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なんかちょっと......怪しい......?

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


 えっと、男たちが謝ってきている。いやさすがに俺も俺でやりすぎたな。あれは。あれを人にぶつけてたらと思うと、今更ながらに冷や汗が止まらない。しばらく雷魔法(仮称)はやめとこ。安全が確立した場所でだけ試してみるとしよ。 


 男たちはこれで懲りてくれただろうし、もうそろそろ氷を解いてもいいかな。


『モルさん、どうやら一定以上の技量がないと、複合させて使うのは難しいらしいですね。』


『そのようだの。いきなりしでかしてくれたもんじゃからビックリしたわ。』


『下手をすると使用者のリスクのほうが大きいようですが、そこについてはどのような見解を?』


『なに、簡単なことじゃ。リスクをなくすぐらいのメリットを見い出せばいいだけのことよ。それに、リスクなぞを気にしておったら、うまくなるもんもうまくならんし、現状維持どころか、むしろ後退しておるのと同義じゃからな。』


『つまりは繰り返しやればいいと?』


『まあ、偉そうに言ったが、一言で言うならそういうことじゃ。』


『とのこと。ソータ君頑張ってくれ。』


 なんこの息ぴったりな茶番。インタビュー風にしたいのかしたくないのかが分かりにくい。


 というかまずいぞ?早くここから逃げないとさっきの雷の件で、投げて飛んでいったのを見ていた人......というより衛兵みたいな人がいたらかなりめんどくさいことになる。違法入国してるから捕まったら終わりだ。


『それなら、そこの輩共を犯人に仕立て上げればよいじゃろうて。』


 なるほどね。......いや、ヤダよ?そんな人になすりつけるみたいなことはしたくないし。


『嘘こけ。妾にはすべてお見通しじゃ。なんて言えばいいのかが分からなくて理由をつけているだけじゃろ?』


 あいや、違います〜。全然そんなことないです〜。ハイ。


『今から言うことを言えば大丈夫じゃ。』


 ダメだ。全然話を聞かないモードになっちゃたわ。こうなったら従うしかないんだろうな。


 俺はモルが言った言葉をそっくりそのまま口に出して男たちに向けて言う。


「俺のことをバラしたらどうなるかわかってるよな?夜にお前らを襲いに行く。秘密を漏らせばお前らのことをバラバラにしてやる。いいか?」


 ここで一度言葉を切る。男たちが必死にうなずくのを見たモルが、その続きをいう。俺をそれを口に出して復唱する。


「一応言っておくが、俺は男でもいける口...じゃねえよ!?」


 いきなり何を言ってくれるんだ。モルは!何も考えずに言ってたから、思わず言いそうになったじゃねえか。俺はホモじゃない。いや、ホモが悪いって言ってるわけじゃないけど、そっち側ではないから!


 モルはツボったのかしらんけど、爆笑してるし。絶対爆笑しながら転げ回ってるじゃん。


 だがしかし、俺の滑った口は転ばないはずもなく、バッチリその発言を聞いていたこの場の全員(モルとセクを除く)は目を丸くした挙げ句、アリサは何いってんだこいつ?みたいな目で見てきて、男たちも自分のお尻をおさえた。2名ほど熱っぽい目でこちらを狙ってるようにも見えたが、気のせいだろう。


 最悪だ。勘違いされまくっている。ついでに通信機の向こうで息を呑む音と、呆れたような「アホが......」という音も聞こえた気がしたが気のせいだ。気のせいだと思ったら全て気のせいなんだよ。OK?たとえそれが事実でも気のせいと思ったら気のせいだ。そこにおいては気の迷いもない。


 ......ダメだ。一度深呼吸をしよう。スゥ〜ハァ〜......脳内深呼吸とか新しいものができそうだったけど、俺の羞恥心からの気の動転は収まったから良しとしよう。


 というかこいつらに絡まれてから下ネタばっかな気がする。少し空気を変えるか。


 って、なんか足音聞こえてきたんだけど!


「すまねえな。兄ちゃん。ちょっくら衛兵とつるんでてよ、時間差で駆けつけてもらうようにしてるんだ。こういうときのためにな。俺らはもちろんこれからはお前らに何もしない。もう懲り懲りだしな。

 氷とかけて。面白くないか?まあいいが。もちろんお前らのことをバラしもしない。あとは衛兵サンがやってくれるからな。」


 どうやら先に手を打っていたらしい。かなり上機嫌だし。じゃあ逃げるしかないか。


「サラ、今すぐここを離れるぞ!」


 と振り返った先にはもうすでにアリサ(サラ)の姿はない。どうやら一足先に逃げたようだ。ならば俺も建物の影へと一度隠れて、「フェーズ5」と心の中で唱える。


 そしてそのまま、サラが痕跡としてあえて残した火種を消しながらそれを追っていく。


 その痕跡はとある商店街らしきところで途絶え、奥に商品の押し売りをされている様子のサラの姿があった。しかも、困ったように苦笑いをしているあたり、本当にいらない商品なのだろう。


 商人の手に持っているものを見てみても、(つぼ)のようなものであり、明らかに「買うと幸せになれる!」というキャッチコピーの壺な気がする。


 ここにいても仕方がないので、とりあえずサラの方へと向かう。そして店内へと入る。俺の姿に気がついた様子のサラはわかりやすいぐらい目を輝かせた。


「ソータ!やっと来た!どうにかして。この人、あたしが何かを買うまで帰さないって言ってるのよ。」


「お客さん、うちはそんな悪徳商売じゃないですよ〜。ただ商品をオススメしているだけです。お客様も何か買われて行かれますか?」


 商人は俺を見つけるなり、胡散臭い喋りと手もみで俺に近づいてきた。


「あちらはお客さんのお連れ様でございますか?」


 俺はそいつを見やるのだが、そいつは自分の目を見せようとせず、わざとらしく目を細めていた。


「まあそうだけど......なにか問題でも?」


 ちょっとイラッてきたからな、あえてタメ口でいかせてもらおう。ちょっとしたこいつに対する反発心だが。


「いやいや問題ではないんですけれども、この店では一人当たり、最低5000サルサは買っていただかないといけないんですよ。けれどお嬢さんがそれを達成せずに出ていこうとするもので......」


 そういって店の入口のドアを指差す。なるほど、確かにデカデカと書かれている。店の外観が一際目立つ店でもあったため、おそらく興味につられてやってきた客を狙ってだろう。中々いい性格の店だ。皮肉の意味でだが。


「それで、どんな商品のオススメしてくれるんだ?」


 これで、使いようのない商品しかなかったら、張り倒すぞ。


「私のイチオシ商品はこちらでして、一見するとただの宝石のように見えますが、ある研究家によると、とある力が眠っているとのことです。普段ならね、数百万もする代物なんですけれども、今だけ、初回来店限定価格で、破格の、なんと!2万サルサでお譲りいたします。はい。」


 下手かよ。商品詐欺するならもうちょい上手くやれよ。誰がどう聞いても嘘だって言える文言だろ。


 俺はそのまま店を出ていこうとする。こんな拾ってきた石を磨いて、色を付けてきました!みたいな石一つにそんな金を払えるかっての。


 しかし、商人は俺達を引き止めた。


「もしも、この店のルールを守れないのでしたら、不法入国で衛兵へと突き出しましょうかね。今もあなた達を探してここら一帯を駆け回っているようですし。」


 ......なんだこの、強者感醸し出してる商人は。絶対味方であったほうが、後々役に立つタイプじゃん。そのうちミステリアスな商品売りそう。


 だが、衛兵に突き出されては、ルーナを助ける時間が大幅に遅れてしまうため、仕方なく俺はその石を買うことにした。というより、むしろそれ以外は買うなと言っているぐらい、無言の圧をかけてきた。


 俺は二万サルサを出し、商人に渡す。


「お買い上げ、ありがとうございます。この店でのノルマは達成したということで、あなたは正式にこの店の客となりました。ついでに、そこのお連れさんもそういうことにしておきますね。」


 うわ~、そのうちお得意さんとか言われ始めるやつだこれ。そして、行く先々に必ずこの人がいるみたいな。そんなテンプレが頭に浮かんだ。


「さて、すぐそこまで衛兵が迫ってきています。もしも私にチップとして1万サルサほどお出ししてくださるのなら、今すぐにお二人を匿いましょう。」


 またしても出たよ。金で動くタイプの商人。こいつ、一気にテンプレを達成するやん。


 だがしかし、そんな事を言っている暇もないので、その商人に一万渡した。すると、店の奥へと案内され、天井裏へと続くハシゴをのぼらされた。


「そこで静かにしていれば安心ですので、どうかお静かにお願いします。」


 そう言って商人は店頭へと戻っていった。


 俺は小声でサラに尋ねる。


(なあ、あの商人どう思う?)


(そうね、胡散臭い感じをわざとやっているようだったわ。しかも、最初からソータにその石を買わせる目的だけのために、動いていたようにも見えたわね。)


(じゃああえて、サラが持っておくか?)


(なんで?)


(もしもさっき言ったのが目的だとしたら、俺が持っていることで何かが起こるかもしれないだろ。なにかの力があるって言ってたし。)


(いや、金儲けがしたいがためでしょ。)


 確かにそれはそうだわ。そもそも下手な詐欺だったしな。


(じゃあ俺が持っといて......)


(......いややっぱり持っておくことにするわ。)


 急にサラの意見が変わった。


(なにか気になることでもあったか?)


(そうじゃないわ。ただ単にアリサが欲しいって言ってるからよ。)


 そういう理由なら納得だわ。


 俺はサラにさっき買った石を渡した。アリサってたまに子供らしい一面見せるから可愛いよな。俺もちっちゃい頃はそこら辺に転がってた、きれいな石を集めてた記憶があるしな。バッタの足を引きちぎったりもしてたけど。......今考えると、あのときの俺はサイコパスだな。ちぎった足を友達に見せてたし。


 そんなことはどうでもいいとして、あの商人は匿うとか言ってたけど、大丈夫かな?俺等のことをバラしたりとかしないかな?


『大丈夫じゃろう。さっきのアヤツの顔はいいカモを見つけた顔であったわ。カモを見つけたら手放すやつは中々おらんだろうて。しっかり肥えてから食うのじゃよ。』


 つまり、あいつにとって、金を搾り取れれば上々ってことか。


『そういうことじゃ。まあでもあの石から力を感じるというのは本当じゃぞ?あの石には何かが封じ込めてあった。』


 だから外側は透き通った緑色だったのに、中心に近づくにつれて深緑になっていったのか。


『おそらくな。だが、持っているだけでは何も反応がなかったようじゃからの。別に問題はないじゃろう。』


 待てよ?ってことは、あの商人は本当のことを言ってたってことか?


『どうじゃろうな。少なくとも売り文句にしているだけという様子のほうが強かったように思えるわ。』


 じゃあほんとに知らなかっただけか。まあ数百万の価値のものが2万っておかしいもんな。


 あの目の奥に見えた感情はどういう感情なんだろ?獲物を見定める?いや、客としての質を見定めていたのか?というか今更だが、俺達はなんで流されるままここにいる?衛兵は俺達の存在を知らないはずだ。


 と、そこまで考えていたところで思考が中断された。


「お客様〜。衛兵の方たちは行ったようですので、降りてきて大丈夫ですよ〜。」


 この通り、さっきの商人が言ってきたからだ。


 俺たちは順にはしごを降り、商人にそれぞれ礼を言う。


「ありがとうな。そもそも衛兵が俺達のことを知っていたのかが分からないけど、匿ってくれて。」


 すると、商人は大げさな身振り手振りで、


「いえいえいえ!とんでもない!あなたがたはうちの大切なお客様なんですから。今後ともご贔屓にしていただければと思います。有料ですが、もしサービスがいいと感じたら、ご友人等にも紹介してくださいね。」


と言った。ここまでくると、もはや疑うのが疲れてくる。


「わかった。そうするよ。ところで、この店は何ていう店なんだ?」


 そういえばと、看板を見ていなかったため、店名がわからない。


「はい、この店は『掘り出し物売店』です。...ああ!申し訳ございません。私は、『オルター・メイデン』と申します。今後とも長い付き合いをよろしくしていただければと思います。」


 名前を聞いたところで、俺達は深々と礼をして見送るオルターを背に、店をあとにした。




 ふむ。これでいいでしょう。面白そうなことをしでかしてくれた少年に、あの石を渡せたわけですし。あの、人工的な雷に近いなにか。この地域の人間は雷のことを知らないでしょうが、私の目はごまかせませんよ。


 まあ、ごまかせないとはいっても、あの少年の持つ力までは分からなかったんですけどね。


 ですが、今回は接触ができた時点で僥倖でした。これ以降あの少年との接触が増えてくれればいいのですが。


 ......一つ、私は、あの少年に嘘をついてしまいました。


 私の本当の名は『オブザーブ・ミクロン』と言うのですけれど......まあそれは別にどうでもいいでしょう。

 重要なことはトリガーが引かれてしまったということ。着弾の瞬間が楽しみですね。さあ、楽しい楽しいショーがはじまりますよ?



 いかがでしたでしょうか?今回は、謎の商人が出てきましたね。なぜ蒼汰君の動向を知っていたのでしょうか?今後も出てくる雰囲気がありますね。しかも、帝国に入ってから早速絡まれたという......蒼汰君は災難なことに巻き込まれやすいようですね。

 

 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 それでは、また次回お会いしましょう。


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