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番外編③(2)

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


 俺と明兎は、さっき蒼汰らしき人物が出てきたところで朝食を食べる。


 目的は三つ。さっき見たのが本当に蒼汰だったのかを確認する。その場合、蒼汰がどこに行ったのか。最後に朝食を食べるために。


 今は、ジャムという久しぶりの甘味に、顔をほころばせている明兎を横目に、周りの会話に耳を傾けている。


「いやぁ、さっきはすごかったな。まさかクラムちゃんがあんなことをするとはねぇ~。」


「ホントだよもう。あんなポッと出みたいな男に取られるとは......」


「そう言いつつお前も嬉しそうじゃねえか。」


「そりゃそうだろ。今までこんな小さいころから見守ってきたんだ。ホントの娘の成長みたいに見守ってるよ。」


「馬鹿っお前、それ以上言ったら......」


 そこまで耳を澄ませていたところで、男たちの会話が止まる。


「お客さん?あの子の親は私だけですので、あの子は私の娘です。そこをはき違えないように。」


 振り返ると、物静かな青年というような印象の人がものすごい笑顔の圧で男たちに話しかけていた。


「い、いや、落ち着けグラム。ほら、言葉の綾ってやつだろ?」


 どうやら、お互い知り合いのようだ。さっきまで意識を向けていたのに、音もなく出現するとは、なんという隠密能力か。


「それなら安心しました。いくら幼少期からの付き合いとはいえ、父親面されるのは腹立たしいですからね。次、同じことをしたら、コッパ深海の底に沈め......」


「あ~っと、お前、親バカが過ぎすぎてたまに恐ろしいこと口走るよな。」


「何か文句でも?」


「い、いやそういうわけじゃねえが......そういやお前、話してみた感じ、あの青年はどんな感じだった?」


 お、ちょうどいい感じの話題が来た。怪しまれない程度に口に食事を運ぶ。あれ?飲み物が消えた。


「にっが。何これ?コーヒー?ものすごく苦いんだけど。」


 においで分かりそうなものなのに、明兎が勝手にこの透明コーヒーを飲んでいた。そしてものすごく嫌そうな顔をしながら俺に返す。やっぱり明兎には早かったか。


 一口飲んで、思わず明兎にドヤ顔をしてしまう。


「きっしょ。なんでそんな変な顔してんの?」


 おや、気味悪がられてしまったようだ。まあいい。話に耳を傾けなおすか。


「どう、とは?」


「いやそのまんまだよ。どんな印象だったかって。」


「そうですねぇ......第一印象は、お人好しと言ったところでしょうか。彼は昨日来たばかりで、クラムともそこまで話していないのに、クラムの悲鳴を聞いて助けてくれたんですよ。二度も、です。あなたたちでもなかなかできないことですよね。」


「ま、まぁたしかにそうかもしれんが.....」


「なので、あの青年には本当に感謝しかないです。もちろん、ああいう人にクラムの将来を任せられそうなのは事実です。さすがに婿に行くかを聞いたのは、からかいも含めてなんですけども。」


「お前、そろそろ気づけよ?お前の冗談は冗談じゃないって。そんな風にしてると、いつかクラムから嫌われちまうかもな。」


 その時、空気が変わった。文字通り冷たくなった。


「はっ?私がクラムに嫌われるとでも?寝言は寝て言ってください。」


 恐ろしいほど冷たい声で言っている。


「バーカ。これが冗談って言うんだよ。毎回毎回真に受けるなって。クラムちゃんがこれに似たらどうなることやら......」


「聞こえていますよ?」


「「すんません。」」


 なぜか、言っていない方の男まで謝っていた。


 背後で繰り広げられる冷戦(一方的)に、さっきより少し冷めたコーヒーを飲みつつ話の行方を聞き届ける。


 目の前では俺のコーンスープを勝手に明兎が取っていた。こいつ、トウモロコシ苦手だった気がするんだが......見た目とは違う可能性を考えれば、コーンスープではないのだろうか。


「なあ、それってどんな味がする?」


「ん?これ?これねぇトマトスープの味だよ。結構甘め。」


 前トマトスープを飲んだ時は真っ黒だったが......甘めのトマトは黄色いのか?トウモロコシレベルで甘いのなら、違和感しか抱かなそうだが。まあ、黒いトマトスープも大分違和感だったけど。


「ソータって言ってたっけ?俺らもそうだが、あの青年もかわいそうだな。こんな奴に目を付けられたんだから。」


 『ソータ』その単語に思わず体がこわばる。もしかすると、どこに向かったか聞けるかもしれない。


「そんな人を諸悪の根源のように言わないでいただいても?」


 もう一段声が冷たくなった気がする。そういや、この人がここの宿主だったよな?


「そう怒んなって。お前の見た目で、ガチギレ寸前みたいな声出されるのはマジで怖いから。ホントに。おふくろよりもな。」


「別にこいつもけなすつもりで言っていたんじゃ......いや、案外そうかも......」


 割とフォローしていないフォローが入る。どちらかというと、合いの手のようだが。


「はぁ。あなたたちならともかく、仮に私がソータくん目を付けていたとしても、彼からコンタクトしてこない限り、会うことはできないと思いますよ。それこそ街中でばったり出会うとかでもしなければね。」


 ということは、どこに行ったかは分からないのか。それならそれで独自に探すしかないか。


「お客様?体調でも悪いのでしょうか?」


 どうやら無意識のうちにボーっとしていたらしい。心配されたのか、店員......というか、お手伝いか。この宿の施設の説明をしてくれた女の子が声をかけてくる。


 もしかしたら、この子が話に出てきていた『クラム』か?


「君がクラムって子?」


 いきなり訊かれたことに驚いたのだろう。


「あ、えっと、そう......いや、はい。そうです。」


と、少し歯切れの悪い返事をしていた。ってことは、蒼汰が何をしていたか分かるかもな。それを手がかりにできるかも。


 気づいたら皿が下げられていた。トーストしか食ってないんだが......


「ええと、蒼汰、いや、ソータについて知りたいんだけど。」


 正直に言ったところ、少しクラムの表情が変わる。どういう意味を持っているのかは分からないが、気でも悪くしてしまったのだろうか。


「えっと、別に悪いことをしようとかではなくてね?もしかしたら知り合いなのかもしれないから、話を聞いておきたいなって。」


 そういった瞬間、表情があからさまに変わった。うれしそうな表情だ。


「ソータさんはとても素敵でしたよ。私を襲ってきた悪い人を、絵本の中の英雄みたいに助けてくれたんですよ!!」


 あー、まあさっきの話にもあったけど、それだけいいことしたってことね。ものすごい目がキラキラしている。


「話してみて、どんな感じだった?」


 蒼汰かどうかを知る大事な情報になるしな。


「優しい人でしたよ。私を気遣ってくれて。助けてくれた後も、私が落ち着くまで、なんとか落ち着かせようともしてくれもしました。」


 うん。あいつと共通点しかないな。余計なことに顔を突っ込むけど、その後のフォローもなるべくするってところが。


「じゃあ、多分俺の友人のソータだな。どこに向かったとか分かるか?」


 そう断言すると、それなら......と、何かを取り出した。


「どこに行ったのかは分からないですけど、もし会った時にこれを渡してください。」


 そう言って、何かを俺に渡した。見てみると、それは真っ黒な革の手袋のようなものだった。


「ソータさんの泊まった部屋を掃除したら出てきたんですよ。落とし物なので、渡しちゃってください。ここで保管すると、どうしても片手の手袋のことは忘れてしまいそうで......」


 多分忘れないな。これは。でもまあ、受け取るか。蒼汰を探す大事な手掛かりになるはずだから。でも......


「いいのか?こんな見ず知らずの俺に渡して。」


「別に大丈夫ですよ。ソータさんと同じ目をしていますし、同じ髪色ですし。なにより、たくさん頼んでくれるお客さんに悪い人はいませんから。」


 今更ながらはたと気が付いた。明兎を見ると、またトーストを......しかも、フレンチのトーストを頼んでいた。ジャムをつけて食べている。道理で静かなわけだ。すでに3皿食べていたが。


「ありがとう。それじゃ、取っておくよ。」


「お願いしますね。」


 クラムは去っていった。あの年で、親の手伝いか......すごいな。しっかりものだ。


 さて、蒼汰の存在が確信から確定に変わったことで、次の目標が決まった。あいつを見つけて勝手にいなくなったあいつを一発ぶん殴る。そっからは......知らん。それでも、別の世界で蒼汰が生きていたこと。


 それには安堵で、思わず泣きそうになってしまった。また会える。そんな期待もして。


 さて、ここでの目的は果たせた。だけど、まだ確認したいことがある。ここで泊まってついでに確かめてみようと思う。


 俺が明兎を見ると、取られると思ったのか、ハムスターのように口にほおばり、頬を膨らませてもぐもぐしている。


「取らねえから。心配すんな。」


 明兎をなだめると、んぐっと飲み込んだ明兎は、


「お母さんのよりおいしかった。」


と、料理の感想を口にするのだった。話をしなかったのは謝るが......いや、耳を澄ませて、話しかけにくい状況にしてごめんな?



 俺と明兎は、今日泊まる部屋に案内された。机とベッドが二つずつあるシンプルな部屋だった。壁には何かの絵がかけられているが、芸術的価値があるのかはわからない。


 待て。『作・グラム』?あの冷声を出してた人が描いたのか。なんとも抽象的な絵だ。


 さて、明兎にだが、試してもらいたいことがある。明兎に俺の起動したスマホを渡し、メモ機能を起動させる。


「もしかしたら、これで書けるかもしれない。ちょっとやってみてくれ。」


 すると、明兎はどうしろと?というように目で訴えてきた。


「なに?好きな文でも打ってみればいいの?」


 俺もよく分かんねえんだよな~。どうすりゃ確かめられるのか......


「ここに猫が来るってちょっと打ってみてくれ。」


 なんとなく思いついたものを打つように言った。


「ここに猫が来る......?はい、打ったよ。」


 そう言って明兎は俺に画面を見せてくる。何か変化はないようだったが......


 その約一分後。窓からカリカリという、引っ掻くような音が聞こえた。


 俺と明兎はほぼ同時に窓の方を見る。そこには、黒猫......背中に小っちゃい羽の生えた猫がいた。


 窓を開けると、中に入ってきて、明兎に甘えるようにしてすり寄ってきた。


 明兎はくすぐったそうにしながら、その猫をなでる。毛並みもきれいだ。どこかの家から逃げ出してきたのだろうか。


 いや、それよりも......


「本当に打ったことが適用された......?」


 タイミング的にそう考えないとおかしい。猫に夢中になっていて少しわかりにくいが、この状況に驚いている。


 俺が言った言葉に反応すると、目をキラキラさせて俺に視線を向け、うなづいた。


「本当に打ったことが本当になるってこと!?」


 その大声に少し猫は飛び跳ねたが、すぐに気にしないという様子で、明兎に甘えた。......俺の方にも来てくんねえかな。


 まだ信憑性は確かめられないが、次に打ったことが本当になれば、ほぼ確信に変わる。


「明兎、次は明兎のお腹が減るって打ってみてくれ。」


 さっきあれだけ食べたんだ。これで打って、お腹が減るなら、信憑性は確実になる。


 明兎は言われたとおりにスマホで打った。しかしそこには明兎の文字ではなく空兎の文字が。


「おい?何で俺の名前を......?」


 さすがに気になってその目的を聞くと、


「だって、私が食いしん坊みたいでいやじゃん。」


とのこと。まあいいか。俺でも多少は効果があるようだし。


 少し待つと、急に腹が痛くなってきた。


 さらにキュルル~という腹の虫まで鳴る。経験したことのある人もいるかもしれない。空腹すぎて腹が痛くなるというあの現象だ。


 マズイ。ものすごく腹が痛い。文字通り、お腹と背中が引っ付きそうな腹の減りに悶えてしまう。


 空腹が過ぎて足にも力が入らなくなる。あれだ。運動系の部活した直後みたいな感じだ。ああいうときって力尽きてさ、飯食うまでは、マジで動く気がしないんだよな。


 ってか、やばいホントにやばい。腹痛すぎる。


 俺はベッドにうつぶせで倒れこむ。今のところ、これが一番楽な姿勢だ。


 突然ベッドに倒れたことで、驚いた明兎が俺に訊いてくる。


「え、何で急にベッドに倒れたの?」


 なぜか猫まで目を丸くして俺の方を見る。


「腹が減りすぎて......なんもやる気が起きない。」


「大丈夫?食堂まで連れて............あ、ちょっと携帯貸して。」


 突然何を思いついたのだろうか。俺はスマホのロックを解除して、明兎に渡す。すると、何か操作をした。


 すると、今までの空腹が嘘のように消えてなくなった。突然のことに俺は驚き、明兎に何をしたかをたずねてみる。


「打った文を消しただけだよ?なんかどうすればいいかパって頭に浮かんできた。」


 なるほど......文が消えるとその効果が消えるのか......裏を返せば、この携帯は起動してる限り、その効果を発揮するわけか。これって、俺が消しても効果あるのかな?


 試しにと、スマホに打ってある、『ここに猫が来る』という文章を消してみた。


 すると、急にその黒猫は窓の方を見て、空いていた窓から飛び出していった。


 これが、消して効果があったとみるなら、明兎以外の人物でも文を消せば、その効果を消すことができるってことか。



 いかがでしたでしょうか?今回は、明兎が初めてスキルを使いましたね。そして、少し番外編が長くなることになりますが、次回は空兎もスキルを使う予定ですので、ぜひ読んでいってください。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!


 それでは、また次回お会いしましょう。


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