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そっか、そういうことが......

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。


「お主のその技の種は見破ったぞ。おとなしく出てくることじゃな。」


そう言ったモルは、自分の上にあった水のみを消して、自分の下の水を透明度のかなり高い氷を作って、その上に飛び降りた。


 そして、そのまま氷ごと動かして開けたところへと再び行った。


「さて、ここでは影がない(・・・・)が、どうするか?」


 と、森の中のどこかに視線を向けていた。しかし、その声は空しく、ここ一帯に響き渡っただけだった。


 それを受けてもモルは何かを確信しているようで、じっと、しばらく待っていた。俺はその間にプリンを食べ終わった。なので、甘めの炭酸ジュースを想像し、目の前に出して飲んでいる。


 それから更に1分ほどすると、森の奥からロサが姿を現した。表情から見るに、根負けして、観念したかのように、森の中から出てきた。


 しかも、その姿も先ほどとは打って変わって、髪の毛の色が変わっており、銀色に。目の色は朝と変わらず、右目が赤く、左目が青かった。俺には、なぜそっちの姿に戻ったのか気になるところがあった。


 モルも違和感に感じたようで、怪訝そうな表情を浮かべている。


 その様子を見たロサは苦笑して、両手を上げながら言った。


「降参ってことだよ。どれも僕の技は通用しなかったしね。それに、あの姿になるためには時間制限があったんだよ。僕はまだまだ未熟だからね。」


 それを伝えに来たのか。まあ確かに、モルはすべてを対処してみせたからな。実際、その言葉を聞いてモルは警戒を解いているようだしな。


 いや、でも何か引っかかってるみたいな顔してるし、なんか気になったことでもあるのかな?


「お主の姿はさっきの方が本来の姿ではないのか?なぜ時間制限があるのじゃ?」


確かに。さっきの姿が本来の姿なら、時間制限がある理由が分からんな。


 すると、ロサは一瞬「なんでだろう......」と、つぶやいてから、


「そもそも、今の姿が本当の姿とは......」


「思うわけがないじゃろう。吸血鬼族(ヴァンパイア)に関する書物は少ないが、それゆえに忘れるわけがないわ。」


「やっぱりそうだよね......」


 モルのハッキリとした回答に、ロサは頬をかきながら、モルから視線を逸らす。


 そして、フウ~と、深呼吸のように大きく息を吐くと、答えた。


「さっきの姿はどうしても、月の光が弱いと、能力が下がるか、時間制限がついちゃうんだよ。夜なら大丈夫だけど、昼間に使うと、太陽の光の方が強いから、あまり届かないんだよ。今日は、夜にはもう月がしずんちゃってるしね。」


そういうことか。確かに月は日中にも出てたわ。


 俺は空を見上げてみる。月を探してみると、うっすらとだが、月が浮かび上がっていた。形は......何とも言えん。三日月と半月の中間か、半月寄りって感じ。


「では聞くが、なぜ毎日髪と瞳の色が変わるのじゃ?別に吸血鬼族(ヴァンパイア)の特徴というわけではないだろう?」


確かに言ってたけど、気になるところだったしなあ。


 すると、ロサはあまり言いたくなさそうに答えた。


「僕たちがこんな風になったのは、お姉ちゃんの実験の失敗のせい。ちょっと細胞だけを破壊する実験をしてた時に、失敗して爆発して、なんかこうなちゃったわけ。OK?」


 おう、OK。......ってなるわけないだろがい!なんでそんな理由で体にも影響出とんねん。


 というか、結構普通に質問に答えてくれてるし。


『こういう勝負で勝った方は、相手の言うことを聞かねばならん。こんな決着のつき方は予想していなかったな。妾はもう少しやりたかったと思っておる。』


 いや、相手が降参してくれてんだから、素直に受け入れた方がいいでしょ。


『それとこれとは別じゃ。頭ではわかっていても、納得はできぬということもあるだろうて。さすがに「パラシワー」とまで言われれば納得できないのも当然じゃろうて。』


 それさあ、さっきも思ったんだけど、何?ニュアンス的に、相手を侮辱する類の言葉っぽいけど。


『お主も本気でむかついたときにだけ使うとよいぞ。』


 え?いや、使い時じゃなくて、意味を教えてほしいんだけど。


『そうじゃなあ。お主の世界の言葉で言うなら「寄生虫」や、「すねかじり」の意味合いがあるのう。つまり、自分は何もせずに、よくしてくれる相手の好意を悪用しているだけのクズという意味合いがあるのじゃ。』


 おおう......予想以上にえぐい意味合いだったわ。そりゃキレそうになるわな。


『まあこの世界においては禁句じゃからな。......それはそうと、バトンタッチをお願いできるかのう......少し眠りたいのじゃ。』


 なんか、エネルギー切れみたいな感じ?


『いや、お主の記憶を覗くのが面白くて、夜更かししてしまっておっただけじゃ。』


 いや何しとんねん。まあ結果的にモルが勝負をしてくれたとはいえ、俺が勝ったってことには変わらないからな。あれ?俺の方が「パラシワー」じゃね?............考えないでおこ。


 後ろを振り向くと、モルが立っていて、手にはさっき入れ変わった時にあったバトンではなく、なぜか旗を持っていた。


 旗を持っている意味はよくわかんないが、俺はモルからその旗を受け取った。しかし、俺が受け取った瞬間、モルが旗の布の部分を引きはがし、ベッドを出現させてそのまま眠った。いや、布団かよ。


 そこまで見届けたところで、視界が真っ暗になり、体からの重みを確実に感じた。


 瞼の感覚が明確になっており、ゆっくりと開くと、目の前にロサがいた。


「えっと、なんでそんな近いんでしょうか?」


 そう、目の前と言っても、俺は地面に座っており、ロサは俺の太ももに手を置く形で、俺の顔を見ていた。


「目の色が変わったなあと思って?......さっきまでは気になってなかったんだけど、急に気になっちゃってね。」


 俺が動揺しているのを見て、面白そうに笑った。


 しかし、すぐにその笑みはなくなり、俺から離れると、ロサは視線を地面へとむけて、少し暗い顔でぽつりと、俺に質問してきた。


「ソータはさ。もしも家族が悪い奴らに捕まって、人質として脅されていたらどうする?」


 俺はその言葉を聞き、少し察した。


「もしかして、さっき王国を滅ぼしてほしいって言ってたのは......」


 そこまで言ったところで、ロサは無言で頷いた。そして、ぽつりぽつりと話し始めた。


「僕たちは元々集落で、それぞれ好きなことをしたりして静かに暮らしてたんだけど、帝国のやつらが侵攻してきてさ、集落のみんなを殺したり、そうでなくても拉致したりしてきてね、僕たちにはどうすることもできなかったんだ。


 お母さんと、お姉ちゃん、ルーナ......僕たちの妹ね。で隠れて暮らしてたんだけど、すぐに見つかっちゃてね。隠れさせてた責任として、お母さんはそいつらに殺されて、僕とお姉ちゃんの技術に目を付けてきたやつらは、ルーナを捕らえて、人質として扱うようしたの。


 妹を返してほしければ、帝国に技術を渡すか、王国に潜入して、帝国がその王国と戦争を始める前に、王国を滅ぼせってね。それができなければ妹を奴隷に堕とすと。なんでも吸血鬼族(ヴァンパイア)っていう珍しい種族は、どんな人間にも需要があるらしくて、そうしようっていう考えに至ったんだって。


 しかも、ルーナは今は、絶対に逃げられないように、外からの光が一切差さない監獄にいるらしいんだって。だけどね、家族を人質に取られてる以上、帝国に逆らうことも出来なかったんだ。


 だからこそ、お姉ちゃんは本気で、リスタイル王国を滅ぼそうとしてる。だけど、僕は王国の優しい人たちの心に触れて、滅ぼしたりしたくないって思ったんだ。


 正直、僕にはどうにもできない。だからソータ、妹を、ルーナを助けてほしい。ルーナを助けない限り、僕たちは複襲もできないし、優しかった人たちを殺すことになっちゃうんだ。それは嫌だ。


 そのためなら、僕は......ソータにこの命を預けてでも何でもする。さっきモルさんが見せてくれた以外にも、スキルがあるよね?あれならルーナも助けられるんはずなんだよ。お願い!!


 これがわがままだって分かってるけど、このお願いを聞いてほしい!!」


 俺はそこまで聞いて、内心どうするか悩んだ。そりゃ、感情論でいけば、助けたいよ?だけど、俺には人質を助けられるとも思わないし、俺が行ったところで、むしろレサやロサの妹が危険にさらされるだろうし。


 本音を言ってしまえば、少なくとも俺の周囲にいる人たちの涙は見たくない。だけど、俺の行動によって更に誰かが悲しむようなことはしたくない。


 俺は、ロサにそのまま何も言えず、黙っていた。


 その様子を見て、俺がそれはできないと言っているように感じたのか、ロサはついにポロポロと涙をこぼし、泣いてしまった。


 ああもう!俺は何をウジウジしてんだ。たとえ記憶がなかろうと、自信がなかろうと、人を泣かせるのは二度としないと誓ったじゃないか。あの日に!!泣くなら俺のみじめさだけでいい。それに、あの人も言っていたじゃないか。先入観を捨てろと。俺にはできないとかいう先入観を捨てろ!泣かせておいて、何が俺の周りの人を悲しませたくないだ。口先の言葉なんて根拠のない自信よりも信用できねえよ。


 俺の中で何かが吹っ切れたように、俺はこれ以上ないほどに燃え上がっていた。そして、気が付けば口にしていた。


「ロサ、お前の妹は絶対に救う。帝国かなんか知らんが、そいつらは二度と俺にも、俺の周りにも、手を出さないって、確約させてやる。それが答えだ。そのためにもぜひ協力してほしい。具体的には、その妹が捕らわれている場所とか、警備の厳しさとかな。」


 正直、感情的だろうが何だろうが、“絶対”って言葉を口にした以上、俺はもう引かない。目標は決まった。目的も決まった。あとは、作戦を練って準備して挑むだけだ。


 そのことばを聞いたモルは、涙目ながらも、俺に、


「あり......が、ありがとう......」


と感謝を述べた。


「いや、感謝するのは、お前らの妹を助けたときにしてくれ。必ず目的は果たすが、感謝される資格は少なくとも今は俺にない。」


聞き方によってはただの自分に酔ったやつの発言だろう。実際そうかもしれない。だけどそれ以上に、俺の感情が前に出てるんだ。今はこれに従うほかないだろう。


『はあ。やはりお主は後先を気にしないタイプのようじゃの。』


 ビックリしたぁ。寝てたんじゃないの?


 俺は突然話しかけてきたモルの声のおかげで冷静になれた。


『そりゃ、あれだけ叫んでおいて、寝てた?とか、ふざけておるじゃろ。』


 いや、あ、そっか、聞こえてるんか。


『どうにかして、脳内に声を送り込まずに考えるようにしてくれ。』


 んな、やり方なんてわからんわ。


『それは後々教えてやるとしよう。それより、ちょうどよかったな。』


 ん?ちょうどよかったって、何が?


『あやつの言っておる帝国のすぐそばには、ちょうど均衡守護者(バランスガーディアン)がおるのじゃ。中々に頭の固い人物じゃが、協力を仰げば心強い戦力となるぞ。そうでなくとも、あやつが持っておるスキルがな。』


 スキルって、やっぱり、魔法系?


『まあそうじゃな。どんな魔法かは行ってからのお楽しみじゃ。......あやつは入った瞬間敵対するようなやつではないから安心しておくといい。』


 フラグだよね!?それね!?


『......ともかく、帝国に向かう前にそこに立ち寄っておけば大丈夫じゃろう。』


 まあ立ち寄るも何も、先にロサから情報を聞いてからじゃないと、そこに先に行くかどうかを決めれないしな。


『別にそれでも良いが、戻るのなら、まずは記憶を戻してもらうことをしてもらった方がいいじゃろうな。』


 確かにそれはそうだわ。記憶を戻してもらわないと、スキルの効果的な使い方が分からないからな。少なくとも使ったことのある記憶だけでも欲しい。使った感覚が分からないと、効果的な使い方なんて、なおさら分からんし。


『戻るときは静かに戻るように。もしもさっきみたいに、また叫んだら、寝てるときに少しずつ体の端から冷やしていって、全身を凍傷にしてやろう。』


 怖い怖い怖い。できるだけ気をつけるから、やめてね。


『それはお主の行動次第じゃ。......今からじゃぞ?』


 それから、モルは反応がなくなった。寝るまでが早いのだろうか。


 俺は、ロサに目を向けてみると、シンプル驚いた。なぜなら、こっちも地面に倒れこむようにして眠っていたからだ。


 ええと、スキルとか力とかを使ったりすると、眠くなったりする特性でもあるの?え?どっちも寝てんだけど。


 とりあえず日が落ちそうだから、ロサを背中におぶって家へと目指した。


 ごめん。ちょっと森の中すぎて、どこかわかんないから、そこからどうするかを考えなきゃだわ。



 いかがでしたでしょうか?今回は、ロサが過去に何があったかを話してくれましたね。しかも、ロサが蒼汰に対して、お願いをしてくれましたね。これからの展開もお楽しみに。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 それでは、また次回お会いしましょう。


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