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ちょっと待て、それ本気?

 楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。

 中に入ると、昨日も見た通り、冒険者たちが駄弁っている様子が見て取れた。


 昨日とは違うのは、その冒険者たちはヘルスネークを凝視しているところと、アリサを物珍しそうに見ているところかな。


 俺は視線が怖いのか、縮こまりそうになっているアリサに


「アリサ、本当に無理してないか?さっきも言ったと思うが....」


と言いかけたところで、


 アリサの後ろに大きな人影が見えた。


「よお、ソータ!昨日ぶりだなあ。依頼終わりか?ちょうど俺も依頼が終わったところだ。」


と明るい笑顔であいさつしてきた。


 その人物とは....?....はい、「ヘッヅさん」ですね。そもそも、昨日ここで話したのはこの人と食堂のおばちゃんと受付の人しかいなかったからな。


「ヘッヅさん、こんにちは。俺もちょうど依頼の完了だけですね。」


「おお、どんな依頼だったんだ?」


「ええと、ペット探しです。ここにいる『ヘルスネーク』を探すという依頼でしたね。」


ちなみに、アリサはヘッヅさんが後ろにいたことに気が付くと、俺の陰に隠れていた。相当驚いたようだ。


 そして、ヘッヅさんは俺が指さしたゲージを見ると、その顔を心配そうな顔に変え、


「大丈夫だったか?捕まえるときに噛まれたりしてないか?最初のころからそんな危ねえ.....くはねえか。噛まれたりすると痛い動物の依頼を受けるのは早いんじゃないか?」


「いや、保護者かよ!」


おっと、ついうっかり口に出してしまった。......仕方ないと思う。うん。そういうことだ。


「いやなあ、新人を見かけると、ついこういう風になっちまうんだよ。」


周りを見ると、ほぼ全員がまるで『こいつはマジだ。今までに何度もやっていた。』と言っているかのように結構な勢いでうなずいていた。


「まあ、そういうことならそれでいいとは思いますけど....」


「おう、すまんな。あんまし気にしないでくれると助かるぜ。ところで、その嬢ちゃんは....」


と、そこまで言ったところで、ヘッヅさんはアリサの顔を見て驚愕するかのように、あるいは自分の中の心のモヤが晴れたかのような表情で


「この特徴的な髪色と瞳の色って....もしかして!」


うん?なんだ?この心当たりがあるみたいな反応は....もしかして、『異研』の仲間か?と思いアリサに行っていることがわかるかの確認を視線だけでとろうと思ったが、そんなことがうまくできるはずもなく、アリサは俺が急に自分を見てきたことに首をかしげていた。


 俺はヘッヅさんの結論が出る方が早いと思い、


「この子に何かあるんですか?」


と聞いてみたのだが、返ってきた答えは完全に予想外のもので、


「いや、お前、そりゃ、結構ここら辺では有名と言っても過言ではないぞ.....って、昨日が初めてだったんだな。なら、知らなくてもしゃあなしか。教えてやろう。その子は『蒼紅ノ炎躍花あおぐれないのえんやくか』って言われてるこの国、いや、この周辺の国でも類を見ない強さっていう話だ。俺も噂でしか聞いたことはなかったんだが、その姿を見れるとはな。

 にしても、子供だよな?ホントにそんな強さがあるか分からんが....」


そういって、さっきからアリサの方を見るが、その言葉で何かのスイッチが入ったのか、


「いいわ!そこまで言うなら勝負しましょう!その目で見ればあたしの強さが分かるでしょう!」


とヘッヅさんに言い放っていた。しかし、ヘッヅさんはそれを受け、


「おっ?やるのか?嬢ちゃん。俺はいいが、手加減なんかできねえぜ?」


と結構好戦的であった。


「決まりね!じゃあ、依頼をちゃんと終わらせてから、ここのを借りて勝負しましょう!もちろん、決闘スタイルでね!」


「お!それでいいか。ついでにソータの実力も計らせてもらうとするか!」


俺はそれを流そうとしていたのだが、急に巻き込まれたため、


「ちょっと待て。なんで俺まで巻き込まれてるんですか!」


と文句を言うと、


「いいじゃねえか。あんまし新人と戦うことはなかったから、最近お前が入ってきて、勝負するのにもいい機会だ。」


やばい、まったくこの人の思考回路が見えん。だがまあ、悪意を持って勝負に乗ったわけではないことだけは確かだな。


 まあいいや。それじゃあ、


「じゃ、俺は依頼を先に終わらせてきますね。」


そういい、その場を立ち去り、受付に行き、ヘルスネークを渡しながら、


「すみません、依頼の完了ってどうすればいいですか?」


と聞いてみた。


 受付の人は、


「冒険者証明書を出していただければ、依頼完了の手続きをすることができますよ。」


このように言ってくれたので冒険者証明書を出そうとしてはたと気づく。


 以来の欄も日本語のままだあ...あれ?これってどうやったら、こっちの世界の文字になるんだ?


 ......あっ!この欄の所だけ「日本語化」を解除できるかな?


 そう思い、依頼の欄の日本語化を解けるように念じてみるが、特に変化はない。


 さすがに時間がかかりすぎなため、受付の人も訝しそうな顔をするも、今はそれはスルーするとしよう。


 俺は他に何かこっちの世界の文字にする方法がないかといじっていると、一部、指で触れていた画面が青くなっていた。


 これはもしやと思い、依頼の欄の上から下まで長押ししながらスクロールすると、案の定そこの部分が青くなった。そして、そこの青い部分をタップすると、記号の上に日本語が浮かんでいて、それを読むと、『現ボルダルス語』と書かれていた。


 大分安直だなおい。と思ったが、日本語も似たようなものと気が付いたので考えることをやめることにした。


 だが、これでこの問題は解決できたので冒険者証明書を受付の人に渡す。(ついでに名前の所もこっちの言葉に直す。)


 すると、受付の人はやっとだ...という感じで冒険者証明書を受け取って、


「それではお預かりしますね。」


と言って奥に引っ込んでいった。


 受付の人が戻ってくるまでの間、アリサに『決闘スタイル』とは何かを聞こうとしたのだが、アリサはなにやらアワアワしていた。


 どうしたかを聞いてみると、


「わたしはあの状態だとああいう風に大胆になりやすいの。だからね、勝負仕掛けちゃったんだけど...」


確かに最初あった時も勝負しようみたいなことを言ってたな。


「あの『決闘スタイル』よ?やらかしたと思うのも当然じゃない?しかもあっちもあっちよ。本人がいる前であんな堂々と誰かが勝手につけた恥ずかしい二つ名を言う?」


俺は響きはいいと思ったんだけどね。本人はあまり気に入ってないようだ。.....俺も勝手に二つ名とかつけられてたら嫌だな。うん。これは最初に噂広めたやつが悪い。


 それを口に出すと、どこからか俺の嫌な感じの二つ名が生まれるかもしれないので口にはしないでおく。


「なあ、アリサ。『決闘スタイル』ってのは....」


とそこまで言ったところで受付の人が戻ってきて、


「はい、確かに依頼の完了を確認しました。こちらが依頼の報酬です。冒険者証明書もお返ししますね。それでは、また依頼を受けに来てくださいね。


 なお、初依頼での動物系統の依頼の達成なので、追加報酬の『公認ポイント35ポイント』を差し上げますね。これに伴い、公認ランクがDからCに上がりました。


 この公認ランクは依頼を選ぶ時の参考にしてくださいね。ほとんどの依頼は『推奨公認ランク』が書かれていませんが、高難易度の依頼などには書かれているのでしっかりと依頼書を読んでから依頼を受けてくださいね。


 それでは、またよろしくお願いします。」


「いえ、こちらこそよろしくお願いします。」


お礼を言いつつ、その場から離れる。公認ランクっていうのはそういう意味ね。一応、気にはしておくか。


 さて、


「アリサ、さっきの話の続きだけどさ、『決闘スタイル』って.....」


 しかし、アリサはその問いに答えることはなく、


「さ、今のうちに場所、取っておくわよ。どうせ、野次馬たちも集まるだろうから、あたしの力もしっかり見せつけらるわよ。」


と、なぜか、席を探し始めた。


「いや、だから『決闘スタイル』って....」


「あ、ここがいいわね。さ、ここに座ってさっきの人を待つわよ。....はぁ。....なんでわたしはいっつもこういうことでこんな反省しかしてないし...かといって今から断ってもダメだし。今もそうだけど、前も.....」


結局教えてくんないし。しかもこの様子を見るに、今聞いても答えてくれないだろうな。机に突っ伏してずっとブツブツ言ってるしな。


 まぁいいや。どうせすぐ分かることだし。


 俺たちはそれからしばらくその机で待っていると、


「よお。お前ら。待たせたな。」


 突然後ろからそんな声が聞こえた。結構突然だったから、無茶苦茶驚いたわ。一瞬心臓止まったかと思ったね。


「....いいわ。やってやるわよ....やっと来たわね。あたしに恐れて逃げ出したのかと思ったわ。」


「はは!威勢はいいな嬢ちゃん。その威勢は虚勢じゃないといいだけどな!」


「もちろん、あたしは相手の実力ぐらいはしっかりはかれるわよ。あなたみたいに見た目だけで判断するような人とは違うのよ。」


「いいぜ、やったろうじゃねえか。さっきも言ったが、俺は誰であろうと手加減はできねえぜ。」


「ふふ。あなたの性格は読めたわ。これで、あなたに勝ち目はなくなったわね。残念でっした!」


「はっ!いいねえ。俺はお前みたいな性格の奴は嫌いじゃないぜ。面白くなってきたなあ!」


「周りに野次馬(審判)たちがたくさん集まってきたようね。それじゃ、始めましょう。」


「おう、こっちはいつでもいいぜ」


.....なるほど。お互いで言葉を飛ばしあって、とりあえずは、野次馬っていう審判を集めて公平に勝負をしようってことか。ってことは


『決闘』っていうぐらいだし、どこかで戦うのかな?


 と思って二人の方を見てみると、なぜか座っていた。しかも、二人は肘を机につけ、手をお互い掴みあった。


 待て、この構えってもしかして....


「いくわよ。レディー、ゴー!」


そして二人はお互いの手を机につけようと互いの手を倒そうとしている。


 いや、これってどう見ても『腕相撲』じゃねえか!『決闘スタイル』ってそういう意味ね。確かに実力は測れなくもないけどさ、もっとこう、闘技場とかで戦うのかと思ったよ。いや、これも戦いではあるんだけどね。


 ま、予想とは違うことには結構慣れてきたから。気にしないよ。うん。決して全然違ったから思ったよりも衝撃が強かったわけではないよ?


 んなん、どうでもいいけど。


 さ、切り替えて勝負を見届けましょう。(切り替えるのは俺だけだが。)


 二人を見てみると、一進一退の攻防を繰り広げているように見える。時にはヘッヅさんが有利になって、あと少しでアリサの手が机に着くという場面もあれば、その逆の場合もある。


 しかし、二人には決定的な差があった。....あっ、体格ではないよ?


 ヘッヅさんが顔が赤くなるレベルで、めいっぱい力を込めているのに対して、アリサは平然とした顔で勝負している。.....勝負ですらないな。うん。たまにアリサが遊んでいるように見えるし。わざと自分の手が付くような位置まで行ってそこからヘッヅさんの腕が机につくギリギリまで持って行っている。


 こう考えたら、一進一退どころじゃないな。もうすでに圧勝だな。


 と、そこで、ついにヘッヅさんの手が机についた。


「やった~!これであたしの勝ちね。どう?これであたしが本当に強いかが分かった?しかも、圧倒的にね。」


「....ああ、十分にわかったぜ。ありがとな。嬢ちゃん。嬢ちゃんのおかげで、俺もまだまだだってことがよくわかったぜ。」


ヘッヅさんがそういうと、一斉に歓声が沸いた。そして、それを尻目にアリサは俺に、


「それじゃ、あたしは向こうに行くわね。」


と伝え、アリサは足早に去っていった。


 .....一人で大丈夫だろうか?


 俺は少し考えた結果....少しなら大丈夫だろうという結論に至った。俺が来る前も何度か外には出てるって話だったから、多少は問題ないかなって。


 ていうか、俺もやんないといけないのけ?


「あのー、ヘッヅさん?俺ともやっぱりやりますか?」


一応、聞いてみたのだが、


「いや、たった今格が違う相手には相手にならないと知ったからな。お前さんの実力は知らんが、さっきと同じようになってもダサいしな。今回は受けないでおくわ。もっとレベルが上がったら、せめてスキルを手に入れられたら、その時はしようぜ。」


おっと、この街入って初めてスキル持ってない人に出会ったな。正確にはスキルを持っていない人と知るのが、ね。(ウルガさんはこの町に入ってから出会ったわけではないから、ノーカンね。)


 今回はちゃんと本人に聞いてみるか。


「すみません、ヘッヅさんって今、レベルどれぐらいですか?」


「ん?確か....」


ヘッヅさんはそう言って懐から(ちなみにタンクトップなのだがどこに入れておく場所があったのだろうか?)プレートを出し、


「お、前見た時よりも結構上がってんな。ソータ、今はレベル256だ。300レベルぐらいになれば、スキルは一つぐらいは手に入るだろ。」


普通はこんな感じのレベルなのだろうか?後で他の人のレベルも見て比較してみるか。


 .....ん?あれ?


「ヘッヅさん、今何て言いました?」


「えっ?さっきは『300レベルぐらいになれば、スキルの一つぐらいは手に入るだろ』って....」


おかしない?それとも知らないだけかな?


「えっと、ヘッヅさん、スキルは500レベルごとに1つ手に入ったはずですよ。」


俺がそういうと、途端にあたりがざわめきだした。


 .....なぜに?もしかしてやらかした感じ?一般には知られてないことをぶちまけちゃったってことか?だとしたら、ちょっとごまかさないといけないな。


「まあうわさに聞いただけで冷静に考えて500レベルごとだったら、二つスキルを持っている人だと1000レベル以上にならないといけないってことですから、現実味がないですよ。やっぱり、その人の努力次第ってことですかね?」


「なんだ、そういうことか。まあ、でたらめな情報をつかまされたってことだな。ソータ、そういうのには気をつけろよ?それが事実だと広く知れ渡る場合もあるからな。」


と、そのヘッヅさんの言葉でざわめきは次第に収まっていった。


 よし。うまくごまかせたな。もしかしたら、本当だと受け取る人もいるだろうけど、そこは気にしないってことで。事実だし。


 ごまかせたかは分からんけど、そろそろ、


「それでは、俺も行きますね。この後用事がありますので。」


「おおそうか。またな。」


「はい、それではまた。」


俺をそこから離れ、アリサが向かっていった方に歩いて行った。


 俺はアリサの姿を見つけ、


「アリサ、行こうか。」


と言った。


 そして、アリサはその声に驚いたのか、体を少し跳ね上がらせ、ちょっとしてからこっちを向いた。


「ソータ!びっくりさせないでよ!.......それで?勝負はしなくていいの?終わったにしてはさすがに速すぎるし。」


そういや、アリサは知らんかったな。


「それについては、ヘッヅさんが棄権したよ。なんでも、アリサに負けて、自分をしっかり鍛えなおしてから勝負をするらしいぞ。」


「そうだったのね。まあ正直、あたしからしたら、ただでかいだけの人よ。正直、弱かったし。」


「まあ、そんな感じだったな。」


「まったく、勝負するだけほとんど無駄だったわね。あたしの強さを周りに示せたこと以外に意味なかったわ。さ、この話は終わりにして、早くいきましょう。」


「そうしようか。次はゼリージさんの所だな。行こう。」


「ええ、緊張するかもしれないけど、その時は仕方ないからね?普通は国王に会ったら、驚くどころじゃないわよ。敬意でいっぱいで目すら合わせられないという人もいるぐらいだから。」


ゼリージさんも似たようなことを言ってたな。でも


「確かにそんなことを言っていたぞ?だけどな、ゼリージさんから聞いた話によるとな、そんなに畏まらないで、気軽に接してほしいって言ってたぞ。だから、気楽でいいと思うぞ。」


「そうなの!?それならそうするけど....わたし(・・・)は無理だからね。」


「うん、わかってる。だから無理にとは言わないよ。」


「ま、あたし(・・・)は頑張るけどね!」


アリサはそう言って、入り口のドアの方に向かっていった。


 ......あの時、ああいう風に言ったが、今更だけど、あれは仮面っていうレベルじゃ無くね?もはや二重人格っていう方がしっくりくるレベルだぞ。

 ま、どのみち、本来のアリサの姿で過ごせるようにしていけるようにしようと思ってるからね。そのためにも色々と工夫もしていかないとな。いろんなことに対してね。


 いかがでしたでしょうか?今回は再び、ヘッヅさんが出てきましたね。どこをとは言いませんが、相変わらず光ってそうですね。


 前々から思っていたんですが、アリサって二重人格な気がしてきました。まあ、何であろうとアリサはまだ本来の姿ではないので、蒼汰(ソータ)がどうしていくかが楽しみですね。


 次回の投稿も来週の金曜日の予定です。


 それでは、また次回お会いしましょう。


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