はいじゃあ、おにゃしゃす。
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
突然笑い出したロサに薄気味悪さを覚えつつ、周囲の様子を見てみる。そりゃあ、急に相手の様子が変わったら何かあるんじゃないかって気になっちゃうからね。
...まあ特に何もなかったわけなんだけど。
それで、モルどうするの?
『どうするもこうするも向こうの出方次第だろう。』
たしかし。でもさ、明らかに答えてくれそうな雰囲気じゃなくない?
『いや、あの感じだとちゃんと話してくれそうじゃぞ。』
するとタイミングよく、スッと笑いを収めたロサがこう答える。
「そうだよ。僕が朝ソータの部屋に入ってたその“ヴァンパイア”だよ。」
おお、ってことは、仮説は合ってたってことか。
「それで、おぬしらの目的はなんじゃ?」
若干、相手の動きを警戒しつつ、モルがロサに聞いてみる。
「別に。何でもいいんだけど...ソータの血を吸った目的は僕には特にないんだよね~」
「どういうことじゃ?」
「そのまんまだよ。シンプルに寝ぼけてソータの血を吸っちゃったんだよ。」
はあっ!?
「はあっ!?えっ、もしやそんな理由で自分がヴァンパイアであることの尻尾を掴ませおったのか!?正気か!?」
さすがのモルも驚き、つい相手の正気を疑うような問いかけをする。...俺も同じ立場ならそんなことはしないんだけどね。
「だ・か・ら、寝ぼけてたんだって。こればっかりは小っちゃい時からの癖なんだから、しょうがないじゃん。」
少し恥ずかしそうに頬をかきながら目をそらすロサ。
「あ、あと、ヴァンパイアは尻尾を掴ませるじゃなくて、牙を残すって言葉で表すよ。」
使うかわかんない情報をありがとう。国によって意味は同じでも、言葉の表し方の違うことわざとかあるもんな。
いやでも、なおさら何で、自分がヴァンパイアであることを認めたんだろう?まだヴァンパイアそのものを知らないふりでもしておけば、モルはともかく、俺の容疑者候補から外れたかもしれないのに。
『おそらく、隠しきれないと思ったか、もしくは...』
「隠す必要がないから。でしょ?」
突然に言い始めたロサに驚きを隠せないモル。多分、モルが俺に言おうとしたことだったのだろう。
「なぜ分かったのじゃ!?」
モルは思わず聞いてしまう。そのことに不敵にニヤリと笑ったロサに少しだけ違和感を覚える。まあこの状況自体に違和感しかないんだけどね。
「えっとね、簡単なことだよ。ソータの血を吸ったじゃん?その時に記憶を読み取って、記憶からソータとモルさんの性格を少し読んで、思考の仕方を少し予測しただけだよ。別に難しいことでもなんでもないでしょ?」
いや、難しいことしかないぞ?記憶をなくす前の俺が、一体いつからモルさんを仲間にしたかはわからないけど、少なくとも記憶を読み取ったぐらいじゃ人格は読み取れないと思うよ?
『そうじゃな。こやつはかなりやりおる。おそらく、相手の表情や過去の行動などから思考したのだと思うが、そうだとしても洞察力にかなり優れておる。もしかすると、あの話し方や振る舞いも演技なのやもしれぬな。』
まあ逆に読心系のスキルを持っているかもしれないけど。異世界ものではあるあるではあるしな。
『ないとも言い切れん。実際、スキルに関しては未知の部分しかないと言っても過言ではなかろうて。』
俺は全くわからないんだけど...スキルって、同じのを複数の人が持ってたりするの?
『少なくとも同時にはないじゃろうな。そんな話は今まで聞いたこともない。過去に持っていた人がいたスキルはいくつか発見されてるらしいがな。それでも、過去に発見されたことのないスキルの方が多いことは確かじゃ。』
まあ未知の部分しかないってことが確かだってことはわかった。
ずっと何かを考えるそぶりをしていた俺が喋らないことにしびれを切らしたのか、こう言い放つ。
「ねえ。一つ僕の些細なお願いを聞いてくれたら、僕たちの目的を話してもいいよ♪まあお願い自体が目的みたいなものなんだけどね。」
はいー出ました。悪役かなんかはわからんけど、相手から交換条件で秘密を喋るっていう親切な役。そしてその『お願い』を断ったら存在を消されるという、同時に理不尽な、断るという選択肢のないもの。流れ的には結構テンプレではあると思いますよ?
『なにをわけのわからんことを...まあ、実力の知れない相手や自分よりも強い相手が条件を出したら、従うのが普通ではあるんじゃろうな。もちろん、妾は従う気はないが。こちらに利のない限りな。』
まあ、俺も別に絶対に聞こうとか言うわけじゃないからいいんだけど。
「とりあえず話は聞いてくれる感じだね。それじゃあ言うよ?僕がソータ、あわよくばモルさんに頼みたいことは...」
なんか、やけにためるな。
「森のすぐそこに王国があるじゃん?リスタイル王国が。そこをね、内からでも外からでも何でもいいから滅ぼしてほしいんだ。」
...リスタイル王国を滅ぼす!?え、なんで急に!?
「別に妾はあそこがなくなっても気にせんが...なぜ滅ぼそうとしておる?」
ロサは「そりゃそうだよね...」と小さくこぼして、慌てて笑顔を作るように表情を変えてから答える。
「それは今はヒミツ。少なくとも王国を滅ぼすって確約してくれるまではね。」
「むん。それもそうじゃの。それじゃあ、この話は一度保留ということでよいか?」
そう言ってモルが切り上げようとしたところ、ロサからストップがかかった。
「あいや、もう話しちゃったから、このまま返すわけにはいかないよ?もちろん、断るっていうんだったら、記憶はもらっていくからね?」
と、さっきとは打って変わって、瞳をほの暗く光らせながら、そう脅し(?)てきた。
「残念ながら妾は容赦なく抵抗するぞ?場合によっては、そっちが倒れることになるやもしれぬな?」
なんでこっちもやる気なん!?もうちょい話し合うとかはないの!?
『話し合うことはもうないじゃろうに。さっき話し終わって引き上げようとしたときに、向こうからの、危害を加えるという宣言じゃ。あちらが宣言したからには別に抵抗もしてよいじゃろ?』
うん?そう...なのか?
『そうじゃ。つまり、あやつを倒して、実力でこっちに引き込めれば御の字というものじゃろ?そうでなくても、しばらくは手を出してくることは無くなるだろうからな、力を見せつけておくことは、大事じゃろ?』
そう言われたらそんな感じは......いや、しないから!!しかも最後に関しては目的が変わってるじゃん。
『細かいことはどうでもよいだろうに。それとも、それ以外の方法がお主にはあるのか?』
たしかにないけど...
『それなら今は妾に任せておいとくれ。』
そこまで言うならしゃあなしだけど...本当に勝てるんよな?
『妾は負けやせん。特にお主の前世の記憶をみた妾ならな。』
それはそれで理由が若干複雑なんだけど。
『お主はイモの揚げ菓子でも食べながら、ゆっくり見ておるとええ。』
イモの揚げ菓子?ポテチのことかな?そんなのどこにもないけど...
すると、目の前にポテチの袋が出てきた。しかも、一番好きなのりしお味だ。パーティーサイズの。
え、ちょっと待って。どういうこと?想像したら出てきたんだけど。もしかして、何とかっていうスキルで出て来たとか?
『それはそこにいる間だけじゃ。そこにいる間は想像だけで、なんでもできるぞ。じゃが、あくまでも想像は想像じゃ。味などはわかるが、腹が膨れることはない。だがな、なぜか記憶からしか読み取れないものも味まで想像できてしまうのじゃよ。』
え、俺の体ん中でそんなことしてたの?
『まだ試行錯誤の途中だがな。』
まあいいや。とりあえず、安心だって言うなら、映画のつもりで見て待っておくわ。
『......そうしろと言ったのは確かに妾だが、少しイラっときてしもうたな。』
よし。今の言葉は聞かなかったことにして、目の前の画面だけ見てみよう。こんな大画面で一人って、映画館を貸し切ってるみたいでいいな。まあ内容は実際の俺の命にも関わることだから、他人事じゃないんだけど。今は他人事でいいらしいしな、他人事として見よう。
こっち側の準備ができたと分かったのか、ロサがこちらに声をかける。
「それじゃあ、ちょうどそこに、ちょうどいい広さの場所があるから、そこに移動しようか。」
そう言ってさっきのバスケットコートぐらいの広さの場所に向かっていった。
モルもそれについていくが、さっきまでロサがいたあたりで、突然飛びのくように跳ねた。
その刹那、地面が小さなスパークを迸らせ、その瞬間に地中に埋まってたのか、トラバサミが姿を現した。もう少し飛びのくのが遅かったら、引っかかてたかもしれない。
「ごめんごめん。忠告をし忘れてたよ。この森には原住民が仕掛けた罠がたくさんあるらしいから気をつけてね。」
そう言って、軽くベロを出してみせる。俺から見ればただ可愛いなあ。という感想しか出なかったが、モルからしてみれば煽り行為だったのだろう。若干体が震えており、怒りを抑えていそうな様子だった。
と思ったが、違った。
「......っふっふ...」
なぜか笑いがこみあげて仕方ないようだ。
「いいぞ。そうでなくてはつまらないな。これを仕掛けたのは原住民といったな?その原住民はどうやら面白い性格をしておるようじゃ。
土の下に罠を隠し、スパークで体を痺れさせ、トラバサミで足をとらえる。こんな分かりやすい罠を作るのは猿ぐらいしかおらんじゃろうに。ところで、お主、その手についてる土はどうしたのじゃろうな?」
それを指摘されたロサはサッと後ろに両手を回し、見えないようにした。
「土なんてどこにもないけど?さっきしりもち付いたときのじゃない?」
「ほう。では、あえて言うが、しりもちを付いたぐらいじゃ爪の間には土は入らないぞ?柔らかすぎる土というわけでもあるまいしな。
...言わないでもわかると思うが、さっき妾が言った猿というのはお主を指しておるのじゃ。お主が勝つ可能性などないのじゃよ。分かったか?勝ちたいならもっと賢くなってくることじゃな。まあ、猿でももう少しマシなことはできるだろうがな。」
ロサの口の端がひきつる。目の端もピクピクしている。かなりストレスが溜まってしまったようだ。
「そっちだって、さっきは虚を突かれたような焦りようだったじゃん。もしかして、僕の考えも読めてないで貶そうとしたの?それはもう滑稽としか言いようがないね。」
「なんとでも言うがよい。妾には何も効かぬがな。」
「じゃあ、気になってたこと言ってもいい?」
「なんとでもいうがよいと言ったじゃろう?」
「じゃあ言うけど、人生損してるね。あんな意味のない役目だけ風習だからと押し付けられて、さぞ退屈な日々を過ごしていたとこだったんだろうね。結局、ソータのおかげでここに居られるだけで、ソータがいなかったら何もできないだけの、ただの『パラシワー』じゃん。そんなんで自分に勝つとかなんとかほざけるよね。」
おっと、瞬きの数が格段に増えている。こちらもストレスが溜まったようだ。...というか、「パラシワー」ってなんだろう。話を聞く限りだと相手に対して、結構な侮辱の意味が込められていることは分かるけど...
『今は黙っておけ。その説明は後でする。それまで静かに見ておけ。』
あ、はい。......結構怒気がこもってた声というか、喋り方だったな。やっぱ侮辱の意味で使われるようだな。
よし、それじゃあ、このまま見ておこ。
「それじゃあ、勝負してどっちの言い分が正しいか決めないとね!!」
と、ロサ。
「いいじゃろう。妾との格の違いを存分に感じてみるがよい。」
と、モル。
結構、お互いの間に火花が散るのが見えるな。
「ルールは三本先取!先に三回勝った方の勝ちってことで!わかったよね?」
「なぜ一度きりの勝負にしなかったのかはあえて聞かぬが、その話に乗るとしようではないか。」
「それじゃあいいね!まずは僕からの提案の勝負ってことで。あ、一応言っておくけど、片方しかできないものは駄目だからね?もちろん、僕もそうするけどっ!フェアでいかないと。」
モルはただただ無言でうなずいた。
どうやら勝負というのにも、色々な形とマナーがあるようだ。確かに、片方がどうすることもできないことは勝負ではないからね。
「最初はどれだけ多く石を積むことができるか、勝負だよ。ってなわけで、石がたくさんある河原に移動しようか。」
そう言って、モルとロサは場所を移動する。
......いや、勝負ってそういう感じの勝負なのね!?
いかがでしたでしょうか?今回はついに黒幕との接触を果たしましたね。今後、敵対関係になるのか、友好関係になるのか、互いに、あるいは一方的に不干渉となっていくのか。時間のみが教えてくれると思います。
そして、次回は番外編として、空兎くんの話を書くつもりです。ぜひ、読んでいってくださいね。
次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。
それでは、また次回お会いしましょう。




