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ちょっと落ち着いてくれ......

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


 モルが崖に隠されていたスイッチを押すと、一部が扉になっていたのか、左右に開き、下へと続く階段が現れた。


 それを下っていくと、モルの時に見たような、広間が現れた。しかし、モルの時とは違い、周囲に水などもなく、上にある窓から光が入ってきていた。そして、そこら中に本棚が浮いていた。


 たとえるなら、図書館だな。だけど、本の数はざっと1000冊ほどでしかなく、図書館というには冊数が少ない。まあ学校とか、幼稚園とかの図書室の方が表現が近いか。


 そして、案の定、出れない仕様になっていた。


 その奥では、眼鏡をかけた筋肉ゴリゴリの青年が椅子に座って本を読んでいた。


 俺たちが入ってきたことを感づいたのか、本から目を離さずそのまま言った。


「今日は何しに来たんだ?見知らぬ二人と、モルさんとサラさん。」


 どうやら、俺たちが来ることを知っていたようだ。


「久しぶりじゃの、セク。相変わらず本を読むのが好きじゃの。」


 目を細めながら懐かしそうに言う姿を見るに、誰であっても昔馴染みに会うのが楽しみなんだろうな。まあ元々よく寝る理由として、基本的に退屈で、その他のことにも飽きてしまったから、らしい。今は退屈していないため、楽しむためにそこまで寝ることはしていないとのこと。


 寝るのを邪魔されるのが嫌な理由は、寝起きの悪さゆえだそうだ。


 話しかけられたセクは、本から顔を上げ、顔をしかめた。


「なんでその恰好になってんだ?口調と見た目とが一致しなくて脳がバグるんだが。」


「そこは慣れてくれると助かるんじゃが......」


「......はあ。それで?今日は何をしにここまで来たんだ?冷やかしに来たとか言うんじゃないだろうな?そうだとしたら、今すぐ追い返え......」


「そう冷たいことを言うな。久しぶりに会いに来てやったというのに。まったく。」


 セクは目を細めて、手を振り払う仕草をした。


 すると、目の前にさっきまで歩いてきた道が見えた。多分、これが『空間魔法の使用』だろう。


 それを見たモルが慌てて、


「ちゃんと用はあるぞ!?じゃから、追い返すのはやめておくれ。」


と、付け足していた。


 結局、モルが話すと、無駄話をしてしまうため、サラが話すことにしたらしい。


「単刀直入に言うわ。セク、あたしたちに協力してほしいのだけれど?」


 突然の頼みに目を丸くしたセクだったが、協力の内容を聞いてきた。


 協力してもらうために、俺たちの作戦のことを話すと、セクは快く引き受けてくれるようだった。

「いいじゃんか。面白そうだし、何より文字だけでなく、実際に考えていたのを見れるなんてなあ。」


 案外、俺と考え方が似ているのかもな。多分、本が好きと言っても、小説やラノベのようなフィクションが好きな類なのだろう。俺もそんな風に妄想したこともあった。


『な?言ったとおりだったじゃろ?セクならば引き受けてくれると。』


 その割に追い返されそうになってたけどな。


「ただし、協力するにあたって、少し試させてくれ。」


 すると、強制的に体の主導権が戻り、俺が自分の体を動かすことになった。


 サラの方も同様のようで、アリサと変わったのか、困惑している様子だった。


「......さて、ここで一つ簡単な問題だ。生物はそれぞれ特有の『空間』を持っているのだが、その空間には、この世界に自身を存在をさせておくことの他にもう一つ、役割がある。その役割とは何か?」


 .........はあっ?どこが簡単なんだよ。そもそも特有の空間ってなんだよ。


 アリサの方を見てみても、考えている様子で、思いついた様子はない。


 ......あれ?モルの声が聞こえないな。いつもなら、ここでヒントなり、相手の人柄を解説するなりしてくれるんだが......


 これが目の前にいる、セクの仕業だとしたら、恐ろしいぞ。結局答えもわかんないし。


「悩んでいる様子だな。ならば、ここで一つ、ソータ君とアリサちゃんにヒントをあげよう。誰でも持っていて、組織では重要視されることが多いものだ。」


 誰でも持っていて、重要視されやすいもの?......命。生命力。力......は違うか。


 .........というか待てよ?なんで俺たちの名前を知っているんだ?教えていないはずなのに。さっきも「見知らぬ二人」って言ってたし。


 すると、アリサは何か答えにたどり着いたようで、言おうと口を開きかけた。


「待て。口に出さなくていい。ソータ君が答えにたどり着いたときに一緒に言ってくれ。」


「わかった。ちょっと待ってるね。」


 やばいな。俺には思い浮かばん。そういや、名前は確かに誰でも持ってるわ。この世界の動物はなんか全員に名前があるっぽいし。


 でもなあ......組織では名前は重要視されそうにないからな......むしろ、名声の方が重要視されそうだし。


 それでも答えにたどり着かなった俺にヒントを出してくれるつもりなのか、アリサがポケットから、「冒険者証明書」を取り出して俺に見せた。


 今それを見せても変わんな......待てよ?あれはよくよく考えたら、個人情報の塊だ。ってことは情報か?名前も情報の一つだし、組織に限らず、色々なところでも重要視されるしな。


「わかったみたいだな。君たちがたどり着いたとおり、答えは『情報』だ。俺の持っている『空間魔法の使用』のスキルを使いこなせるようになれば、他人の情報を覗くことができる。ソータ君の持っているスキルの機能と少し似ているが。」


 俺の持ってるスキル?......ああ、多分『能力の確認』か。


「見ようと思えば過去の情報も見れるんだけどな。だから、完全な上位互換ともいえる。それに、空間の操作をすれば、ソータ君の『隠蔽』、アリサちゃんの『偽装』のようなこともできる。」


 え、じゃあ、『空間魔法の使用』のスキルを持ってたら、こういうのは要らないってこと?


『そういうことではない。』


 ビックしたぁ!急すぎるっていつもいつも。


『すまんな。セクがお主等に問題を出している間、迷路のような空間に閉じ込められたのじゃ。腕が落ちてないかの確認だと思うが......やってくれるの。』


 え、じゃあ結構簡単だったの?あれから短時間しか経ってないし。


『そんなわけあるか。迷路をバカ真面目にやって何が楽しい。ゴールまで一直線に突っ切るのが一番手っ取り早く、腕が落ちてないかを教える方法じゃ。』


 だめだ。完全に脳筋だ。迷路の存在意義を一切考えていない。あれは地道に解くのが面白いのに。


『そうか?地道に行くのがセオリーなら、妾はそれを破壊したくなるんじゃがな。』


 なんでや。え、もしかして、努力より才能、通常より異常の方が好きな感じ?


『確かにそうじゃな。そっちのほうが面白みもあるしの。』


 はあ。まあ価値観は人それぞれってことで。


『なんじゃ?その微妙な反応は。お主も昔は......』


 何も!聞こえませ〜ん。


『はあ。まあいい。それはそうと、もともとのお題は『空間魔法の使用』についてじゃったな。』


 あ、せやったわ。迷路の話で若干忘れてたわ。


『お主が疑問に思っていただろうに。......思い出したことなんじゃが、近郊守護者(バランスガーディアン)の持つ、「〜魔法の使用」は、ほとんどすべてのスキルの(もと)になっているのじゃ。お主の持つスキルは、主に「空間魔法の使用」、「地魔法の使用」が、基になっておる。だがまあ、さっきも「ほとんど」といったように、それらが基になっていないスキルもあるからな。』


 はえ〜そうなんだ。......って、なんでそんな重要そうなことを言い忘れるんだよ。


『このまえ、とある夢を見て知っ......思い出したのじゃ。まあ、基になっていないスキルはどんなスキルかは忘れてしもうたがな。』


 じゃあ仕方ないか。教えてくれることには変わりないんだし。


『頼りたいときは言うんじゃぞ?お主の反応を見るのは面白いしな。』


 ......絶対次も思い出したとか言って、話してくれるタイプじゃん。ありがたいな。


「どうだ?話はまとまったか?」


と、俺が脳内でモルと話しているのを察した......いや、読んだのか、そう言ってきた。しかも、俺だけに言っているわけではなく、アリサの方にも言っていたようだ。


 というか、思考読まれたとかいうパターンじゃん。タイミングバッチリだし。


「安心しろ。思考を読むとかいうことはしない。」


 いや、逆に今の言葉で安心できなくなったんだが。


 アリサを見てみても同様のようで、セクに対して警戒するような目を向けていた。ものすごい眉をひそめて。


「それ、絶対考えを読んでるよね?」


さすがにこらえきれなかったようで、アリサが指摘した。


「すまんな。意識して抑えないとつい見えちまうんだ。ここが結構難儀な部分なんだよな。」


 セクは頭を掻いて、申し訳無さそうな表情をする。


 しかし、すぐに表情を引き締めた。


「じゃ、気を取り直して、次の試験だ。」


 グーにした手を俺達の方に突き出した。すると、俺とアリサの下から光の輪っかのようなものが見え、よく見る転移系の演出だった。


 視界にまでその光が見えたとき、気がつけば浜辺にいた。


 目の前には海が広がり、光が反射して、とてもきれいだ。海も汚れやゴミがなく、ものすごいきれいだ。


 後ろを向くと、森があり、その中には影が中へと誘うように、暗く口を開いて待っていた。


 すると、突然この空間一帯に声が響いた。


『次の試験だ。その無人島から脱出してみせろ。だが、スキルは直接使わず、その無人島にある材料を使ってだ。その材料の加工でならスキルを使ってもいいぞ。』


 なんだ。それだけか。それなら、簡単に......そう思って、動き出そうとすると、止められた。


『まだ説明は終わっていない。無人島のどこかにある鍵を見つけないと、そこからは出られない。』


「つまり、それを探しつつ、脱出するための手段を作る必要があるってことか。」


『そういうことだ。それと、それぞれ入れ替わることができないようにしてもらった。二人が介入すると、難易度がかなり下がってしまうからな。』


 確かに。モルたちなら、スキルの扱いにかなり慣れてるからな。それをうまく使えば、すぐに終わっちゃうし。


『頑張ってくれ。ここでは24時間経過しても現実では1時間ほどしか経たないから、時間のことは気にするな。ここは仮想空間とでも言おうか。』


 なるほど。仮想空間(バーチャルワールド)ってことね。もし怪我とかしても大丈夫ってことか。

『飯を食わなかったり、水を飲まなかったらちゃんと死ぬから、気をつけるように。毒などにも気をつけるといいぞ。それじゃあ頑張れ。』


 そう言われ、俺たちは顔を見合わせた。すなわち、


「どうする?」


「どうしようか......」


と、困惑することになったのだ。


『ええい、後でセクは一発殴ってやるわ。ほれ、早くするのじゃ。でないと、ぶっ飛ばすことも出来んわ。』


 わかったから。頭ん中で暴れないでくれ。部屋を散らかされるイメージがあるんだが。


『じゃったら、はようカギを見つけんか。お主にもクリアしないといけない理由があるじゃろ?』


 たしかにな。俺もできるだけ早く行って、町の造りをしっかり確認しておかないと。


『多分あっちにある***の中にあると思うのじゃ。脱出するためにも***を材料に***を作らねばいかんしの。』


 だめだ。重要な部分が自主規制音になってて聞こえない。明らかに誰かの悪意を感じる。


『ちっ。あいつもめんどくさくなりおって。やはり一回ぶっ飛ばさないと気が済まんわ。』


 ものすごいイラついてるじゃん。まあ、元々自信満々に協力してくれるって言ってたしな。仕方ないか


『協力はしてくれるらしいが、ずいぶんと面倒くさくなったのぉ......』


 イラついてるとかいうレベルちゃうで。ガチギレ寸前やん。


 ちらりとアリサの方を見てみても、アリサが困ったような顔をしてるのを見ても、サラもモルと同じような感じなのかもしれないな。


 俺はアリサに、一度離れるように一言声をかけ、氷の柱を地面から出した。その上に乗って、とりあえず島全体を見渡すことにした。



 いかがでしたでしょうか?今回は、セクという均衡守護者(バランスガーディアン)が出てきましたね。昔と違って成長もするものなんでしょうね。モルが珍しくいいようにやられて、額に青筋を浮かべてそうでしたね。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 それでは、また次回お会いしましょう。


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