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危ない危ない...凍るとこだった...

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。

 一旦状況を整理しよう。


 まず、ディガが気絶してる。俺は地面に寝転んでいる。俺の上に見た目幼女のドラゴンが寝てる。ふむ。わけわからん。


 っていうか、試練を与えるって言っといて、結局もう寝てるし。1分も経ってねえぞ。


 しかしまあ、こうやって見ると、なんか猫みたいだな。猫もたまに乗ってきて一緒に寝てるもんな。


 ...やばい。俺も眠くなってきた。こんな呼吸音以外聞こえないほとんど無音の空間で寝転んでたら多分みんな眠くなりはすると思う。


 だめだ。起き上がろうにも睡魔が勝って、体を動かすのがだるくなってる。


 ......まあちょっと寝るぐらいなら...5分寝れば...眠気も...



「...うたよ。我が...が面白くな......だか...ってくれ。...ディアンを...つめればあいつに....てる。」


なんだ?これは...ゆめ?だけど、意識がはっきりしてるタイプの夢か。たまに見るよな。それにしては真っ暗すぎるけど。


 あと、この声はなんか落ち着くな。今までずっと聞いてきた、お気に入りの曲みたいに。


 だけど、なんか声にノイズがかかっているみたいに、全然聞き取れないな。


 俺はなんとなく聞き返してみようと思ったが、声を出そうと口を開いても声が出てこない。喉に空気だけが通るような音が聞こえるのみだ。


「...では、頼んだぞ。」


頼む?何を?


 聞いてみようとしたが、やはり声を出すことはできない。


 そして、光が見え始め、意識が薄くなっていくのが分かる。完全に意識がなくなる瞬間、誰かが笑ってような気がした。



 ...あれ?いつの間にか寝てたっぽいな。しかも、やけにはっきり夢の内容も覚えてるし。まあ、大した意味はないだろうしな。


 俺は起き上がろうとして、俺の上にぬくもりがあることに気がつく。


 ...だったわ。俺の上で寝てたんだったわ。


 俺はモルベディングさんを横にどかそうと、少し体を横に向けようとすると、右腕に強烈な痛みを感じた。


 何だこれ?凍りかけてる??めちゃくちゃ冷たいし。感覚もないし。


 それに気づいた途端、俺は急いで、モルベディングさんをどかし、左腕で、鉱石の中にキルス鉱石があったことを思い出す。


 火を付けないといけないわけだが。俺はキルス鉱石を勢いよく、ナイフの表面で擦り、それを何度か繰り返す。すると、スキルを使って熱を一点に集めるイメージをするまでもなく、火がついた。結局この鉱石は何度で火が付くんだろうな?


 とにかく、火がついたから、一度そこで右腕を特に温める。正しい方法かは知らんけど、右腕の氷が解凍されていく感じがした。


 そして、右腕を温めている間、念のため家から持ってきてた『回復粉』を右腕にかける。


 冷たさはまだ残ってるけど、針が刺さるような、チクチクとした痛みが消え、先程よりも火の暖かさが皮膚に伝わってきた。


 よかった。よかった。


 にしても、なんで腕が凍りかけてたんだろう?全く心当たりがないが。


 ...考えても仕方ないな。一番こうした可能性のある人物が寝てるんだ。起こして聞いてみれば分かることもあるだろう。


 確実に10分は経ってるだろうから、起こしても大丈夫そうだな。


 俺は軽く揺さぶりながら声をかける。


「モルベディングさん?10分経ちましたよ。」


実際は何分かは知らんけど。


 すると、モルベディングさんは目を開けた。しかし、どこか虚ろな感じで焦点がうまく合っていなかった。


「...あれ?壁画に描いてあった創造神様が...夢よの。」


それだけつぶやくとまた目を閉じてしまった。まだ起きてないな。シンプルに寝ぼけてただけっぽい。


 というか、創造神ってことはかなり昔でしょ?歴史を刻むものって壁画多いけど、実際、見たことないんだよな。俺の興味がないからなんだけど。まあ、興味を持ってもそんな簡単に見れるもんでもなさそうだけどね。


 俺はもう一度声をかけながら揺さぶって、起こした。


 すると、モルベディングさんの目がパッと開き、


「...寝ておったわ。妾としたことが...」


いや、寝起きの一言目がそれって...


 まあいいや。


「ちゃんと寝てる間に下ろしましたよ。」


「ああ、わかっておる。しかも十分以内に終わらせたことも分かるぞ。」


あれ?なんか時計でもあった?


「どうして分かるんですか?」


「実は10分以内に終わらなかったら、体の端から順に凍っていく魔法をかけておいたんじゃ。一応は妾が出した条件なんじゃからな。」


...うん。まあ、なんとなく想像はついてたよ?だけどさ、油断したときに最悪死ぬようなことをするのはどうかと俺は思うんだ。


「とりあえず、試練は合格ってことでいいでしょうか?」


「まあ、妾は熟睡してしまったわけだしのう...これは合格と思わないほうがどうかしておるわ。...全く、こんなこと色々初めてじゃ...」


よし!これで2つ目もクリアだな。


「次の試練とかってありますか?」


「む?なんじゃ、そんなに試練がしたいか?」


いや、そういう意味じゃないし、試練がしたいってわけわからんわ。


「そういうわけじゃなくて、次の試練がなければ早く帰って試したいことがあるからそれを試すんですよ。」


「そういうことか。じゃが、あと一つだけ残っておるぞ。」


「それは一体...」


「妾と一つ勝負しようではないか。とは言っても妾自身が戦うわけではないがの。」


余計わけがわからないんだが...


「じゃあ、誰と戦うんですか?」


聞いてみるが、帰ってきた答えは


「それはのう...」


と、あえてためるようにしてから指をパチンと鳴らす。


すると、ゴゴゴッと周囲から音が聞こえ、そこで初めて水が流れる音が聞こえた。


 そして、滝が左右に割れ、奥から人型の氷の模型のようなものが出てきた。しかし、ここへと繋がる道がひらけると、目に赤い光が宿った。


 ちらっとモルベディングさんを見てみると、ワクワクしたような雰囲気をまとっていて、獰猛な顔つきになっていた。そして、さっきまではつかめなかった瞳の色が、白金色に光っていた。


 いわゆるゴーレムかな?しかもこっちに歩いてきたし。


「お主と戦ってもらうのはこのゴーレムじゃ。このゴーレムを破壊なり何なりして無力化すれば最後の試練は合格にしてやろう。それと、そこのお友達は妾によこしておけ。近くにいないと、流れ弾が当たるしの。」


ありがたい。俺はディガを担いで、モルベディングさんの近くに下ろす。


 ...待て待て待てい。冷静に考えてみろ。そりゃ、初めてのダンジョンらしい展開にワクワクしてるのは分かるけど、勝てるわけが...いや、だめだな。こんな後ろ向きじゃ。後ろ向きだと可能性があっても0にしてしまう。だから、やるしかないか。


 さてさて、こうやって考えている間にゴーレムが目の前に来ていた。そして、拳を振りかざし...あっ!?


 っぶね!危うく殴られるところだった。氷に。


 さて、一旦逃げ回りながらでも考えてみるか。殴ってくるなら方法が思い浮かぶまで距離を取っておかないと。


 とりあえず、今、ナイフとさっき作ったムチみたいなやつが落ちてるから、それを取りに行く。途中ゴーレムがおってきたけど、スライディングして取った。


 さて、一旦ナイフを構えて、ムチは腰に巻いておく。


 そこではたと気がつく。ナイフの持ち手が少し濡れ、滑らかになって、鉱石のようになっていた。


 というかこれあれじゃね?『回復粉』の鉱石じゃん。


 もしかして水が木に反応したのか?ここからさっきナイフがあった場所を見てみると、コップが倒れていた。あれがかかって、反応したってことか。


 ま、今はどうすることもできないから、帰ったときに戻すとして、今はこのゴーレムをどうするかだけど...ナイフで氷を叩き割れるけど、そこまで近づいたら殴り飛ばされるよな。


 じゃあ、もうこれはムチの出番じゃん。中距離だからゴーレムの攻撃も当たらないし。


 俺はナイフを少し離れた、あるていど水から距離のある場所に置き、腰からムチを取り、端を持つ。そして、軽くふると、ヒュンと、小気味よい風切り音が聞こえた。


 だけどな、これ絶対ミスったら痛いどころの話じゃなくなるよな。


 まあでも結局はやるしかないんだからやるんだけども。


 俺はゴーレムに向かってムチを振るう。しかし、そんな簡単に行くはずもなく、俺から数十センチ離れたところの地面がえぐれた。


 うん。ちゃんと的でも作ってそこで練習してからのほうがいいか。


 俺はゴーレムから距離を取りつつもムチとナイフを交換する。


 すると、攻撃が当たらないことにしびれを切らしたのか、モルベディングさんが、ゴーレムに向かって、


「ゴーレムよ、氷を使うんじゃ!障害物を作れば逃げるのも時間の問題じゃろうて。」


何やってくれてんですか〜。そんなん、『気配消滅』のスキルの使い所でしかないじゃん。この前使ってみてちょうどいい状況を考えたからな。


 その指示を聞き、ゴーレムはなにか力をためた。そして、目がより一層輝くと、上から大量のつららが降ってきた。そして、落ちてきた衝撃でつららが割れ、冷気であたりに霧のようなものが発生した。


 俺は必死に避けるが、ついに当たってしまう。しかし、つらら自体は鋭いというわけではなく、ただ単に痛みで足止めをしようをいうものだった。


 俺はあたりに霧が立ち込めてる隙に『フェーズ5』にし、ナイフにもスキルの効果をつけ、見えないようにする。


 しばらくして霧が晴れ、あたりが見えるようになると、モルベディングさんが驚いていた。


 そして、ゴーレムは相手を見失った影響であたりを見回しつつも動いていなかった。


 それならと思い、俺はゴーレムの後ろに回り、『気配場滅』の機能の『不意打ち』を使う。


 すると、体がゴーレムに飛びつき、ナイフをちょうど心臓の位置に深々と突き刺した。すると、そこでパリーンとガラスが割れるような音がし、ゴーレムが動かなくなった。


 ゴーレムの前に行き、本当に動かなくなったかを確認する。


 ゴーレムの顔あたりを見てみると、さっきまでついていた赤い光が消えていた。これは...倒したってことでいいよな?


「モルベディングさん、これでいいですか?」


しかし、モルベディングさんはうつむいたまま、震えていた。どうしたんだろ?


 すると、パッと顔を顔を上げたかと思うと、


「お主、実はものすごく強いんじゃな!見直したぞ!」


なんかめっちゃ目がキラキラしてるんだが。強いって...能力を見てみてもモルベディングさんのほうが強いけど。


「いや、強いって、モルベディングさんのほうが強いですよね?能力を見てみた結果ですけど。」


すると、モルベディングさんは驚いたような顔をして、


「お主、一体いくつのスキルを持っておるんじゃ?明らかにさっきまで使ってたスキルじゃあるまいしな。」


あ、たぶんバレちゃったな。こう、サラといい、モルベディングさんといい、スキルに敏感なんだろうな?前にもなんか気づかれたし。


 しかし、俺が黙っているのを見て、答えたくないと受け取ったのか、モルベディングさんは


「そういえば、スキルのことについて聞くのはマナー違反であったな。すまぬ。」


と謝ってきた。


「いやいや、別に答えたくないからとかじゃなくて、ちょっと考え事をしていて...」


「いやいいんじゃ。無理に言わなくても深く探ったりはせんから安心するんじゃ。...それはそうと、お主、妾のほうが強いと言ったか。」


はい。もちろん言いました。


「たしかに言いました。実際、能力の差では負けていますからね。」


「ふむ。どうやらお主はレベルと能力の関係がわかっていないようじゃな。」


「どういうことですか?」


「レベルが上がれば能力が上がる。よく人の世で言われておるようじゃ。しかし、これはあながち間違いではない。が、正解でもない。レベルが上がることで上がるのは肉体の成長限界じゃ。」


「成長限界?」


「そうじゃ。肉体の成長限界は種族によって異なるが、それは力の大きい種族ほど1レベルにつきの振れ幅が大きいのじゃ。無論、妾の種族も例外でない。そして、お主らの言う能力とやらは成長限界を示しておるだけで正確な数値ではないんじゃ。」


えーと、つまりは最大値ってことだよな?意味がわからん。成長の最大値とは?あ、見ることのできる能力か。


「ということは、モルベディングさんの能力自体は俺より低い可能性が...」


すると、文字通り空気が凍てついた。


「今何と言ったかもう一度聞いても良いか?」


あ、やべ。シンプルにやらかしましたね。はい。調子に乗りすぎるのは良くないですね。


「いや、能力云々の前にモルベディングさんのその物を凍らせるスキルは強いですね。」


「ふん。まあよい。して、ソータよ。お主、今物を凍らせる能力(・・・・・・・・)と言ったな?」


「まあ、言いましたけども。」


「それは少し違うぞ。妾は()だけでなく()を凍らせることもできるぞ。それに、お主は気が付かなんだったか?そもそも氷は水を凍らせることでできる。つまりは水を操るスキル(・・・・・・・)の権能よ。


 それとじゃ。一ついいことを教えてやろう。戦力差は能力だけではなく、スキルにもよるぞ。もちろん、そのスキルの相性でもな。


 ついでに言っておくと、ある一定の条件でスキルの機能も開放される。じゃから、経験豊富なレベルの高いものが強いと言われる所以じゃ。」


まあ、なんとなくそんな気はしてた。俺はエルスさんのミスがあってありえないぐらいレベルが上がってたけどな。


「一つ聞いてもよいかの?」


「なんですか?」


こういう質問につい反射で返してしまう自分がいますね。


「お主は一体何者なんじゃ?その身にまとう異様なオーラもそうじゃが、複数のスキルも持っていると見られる。」


「いや、何者かなんて言われましても...」


「なんじゃ、自分でも分かっておらなんだな?」


「まあ、ただの人間ですからね。」


すると、モルベディングさんは薄く笑い、


「ぬかせ。ただの人間がそのような力は持っておらん。ましてや、他種族に忌避の目を向けぬなど。」


最後のは流石に引っかかるな。


「最後の発言にはちょっと異議があります。」


「なんじゃ?一つ聞こうではないか。」


「さっき、他種族に忌避の目を向けるのを人間というひとまとめで言いましたけど、そうでない人達もいるんです。


 俺は他の種族が虐げられたりしてるところは一度しか見てないですけど、差別をしたりする人たちを、差別をしない人たちと一纏めにしないでください。


 俺のこの発言も一種の差別だとは思いますが、差別し、軽々しく命というものを弄んだり、誰かを追い詰めたりする人たちとは真逆の人たちもいるんです。


 それこそ、大勢が忌避する存在と知ってもその子を守ってくれた人達がいるんですよ。


 だから、一纏めに悪いとしないでください。」


すると、モルベディングさんは少し、考える様子を見せ、


「ふむ。それも一理あるよのう。確かにすべての人間は他種族を忌避すると、決めつけ、忌避してたのも事実よな。そこはすまぬな。」


「分かってくれたなら...」


「良い。もう敬語などいらん。どうせ、お主についていくことになったのだから、それで普段から話されるとむず痒いんじゃ。」


「...わかったよ。まあ、よろしくな。」


「そこは少し敬語になりかけてから慌ててタメ口になるところではないのか?」


「それはテンプレっちゃあテンプレだけど、俺は割り切りがいいから...」


ま、いいかどうかは知らんけどね。


 すると、モルベディングさんは苦笑し、


「妾のことは『モル』呼ぶがいい。」


といって、手を差し出した。


 俺もその手を握り返し、お互い悪巧みをする子供のように不敵な笑みを浮かべた。(なんとなくの雰囲気でだけどな。)


 いかがでしたでしょうか?今回も蒼汰が試練を受けていましたね。案外楽しんでる?そして、ディガさんは未だ気絶してる模様。結構寝てるので、睡眠不足かもしれませんね。


 一つ思うのですが、蒼汰って、案外適応が早いかもしれないですね。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。


 それでは、また次回お会いしましょう。


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