よし、気合い入れよう(意味ないけど。)
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
モルが指を鳴らした途端、ロサの足に噛みついていた水の蛇から、爆発したように大量の水が流れ出してきた。しかし、その水はすぐに集まり、水の球体となって、ロサを捕らえた。
ロサの表情を見ると、一瞬あっけにとられたような表情だったが、すぐに焦り始めたようだった。
何とかしてその水の球から出ようと、もがいていたが、どうすることもできないようで、もがくのをあきらめて、モルに目で何かを訴えようとしていた。おそらく、ここから出せと言うことだろう。
その様子を見てモルは面白そうにしていた。
「どうした?そこから出してほしいのかえ?妾に負けたと認めるのなら、出してやってもよいぞ?」
そんなことを言って、ロサの顔を覗き込んでいた。
......いや、それをしてもさ、水ん中だから伝わらんと思うよ?水の中からは外が見えにくいと思うし。いやでも、見えてるかもな。さっきからずっとモルの方を見てるし。水を操作できるのなら、中から外が見えるようにもできるかもしれないな。
というか、相手の呼吸ができないように追い込むって、結構残酷なことしてない?
すると、モルは俺とロサに伝えるようにこう言った。
「安心するがよい。その中に入っていても窒息することはない。ただ身動きが取れなくなるだけじゃ。」
と。
さすがに勝負で息の根は止めないってことか。
『それに、こんな不意打ちのような形で、初手で終わらせるのは面白くないしの。』
...慣れましたよ。急に話しかけてくることには。若干まだビックリはするけど。
簡単に終わらせたくないってことでいいんだよね?
『ああ、じゃが、あやつが自力であそこから抜け出せないのなら、この勝負を続ける意味はないと思うてな。他の技を食らわせるのはもったいないしな。』
え?じゃあ、あれはモルが使う中でも、結構出力は弱い方?
『まあ、相手の身動きができぬようにするだけためのものじゃからのう...そこまでではないな。妾が本気で捕らえるつもりであれば、あれを凍らせておるわ。』
...ちなみに、本気を出せばどのぐらいの威力があるんですか?
『対個人戦で言えば、相手の体内の水分を操作することができるの。対団体戦においては、あたり一帯を大洪水にすることができるぞ。』
......こわっ...相手の体内の水分まで操作できるって...どんなチートだよ。目が合ったらすでに命を握られてるっていう状況って...
『まあ、そうするためには、細かい条件があるのだがな。』
よかった。それならまだ安心は......いや出来ねえよ?その細かい条件が何かも分かんないのに。
『簡単に言えば、妾が行う水操作の妨害ができる場合じゃ。または、スキル同士で打ち消しあうこともできる。もっと言えば、相手との間に、壁や相手の持つ盾などの障害物がある場合は、使うことができない。』
よくわかんねえ。
『まあこれはお主の記憶を戻してから説明するのが早いじゃろう。気になるのなら、さっさと記憶を取り戻すことじゃな。』
俺に戻せと言われてもどうしようもないんだが...
『それと、アリサとかいう娘の記憶もついでに取り戻してやるとするかの。サラもおるようだしの。』
そのことに関しては、サラを助けることがメインなんじゃ...
『待て。一旦この話は終わりじゃ。あやつがあれから抜け出そうとしておるぞ。』
え、なんか気配とかで分かるみたいな感じ?
『そうじゃな。使ってる本人が分からないわけがないじゃろう。』
どういう感覚なんだろ...俺にも使ったときは感じることができるかな?まあ使い方が理解してるだけで分かんないんだけど。
俺はロサの方に目を向けてみた。すると、水の球が波紋を広げており、今にもあの形が崩されそうだった。しかも、少しずつ水滴があたりに飛び散っており、やはり、水の球が形を保てなくなってきたのだろう。ロサの力によって。
それからすぐに、水の球全体がついに形を保てなくなり、ついには、はじけ飛ぶように破裂し、あたりに数十リットル単位の水がばらまかれた。土の部分なんかは完全に泥になっている。水たまりも周りに結構できてるし。
「いやあ、ここから出るのに結構時間かかちゃったね。見た目とは違って結構複雑な作りだったじゃん。」
そういったロサに対して、モルがロサに話しかける。
「この程度のものにこれだけ時間がかかるとはのう...もおちっと骨のある相手とはおもたんだが.....妾の思い違いか?」
多分だとは思うんだけど、これはロサを騙すための言葉だよね?さっきの話ではこれを抜けられないんじゃあって...いや、抜けれてはじめて勝負を始められると言ってたな。
となると、俺にはどちらとも取ることができないかな。
「この程度って言ってるけど、モルさんも、これが私の実力だとは思ってないよね?むしろ、今ので実力を測れるとか言うんだったら、それこそ僕ががっかりしちゃうんだけど。」
「少しは、言葉遣いに気をつけたらどうじゃ?一人称がコロコロ変わりおるぞ。」
なぜかモルは話と関係のないところを突っ込んでいた。いや、むしろ、自分の考えを悟らせないための作とも取れるかもな。確かに今は、ロサが自分から、実はすぐに出れたと言ってるようなもんだからな。
そう考えると、この勝負は序盤ですらないってところかな。むしろ、試合前の挨拶みたいな。
「もう、ちゃんとやってよ。まだ全然勝負になってないじゃん。こんな感じじゃ、日が暮れちゃうけど?」
ロサが不満を垂らしているようだ。まあ、今のところ、モルは真面目に相手にしてる感は否めないかな。
「ならば、先に本気を見せればよいじゃろう。そうすれば、その実力に応じて“本気”を見せてやるぞ?」
「うわ~完全に格下として見られてるねこれ。そうやって舐めてるうちが命取りだよっ。」
突然、こちらへとロサが飛びかかってきた。モルが落ち着いて対応しようとするが、その姿は偽物で、本物は後ろへと回り込んでいた。
しかし、それも振り返ることなく、水で壁を作ることによって難なく防いだモルは、
「こんなあからさまな言葉にも引っ掛かるとはのう.....もう少し慎重に動いてみてはどうじゃ?」
と、なぜか助言をしていた。
って、なんか茂みが動いた気がするんだけど......もしかして、なにか仕掛けてくるとか!?まあモルなら気づいてるだろうし、ちょっと気にかけておくだけで問題ないかな。
モルの言葉を受けたロサは諦めたように、ため息をついた。
「わかった。本気でやればいいんでしょ?その代わり、少し“溜め”があるから、1分だけ待っててほしいな。」
その様子を見てモルはフッと笑い、何も言わず、ロサがなにかしてくるのを待っているようだった。
ロサはポケットからハンカチを取り出すと、なぜかそれを自分の手に巻いた。あのハンカチの下に何かを隠し持ったとか?そんなふうには見えなかったけど、マジックみたいにすれば気づかれず手に持ってる可能性もありそうだしな。なんなら、巻くだけとは思えないぐらい、時間がかかってたし。
「よいのか?1分経ったぞ。それだけで終わりかの?」
ちょうど巻き終わった頃、モルが聞いた。
「いいよ。それじゃあ行くよ!」
そう言ってロサはまたしても正面から向かってきた。
もちろんモルは、それを四方に発生させた水の壁で遮るが、今度は偽物ではなかったようだ。
しかし、その水の壁に触れる寸前、何かを投げながら、体を捻り、モルの真横へと立つ。
すると、ハンカチを巻いている手と逆の手......右手を突き出してきた。
しかもなにか持っているようで、先端から相当な電気が走っているのがわかる。スタンガンみたいなものかな?
その先端が水に触れた途端、水全体に電気が走ったのか、中にいたモルが若干ビクッと跳ね上がっていた。が、そこまでダメージはないようだ。
「ほう......やはり、純粋な水は電気を通しにくいとわかっていたか。なにかまではわからなかったが、電気を通しやすい物質をここにかけ、電気で痺れさせるという作戦はなかなか良かったぞ。妾も一瞬触れてみたが、少し痺れてしまったぞ。」
そう言って、手についた水を飛ばすように軽く振ってみせる。
「いやあ、地面が濡れてるから、そこを通して通電すると思ったけど、そこまで甘くないか〜。」
なんか軽いな。むしろ、想定どおりと言っているみたいだ。
「もちろんじゃ。妾は水に関する影響は受けないからな。」
モルの顔が若干ドヤ顔に見えなくもないんだが......まあいいか。
しかし、ロサはモルの発言から何かを思いついたようだった。今は悩んでいる様子だが、実行しするかどうかを考えているのだろう。
「お主、ちゃんと来ぬのなら、妾が終わらせてしまうが、それでも良いのか?こんなことばかりしかせぬのなら興ざめというものなんじゃが。」
わざとらしく、若干飽きてきたような表情をするモルに対して、ロサは一瞬眉をピクリとさせるも、すぐに言い返す。
「しょうがないじゃん。実際に吸血鬼族の力が使えるのは月が出てるだけなんだから。」
不満そうに頬を膨らましているところを見ると、どうやら、言い訳とかではなく、本当の事っぽいな。
月が出てるときって......どう考えても夜の雲がないときだけじゃん。もしくは新月じゃないとき。
すると、それを聞いたモルはこう提案した。
「そんな条件があるのなら、夜になった時にまたやるか?」
という風に。明らかに自分の価値を疑っていないような言い方なんだが。
しかし、それを否定するかのようにロサはブンブンと首を振った。
「いやだよ。結局それも実力かもしれないけど、そんなつまらないことはしたくないもん。あと一つ言うなら、私が待てないし。」
.....結局、一人称はどっちなんだろ。しかも、謎が多く残ってるんだが。
「じゃあどうするのじゃ?こうやって話していても平行線のままじゃぞ。」
しかし、その瞬間、モルの腕に切り傷が付いた。正確には俺の腕にだが。
しかも、それを皮切りに次々と足や太もも、顔、胴体など、様々な場所に傷がついていく。そして、今さっきまで目の前にいたロサがどこかへと消えていった。
すると、次は空間全体に響くように声が聞こえてきた。
『やっぱり気が付かなかったみたいだねえ。私が話しているときから隠れてたことに。この、「偽装」ってスキルは便利だねっ。さてさて、モルさんは私を見つけられるかな?』
どうやら、何ならかの方法でどこかへと隠れているようだ。これがもしもスキルによるものだったとしたら、一体どのぐらいのスキルを使うことができるのかが、もはやわかんないぞ?
そんな状況に焦っているように見えたモルだったが、落ち着いて自分を水の球で覆った。おそらく、ロサにやったのと逆で、自分の周りを覆うことで全方向からの攻撃を防ぐ盾としたのだろう。
しかし、さっきと切り傷の増える割合は変わらず、どんどん増えていった。すべて浅い傷となってるのが、ロサがなんでそうしているのかがわからないところだが。
それでも防ぎ切れなかったモルがチッと舌打ちをし、いったん後ろへと跳んで、さっきの場所から離れた。しかし、それでも体にドンドンと切り傷が増えていく。
すると、今度は木の上へとモルは飛んだ。ちょっとまってくれ。これは俺の体なんよな?こんなことできんぞ。まあ、今はモルも必死らしいし、聞いても答えてはくれないんだけど。
それでも変わらないことに一瞬首をひねったが、何を思ったのか、突然上下のみ水で壁を作った。しかも、激流にしておきながら。
それで安易に近づけないと考えたのか、攻撃は止んだ。モルは左右へと目を向けるが、どこか納得したような表情をしていた。
俺も見てみると、誰もいなかった。しかし、モルは何か分かったのか、勝ちを誇ったかのような表情を見せ、虚空に向かって、否、ある一方向......自分の下、水の向こうにある影に向かって、
「お主のその技の種は見破ったぞ。おとなしく出てくることじゃな。」
と言った。
いかがでしたでしょうか?今回は、少しずつお互いの実力が分かってきましたね。どうやら、ロサは本気で行ったようですが、一体どういう仕組みなんでしょうね?次回をお楽しみに。
今回の投稿は、ミスで、来週の金曜日になっておりました。申し訳ございません。投稿が夜八時三十分という少し遅い時間になってしまう形になってしまいましたが、以降、気をつけていこうと思います。
ぜひ、これからも読んでいってください。
次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。
それでは、また次回お会いしましょう。




