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一方そのころ別の所では......

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


「ロサ...お姉、ちゃ...ん......」


「ルーナッ!!」


 僕はこちらへ向かってきたフラフラになりながらも、向かってきたルーナをしっかりと抱きとめる。昔のルーナと体の大きさは変わっていなかったが、かなりやせ細っている。しかも、体中傷だらけだ。


 だけど、その傷も月の光に包まれて消えていく。


 僕はルーナに向かって、自分の首を近づける。そして、優しくルーナに言う。


「吸っていいよ?」


 ルーナはコクリとうなずき、僕の首元にカプッと噛みついた。体から力や他の温かい何かが抜けていく感覚とともに、ルーナは徐々に肌の色や子供らしい体つきを取り戻した。


「ロサお姉ちゃんありがと。ルーナ、やっと元気になれた!!」


 さっきまでかすれ声だったルーナの声も、もとに戻った。前と同じ口調と声の高さで、一安心だ。


「どういたしまして。ルーナ、元気になれて良かったね。」


「うんっ!!」


 力強い返事を返されてしまった。さっきまでの弱々しくて、今にも消えてしまいそうな感じもなくなったし、なにより、ルーナ自身が無事で本当によかった。


 そして、結局人に頼ってしまった自分、自分の手でルーナを救い出せなかったこと、なにより、こんなことをした帝国の奴らに腸が煮えくり返る思いだ。


 あいつらは絶対許さない。何があっても、仕返ししてやる!!


「お姉ちゃん?怖い顔してるけど、大丈夫?」


 ルーナにそう言われ、ハッとした。少なくとも可愛い妹の前で考えることではないなと。


 僕は自分の中に渦巻いていた、どす黒い感情を抑え込み、ルーナを抱えて家に戻る。


「今、僕とお姉ちゃんが暮らしてる家だよ。ルーナをさっき助けてくれた人が作ったんだよ?」


 ルーナは目をパチクリと瞬かせる。


「あの変なドアを出したお兄さん?」


「ん〜、あれはドアなのかな?まあいいや。そのお兄さんだよ。」


「お兄さんのお名前、なんていうか分かる?」


 あれ?聞いてないんだ。


「ルーナを助けてくれた人はソータっていうんだよ。そうだねぇ、僕とお姉ちゃんの雇い主で、ルーナの命の恩人、そして、僕たち家族の恩人かな。」


 適当に言ったけど、合ってはいるからいいでしょう。


 まず、家の近くの川まで連れて行き、ルーナを洗ってあげる。ソータからもらった石鹸を使って全身を洗う。少し乾かし......いいや。ソータの服で拭いてあげよ。汚れてもなさそうだし。風邪ひくほうが心配になるし。


 僕はルーナを抱いて僕の部屋まで戻り、一旦僕の服を着せてあげる。今度、ルーナの服も買いに行かないとね。


 ルーナを連れて、僕はお姉ちゃんの部屋に入る。お姉ちゃんは、いつも研究に没頭してるけど、僕がお願いとか話をしたときとかは大抵、研究の手を止めて、僕の話を聞いてくれたりする。一見するだけじゃ分からないけど、ちゃんと妹思いのお姉ちゃんなんだよ?


 お姉ちゃんの部屋に入ると、僕たちが入ってきたことに気がついていない様子で、何かを作っていた。


 部屋にカチャカチャと道具を動かす音だけが響く中で、僕はお姉ちゃんに話しかける。


「お姉ちゃん、ルーナが戻ってきたよ。これでやっと三人揃ったね。」


 僕が話しかけると、お姉ちゃんは道具を置き、ゆっくりとこちらを振り向いた。ものすごいくまが目元にできていた。


「ちょっとちょっと、もしかしてお姉ちゃん、寝てないの?」


「よぉ、ルーナ。久しぶり。お前が無事でよかった。そしてロサ、お前の質問だが、確かにわたしは寝てねえが、今は寝てるような場合じゃねえんだよ。」


 話しながらも、ルーナに向けて手を広げていることから、やっぱり恋しかったのだろう。精一杯抱きしめている。


「寝てるような場合じゃないって?どういうこと?」


 お姉ちゃんの言葉の意味がわからず、思わず訊いてしまった。


「簡単に言うと、まず二人との連絡が途絶えた。そして、帝国への復讐の準備を進めている。だから、寝てる場合じゃねえってことだ。」


 お姉ちゃんは今なんて言った?後者はまだいいとして、前者のほうだ。二人との連絡が途絶えた?これまでにお姉ちゃんが完成させたものは、1年経っても動力源関係なく使えるものばかりだった。


 そう考えると、誰かに妨害されているか、不測の事態が起こっているのかもしれない。


 実際、ソータは一度ルーナと一緒にあそこからは抜け出せたはずなのに一緒に来ていない。


 危険なことに巻き込まれてないといいけど......


 そんな僕の考えを読み取ったのか、お姉ちゃんが呆れたように言う。


「そんな心配しても仕方ねえだろ。少し不具合があっただけだ。そこまで深読みする必要はねえよ。それに、あいつならいくらでもどうにかできるだろ。」


 でも、確かに。ソータなら大変なことが起こっても、普通に問題解決しそうだし。いや、あれはモルさんがいるのもあるのかな。


 とにかく、お姉ちゃんの言う通り、そこまで心配する必要はないかも。


「それに、そんなに気になるってんなら、ルーナに見せてもらえばいいだろ?こいつが使い方を覚えてるかはわからんが。」


 そういえばそうだったね。ルーナは確か......『監視者オブザーバー』を持ってるんだったね。


 まあ、今はつかれてるだろうし、むしろ、ルーナがするとか言ったら、止めるんだけどね。


 ちなみに、ルーナはお姉ちゃんの膝の上でウトウトしている。多分、張り詰めていたものが一気に解けたんだろうね。


「さ、お姉ちゃん、ルーナも眠たそうだし、お姉ちゃんもちゃんと休まないといけないから、三人で寝よっ。拒否権はないからね?」


 僕がお姉ちゃんに注意喚起の意味も込めてそういうと、お姉ちゃんはフッと楽しそうに、安心したように笑い、


「わかった。わかった。今日は久しぶりに姉妹揃って寝るか。」


と、ルーナを抱えてベッドの方へと向かったのだった。


 僕もそれについて行き、お姉ちゃんと僕でルーナを挟むようにしてベッドに寝転ぶ。


「あ、一応言っておくが、寝ぼけて血を吸ったりするなよ?」


「......うん、気をつけるよ。お姉ちゃんこそ、寝相の悪さで壁を破壊しないようにね。」


「さっきの間が気になるが、まあいい。それと、壁はもう補強してある。ちょっとやそっとじゃ壊れないように仕上げてあるから、大丈夫だ。」


 それは大丈夫と言っていいのだろうか。僕もそうだけど、お姉ちゃんも寝るときのクセを直さないとね。じゃないと、こうやって三人で寝るのが危険になっちゃう。


 でもまあ、ルーナのこの、幸せそうな寝顔を見ると、寝相とかそんなものは些細なものだ。


 あの日のままとはいかないけど、戻ってきた幸せを噛み締めて、僕は目を閉じる。


 ......ソータにもちゃんと感謝しないと。何でもするって言っちゃってるけど、変なお願いされたらどうしよう?まあ、今なら何でもしてあげられそうだけど。




 ソータさん、大丈夫でしょうか?この前記憶をなくしてたみたいでしたけど......そろそろ戻っていてほしいです。


 ......様子でも見てみようかな?別に様子を見ちゃダメって言われてないですし。


 少し画面をいじりましてと......


「おいエルス。何をしようとしている?」


 いきなり聞こえてきた声に思わず、ビクッと体を跳ねあがらせてしまいました。


「どうしたんですか先輩?今日も何か面倒ごとを押し付けに?」


「面倒ごとを持ってくんのはいつもお前の方だろ。今日はただえさえ、お前が気にかけてるからって、何も関係のない蒼汰くんにやっかみが......いや、何でもない。今のは忘れてくれ。」


 いいえ、聞き逃しませんでしたよ!!


「蒼汰さんへのやっかみってどういうことですか!?明らかに聞き捨てならないことですよ!?」


 なんで私ではなく、蒼汰さんに......


 先輩はしまったという表情をしつつ答えてくれた。


「お前は仕事がいつもうまくいってないだろ?」


「それは...まあはい。」


 いきなり先輩の言ったことにビックリしたけど、事実なのでうなずく。


「だが、お前はボルダルスに一人、蒼汰くんを送り出しているだろ?」


 それがどうかしたのでしょうか?


「それで下の世界の様子が見たくて見たくて仕方がない、なんで仕事がまともにできないやつが見れるんだとかいう、めんどくさいことを言っている奴らが、蒼汰くんの周りで起こっていることを捻じ曲げようとしていた。」


 結構してることやばいじゃないですか!?いえ、まだわかりません。一応解釈の間違いがあるかもしれないので訊いてみましょう。


「つまり、本来起こるはずのないことを無理やり発生させようとしているってことですか?」


「ああ、今日は少し遅くて止めきれなかった。本人も気が付いていたが、帝国に入ってからというもの様々な出来事が起こりすぎていた。幸い、蒼汰くん自身がまだ楽しんでいたようだったからよかったものを......」


 あれ?なんで先輩が私も知らない蒼汰さんの情報を......


「なんで先輩がそれを知っているのですか?主に蒼汰さんの様子を......」


「お前、パスワードかなんかつけといたほうがいいぞ。今回みたいに他の奴らが悪用するぞ。」


「回答をずらさないでください!先輩が知っている理由を......」


「今はいいだろ。たかが嫉妬一つで、一人の運命を捻じ曲げようとしている奴らがいるってことの方が問題だ。本来、厳重な刑罰がある。だが、上はこのことを認知してるはずなのに、なぜか目を瞑っている。これはかなり由々しき事態だ。問題に問題が重なる。しかもかなり重大な問題だ。」


 えっ、ということは......かなりやばい状況じゃないですか!? 


「そんな不穏な雰囲気が漂っているなら、ちゃんと蒼汰さんの様子を見れないじゃないですか!?」


 なぜか先輩がため息を吐いてました。なぜでしょうか?


「お前に言ったのが間違いだったか。一個人に限らず、国にまで影響が及ぶような話だからな。下手をすると。」


 どうやら、思っていた以上に深刻な状態なようです。なんて、のんきに言っていますが、私にも事の重大さはさすがに分かります。


「冗談ですよ。とはいえ、先輩だけじゃどうしようもないですよね?」


 かといって、私が手伝ってどうにかなるものでもないですし。


「まあな。だが、今はまだ様子見だ。少しずつ不正や上が、目を瞑っている理由を調べてみようと思っている。お前にも協力してもらってもいいか?」


「私に手伝えることなんてないと思いますけど......」


「いや、今から言うのはむしろお前だからこそできることだ。」


 先輩が私の耳元でごにょごにょとささやくようにして、何かを言う。


「すみません、先輩。なんて言ったのか聞き取れなかったので、もう一度言ってください。」


 あたっ!?なぜか先輩に頭を軽くはたかれてしまいました。


「次はないからな?もう一度言うぞ?」


 先輩はもう一度私の耳元で話した。今度はちゃんと聞き取れたので、頷いてから、私も先輩の耳元に口を近づけ、


「あっ!!」


と大きな声を出した。


 先輩はすぐに頭ごと私から離れ、私をにらみつけた。


「何すんだエルス。お前が言いたいことがあるっていうから聞いてやっただろ。」


「ふんっ。さっき頭をはたかれた仕返しです!!」


 私は精一杯怒るフリ(・・・・)をして、さっきから私たちの様子をこっそり見てる人がいる方向に向けて、そっぽを向く。

 それに気が付いたのか、先輩は目線だけでその人物を確認した後、わざとらしく言う。


「そんなしょうもないことするぐらいなら、さっさと仕事の続きをしろ。」


「先輩がはたいてきたからじゃないですか!?」


「わかった。わかった。10:0でお前が悪かった。ほら、さっさと行け。」


「は~い、いつも通り頑張りますよ~」


「頑張るのはいいが、張り切ることはするなよ?お前が失敗する時は張り切っているときが多いからな。」


 よかった。いつもの先輩です。さすが先輩。動揺とかを一切見せないのはすごいですね。


「ああ、そうだ。エルス、これだけは覚えておけ。お前は身に染みて分かっていると思うが、一つの不注意で見ている人間が命を落とすことにつながる。人の生を管理するということはそういうことだ。」


 そう言って先輩は自分のデスクへと戻っていきました。地球の蒼汰さんがもともと住んでいた地域の人たちの管理を降ろされそうになったから、ああいったのでしょうか?今回の事例も含めて言ってそうですけど。


 さて、私もさっき先輩に言われたことをしましょう。......その前に蒼汰さんの様子でも見ておきましょうか。


 これぐらいなら、私のモチベーションにもつながると先輩も分かってるでしょうし。なにより、これは先輩に頼まれたことをするための大事なことですから。


 マイクの電源が入っていないことを確認して、小さい画面で蒼汰さんにつなげまして......あれ?なんか、人が宙に舞っているような......というか、蒼汰さんが動かない?いや、それよりもあの炎をまとっている化け物って......!?


 これは、先輩の言っていた通り、事象を捻じ曲げてしまうことはかなり危険ですね。なんとしてでも止めなくては!!


 ただ、ちょおっと、ちょおっとだけ、蒼汰さんがどんなふうに対処するのかを見てみましょうか。というか、前より少しだけカメラワークが違うような......気のせいでしょうか?



 いかがでしたでしょうか?今回は、初めてロサとエルス目線で書かせてもらいました。今、書いてて思ったんですけれども、こう文字を並べてみて、一瞬、ロサンゼルスの文字が見えました。自分だけではないはず......


 それは別にいいとしましても、次回からは鬼化(?)したアリサをどう対処していくのか書いていく予定です。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 面白いと感じたら、ブックマークや評価をぜひ、よろしく願いします!モチベーションや、物語の流れにもにつながるので!


 それでは、また次回お会いしましょう。


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