こんな感覚なんだ...
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
さて、握手を交わした俺たちだが、その瞬間にモルベディングさんもとい、モルの体が光の粒子となって俺に向かいながら消えていった。
『ソータ、聞こえるかの?成功してるはずじゃから、聞こえるはずじゃぞ。』
おお、なんかエルスさんたちと話す時みたいな感覚だな。頭の中に直接響いてくる感じ。
『聞こえたのならば良かったのだが...お主、中々にヤバいの。妾分も含めてスキルがとんでもないことになっておるぞ。』
ちょっと待って、この考えってずっとモルに聞こえてる状態なの?
『当たり前じゃろ。何ならお主の記憶を覗くこともできるぞ。ソータ自身が忘れてる記憶もな。』
なんそのチート。
『それにしても、お主、この世界の人間ではないとはな。道理で奇妙な感覚だったわ。』
隠し事は無駄ってことね。まあ転生という形でこっちでまた生まれ直してるみたいなもんだから、どっちでもあるんだけどね。
『どっちでもいいわ。お主も創造神様ほどではないとはいえ、神との関わりがあるだけで十分に異質じゃ。』
いや、バランスガーディアンの人たちも関わりあるじゃん。
『それは先祖がだがな。妾は何代目かの代替わりをしてるから直接は関わりはないのじゃ。正直、この役割もよく分からなくなっておるしな。...にしても名前を変えてくれんかの...』
ああ、そういや、サラも似たようなこと言ってたなあ。
『少し待て、この近くにある反応はサラだったのか?』
まあ、そうだけど...え、お互い大体の場所は分かるんじゃ...
『それは場所だけよ。誰かまでは分からん。それこそ、ダンジョンのドアが両方開いているときか、両方ダンジョンを隔てない、空間にいるときだけじゃ。』
よくわからないけど...
『つまりは外とダンジョンの中は別の次元にあるようなものよ。』
その別の世界同士がつながればいいってことね。了解。
それとはまた別なんだけど、この前、サラにこの近くにいるバランスガーディアンは『水』とだけ聞いたけど、なんでそれはわかったんだ?
『妾たちは元々集落で暮らしておっての、そこで将来、均衡守護者となる者のみ、どの守護者がどこに行かねばならぬかしか聞かされないのじゃ。
最終的に誰がどれを司るかまでは聞かされぬのじゃよ。』
あ、だから何を司るかは分かっても誰かまではわからないのね。
『まあ、同じ世界にいればお互いの気配は分かるのだがな。しかし、サラか。よく遊んだものじゃ。』
へえ。具体的に何をして遊んでいたんだ?
『鬼ごっこや模擬戦、罠の出来で勝負をしたりしたの。鬼ごっこで跳ね飛ばされたのも、模擬戦で腕が落ちたときも、罠で黒焦げになって瀕死になったのもいい思い出じゃ。』
え......なにそれ。怖い。
『妾達にとってはそれが日常だったのじゃ。』
へ、へえ...日常なら仕方ないな。うん。ゲームをするのが日常みたいな感じだね。うん。
『ところで、その...確か...ディガと言ったか。その者をいい加減起こしたほうが良いのではないか?
確かに起こしてもうそろ帰ったほうがいいよな。...あれ?モルに言ってないのに、なんで名前を知って...
『もう忘れおったのか?妾はお主の記憶を読み取ることができる。必然、この者の名前を読み取ることなんて造作もないわ。』
...そういやそうだったわ。実感があまり湧かなかったけど。
俺はとりあえず気絶してる(というか寝てる)ディガを起こす。
「おい、ディガ、起きてくれ。帰るぞ。」
「.....んあっ?...ここどこだ?」
いやいや、寝起きのせいかは知らんけど、目が開いてないのに、どことかはないやろ。
「その前にまずは目を開けて起き上がってくれ。」
すると、ディガはまたイビキをかき始めた。
嘘だろおい。なんで寝起きがこんなに悪いんだよ。
『それはここによく眠れるよう、リラックス効果のある水が常に空気中に漂ってくれてるおかげじゃ。接種しすぎると一種の催眠状態に陥ることもあるそうじゃ。』
おけ。洞窟のせいね。
『無論、妾はそれだけでは足らんかったからな。その効果を強めたんじゃ。』
おけ。モルのせいでもあるんだな。
『ただこの者の...いや、人間の怠惰な部分が出ているのもあるがな。ついでにソータの起こし方も悪い。男相手にならもっとベシって叩き起こすなりすればよかろう。』
おけ。俺らのせいでもあんのね。
『ともかく、そのものは一種の催眠状態にかかっていると見られる。洞窟から出て起こせばよい。』
わかった。そうするよ...って、洞窟の出口どこ!?
『向こうに行けばあるぞ。ついでにそこにある妾の私物と宝箱の中身を持っていくとよい。』
といって、俺らが最初に入ってきた場所とは真逆の方向、最初にモルが寝てた場所を指差し(というイメージが見えた。)、奥に進むように促した。
もちろん俺はディガをおんぶし、奥へと進みながらふと一つ疑問が浮かぶ
...ちょっと待って。奥に出口あるならなんで最初から行かせくれなかったん?
『...常人なら即催眠状態になってもおかしくない濃度の場所に平然とした様子でいるんぞ?興味を持っても不思議ではなかろう?』
いや、最初はディガも大丈夫だったけど?
『おそらく、妾が無意識にしていた『水操作』のせいじゃろうかて。妾が起きたときにそっちに一度に飛んでいったのであろうよ。』
なるほど。だからその水を一気に浴びて眠ってしまったと。
俺は納得して、奥への歩みを早める。
しばらく歩いていると、奥にドアが見えてきた。ドアの前になにかかけてあるし。
どうやらそれはドアプレートのようであった。俺はドアに近づき、何が描いてあるかを見てみる。
「ええと、『モルちゃんの部屋♡』?」
なんでハートと『ちゃん』が...?
『気にしなくてよい。』
いやでもなんで...
『気にしなくてよい。』
あ、はい。気にしないでおきます。
...開けてもいいか?
『開けないでどう入るつもりじゃ?』
一応聞いておいたほうがいいかなって...ほら、ここってモルの部屋でしょ?
『遠慮なんざいらん。どうせ役に立つのはベッドと家族の写真ぐらいのものじゃ。それと、宿主に渡すための「お宝」があるぐらいのものよ。』
...それを全部持って帰ると言うことでいいの?
『いや、わざわざベッドを持って変えるのは良い。家族の写っている写真のみ持ち帰ってもらおう。』
りょ。それと「お宝」ね。
ドアを開くと...本棚もベッドもぬいぐるみまである、ごく普通の部屋だった。しかも全て可愛らしいし。いやこの量...本当に持って帰るのって、写真だけでいいの?
『そう言っておるじゃろ。ぬいぐるみも、もはや妾に必要のないものじゃし、本に関しても人間の目につく場所に置いておけば下手すると争いになるものばかりだからの。』
なんか...もったいないな。ホコリ被ったら可愛そうだと思うけど。
『くどいわ。そんなに持って帰りたいなら、持って帰ればよかろう。ただし、本は多くても三冊にしておけ。でないと本を巡る争いが起こりかねん。』
まあ、そこは気をつけておくよ。何なら地下室でも作ってそこに保管でもしておこうかな。
『それぐらいの管理の仕方で良かろう。しかし、ぬいぐるみはお主が作ったことしておけ。これに関しては技術的な問題でややこしくなるのでな。』
ちなみに中には何が詰まってるんだ?見た感じ、綿とかではなさそうだけど。
『ソータの世界と違い、貝殻が多く使われている。ただし、どれかは忘れたが、実験の一環で中に爆発するものもあるんじゃ。気をつけねばな。』
他人事みたいに言うのやめて!?爆発って。...俺もあったなあ。結果的に爆発させたこと。
『なんじゃ。お主もやらかしておるではないか。なら一つも二つも同じじゃろ。』
流石に一緒じゃねえよ。どの程度の爆発によるかにもよるけど、爆発させる前提はやめようや。
『まあここら一帯が吹っ飛ぶ威力じゃからなあ。』
しれっととんでもないことを、しみじみとしながら言うのやめません?んなん、死ぬじゃないですか。
『大丈夫じゃ。作ったとおりなら辺り一帯は吹っ飛ぶが、動物にはなんの影響もないはずじゃ。』
辺りが吹っ飛んだ時点で大きな影響があるのだが...爆弾に当たるか当たらんかのロシアンルーレットはやめとこ。...いやでも一つぐらいは持って帰っとこ。ファイガあたりのおもちゃとかにはなりそうだしな。
『ちなみに生物にだけ影響を与える爆弾もあるはずじゃぞ。』
うん。やめよ。それがあるってことは他にもあるってことじゃない?
『試作で大量に作ったぞ。』
せめて失敗したものはなんとかしてほしかった...
『......そういえば本は選ばんでいいのかえ?妾がお主に必要な本をオススメするが。』
...話の変え方ヘタかな?まあ俺も人に言えんが。
ちなみにどんな本?
『そうじゃなあ...三冊なら、まずは水魔法について祖先が色々とまとめた本、次に人間種をまとめた本、最後に中身は見てからのお楽しみの、棚の上から2段め、左から4冊目の本じゃ。』
俺は最後に言われた本を手に取り、その本を開こうとする。しかし、鍵がかかっていて、開かない。
『この本は特殊な方法でしか開かない。じゃから、自分で方法は考えてみよ。ちなみに妾はわからないままであったわ。』
ああ、そういうタイプね。まあそこはお互い、ゆっくり考えていくとしよう。ほか二つはどこに?
『本棚の下から二段目の右から一番目、真ん中の段の右から五冊目にあるぞ。』
ええと、これと...これか。なんか、辞書ってイメージのほうが強いな。ちょっとだけ中身を見てみよう。
“男なら水魔法を使え。可愛い女の子に通りすがりに水をかけて...”
『そのページは今すぐ閉じよ。』
うん。閉じたほうが良さそう。俺は本をパタンと閉じる。
『そのページだけ後で消し飛ばしておこうかの。』
え、面白そうだから、読みたいんだけど。
『お主は祖先とはいえ身内の恥を晒すことを妾にしろと?お主の黒歴史を一個一個読み上げてやっても良いかの?』
すいませんでした。それだけは本当にやめてください。
『ふん、分かれば良いのじゃ。もしも、また同じことを考えたのなら...わかるだろう?』
はい。よくわかったので、本当にやめてください。
なんか弱みを握られたけど、俺も俺で悪かったところもあるからな。
ところで、ずっと気になってたけど、この宝箱の中身ってどんなの?
『まずは開けてみい。』
それもそうだな。
俺は宝箱を開けて、中身を取り出す。大型犬ぐらいの大きさの宝箱だったのに、中身はまさかのブレスレットだった。というより、この幅だったらブレスレットっていうより腕輪って言ったほうがいいか。
『それは「水従の腕輪」。それをつけると水による影響の一切を受けることがなくなる。また、任意の者や物もな。
例えるなら、溺れなくなる、凍らなくなる、霧による視界の妨げがなくなるといったものだな。
そして、水魔法との相性も良く、あらかじめその腕輪に考えた水魔法を現状、最大2つまで覚えさせておくことができる。それに、じゃ。水魔法を維持するにはイメージし続けなければいかんが、この腕輪で覚えさせた魔法は己が意識して消さねば消えぬのじゃ。
この意味、分からんとは言うまいな?』
うん、多分大体理解した。
『ならばまずは付けてみよ。』
まあ付けないことには何もできないしな。
俺はとりあえずこの腕輪をつける。そして、一気に何かが流れ込んできた。まるで、風呂上がりに冷たいものを飲んだような爽快さがあった。それとともになにかの...いや、誰かの記憶も流れ込んできた。
しかし、それは朧気で抽象的なイメージしか伝わってこない。
『なんじゃ?今のは...妾が付けた時は何もなかったはずじゃが...』
え、やっぱリアルタイムで視界も含めて閲覧されてる感じ?
『そらそうじゃろ。お主の中にいるんじゃから。にしてもこんなこと今までに聞いたこともないぞ。...もしやすると、他の守護者のところにもアクセサリー系統の装備があるのじゃが...集めたらこの正体も分かるやもしれん。』
まあ俺がこの腕輪を付けた瞬間に流れ込んできたからなあ。可能性は高そうだけど。戻ったらアリサにも似たようなことがあったかについても聞いてみるか。多分持ってはいそうだし。
『それもそうじゃな。サラとあの小娘がこのようなものを見たかは知らんが、聞いてみなくては分かるものも分からんしな。』
じゃあ、それを聞くためにもそろそろ帰るか。外へのドアって、あの奥の扉でいいんだよな?
『そうじゃ。あの扉の奥は水があるからその腕輪は必須ということなんじゃよ。』
どのみちこの腕輪いるんかい。でも、泳ぎのうまい人なら泳いでいけそうだけど...
『見た目だけじゃわかりにくいが、その先はとてつもなく強い水流がある。腕輪がなければ10秒も持たずに溺れることじゃろうな。』
おけ。それならこの水からの影響を一切受けないというこの腕輪がないときついな。
さて、いざこの先に進むとなると、足がすくむけど...
『そんな暇はないぞ。妾が5数えるまでに進まなければお主のノートに書いた...』
では、私、蒼汰行きます!!
俺はもうどうにでもなれと、思いきって飛び込み、思いっきりコケた。
『何をしておるんじゃ?なんでコケたのかえ?』
いや、飛び込んだら普通、水がクッションになって受け止められるって考えるだろ。
『言うたことをもう忘れたのか?水の一切の影響を受けないんじゃぞ。無論、水の抵抗も受けぬわ。』
ウン。ソウダヨネ。フツウニカンガエタラ、ミズノテイコウモウケナイッテ、カンガエルヨネ。
なわけねえだろ。使ったことなんてないんだから。...というか水の抵抗がないならどうやって上に上がれば...
『それこそ「水魔法」の出番じゃろ。水を凍らせてその上に乗れば上に上がれるじゃろ。』
確かにそうだな。よし、そうしよう。
で?水の凍らせ方は?
『凍れって思えば凍るぞ。』
いや感覚で言われても...
『いや感覚でもなんでもなく、ただただそうすればいいだけなんじゃが...』
凍れって?思うだけ?...いつも想像で色々道具を作っている身としてはそんなイメージだけでできるなんて簡単すぎるんだけど。
まあとりあえず、一立方メートルぐらいのを想像してやってみるか。
俺は目の前に立方体の氷ができるようにイメージする。すると...目の前に想像通りの氷の立方体が出てきた。
すぐに浮かび上がり始めたので、すぐに手で押さえて、押さえながら飛び乗る。すると、どんどん浮かび上がっていき、地上へと出た。どうやらここは湖のようだ。
うん。どう帰ればいい?こっから。
いかがでしたでしょうか?今回は蒼汰の中にまさかのモルが入ってきましたね。まあ案外相性は良さそうなので、『モル・師』『蒼汰・弟子』みたいになる感じですね。しかも結構心強そうでもありますね。
さて、最後は何やら予想外のこともあったぽいですが、うまく対応できるのでしょうか...?次回以降をお楽しみにお願いします。
次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。
それでは、また次回お会いしましょう。