これは.....大分まずいかも。(11日目の終わり、12日目の始まり)
楽しんでいただけたら幸いです。最後まで読んでみてください。
俺はアリサの部屋に行く前に一度自分の部屋に戻った。
....えっ?なんでかって?そりゃもちろん、温泉に入る前の恰好と同じだとなんか落ち着かない感じなんだよ。人目があるとこでは特にね。
だから、毛皮を使ってパジャマでも作ろうかなっていうことよ。スキルを使えば、すぐできるしな。
今回は、長袖のパジャマを作ろうと思う。とはいってもよくある、襟付きのボタンで前が開けるように作ろうと思う。
最近、このスキルに慣れてきたのか、細かい部分まで再現できるようになった。例えば、ボタンはこのスキルを使って糸で縫い付けているのだが、一瞬でできた。それに、肌触りもザラザラしていたり、チクチクしたりもしていない。むしろ、すべすべした肌触りとなっている。もちろん、もともと毛皮についていた獣臭も一緒に取ったぞ。
便利だなあ。よし、ズボンも作るか。
ズボンは....よし、ひもで縛れるようにしよう。ひもで縛れるようにしないと、落ちるかもしれないからな。
・・・できたな。ここまでにかかった時間、なんと、ものの10分ほど!ここまでの質でこんなに早くできるのはこのスキルのすごさがわかるだろう。あ、『イメージクラフト』の事よ?
それじゃ、もう大分時間がたったっちゃったし、早く、アリサの所に行くか....
俺は部屋を出て、アリサの部屋に向かう。
しかし、途中で、
「あのこ.........るそうです。」
「....絶対に逃が.....なんとしても.....全てはシャガ.....」
「.....様、誰かき.....早くここから......にしましょう。」
「ああ、もちろ.....これでついに.......。行くぞ。」
と、そこまでが聞こえ、足音が聞こえ、急に足音がなくなった。
....今のは何だ?少なくとも、ご老人方の声ではなかったぞ?こういうと失礼だが、もっと若い、男の声だった。だが、詳しい内容までは聞き取れなかった。
このことは一応、覚えておいて、警戒しておこう。何かあってからでは遅いからな。少なくとも、この国、もしくはここには関係はするだろうな。
一度、部屋に戻って、ナイフと圧縮しておいた、木を持って行くか。
そして、俺は部屋に戻り、ナイフと木の棒を持つと、ようやく、アリサの部屋のドアをノックするに至った。
俺がノックして、
「おーい、来たぞー。」
と、声を掛けながら、ね。
そして、30秒ぐらいした後、ドアが開いた。しかし、彼女は何か急いでるようであった。
「早く、入って。急いで。誰にも聞かれたくないの。」
と言われ、何かあると踏み、俺は気を引き締めた。
「分かった。」
と短く答えて。
俺はアリサの部屋に入ると、アリサは
「さっ、ここに座って。」
と言って、ベッドを軽くポンポンと叩いた。
普段なら、何かしら反応するところだが、アリサの顔を見るにそんな暇はなさそうだ。
俺が座ると、アリサは俺の耳元に顔を寄せ、
「気づいてる?この宿の中にいくつか慣れない気配があるわよ。今から話はするけど、一応、あなたも警戒しながら聞いててね。」
と。
それを聞き、俺もアリサにさっきの話していた奴らのことを話した。
それを聞き、アリサはきちんとベッドに座りなおし、
「それについては心当たりがあるわ。奴らは、おそらく『異端調査・研究し隊』よ。もう簡単に『異研』と呼ぶわね。
あいつらは、組織の名前こそふざけているものの、やっていることはまさに残虐非道よ。
何せ、『魔獣人族』と勝手に呼ばれてる人たちがいるの。
『魔獣人族』っていうのは身体的な特徴以外特に人間とは変わりないのに、人間から差別されている人たちのこと。
その中の身体的特徴を、つまりね、種族的特徴、例えば、」
そう言って、アリサは髪をかき上げ、
「あたしみたいに『エルフ』と『鬼』の特徴を併せ持った人たちを捕まえて、研究を言う名目で無理やり解剖したり、暴力を加えたり、そのまま『奴隷』にして、他の人間に売っぱらったり、人体実験をしたりするような酷いやつらよ?」
そう話す顔には、少しの恐怖と不安の色と、さっきも見た、妖怪などの「鬼」のような、小さい一本角と、よくファンタジーもので出てくる、所謂、「エルフ」のような長く、尖った耳があった。
「あたしは...ううん、わたしはそいつらに狙われているの。今まで、そいつらがわたしに手を出さなかったのは、キルおじさんと、メルカおじさんのおかげなの。あの二人はああ見えてめちゃくちゃ強いから、わたしを誘拐しようとしても、その前にあの二人にボコボコにされるから、手を出せていなかったの。
だけど、あいつらの気配の動き方を見るに、わたしがここを離れることに気が付いたみたいなの。
一応、聞いておくけど、あなたはあの二人よりも、わたしよりも強いのよね?」
そう言って、アリサはまるで助けを求めるかのように、こちらを見た。
もしかしたら、もしかしたらだけど、アリサの方が強いかもしれない可能性もあるしなあ...
「いや、アリサより強いかは....」
....待てよ?
・・・うん、そうしよう。
アリサには申し訳ないが、ちょっと、能力を見させてもらおう。いざというときに、何かの手助けをしてもらうこともあるだろうしな。
“[名前 アリサ 本名・メルフェ・グラント]
年齢・12歳 身長・151.4 体重・23.5キロ
レベル・1546
体力 576 (暴走状態・3098)
スタミナ 253 (暴走状態・10357)
耐久力 754 (暴走状態・20978) ※精神面を含む値
運動神経 そこまでよくはない (暴走状態・少し良い)
知能 135 (暴走状態・97)
スキル・『偽装・解放済み機能 容姿偽装・精神強化・物体・物質の偽装』『身体強化・解放済み機能 身体能力の上昇※身体強化を酷使する、または、精神の大きな衰弱、揺らぎで“暴走状態”になってしまう。これを戻すには、精神の安定、力の鎮静が必要である。』『炎魔法の使用・解放済み機能 炎操作・武器へのスキル効果付与』”
え~と、予想より強かった。予想通り、俺の方が強いのはあった。しかし、『身体強化』というものを使えば、俺よりも強くなるな。だけど、そこまで行くと危険ということか。出来るだけ、そんな状態がないようにしておかないと。しかも、知能も俺より高いしな。道理で俺の下手な説明も理解できたわけだ。
んで、『炎魔法の使用』っていうのはそのまんまだよなあ。スキルの相性が普通にいい気がするのだが...それはそうと、
「アリサ、俺の方が強いけどな、状況次第ではお前の方が強くなる。つまりは、少なくともお前が危険な状態になった時には俺が守れるような力はあると、思う。だから、俺は大丈夫だ。」
俺はアリサにそう伝えた。そして、アリサは、
「そう、分かった。わたしのスキルは強力だけど、危険だから、あなたの言うとおり、あまり使わない方がいいから。それに、わたしのことをそういう風に言えるということは、おそらく、あなたには何かしらの人の能力を知ることのできる手段があるのよね?」
「うん、まあそうだけど...警戒とかはしないのか?」
「大丈夫。あなたからは、あいつらから感じる『嫌な感じ』がしないし、それを隠してる風にも感じないしね。わたしは自分を隠してる分、そういうのが一番わかるの。だから、これには間違いは絶対にないわ。これだけは言える。相手が嘘をついてるかどうかぐらいわね。」
なるほど....それなら、俺の助言はあまり意味はなかったかもな。そして、アリサのお眼鏡にかなったってことだな。
「まあ、アリサがそうなら、それでもいいんじゃないか?自分の考えに勝るものはほぼほぼないだろうしな。」
「そう。それじゃ、これがわたしがしたかった話。あと、おじさんたちにもまた明日改めて感謝を伝えるから、それぐらいは待っていてほしい。」
「そらそうだろ。人への感謝っていうのはかなり大事だぞ。」
「それもそうね。それじゃ.....約束通り、ちゃんとあたしが危険な目に合わないようにできるだけがんばってね!おやすみ。ソータ。」
はあ。これまた急に変わったな。しかも、
「アリサ、ちょっと声でかすぎるぞ。今は夜なんだからもうちょい声を下げてくれ。」
「....ごめんねー。これから気を付けるー。」
「ああ、そうしてほしい。それじゃ、おやすみ。」
そう言って、俺はアリサの部屋から出て、自分の部屋に戻る。
そして、俺はベッドにダイブし、目をつむった。
しかし、慣れないベッドのせいか、中々眠れなかった。
柔らかすぎるのもなんか落ち着かんなあ。と、半分寝ている状態でそんなことを考えていた。
そして、それからしばらくし、8割ほど寝かかっているところで『パリイ!』と何かが割れる音が聞こえた。
俺はその音で意識が一気に覚醒し、すぐに大体の察しがついた。
さっき、アリサが話していた奴らが来たのだろう。そして、おそらくアリサを強行手段で連れ去ろうとしているのだろう。
しかし、今ならまだ間に合うかもしれないと考え、ナイフと圧縮した木の棒をもって、アリサの部屋に行き、ドアを開けようと試みる。
だが、鍵がかかっていてあかないため、木の棒を薄く、頑丈な板にして、ドアの隙間に差し込み、てこを使って無理やり開けた。
中にはいると、そこには割られた窓ガラスとぐちゃぐちゃになり、床に落ちている布団、そして、いくつかの服があった。
俺は何か手掛かりがあるかもと窓から外を見てみると、馬車がどこかに走っていくのが見えた。
時間帯とタイミング的にあいつらだろう。俺は、窓から飛び降り....足が大分しびれた。そういや、あそこ、2階にしては3階ぐらいの高さがあったわ。
俺は未だしびれる足を無理に動かして、馬車を追う。しかし、一本道なのだが、猛スピードで逃げていく馬車に追いつけるはずもなく、どんどん差が開いていく。
しかし、俺はスキルの機能「固有スキルの拝借」を思い出した。あの速度が固有スキルによるものだとしたら、追いつけるかもしれない。
そう思い、俺は心の中で『あの動物の固有スキルの発動』と、適当に唱えてみた。
すると....走る速度がみるみる上がり、ついには馬車に追いついた。
そして、馬車に飛び移り、馬車の中を見てみる。一応ナイフも持っている状態でね。
中には....アリサの姿はなく、代わりになにやらガラの悪そうな大柄の男たちが乗っていた。俺が中をのぞいてることに気が付くと、そいつらは馬車を止め、ニヤリと笑った。
「おい、そこの坊主。あの嬢ちゃんを助けたいか?」
と聞いてきた。なので俺も
「そりゃもちろん。」
と、あえて感情を表に出さずに涼しい顔で答える。それは、俺がアリサを本気で助けたいと奴らに意思を示せば、アリサを人質に取られる可能性が高いからな。....いや、もう人質みたいなもんか。
俺がいつものようにそんな感じで考えていると、その男のうち、一番ガタイがよく、強そうなやつが出て来て、
「なら、俺と勝負しな。1対1のタイマンだ。おい!お前ら!邪魔すんじゃねえぞ!」
それに他の男たちは冷や汗を流しながら、必死にうなずいていた。どうやら、実力にれっきとした差があるようだった。
「ってことでてめえに拒否権はない。まあ、万が一てめえが勝てばあの嬢ちゃんがいる場所を教えてやるよ。お前は見た目ではわからないが、中々強いらしいしな。」
そう言ってそいつは好戦的な笑みを浮かべ、俺に殴りかかってきた。
「誰が合図で始めるなんて言ったよ?」
そういい、どんどん踏み込んできて、何度も殴りかかってきた。
俺はそれをよけつつ、一応聞いてみた。
「あのー、これって武器とかって使ってもいいですか?」
と。
帰ってきた答えは....
「もちろんだぜ。だが、己の肉体という武器だけだけどなあ!それを破れば、てめえに情報はやれんからな?ちょうどいいだろ?」
それを聞き、俺はそんなこったろうと思い、一度、拳を受け止めてみることにした。
拳を手のひらで止められれば俺に勝ち目はある。
俺は殴ってきた瞬間を見極めて、相手の拳が手のひらに触れる瞬間に手を握った。結果は...止めることができた。その際、俺は相手のレベルだけ見る。レベルは489だった。あとちょっとだったな。と考えながら、俺は周りに見せつけるためにスキル「ストロングパワー」を信用して、つかんでいる手を上に思いっきり振り上げた。
すると.....そいつは10メートルほど飛んで、そいつが砂埃をもうもうとあげながら、背中から落ちてきた。そう、擬音をつけるなら、ズドーンと。
俺はその人を大丈夫かな?骨折とかしてない?とそわそわしていると、砂埃がおさまり、そいつが倒れているのが見えた。
俺がそいつに近づくと...
「はは、俺の負けだ。片腕で人をあんなに投げるやつなんて初めて見たよ。こんなの勝ち目があるわけないじゃん。俺もまだまだだな。俺のあの自信はどこから来ていたんだろうか.....こんな事なら割がいいと思ってこんな仕事受けるんじゃなかった...しかも自分で1対1と条件付けておいてこんなにもあっさり負けるなんてな....ダサいにもほどがあるぜ。」
と、こんな感じで若干の現実逃避をしていた。しかも俺が近づいてきたのにも気が付かないようで、俺が
「おーい、大丈夫ですか?」
と、そいつの目の前で手を振りながら呼びかけるとやっと気が付いたようで、
「すまん、お前には負けたよ。約束通り、あの娘の場所を教えてやろう。」
そして、俺はその場所を聞いて、驚くどころじゃない、むしろあの人が黒幕かもしれないと疑うこととなった。
なので、俺は急いでその場所に向かおうとする。しかし、さっき戦ったそいつに呼び止められ、
「どうしたら、そんなに強いんだ?」
と聞かれたので、答えることにした。濁してだが。そして、そいつにアドバイスもすることにした。
「まあ、色々とトラブルに巻き込まれていくときにって感じだなあ。それと、君はあと少しかんばれば、スキルを獲得できるよ。だから、それまでもそれ以降も頑張ればいずれと強くなるよ。」
俺はそう言い残して、そいつの感謝の言葉を背に受けながら、できるだけ早くアリサが捕らえられているという場所に向かった....アリサを見つけ出して、必ず約束通り助けると誓いながら。
いかがでしたでしょうか?今回はアリサの能力や隠されていたことが分かりましたね。
はたして、蒼汰はアリサを助けられるのか?そして、アリサのとらえられている場所とは?ぜひ、読んでみてください。
次回の投稿も来週の金曜日の予定です。
それでは、また次回お会いしましょう。




