それは本当なの?
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
「日本が出てくる話ってどんな話なんだ?」
俺はアリサに問いかける。
「えっとね....こんな話。」
まとめるとこんな感じ。
まず、主人公が創造神様とやらで、この世界が退屈になったから、別の世界に渡ったの。その先で『日本』っていう国を見つけてね、そこが面白そうだから、そこで人間になって暮らすことにしたらしい。
その国には鉄の塊がかなりのスピードで動いていたり、鉄とか石とかで作られた四角く高い建物がたくさんあり、その国で創造神様はある一人の女性に恋をした。ちょうどその国というのが日本だったということだ。
創造神様その女性を自分に惚れさせるために色々なアピールをしていくっていう話。
そこで話は終わってるが、アリサによると、もしかしたら独身のままとか、結婚して子供が生まれてその後に受け継がれていったっていう考察があるとのこと。
なんか、どっかで聞いたような話なんだよなあ。後半の女性に惚れた云々は知らなかったけど。
いや、そもそも、
「どこでそんな話を知ったんだ?この世界にいた時の言い伝えはともかく、地球に行ってからのことは、ほとんど知らないんじゃないか?なんでそこまで詳細まで知ってるんだ?マイナーな話って言っていたが、どれぐらいマイナーなんだ?」
「待って、待って、質問多い!答えるから、ちょっと待って!」
なんでだ?急にアリサがこの話をしたことを後悔したとでも言わんばかりに焦ってるんだが。
「なんでそんな焦ってるんだ?」
俺はアリサにそう声を掛けるも、アリサはだんまりを決め込んだままだった。
だが、しばらくして、ようやく口を開いた。
「はあ。あなたにはどうせ隠しても無駄なんでしょうね。さっきの話も知っていた様子だし。あたしが『日本』の話をしても驚きどころか、むしろ『なんでそんな話を知っているんだ?』っていう感じの雰囲気だったのよね。...そうでしょう?」
もちろん俺は、
「そうに決まってんだろ。そもそもそこから来たって言ったから、この話が始まったんだよ。その話を知ったのも神様たちに話してもらったからだ。....まあ、後半の方は聞いてなかったが。」
ちなみに、今俺は口調が強くなっているが、その理由は今目の前にいるのはいつものアリサであり、アリサではない存在だということに今更に気が付いたからだ。ま、気が付いた理由は、シンプルにいった発言が引っ掛かって、とあることを今の一瞬で調べてみたからだ。
何なら、その存在の正体もわかった。正確には分かったようでわかってないんだが。とりあえず、俺は次の目標は決まったとだけ言っておく。
アリサ(?)はそんな俺の様子に怪訝そうな顔で
「神様たちが言ったってことはコンタクトを取ったことでもあるの?」
とたずねてきた。
「あるぞ。何なら二人と話したけど、片方は姿を見たことがあるぞ。」
そう話したところで、なぜか急にアリサ(?)が固まった。何かの力が働いたとかではなく、驚きと別の何かの感情(俺にはわからん)によって固まっていた。
急にどうした?何で固まったんだ?ああっと、いや、よく見たらうなずいたりはしてる。何で?何かと話してるの?
アリサ(?)には申し訳ないが、他のみんなは食べ終わったので、一度みんなの分の皿を片付ける。俺はまだ食べ終わらないでおく。流石に一人で食べるっていうのは寂しいだろうしな。
俺が皿を綺麗にして戻ってきたころ、ちょうどアリサ(?)も硬直から解放されていた。
何があったかを尋ねてみると、なんでも神様が話しかけてきたとのこと。
誰かはなんとなく心当たりがある気もするが、前に話をした、あの時の口調からすると、別の神様の可能性もあるぞ。いや、むしろそっちの可能性の方が高いか。
「ところで、あたしがなんでその話を知っているかと聞いてたわね。それはね....」
アリサ(?)がそこまで言いかけたところで、俺は一度待ったをかけた。
「ちょっと待ってくれ。その話は後にして、まずは飯を全部食べちゃってくれ。みんなが狙ってしかいないから。」
みんなはそう言われてさっと顔をそむけたが、完全に肉に目が向いている。ライア、シルグ、ガルジェを除いて。
その視線に気づいて納得したのか、アリサ(?)はうなずいてから再び食べ始めた。
そして、俺も食べるのだが、食べながら、
『どうしたんですか?エルスさん。もしかしてさっきアリサに話しかけてたのって、エルスさんですか?』
そう、俺が待ったをかけた理由が、急にエルスさんが話しかけてきたからだ。
『そうですけど、何か問題でもありますか?別に話しかけたらだめっていう理由なんてないですよ?』
いやなんか不機嫌!?声色で分かるけど、なんか不機嫌!?
『あの~なんで不機嫌な感じなんですか?』
『別に?今日もやらかしてしまって先輩に小3時間ほど指導されて、サボ.....暇だったので、蒼汰さんの方を見てみたら、もふもふのワンちゃんがもふもふの耳と尻尾の生えた人に変身できるっていう風になっていてもっと触りたくなったけど、触ることはできないから長期休暇まで待つしか無いのに、あの子は堪能していることがうらやましくて、私もこの世の理不尽に嘆いてその結果先輩にちゃんと仕事をしろって言われて機嫌が悪くなったとかではないですよ?』
めっちゃ不満たまってるやん。しかも今、サボるって言いかけてなかった?果たしてこれでごまかせると思ってるのか....
『それならその長期休暇の時にでもここに来ていただいて大丈夫ですよ。いつ頃なんですか?』
『大体1か月後です。それまで頑張れば会えるということですね?』
行く気満々やないか。
『それで、アリサとどんな話をしたんですか?』
エルスさんは口ごもり、
『それは、本人に聞いてみてください。私が言うのも無粋というものですし、私が言ってしまったらあんまり意味ないので。それでは。』
あっ、切られた。ま、とりあえず、俺も全部食べてちゃんと聞いてみるとしますか。
.....食べ終わって、皿も全部片づけた。あとは話を聞くだけだ。それでは聞こう。
「それじゃ改めて聞くが、何でさっきの話をあそこまで詳細に知ってたんだ?」
「.....さすがに神様にも目付けられてるし、これ以上は無理ね.....思ってたよりも早く来たけど...まあ、遅いか早いかの違いでしょうね....いつかは気づかれてたわ....」
「なんて?声が小さくてよく聞こえなかったんだが。」
「あたしが知っている理由はあたしが均衡守護者の一人だからよ。」
「ちょい待ち。そのバランスガーディアンズっていうのは何なんだ?名前からは何かを守る立場みたいだが。しかも、正直に言うと、名前自体もダサいし。」
「な、名前がダサいのなんて知ってるし!あたし自身も変えたいわよ!」
あ、ええと、なんかごめん。
「......それで、均衡守護者が何かというと、端的に言うと、『龍の一族』のトップのこと。龍の一族ははるか昔から存在する種族で、みんな、龍....こっちではよくドラゴンなんて言われるわね。になることができるの。
そして、『均衡守護者』は今までに何代にも受け継がれてきたんだけど...その中でも創造神様に、直接この世界の均衡を保つように言われてきたっていうことらしいの。
でも実際は『ダンジョン』と呼ばれている場所に、ずっと自分が認める相手が来るまで、待ってないといけないの。あたしはこの子を認めたから、ついていくことにしたんだけどね。シンプルに、ずっとそこにいるのに飽きたからっていうのもあるんだけどね。正直、意味不明な役職だと思うわよ。
しかも『均衡守護者』の一族は必ず特殊なスキルを必ず一つ持っていて、それは自分が認め、ついていくと決めた相手に魂ごと移して受け継がせることができるの。
ちなみに『均衡守護者』は自然をつかさどるスキルがあるの。あたしの場合は『火』だけど、他には『水』『風』『地』『空間』『光』『力』『知識』で、全部で8人いるの。
一応、あたしたちはみんなお互いがいる大体の場所がわかるけど.....一人、ここの近くにいるわ。どうするかはあなた次第ね。
っと、話がそれてしまったけど、この話を知っていたのはそんな理由で創造神様との深いつながりがあるからなの。」
情報量多いな。かなり重要な情報な気がするが、もしかしたらそこまで隠すことでもないのかもな。
あれ?火をつかさどるってことは、アリサが使ってたのはこの、バランスガーディアンの人から受け継いだ力ってことか。
このバランスガーディアンの人は....言いにくい!
「その『火』をつかさどるバランスガーディアンさんは名前はなんていうんだ?」
「ああ、そういえば名乗っていなかったわね。あたしの名前は......」
そこからさらに間が空き、ようやく思い出したような顔をしたのもつかの間、
「.....何だっけ?」
「おいこらちょっと待て。何でわからんねんねや?」
「いや、ほらさ、今まで名前を呼ばれる機会なんてなかったし、名前なんてそんな重要じゃないし、ちょっとの間だけとはいえ、『アリサ』として生きていたから、忘れちゃったのよね。」
「......それじゃあ、俺はあなたを何て呼べばいいんですか?」
「別に今まで通り『アリサ』でいいわよ?それか、あなたがあたしの本当の名前を当てられたならその名前で呼んでいいわよ?分からないとは思うけど。」
そう言ってニヤリと笑みを浮かべた。試されてるってことかな?何をかは知らんが。
ってことは、これは許可をもらったってことでいいんだな?
じゃあ、見てみるか。
“[名前 アリサ 本名・メルフェ・グラント]
年齢・12歳 身長・151.4 体重・23.5キロ
レベル・1550
体力 576 (暴走状態・3098)
スタミナ 253 (暴走状態・10357)
耐久力 754 (暴走状態・20978) ※精神面を含む値
運動神経 そこまでよくはない (暴走状態・少し良い)
知能 135 (暴走状態・97)
スキル・『偽装・解放済み機能 容姿偽装・精神強化・物体・物質の偽装』『身体強化・解放済み機能 身体能力の上昇※身体強化を酷使する、または、精神の大きな衰弱、揺らぎで“暴走状態”になってしまう。これを戻すには、精神の安定、力の鎮静が必要である。』『炎魔法の使用・解放済み機能 炎操作・武器へのスキル効果付与』”
載ってない。というか、これ以外に知ることができないんだが。
「ね?言ったでしょう。分からないって。」
いや、まだ可能性はある。なんならもう分かっていたが。
“炎魔法の使用は均衡守護者の一柱、『サイラント・ゴドラン』のスキルが譲渡されたもの。現段階では、一日に10回までしか使えない。それを超えて使ってしまうと、低体温症になってしまい、命に大きくかかわってしまう。しかし、それ以上のとある可能性が眠っている。”
『それ以上の可能性』が気になるところだが、これ以上は分かりそうにないな。
ま、名前は分かったしいいか。
「『火』をつかさどるバランスガーディアンの人の名前は『サイラント・ゴドラン』だ!」
そう言って自信満々に言う。
アリサもとい、サイラント・ゴドランは目を丸くし、
「あれ?だったけ?」
と答えた。いまいちピンとこない様子で。
まさかの俺を試していたとかじゃなくて、普通に思いっきり完全に度忘れしてたってことだよな?
「さすがに冗談よな?」
一応確認しておく。その様子を見て、サイラント・ゴドランは破顔して、笑った。
「冗談よ、冗談。忘れかけてたことは本当だけど。」
ん?それは本当に冗談なのだろうか?
「じゃあ、あたしのことは長いから言いにくいでしょう?だから、『サラ』って呼んで。...だけど、人前ではちゃんと『アリサ』って呼んでね。」
「分かった。......それで、シンプルに気になったんだが、アリサの中ではどうなってるんだ?人格?みたいなものはやっぱり切り替えてるのか?」
「わたしの中ではどっちかが交代したいときに無理やり押し付けることができて切り替えれるって感じ。だけど、わたしの体だから実質わたしの思いたいようにできるんだけどね。」
よし、分かった。分からんがな。
「ごめん、やっぱ説明だけじゃわからんかったわ。」
「そのうちわかると思う。どうせ気になるだろうから、近くのいるっていう所に行くんでしょ?」
「ばれてたかあ。ま、気になったからには見てみるしかないだろ。」
「それじゃ、あたしがどこにいるかを教えようか?」
「いや、そこは自分で見つけるよ。別に急いでいかないといけないって訳でもないでしょ?」
「それは...そうだけど...」
「なら大丈夫だな。むしろ、偶然見つけたって方が面白いじゃん?」
「そんなものなの?」
「物語に夢を見るやつは大体そうだと思うぞ。完全に独断&偏見によるものだがな。」
「聞く必要がなかったわね....じゃ、何をつかさどるかだけ教えてあげる。」
俺は思わず息をのむ。全く意味なんてないが。完全になんとなくだが。
「ここの近くにいるのは『水』よ!いる場所自体は全く水と関係ないところだからね。」
なるほど。水が近くにないと効果を発揮できないっていうタイプではないのか。まあ、『つかさどる』って言ってるぐらいだから、自分で生み出すとかもできるのかもしれないなあ。むしろ、『炎魔法』を見る限り十中八九そうだな。
そろそろ話もそこそこにして切り上げようとしたところ、逆にアリサから質問が飛んできた。
何を聞かれたかは長くなってしまうので、割愛する。地球のことについて聞かれたとだけ言っておこう。
みんなもいつの間にか寝静まってるし、俺たちも寝るか。
俺は椅子を3つ並べ、その上で寝ることにした。
もちろんアリサはベッドの方に寝かせたで?
んじゃ、スミ~
いかがでしたでしょうか?今回はアリサの秘密が.....というよりはただ単に蒼汰の勘違いが分かった話でしたね。ある意味ではあってますけども。アリサが仮面をかぶってたっていう点では。
それにしても、予想以上にこの物語の2日が長くなってしまいましたね。自分でもなんとなく展開自体が早すぎる感もします。
勝手ながら、今回で2章は終了です。
次は3章に突入します。3章以降は時間の流れ上、『〇日目~□日目過ぎ△日目』という風になっていきます。ぜひ今後とも読んでいってください。
次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。
それでは、また次回お会いしましょう。