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よし、やっと戻った

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


 しばらく待っていると、ドアが開く音が聞こえ、振り向いてみると、レサがなんかの紙となぜか注射器のようなものを持ってきていた。


「待たせたな。まだ準備があるから、もう少しだけじっとしておいてくれ。」


 俺はとりあえず言われるがまま待っていたが、レサはなぜか手に注射器のようなものを持って近づき、首筋にチクっと刺してきた。しかし、そんなに痛みはなく、何かが吸い出される感覚だけがあった。


 それから1分ほどたって、ようやく俺からその注射器のようなものを抜いたかと思うと、その中身を自分の口の中に出して、飲んでいた。俺の血を飲んでいるわけだけど。


 すると、今まで記憶の中にモヤというか、さっきまで忘れていたこと......つまり、取られた記憶が戻ってきたのだ。


 そのことに困惑していると、レサが笑って、


「その様子だと成功したようだな。」


と言った。


 ちょっと待て。成功って、もしかしてさ、


「またなんか実験台にしたとか言うんじゃないだろうな?」


まあ大体察しはついてるから聞かなくてもいいと思うけど......


 しかし、レサは全く悪びれた様子はなく、むしろ、結果がうまくいったことにニヤニヤしている。そして、俺に説明してくれた。


「これは、あたしが作ったものなんだが、これを使って対象者の血を抜き取って、吸血鬼族(ヴァンパイア)がその中身を飲むと、誰が注射器で血を抜き取っても、その中身を飲んだ奴がそいつに効果を試せるってやつだ。」


「いや、ちょっと意味が分かんないんだけど......」


「要するに、これを使えば、直接血を吸わなくても、血をとった相手から記憶を奪うことができるってわけだ。これをもう少し改良して、刺してから数秒で、血をこれいっぱいにまで抜き取ってくれるようにすることができりゃあ、更に一歩大きな前進ができる。」


 一応理解できたけど、そんなに喜ぶことか?


 ......直接血を吸わなくても記憶の操作ができる......待って、てことは、


「帝国のトップに近づければ、吸血鬼族(ヴァンパイア)の存在自体を帝国から消すことができるかもしれないってことか。」


「まあそれも可能だ。だが、少なくとも帝国の貴族、奴隷商、兵士、冒険者、皇帝には知られている。そいつら全員から記憶を奪うのは不可能だ。だが、こいつを利用して、王国に有利になるように事を働かせられれば、王国のやつらにも恩返しができるし、吸血鬼族(ヴァンパイア)も狙われる心配もかなり減るだろうな。それでも、それより先にルーナを助ける必要があるわけだが。」


 確かに。結局、逆恨みで手を出すこともあるわけだし。


「帝国の構造とかを教えてくれれば俺が助け出せると思うぞ。というか、ロサと約束したし、必ず助け出す。」


「あいにく、あたしには町の造りや地形のことはさっぱりだ。情報の正確性で言えば、ディガがぴったりだが、あいつも何か隠しているようだからな、ロサに聞いた方がいい。」


 隠していることか......確かに、俺にレサとロサのことをちゃんと教えてくれなかったしな。


「まあ、今は寝てるようだから、明日辺りにでも聞いてみろ。どれだけ少なく見積もっても、帝国と王国の衝突が起こるのは2週間後だからな。」


 2週間か......結構時間なくね?もしも、モルが言っていた人物に会うまでに時間がかかるとしたら、やばくないか?いくら少なく見積もってもっていうことは置いておいても。


「とりあえず、ロサには明日、お前に詳しく説明できるように言っておくから、今は飯でも作っててくれ。」


 まあ、そうしておくけど.......


「結局、俺の記憶を奪ったのはレサってことでいいんだよね?」


 そう聞いてみると、レサは急に何を言い出すんだという目を俺に向けてきた。


「そうだが......それがどうした?」


「じゃあ、記憶を奪われる直前に、俺が見た夢みたいなのは、レサが見せていたものだったのか?」


「そうだ。他人の意識にまで干渉できるのかっていう、実験をしてた。その時なあ、少し想定外のことが起こってな、磁力かなんかで誰かに干渉されて、あたしが見せようとしていたものとは違うものになっちまったんだ。しかも、お前の記憶も少しだけコピーされちまったみたいで、どこかのどいつが悪用する可能性があるんだ。気を付けとけよ?」


「いやそんな重要なことは、早めに言って?というか、実験のためって言えば、なにしてもいいことにはならないからね?にしても、色々作ってる感じだけど、ほんとに何でもありだな。」


「るせえ。あたしにとっちゃあ、些細なことだ。いいからさっさと行け。できたときには言えよ?その時にはロサを起こすから。」


 そうして俺は部屋から放り出されるように追い出された。


 ああしてみると、ただのいいお姉さんなんだな。研究とか実験とかをしていないときに限るけど。


 さて、今日は何を作るか......というより、材料あったかな?


 俺はリビングへと戻り、何かないかと漁ってみる。


 材料を見て、一瞬カレーにしようかと思ったが、カレー粉って、何がどう配合されているのかが正確には思い出せなかったから、豚丼にすることにした。俺的には甘めが好きだから、甘めで作ろう。


 まず、薄くスライスした豚肉トッグを食べやすい大きさに切り、本来なら、玉ねぎををくし切りにするのだが、その味の物はモテトしかないからな、こいつを半月切りにする。


 その二つをフライパンでいため、モテトが柔らかくなり、火が通ったころになったら、みりん、調理酒しょうゆを1:1:1の割合で入れ、砂糖は、甘さの加減なので、入れなくてもいい。入れるならお好みの量で。


 それをアルコールのにおいが飛ぶまで加熱し、水を加えて、もう一度加熱し、味の薄さ、濃さなどの調整をすればオーケーだ。


 とは言っても、サクッて作っちゃったからな、結構夕食には早いんだよな......


 何をしようか......いったん部屋に戻って、『水魔法の使用』の検証をするか。使用回数には気をつけておかないとだけど......10回発動したら飯にしておくか。


 一度部屋に戻って、俺はその部屋の中心に立ち、まずは、モルがやっていたように体の周りを覆うように水で囲う。その際、密度を高くするように同時にイメージするのだが、中から触れてみても、石壁に触れてるかのように、固かった。まるで中から触れられないように、バリアのようなものがあるみたいだ。


 しかも、水による光の屈折も意識しただけで変えられるらしく、水が間にあるとは思えないくらいに水の向こうが透き通って見えた。


 本当に防げるのか、確認するために、そこから出て、小石を拾ってきて、上にひもを引けば落ちてくるような作りの仕掛けを作り、水の障壁の中に戻る。そして、ひもを引いてみると、石はちゃんと落ちてきたのだが、すぐに勢いがなくなり、水中で浮くように止まった。


 そして、その石をジッと見ていると、唐突に石が割れ、そのまま水の中で浮いていた。


 俺は、結構強いことに驚いた。そして思った。これをどうやって消そうかという......いや、モルも自然に消してたから、消す方法とか分かんないんだけど......というか、さっきはどうやってあの水を消したんだっけ......?なんなら、この水はそもそもどこから来ているのだろうか。


 疑問に思ったら止まらないから、いったんそれは放置して、これを消す方法を考えよう。というか、モルが興味を失せた時に消えてた気がするんだけど......


 あ、そう考えたら、さっきライアが来た頃にはもうなかった気がするわ。ライアの背中に乗っても、出した水が見えたはずなのに、見えなかった気がするわ。


 え、じゃあ、結構これ消すのむずくね?だってさ、その仮説が正しいかわかんなくて、それを試そうとしてるから、気にならないようにするのができんやろ。


 あ、そっか、次のを試して、そっちに意識を向ければいいのか。


 ってことで、次試すことは、このスキルを水以外を混ぜて使ったらどうなるか。


 たとえば、水の中に金属類を混ぜて、それを高速で飛ばすとか。いや、危険すぎるな。今ここでするのはやめとこ。というか、そういう危険そうなのはモルにでも聞いてみよ。モルの方が使ってるしな。


 次は、出した水で造形が容易くできるのかっていうのをしよう。出した後でも形を思うままに変えられるのかっていうことをね。


 まずは、目の前に水の球を出すイメージをする。すると、ちゃんと水の球は出てきた。


 あとは、これを操作できるかどうかだが......それが弾けるようなイメージをすると、イメージ通りにその水の球が部屋の中で弾けてしまった。


 その時に気が付いたが、さっきの水の障壁のようなものも消えていて、一切濡れたあとがなかった。


 俺はもう一度水の球を出し、長剣......いわゆる、騎士が持ってそうな剣を想像した。


 すると、水のまま剣の形になり、俺の目の前で浮遊している。しかも、自由自在に動かせるようで、違和感なく手に持つよりも速く、強く振ることもできた。


 そして、それを氷にすることもでき、手に持つこともできた。


 しかし、切れるかどうかは別として、手に持つよりは、浮かせて操作した方が使いやすいと分かった。

 まあ、その中に水の流れでも作れば切れるようにはなるだろうし、他の物質......さっき言った金属類みたいなものを混ぜれば、切れ味とかは上がるだろう。その場合は、水が消えても、その金属類の何かは消えなさそうだけど。


 その後も色々と試してみて、気が付いたことをまとめる。


 まず、自分の視界の中や手の届く範囲なら、どこでも水を出すことができる。これは、モルには当てはまらなかったから、おそらく使うことに慣れれば、目の届かない範囲にも使うことができるようになるのだろう。


 次に、出した水はいくらでも姿を変えることができる。霧にしろ、氷にしろ、水蒸気にしろ、状態を自由自在に変化させられる。さすがに状態を変化させた後で、温度は変えることはできなかったが、氷になった時は、ちゃんと冷たかったし、水蒸気になった時は、一瞬触れたが、めちゃくちゃ熱かった。まあ、すぐに氷に戻したんだけど。


 そして、想像だけで動きを作り出すこともできた。しかも360度自由自在に、その勢いもスピードも想像次第で変えられる。


 さて、そろそろ飯を食べるころだな。食べる準備をしよう。


 俺はどんぶりにご飯をよそい、豚丼のもとをその上に入れ、それを動物たち含めた人数分用意する。


 俺はそれぞれを呼びに行こうとしたら、ライアが動物組を全員呼んできてくれていたようで、そろっていた。


 なので、アリサ、レサとロサ、ディガを呼びに行くことにした。


 まずは、アリサを呼ぼうとしたのだが、その時に気が付いた。レサに言って、アリサの記憶も戻してもらわないとな。って。


 まあ、それはとりあえず飯を食べ終わってからってことで。


 ってことで、まずはアリサを呼びに行く。


 ドアをノックしてから開けてみると、中には誰もおらず、静まり返った空間だった。


 仕方ない。先にディガを呼んでから、レサとロサを呼びに行こう。


 ディガの部屋の前に行き、ノックして、中に入る。


 ディガはなぜか慌てた様子で何かを隠したが、多分何か模型のようなものを作っていたのだろう。


 あまり見せたくないのを察して、俺は飯ができた旨を伝える。


「ああ、わかった。キリのいいところですぐに行く。」


 と、ディガから返事が返ってきたので、俺は部屋を出て、ロサの部屋に向かう。


 俺はロサの部屋の前で立ち止まり、ノックしてからドアを開ける。中には、二人がいたのだが、それともう一人いた。


 ロサはベッドで寝てるままだったが、レサ......だよな?がアリサの首筋に噛みついていた。しかも、アリサは驚いている様子なのだが、レサにしっかりと抑えられて逃げれないようだった。そして、若干の痛みのせいか、涙目になっている。


 ちなみに、レサは今、目をつむっているため分からないが、髪の毛の色がさっきとは違い、金髪になっていた。おそらく、吸血鬼の力を使うためにはあの姿になる必要があるということだろう。


 その様子を見ていると、レサが顔を上げ、口の周りをぺろりとなめ、俺がいることに気が付いたのか、こっちを見た。(瞳の色はどちらも赤というか、紅色だった。)


 そして、姿が赤の髪と、左目が黒になって、さっきの姿に戻っていた。


「よう、もう飯の時間か?少し待ってろ。今ロサを起こすから。」


 そう言って、ロサを揺さぶり、声をかけ始めた。


 そして、アリササラが俺に近づいてきて、記憶が戻ってきたことを伝えてきた。その後、すぐにとあることを聞いてきた。


「ソータ、さっきレサが言ってたけど、帝国に攻めようとしてるってホント!?」


 なぜそんなことを聞いてきたのかと思ったが、記憶を戻すにあたって、協力をアリサにも仰いだのだろう。


「まあそうだな。協力するって言ったな。帝国を攻めに行くのとはまた少し違うけども。」


 それを聞いたアリサは納得した顔で、自分も協力すると言ってきた。


「それはそうと、モルの気配を感じるんだけど、そこにいるの?」


まあやっぱり気が付くか。


「今は寝てるけど、俺の中にいるぞ。」


とは言っても、まだ少し信じきれてないような様子だから、俺はあることをする。


「証拠にほら。モルも使えるけど、こういうこともできるぞ。」


 俺は水を目の前で浮かばせた。その後すぐにそれを凍らせてそのまま浮かばせた。


 それを見て、アリサは......というより、サラは信じたようで、モルに会えることに嬉しそうな表情を浮かべた。


 しかし、今はそれよりも先に、お腹が空いていたようで、


「ご飯できたのよね?早く食べましょう?」


そう言って、部屋を出ていった。


 その様子に、頭の片隅で何か違和感を感じたが、その違和感はなぜ感じたのかはわからなかった。



 いかがでしたでしょうか?今回は、蒼汰とアリサの記憶が戻りましたね。そして、蒼汰の感じた違和感の正体は一体何なのでしょうか?


 さて、次回が3章の終わりの予定ですので、次回もぜひ読んでいってください。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 それでは、また次回お会いしましょう。


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