうだけどね~。例えそうなってなくても、どうせここの居心地いいし、もうこの家から離れるつもりはないから、告白してなくても、結果的に一生ここに居ることになるもん。
だったら面白くて、自分にとって嬉しい結果になりそうな方選ぶよね~。僕は先手必勝派だし。これからそういう輩が来ても僕が最初だからね~。
お姉ちゃんの部屋に入ると、レサとアリサが、何をしてたのか不思議そうな表情でこっちを見てきた。
「どうした?何かいいことでもあったか?」
少しだけ顔に出てたんだろうな。お姉ちゃんに何かあったってバレちゃったね。でも、今はまだ話さないでいいかな。ソータの返事をちゃんと聞いてからね。
僕は首を横に振って否定する。
「別に何でもないよ。いつもよりちょっといいことできたかなってだけ。」
アリサはどういう意味か分からなかったみたいだけど、お姉ちゃんは意味深な笑みを浮かべて、
「は~ん。そういうことか。お前が気になる奴がなんてなぁ......」
って呟いてた。も~絶対お見通しじゃんこれさぁ。あとで色々聞かれそうだね......表情隠す練習でもしとこうかな。
いかがでしたでしょうか?今回は、クラムに続いて、まさかの......!?って感じでしたね。
いきなりだと思うかもしれませんが、普段はソータの目線でしか描いていないので、たまには織り交ぜた方がいいかなと思った次第です。できればもうちょい他者目線の頻度増やしていこうかなと。ソータだけじゃ気づき切ることのできない、細かい描写を書きたいというのが自分の思いです。
たまに誤字や脱字、わけのわからない文章が出てくることもあるので、もし見つけた時には報告お願いします。自分だけではどうしても違和感に気が付くことができないので。
そして、4章の終わりみたいな長いあとがきになってしまっていますが、あと1,2エピソードぐらいは続きますので、読んでいただければなと思います。
次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。
面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!
それでは、また次回お会いしましょう。