ちょっ、まっ、えっ、はっ?どゆこと?
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
今回は前回よりも少し長めになっております。
目が覚めると、涼しい風が吹いていた。寝ぼけ眼をこすり、目を開ける。
すると、天井が見えた。昨日は確か壁に寄りかかって眠っていたはずだ。となると、背中が痛いはずなのに、むしろ痛くない。柔らかい感じだ。
起き上がると、ベッドの上だった。
机の上に何かが置かれている。
他に何かないか、部屋を見渡してみると、フィルとフィルのお母さんの姿がなく、スヤスヤと気持ちよさそうに眠るアリサがいるのみだった。
俺は机の上の紙を手に取り、読んでみる。
【ソータさんへ
フィルからあなたの名前を知りました。この度は、牢屋から出していただけただけでなく、フィルを保護してくださり、本当にありがとうございました。
こんな言葉だけではこの感謝は伝えきることができないですが、もしもまた出会うことができたのなら、その時は恩返しをさせてください。
身勝手ながら、ここを出ることにしました。また捕まってはたまらないですし、日中に出歩くと目立ってしまうので。それに、もしもソータさんが私たちを匿っていることを知られると、迷惑をかけてしまうので……
そのことに関しては本当にごめんなさい。今度会えた時に改めて身勝手なことに対して謝らせてください。
それでは、会えることを願っています。】
……ここまで感謝されたら、むず痒いな。元々、アリサがフィルを保護してたんだし、俺のおかげってわけじゃないんだよな......
うん?もう一つ紙があるぞ?
【ソータとアリサへ
我と我が母君を助け出したこと感謝しよう。特にアリサお姉ちゃん、ご飯、うまかった。共に遊んだこと......心より感謝しようぞ。
そして、ソータ。我が母君の命、我との約束を果たしてくれてありがとう。今度運命の邂逅が来れば、共に遊ぼうね!!】
うん。手紙でもこの口調なのね。まあでも、こういわれると嬉しいな。後でアリサが起きたら見せよ。
さて、そろそろ帰る準備しないとな。アリサが起きたら飯食ってすぐ帰れるように。挨拶するのはクラムとこの宿の宿主でいいか。ここの飯はうまかったし、寝心地もよかったしな。
さてと。と、立ち上がったところで、廊下から悲鳴が聞こえた。おそらくクラムの声だ。
俺は廊下に出る。すると、昨日の男性客の所にクラムが引っ張り込まれていた。
正面からぶつかっても同じこと繰り返すだけだろうしな......こうするか。
『フェーズ5』を唱えてから、空間魔法を使い、その男の部屋に入る。入ってすぐに思う。ものすごいほこりくせぇ。窓も締め切ってんなぁ。
そして、男はクラムをベッドの上に押し倒して押さえつけていた。
「ほ、ほら約束はちゃ、ちゃんと守らな、守らないと。ちゃんと、お客様の、おせ、お世話をし、しろぉ。」
クラムはとても怯え切った目をしていて、頑張って抵抗しようとするも、押さえつけられてもがくことしかできない。
しかもご丁寧にも、叫べないように男はクラムの口を手で押さえていた。
俺はこの部屋の壁にかかっているものをわざと落とす。
男が俺の方を向いた隙に、クラムの下にゲートを作り、開かない状態でアリサの所へとつなげる。
そして、男の腕を蹴る。突然の痛みで男は思わず腕を押さえる。
すぐさまゲートを開き、クラムが通ったのを確認すると、そのゲートを閉じる。
男は突然の出来事に何かあったのかわからない様子だ。実際、俺が姿を隠しているため、何が起こったか分からなくても仕方がないだろう。
逆の立場なら俺は困惑より恐怖が勝る。
『ソータ、こいつをどうするんだ?このまま放置してたら懲りずにまたやらかすぞ。』
確かにな。どうしようかね~。
『とりあえず、逃げられないように縛っておいとけばいいだろう。あとはあの子の親にでも言ってもらえれば、連行してくれるだろうな。』
じゃあ、それでいくか。
俺はこの部屋にある、シーツを少し借りて、頑丈なひもを作る。
空間魔法で男の腕を捕らえ、後ろ手に回す。
そして、その腕をひもで縛り、足もなるべくほどけないように縛る。
男はもちろん抵抗した。しかし、何に抵抗したらいいかが分からないようで、逃げようと動こうとしていた。
もちろん、それを許すはずもなく、俺はしっかり縛って、ついでに結び目もないようにした。腕に血が通うかどうかのギリギリぐらいの強さで縛っているため、男が外す心配はない。
俺は部屋の鍵を開け、自分たちの部屋に戻る。男がやっと俺の姿を捉えられたようで、俺に何かを叫んでいた。
だがまあ、すぐにドアが閉まったため、何も聞き取ることはできなかった。
一旦『フェーズ3』にしてから部屋に戻った俺は、とある光景を目にする。
若干予想もできたが、クラムがアリサに泣きついていた。そして、昨日よりも怖かったのだろう。昨日より大きな声を上げて泣いていた。
アリサは優しく落ち着かせるように背中をトントンとしていた。
いつの間に起きていたのだろうか。まあ、結果的にはそれでよかったかな。
俺が入ってきた音で気が付いたのか、二人が俺の方を向く。クラムは少し鼻を垂らしていて、目が赤くなっている。
「とりあえず、あの男は動けないようにしてるから、あとは通報するだけの状態にしておいた。落ち着いたらでいいから、ここの宿主さんに話してね。」
クラムはゆっくりと頷く。そして、俺が助けてくれたと理解できたのか、俺が近づくと、安心したような表情とともに、俺に抱き着いてくる。
「うぅ.......ごわ”がっだよ......」
俺は落ち着かせるために、頭をよしよしする。アリサが俺にどういうことなのかというような視線を向けるが、後で説明するとしよう。
どうして落ち着かせるのに慣れてるかって?弟が泣いてた時に泣き止ませてたからだ。そのときの主な理由がゲームで負けて煽られたからというものが多かったが。俺の弟が小学生の時な。
10分ほどそうしていると、落ち着いたのか、俺から離れ、エプロンで顔を拭いた。そして、俺の服に付いた涙の後を見て申し訳なさそうな顔をする。ちなみに、その間に何があったのかをアリサに話しておいた。
「ごめんなさい。昨日に続いて、今日も服を汚してしまうなんて......」
別に気にしなくていいんだけどな。
「別に気にするな。どうせ、今日ここを出るし、そのあとすぐに家に帰るから。」
それでも落ち着かないのか、洗濯します!!と、譲りそうになかった。
「いや、これ以外に服持ってないから、洗濯しなくていいからな?」
その言葉で何かに気が付いたかのように目を見開く。そして、俺とアリサを交互に見ていた。アリサが俺のシャツを着たままだったことに、今更ながら気が付いた。
クラムは少しだけ頬を赤らめさせながら恐る恐るといった様子で質問をする。速攻否定の姿勢に入った方がよさそうだ。
「やっぱり......昨日はお楽しみだったんですか?」
「ちがーう!!勘違いされるってのは結構ベタだけど、違う!!決してそういうわけじゃない。」
やはり予想通りだった。状況的に確かにそう思われなくはないけど。
「ソータ......もしかしてあたしに変なことしたんじゃないでしょうね!?」
なんでアリサまで疑うんだよ。
「なんもしてない!!アリサの服がなくなってたから着せただけだよ!!」
しかし、その発言が誤解を招いたのか、アリサは自分の体を抱きかかえて後ずさる。
「服脱がしたの!?何してんのよ!?」
「違う違う違う。脱がしてないから!いったん落ち着けって!」
そして、クラムは何か考えるかのように何かをつぶやいていた。耳を傾けると......
「私もこの人と体格似てるし......もしかしたら......」
ダメだ。クラムも俺が脱がしてきそうだと疑ってる感じだ。
収拾がつかなくなりそうなので、とりあえず、男のことを通報させにクラムに部屋から出てもらった。
さすがにクラムがいる状態じゃ、この話はできないしな。
「それで......昨日は何があったの?あたしの服がなくなったって言ってたけど。」
さっきとは打って変わって態度を変えた。どうやら、さっきのは話をするための演技だったらしい。いや、あのごみを見るような目だったのは演技か?......気のせいだな。
とりあえず、どこから話せばいいか分からないので、どこまで覚えているかを聞いてみる。
すると、俺と別れてすぐ後あたりから記憶があいまいらしい。
なので、まずは先に覚えているところまで、話してもらうことにした。
ソータと別れたあたしは、偽装を利用して門番や看守にちょっかいをかけていた。ちょっかいとは言っても、気絶させて、他の門番の所まで連れて行って、大きな騒ぎにできるようにしてたんだけど。
あたしの狙い通り、大勢集まってきて、この辺りは騒然とし始めた。
もちろん、あたしは見つからなかったんだけど、誰が犯人か互いで問いただしあっている。やっぱり気づいてないみたい。
一応目的は達成できたけど......別の場所ですればもう少し騒ぎは大きくなるかしら?
でも、無駄な騒ぎを起こせばその分、見つかるリスクは高くなる。やっぱりやめておきましょ。あたしはその場を離れようとする。だけど、目の前で言い争いが激化して殴り合いを始めた。
もう状況がわけがわからなくなってくる。そろそろここを離れようかしら。
すると、帝国に来た時に見た、ピンク髪の怪しい女性がいた。
しかも、あたしのことに気が付いているようで、あたしのいるところをじっと見てきている。
そこまでであたしの記憶は途切れた。
と、アリサから聞いた話がこうだ。ここまでしか覚えていないらしい。その話から推測するに、そのピンク髪の女がアリサに何らかの干渉をして、暴走状態にしたってことか。
商人といい、そのピンク髪の女性といい、引っかかるところはあるが、とりあえず、アリサに俺が見たところからすべてを話す。
その起こった出来事を聞くと、アリサは信じられないというような表情をしていた。
しかし、脳内で何か話しているのだろう。しばらく考え込むような素振りを見せ、アリサの話を聞いているのだろう。時々頷いていた。
しばらく待っていると、納得できたのか、やはりというか、少し不愉快そうな表情を見せる。
まあ実際、ここに来てから不愉快に思うことが多かったし、そういう表情するのも無理はないんだけど。
「ねえ、今度あの商人に会ったとき、懲らしめましょ。さすがにイライラするんだけど!」
まぁ、それぐらいがちょうどいいかもしれない。
「それと、ピンク髪の女性ね。話を聞いたり、前会ったりしたときに感じたけど、目を見ると、体の自由を奪われるっぽいな。もし、次に会った時のために何か対策を考えておかないとな。」
アリサはうなずく。
「ま、もうちょい詳しい話は、家に戻ってからにするか。」
「ええ、そうね。なぜだか、ものすごくお腹が減ってる感じがするし。」
多分、あれだけ暴れてたからだろうな。今の状態ではないとはいえ。
というか、暴走状態に入ったら、自我もなくなるうえに記憶もなくなるのか......結構恐ろしいな。いやでも、体を自由にできない状態で、暴れるのを見る方が精神的に来るものがあるか。そう考えると、まだ記憶なくす方がいいのか。
俺とアリサは食堂へと向かい、朝食を頼む。すると、トーストや果物、コーンスープのような味の見た目トマトスープ、コーヒーに似た飲み物が出された。このコーヒーもどきは、味と香りはコーヒーなんだけどねぇ、見た目が完全に透明だから、どこかの醤油が頭に浮かぶ。
それでも朝食にはちょうどいい軽めのもので、久しぶりにトーストを食べた。しかも、ジャム付きで、モリンジのジャムのようだった。実においしかった。
ちなみに、俺たちが食べている途中、男が連行されていた。男は俺たちの方を見てものすごく睨んできたが、とりあえずスルーしておいた。何か知ってると思われて時間を拘束される方が困る。
飯を食い終わり、帰る準備を整える。アリサの格好は......まあ、ゲートで直に家に帰るからそのままで大丈夫だろう。
実際、アリサはそこまで気にしていない様子だ。たまに、もじもじしているが。
俺とアリサは、この宿の宿主さんにお礼を言いにいった。
食堂の支払いをするときに、クラムと何かを話している様子の男の人がいた。クラムにこの人の面影があるし、多分この人が宿主兼クラムの父親だろう。
というか、物静かな青年という印象が強いのだが。この人が最初、クラムにああいわせるとは考えにくいのだが......まあそういう冗談が好きってこともあるだろうしな。
「ありがとうございました。クラムの言うとおりの、『印象深い』所になりました。ご飯もおいしかったですし、値段も良心的でした。また今度ここら辺に来る時があれば、泊まりに来ます。」
俺のあいさつに、うれしくなったのか、その宿主さんは顔をほころばせ、
「いえいえこちらこそ。そう言っていただけてうれしい限りです。それはそうと、クラムから話を聞きました。クラムを助けてくださり、ありがとうございました。おかげでクラムが無事でした。」
「いや、たまたまクラムの声が聞こえたので。見過ごせるわけないじゃないですか。」
「それでも、中々助けに行こうという人は見ませんよ。クラムもあなたの話をしているとき、嬉しそうでしたし。」
そうなのか?と思い、クラムを見る。すると、クラムは顔ごと視線を逸らし、
「だって、お話の中の人みたいでかっこよかったし......」
と呟いている。案外おとぎ話に憧れる乙女なんだな。
その様子のクラムをほほえましそうに見やるクラムのお父さんは、俺に真剣な表情でこう訊いてきた。
「どうです?お客さん。将来この子の旦那さんになるというのは。」
俺は思わず吹き出しそうになった。吹き出すものが何もなかったため、吹き出すことはなかったが。
「ちょっと、お父さん!何言ってんの!!」
言われたことに恥ずかしさを覚えたのか、クラムは服を引っ張りながら、クラムのお父さんの発言について問う。
「ん?言葉の通りさ。将来、この人とクラムが結婚しないかって訊いただけだよ。」
からかおうとするいじわるな表情を見せており、クラムの反応を楽しんでいるようだ。このお父さん、将来反抗期とか来たらめちゃくちゃへこむタイプだ。多分。
「ま、冗談はこのぐらいにしておきまして。こちらを受け取ってください。」
何かカードのようなものを手渡された。
「クラムを助けてくれたお礼としては安いものですが、4人までならこのカードを見せてくれれば、宿泊費を無料にします。食事の方は無料ではなく、2割引きにさせていただきます。また今度、機会があった時にはぜひ、うちを利用してください。」
なんか、結構お得なものをもらったな。次もこの国に来たときはここを利用する予定だし、ありがたく受け取っとこう。
そして、クラムのお父さんは俺に耳をかすように俺にジェスチャーをした。耳を近づけると......
「さっきの話、冗談ですよ。ただ、クラムは、お客さんを気にしているようなので、今後、優しく接してやってください。」
つまり?気にしてるってあれか。俺を信頼できる客だと認めたとかそういう意味か。
俺はとりあえず分かりました。と頷き、改めて、お礼を言う。ずっと黙ってしまっていたアリサも一緒にお礼を言った。脳内で会話していただけかもしれないけど、話に入らせられなくてすまん。
俺とアリサが外に出ようと、入り口に向かったところで、クラムが俺の手を引いて引き留めた。
何事かと思い、振り向く。
耳元で話したいのか、さっきのクラムのお父さんのようなジェスチャーをする。
俺はしゃがみ、耳打ちしたそうなクラムに耳を近づける。
「先に言うけど、これは次も来てくれるようにするためのおまじないだからね?」
何か恥ずかしいことでも言うのだろうか。でないと、こんな前置きはしない。
すると、一瞬だけ俺の頬に柔らかい感触があった。すぐさまクラムはお父さんの方に走っていったが、ここの周りの人がざわついている。
え、もしかして、頬にキスされたってこと⁉いやいや、頬にキスなんて、猫ぐらいにしかされたことないんだが。いやでも、早とちりするのまだ早い。もしかしたら......いや、あの顔の距離感で他に柔らかいところなんてクラムの頬っぺたしかねえな。
ん?気になってるって、まさか、そういうことで......?
奥ではクラムのお父さんが愉快そうに笑っている。さすがにやりすぎではないか。
しばらく動きが止まっていたのだろう。遅まきながら後ろからの視線を感じた。
「まさかクラムがソータのことを......ねぇ......ふふっ、可愛らしい反応だったわ。どっちも。」
ニヤニヤしながら俺に話しかけてきたアリサはからかいにきたのだろう。
「ねえねえ、キスされるのってどうだったの?うれしかった?」
わざわざ聞くまでもないのに、そんな質問をしてくる。とりあえず周りからの視線が集まるその宿を出て、裏路地に入る。
「はぁ。こんな体験初めてだよ。初めて女の子にキスされた。この答えで満足か?」
答えを聞けたことに満足したのか、アリサは元気よく頷く。
いや、正直、俺としては実感がないのだが、事実なので受け止めるしかない。
まあそりゃ好意を持ってもらうってのはうれしいんだけど、突然すぎてビックリしたよね。逆に。
......とりま家に戻ってから心を落ち着かせるか。色んな意味で頭が混乱している。
俺は家まで続くゲートを開き、アリサとともにそれをくぐる。くぐってすぐにゲートを閉じる。やっと帰ってこれたって感じだわ。
いかがでしたでしょうか?今回は、蒼汰にとってある意味衝撃的なことが起こりましたね。蒼汰くんはあれをまっすぐ受け止めることができるのか。まあそういうことからは無縁の蒼汰くんでしたから。どういう風に心の整理をするのでしょうか。
さて、次回は番外編です。あえて言いませんが、前の話で少し気になるところがあったと思います。はい。予測通りです。次回はなんでそうなってしまったのかを書いていきます。
余談というほどでもないですが、なんなら読まなくてもいいのですが......
今回の後半のような要素をこれからも入れていく予定です。もちろん私はそんな経験もないチー牛なので......はい。表現が弱くなるところがあるかもしれませんが、ご了承ください。ま、自分は定食派なんですけどね。
なぜこんなことを書いてるのかって?深夜テンションだったからさ☆(翌日午前6時追記)
次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。
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それでは、また次回お会いしましょう。