番外編①
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
蒼汰がこの世を去ってから早一年。
あの日まで一緒にラノベとか、ゲームとか、アニメの話とかしてよく一緒にいたのになあ....
学校で普通に授業を受けていたら、突然先生が暗い顔で話始めたと思えば、交通事故に遭って、いつの間にかこの世からいなくなっていった。
.....今頃、異世界にでも行って、無双状態でハーレムでも作ってんのかな?それとも、有名な冒険者にでもなってたりして。
もしかしたら、赤ちゃんからやり直しをしているのかもしれないなあ。
そう考えれば、妙な安心感がある。
それに、本人は否定していたけど、ああ見えて、自分のやりたいことはすぐにやろうとするし、決めたことは必ず成し遂げる、ある種の才能がある。努力のおかげで達成できてたこともあったけど。
しかも、偶然とかなんとか言って、結局、テストでも上位にずっと君臨していたしな。まあ、運動神経の方は俺の方が上だったけどな!
...あいつは本当にいいやつだったよ。いつもいつも一人で本を読んでばかりの俺に話しかけてきてくれて、そのおかげと言っても過言ではないくらい、自分たちの趣味を共有できるぐらいにまでは親しくなったんだ。さすがに俺の両親が蒼汰の両親と同じ学校で仲がいいのを知ったときはお互い声を出して驚いたけどな。
そして、俺がどこにいるのかというと、蒼汰の部屋だ。
なぜ、ここにいるのかは、蒼汰のお母さんにここにある、ゲームや漫画、ラノベやフィギュアをすべて引き取ってほしいと言われたからだ。何なら、この部屋にある必要なものや思い出の品などはすでにほかの部屋に移しているということだから、全部もっていってと、言われたぐらいだ。
理由としては、自分たちの家にあっても使わないどころか、ほこりをかぶって可哀そうだからということらしい。
確かに、俺が持っていないものもたくさんある。だけど、さすがに全部引き取るというのは気が引けたよ。
だって、最初は断ったし。だけど、ずっと俺に言ってくるから、俺の方が根負けして、結局引き取ることになったわけだ。
色々と分類しながら箱に整理していると、なにやら一冊のノートが出てきた。
題名が.....?
俺は題名を見たところで思わず吹き出してしまった。
なぜなら、ノートの題名が『異世界に行ったら』とかかれていたからだ。
中身を見てみると、箇条書きで異世界に行ったら何をするかとか、異世界で作ったり、使ってみたい道具のアイディアスケッチが書かれていたり、それと......
俺はそこまで読んだところでノートを閉じた。
これはあくまでもあいつの心の中にだけしまっておくべきだろうし。
まあ、これ以上読むのをやめた理由は黒歴史になりうるというより、これは心に秘めておくべきことだと思ったからだ。俺にこれを見られていること自体が黒歴史に代わりはなさそうだけどな。
にしても、異世界に行ったら使ってみたいものか-。帰ったら、作り方でも調べて蒼汰みたいにノートに書き留めておくか。
ダンボールに蒼汰の持ち物をすべて入れ、蒼汰の両親にお礼を言い、蒼汰の家を出た。
親に車で連れてきてもらったため、車にすべて積みこみ、車に乗る。
「空兎、どうだった?」
「どうって、なにが?」
「蒼汰君の両親だよ。まだ気にしてる感じ?」
「いや、そんな感じはあんまし無かったかな。むしろ、部屋をきれいにしてたから、区切りをつけようとしてるか、蒼汰の弟の部屋にでもなるんじゃね?」
「ま、そこはあいつらのことだから表に出してないだけかも知れないな。お前はお前のやりたいことでもやってれば良いさ。でも、ちゃんと受験勉強はしとけよ?」
「わーってるって。」
面倒くさ。やらんといけないかあ。このラノベと漫画たちを全部読んでからやろ。
こう考えてる時点で全くやる気が感じられないが。それを察したのか、
「ほどほどにしておけよ?」
との忠告が。
「毎度思うけど、心でも読めんの?」
「いや。逆に毎度思うが、分からないと思うか?お前は特に考えてることが顔に出るって言ってるだろ。」
「はあ。そうですか。」
俺は観念し、車の後ろからひとつ漫画を取り出して読む。
読みにくいとか、酔うんじゃないか、とか思うかもしれないが、残念。俺は酔わない体質なんだ。つまり、酔った人の感覚を味わったことが無い。....ちなみに、かき氷とかを食べて頭が『キーン』ともならない。
しばらくして家に着いた。俺は漫画を閉じ、車から降り、荷物をすべて中に運びこむ。
一度玄関に置き、靴を脱いで自分の部屋にすべて運び、棚に並べていく。
収まりきらない分は.....俺のラノベを明兎の部屋にでも移すか。最近、俺の影響かは分からんけど、ラノベとかアニメにはまってるようだしな。...ちなみに、明兎は俺の妹だ。
一通り収め終わったところで俺はベッドに寝転び、ひとつため息をつく。
もうあいつとバカ騒ぎすることも、好きなものの話題で盛り上がることも無いのか.....
そんなすぐに切り替えることなんてできないよ?それでも受け入れないといけないよな....
.........それじゃ、ノートにでも作ってみたいものの構造やら何やらを書いていこう。ラノベを読んでからでもよかったんだけど、今やらないと、俺はすぐに忘れてるからな。
よし、出来た。数時間ぐらいしかかかってないが、かなり詳しく描けたぞ。これぐらいなら、分かりやすいだろ。あいつも。....まあ、見ることはないんだけど。
久々にこんなことをやってみるのもいいな。それじゃあ、夕飯までゲームしたり、ラノベ読んだりして暇つぶしとくか。
・・・気が付けば、外が真っ暗になっていた。しかも、いつの間にか、7冊ぐらいは読んでいたらしい。作品を一つ読み終わった感じだった。俺は読むのが早いのだ。
やっべ。3冊ぐらい読んでからゲームでもしようと思ってたけど、これは....夜更かしコースだな。といっても、12時には寝ようとは思っているが。俺的には夜更かしだ。いつも11時に寝てるし。
下に降り、飯ができていないかを聞こうとしたところ、ちょうど、皿を出しているところだった。
「お、降りてきた降りてきた。空兎、今日の夜ご飯は唐揚げだよ。早くご飯を茶碗についどいてね。私、ものすごくお腹空いちゃったから、本当に早くね。」
「へいへい。やっといてやるよ。明兎は父さん呼んでおいてくれ。」
「え~。いいよ!その代わり、箸の用意もお願い。」
はあ。毎回毎回、一つ頼めば逆に何かしら頼んでくるスタイルは何だ?わけわからん。いや、やるけども。
「相変わらず仲いいわねえ。二人とも。」
「今のどこに仲いい要素があった?」
「そうねえ...息ぴったりなところとか。」
「絶対今考えたろ。」
「い、いやね...そ、そんなことは、ない、わよ?」
何だこの典型的な下手なうそのつき方は。
「母さん、話すときは普通に話してくれ。そうやってふざけられると面倒くさい。」
「あら?どんなところが面倒くさいの?」
「違和感しかないし、どういう反応をすればいいのかが分からなくなるところ。」
「じゃあ、なおさらよ。こうやってボケをすれば空兎の突っ込み力をあげれるんじゃない?」
なんだそれ。しかもさあ、
「俺はどちらかというと、ボケ寄りだ。どっちにしても下手だけど。」
「あ~。外ではそういうことになっていたわね。」
「なんそのメタ的発言は。」
「家の中だからいいじゃない。」
そういう問題じゃないんだよ。家でボケをかまさないでまともなのは(天然含む)....レモンしかいねえじゃんかよう。レモンはうちの飼い犬のことだ。
ともかく、準備が終わったから、あとは二人を待つだけだ。
20分ほど待ってやっと二人が来て、
「すまんすまん。おとなしくさせるのにちょっとてこずってな。」
やたら肌がつやつやした親父となんとなく疲れた感じの明兎が入ってきた。
なんとなく想像つくが、一応聞いておくとしよう。
「んで?今回はどんな言い訳で楽しませてくれるんだ?唐揚げもまた温めなおさないといけないし。」
「すまんと言ってただろう。捕獲のクエストだったんだが、ちょっとモンスターがな、強すぎて2乙してたところだ。クリアした時は本当に達成感があったよ。今までに4回ぐらい失敗したからな。」
「そうだよ~。私が何度言っても、気づかなかったから、耳元で全力で叫んだり、頭と背中を叩いたり、ゲーム画面が見えないように前で邪魔したりしたんだけど、全く気が付かない様子でいつも通りプレイしてたんだよぉ。」
そういって明兎は椅子に座り、テーブルに顎を乗せて愚痴を垂れていた。
俺は唐揚げの皿をレンジにもっていって、温めている間、考えていた。相変わらずの二人だが、これが普通に感じるのは大丈夫なのか...?しかも、母さんも全く気にした様子もないし。
唐揚げが温め終わったから、テーブルに持って行く。
そして、俺が座り終わる前に....
「「「いただきまーす。」」」
息ぴったりだな。おい。しかも俺が「いただきます」と言った頃にはほとんどの大きい唐揚げは他の面々の皿に移っていた。
俺も無くならないうちに唐揚げを自分のさらに入れ、キャベツとポテサラを皿に入れ、食べ始める。
「こら。空兎、ちゃんとバランスよく食べなさい。ほら、二人を見てみなさい。」
そう母さんに促されたため、見てみると.....
「おい、ちょっと待て。それわざと言ってるよな?二人とも野菜を一切取らずに皿に唐揚げしかねえぞ。どう考えても俺の方がバランスがいいだろうが。」
「あら、ごめんなさい。ちょっと見間違えてしまったわ。ちょおっと注意するふりして、空兎の分の唐揚げを取ろうと考えていたのだけれど。」
「それはもうわざとっていうんだよ.....しかも俺の分を取るって、普通唐揚げの方を減らすんじゃなくて、野菜を増やすんだろ。」
そこで初めて気が付いたと言わんばかりに目を開いて、
「そうね!空兎、あなた天才!」
「やめいやめい。んなん考えれば簡単に思いつくだろ。それより.....早く二人にサラダを食べるように言わないと、唐揚げが先に無くなっちまうぞ。」
「あら。高騰。二人とも早くそれ、食べなさい。」
「そんな気軽に高騰すなや。みんなが困るだろ。確かにある意味ではこの食事での唐揚げに価値はどんどん高騰してるけども。しかも唐揚げを先に食わせるんかい。野菜を取ってくれるよう促してといっただろ。」
そこで爆笑が起こる。
「やっぱり面白いなあ。空兎は。」
他の二人もうなずいている。なんとなく答えは分かるが.....
「今のどこに面白い要素があった?」
それを聞いた三人は口をそろえて、
「知らん」
「知らなーい」
「知らないわね」
うん、だろうな。
「相変わらず、笑いのツボが分からなんだが。」
「俺も、何で笑ったのか分からん。」
「私もわかんない。」
「あら、今日のから揚げは特別おいしくできたわね。」
はあ。ひとり関係ないことをつぶやいているが。しかも、急にスイッチでも切り替わったかのようにサラダを取って、食べ始めた。
やっと、落ち着いて食えるわ。やっぱ、母さんのから揚げは美味いな。ジューシーなのに、脂っこ過ぎない。だけど、鶏肉特有の油のうまみは閉じ込められてる。どう作ったらこうなるんだろ。
でも、俺が一番好きな唐揚げの味は、蒼汰が作ってた唐揚げかな。あれは俺と同い年っていうのもあるだろうが、ニンニクがよく効いていて、がっつり系の味で俺好みの味であった。
....ぜってえ、来世に会ったらぶん殴ってやる。蒼汰に、勝手に逝くんじゃねえって。
俺たちは食べ終わり、片付けをすました。俺はゲームをしようと、部屋に戻ろうとしたが、
「ねえ、空兎。なにかラノベ借りていい?」
と妹に引き留められた。
「いやそれより先に、俺が渡した方を読めよ。俺が渡したやつはまだ読んでないだろ?」
確かにさっき渡した。渡されたことを忘れたのだろうか?
「いいや。全部読んだよ?」
「あの短時間で?」
「違うよ。空兎がいないときに部屋に入って勝手に読んでたの。」
「絶対隠す気ねえだろ。本人に勝手に部屋に入ったことを伝えるか?普通。」
「だから、読んでいい?」
「聞く気ねえなこいつ。まあいいけど。その代わり、俺を『お兄ちゃん』って呼んでくれてもいいんだぞ?」
おれがそう、茶化すように言うと、
「うわ...きも...なに?言ってほしかったの?言う訳ないじゃん。今更。小さいころの私に言えば違ったかもね。」
「ガチで引くのやめてくれません?冗談で言ったんだが。」
「知ってるー。だって、空兎が冗談言う時って顔が少しにやけるもん。」
そんな癖があったのか。知らんかったわ。
そして、そのまま部屋に戻り、モニターの前に座って、最近はやっていて、最近ハマっているゲームを起動する。オープンワールドRPGというジャンルのゲームだ。
やりこんでいるかと聞かれたら、そうでもない。総プレイ時間もまだ300時間ほどだ。
何度か明兎をやってみないかと、誘ったのだが、「容量が足りないから無理。いや、やってみたい気持ちはあるんだけどね?」とのこと。
俺はささっとデイリーミッションを終わらし、最近出たキャラの育成に励む。
ふと、トイレに行こうと席を立って気が付いた。いつの間にか12時を回っていたのだ。
さすがにもうそろ寝んとな。明日からまた学校だし。週3ぐらい休みたい。やりたいことが多すぎるからね。
俺は部屋に戻って、ゲームを終了し、モニターの画面と部屋の電気を消し、ベッドに寝転ぶ。下から「ふぎゅっ」と不可解な音が聞こえる。俺は、慌てて起き上がる。
俺は電気をつけ、ため息をつく。
「寝落ちしたのかよ.....はあ。運ぶのめんどいんだけど....」
さすがに明兎をこのままここで寝かせるわけにはいかんか.....はあ。
明兎を部屋に運ぶまえに、先に明兎が読んでいたラノベを仕舞い、明兎を抱っこする。この時、ちょっとふらついたことを言ったら殴られるな。....言ってやろ。いたくねえし。心以外は。
なんで起こさないのかと思うだろう。こいつの場合、一度寝て、夜中とか早朝に起こしたらその日一日めちゃくちゃ機嫌悪くなるから、俺が直接運んだ方が吉というものなんだよ。
よし、これでいいな。俺は明兎をベッドにそっと寝かせ、部屋を出る。
部屋から出ると、あくびが出た。眠い。
部屋に戻り、ベッドに倒れこむように寝転ぶ。
そしてそのまま俺の意識は闇へと沈んでいくのだった....
いかがでしたでしょうか?今回は番外編ということで、蒼汰と仲が良かった『空兎』くんが出てきましたね。果たして、これからのストーリーにどんな形で関わってくるのか、ぜひ、楽しみにしていてください。
次の話は蒼汰サイドです。
次回の投稿も来週の金曜日の予定です※都合上、遅れてしまう可能性があります。
それでは、また次回お会いしましょう。